オレハ、スマホヲテニイレタ
2-閑話 クラト冒険譚2-走れ、クラト-
クラトは激怒した。
自分の油断がこの事態を作り出した原因であることは重々承知なのだが、愚痴を溢さずにはいられなかった。
「もー!何で飛ばされた先に湖があるのさ!!折角鳥に変形したのに意味無かったじゃん!」
クラトはプリプリと怒りながらスライムの姿で岸へと向かって泳ぐ。
バシャバシャバシャッ
途中、水面に浮かぶクラトに向けて大量の肉食魚が襲いかかってくるが、クラトはめげずに泳ぎ続ける。
バシャバシャバシャッ
すいーっ
バシャバシャバシャッ
すーい
バシャバシャバシャッ
イラッ
バクンッ・・・けぷっ
すいーっ
クラトは遂に我慢の限界を超え、肉食魚を辺りの水毎喰い尽くす。
そして何事もなかったかのように水泳を再開する。
ザバッ
「ふー、やっと岸に着いた。んーと、他のクラトはこっちかな?ちょっと離れてるな。一番速いのは、えーと、風美鳥だね。」
クラトは自分の感覚に従って、ブラックエレファントを捕食しているであろう分身の元へ、最近補食した極彩鳥の如くカラフルな鳥に変形し飛び立つ。
余談であるが風美鳥の肉は非常に美味であるが、飛行速度が速く、捕まえるのは困難であるため貴族ですら特別な機会でしか食すことが出来ない最高級食材の一種である。
バサッ
少し飛ぶと、鳥クラトは分身同士の位置を把握することが出来る超感覚的なものである異変を感知する。
「あれ?ご主人様に着いていったクラトの反応が小さくなった?」
「クラトー、どうしたの?」
「心配しないで良いよー。ウルとニアの体に毒物が入ったからそれを取るために僕も二人の体に入っただけだからー。」
「ご主人様は無防備ってこと?」
「・・・っは!?しまったー!ご主人様の命令だからついつい二人の体に入っちゃったけど、どーしよっ!」
「落ち着いてっ、クラト。今二人の体から出ちゃったらご主人様に怒られちゃう!これからミニクラトをそっちに送るよ。」
「ありがとー、鳥クラト。はー、やっちゃったなー。」
「あ、ちょっと、クラト、落ち込まないで。クラトが落ち込んじゃうと僕たちも落ち込んじゃうから。」
鳥クラトはそう言いつつ、隠れやすさを重視した手のひらサイズのミニ風美鳥を分離し、ご主人様の元へと送り届ける。
ミニクラトが上手く飛んでいくのを確認した鳥クラトは再び他のクラトの元へと羽を進める。
シュパッ
すると、今しがた飛び立った筈のミニクラトが墜落したように高度を下げたことを感知する。
「!?ミニクラト?どうしたの?」
「・・・わかんなーい。何かに食べられたみたいー。」
「食べられた?あんなに高く飛んでたのに?」
「うん。えーとね、んしょっ、わぁっ!おっきな狼さんだねー。」
「風美鳥より速い狼?」
「えーとー、あ、神喰狼だってさー。」
報告を聞いた鳥クラトと他のクラトも"God Search"で神喰狼を検索する。
神喰狼。討伐難度S~とされているが、過去出現した個体を討伐したという記録が無いため正確には知られていない。
その未知数な実力と主に魔王を食べていることが相まって、討伐依頼が出されない。
移動速度は音を抜き去り、咆哮は数キロ離れた岩を砕くと云われている。(God Searchより)
「なるほどねー。よしっ、ミニクラト。お腹から食べちゃって!」
「りょうかーい。でも大きいから時間かかるよー?」
「なら僕たちも全員そっちに向かうね。」
「クラト、今どこにいる?」
鳥クラトと他のクラトが移動を開始しようとしたとき、ご主人様の言葉が全クラトの中に響く。
「あっ、ご主人様!えーとね、森の中ー!」
「あー、すまん。質問が悪かった。ガロティス帝国からどのくらいの位置に居る?」
「ガロティス帝国?んーとね、ちょっと"God Earth"で調べるから待っててね。・・・あっ、出た。ガロティス帝国まで一時間か二時間くらいかな。」
「そうか。なら少し急いで来てくれないか?今ガロティス帝国に大量の魔物が攻めてきているらしくて、ピンチなんだ。」
「わかった!すぐに行くね!」
ご主人様との会話でクラト全ての行動は決まった。
今から最速で神喰狼を捕食して、その音速の脚を以てしてご主人様の元へ駆けつける。
その為にクラトは密かにご主人様がインストールしていた"God式"を開く。
「えーと、神喰狼3分クッキングっと。なになに。」
まずは神喰狼はこの世界でも三本の指に入るほどの速度の持ち主です。なので捕獲するときは真正面からではなく不意討ちで。
具体的にはエサに睡眠薬や麻痺薬などを仕掛けましょう。
「これはもうミニクラトが食べられちゃってるからそれでいいか。次はー。」
エサを食べさせることが出来たら次は捕獲です。神喰狼は警戒心が高く、いくら強力な睡眠薬を使っても外敵の気配に反応します。なのでもし、睡眠薬を使用するなら不用意に近づかずに遠距離から四肢を狙って機動力を奪いましょう。
詳しい機動力の奪い方は15ページへ。
「んー、これもいいかな。よし、ミニクラト。お腹の中から食べ進めるのと同時に手足を拘束しちゃって。」
「りょーかーい。・・・はいっ、手足を縛ったよー。これで暴れるけど速くは動けないと思うよー。」
仕事の早いミニクラトの報告を聞いて、鳥クラトは"God式"を読み進める。
では、身動きできない神喰狼に止めを差しましょう。心臓を狙っても中々死なず、寧ろ死に際の悪足掻きで思わぬしっぺ返しを受けることがあります。なので止めを差すときは頭部を正確に破壊しましょう。
詳しい頭部の破壊方法は23ページへ。
そこまで読み進めてようやく鳥クラトは他のクラトたちと合流し、ミニクラトに拘束されて暴れる神喰狼を見つける。
「よーし、よくやったよミニクラト。いっくよー!!」
ミニクラト以外のクラトと合体し、風美鳥の姿で遥か上空へと飛び上がる。
そして倒れる神喰狼の頭部の上空に位置取り、変形を始める。
ヒューーー
うにうにうにっ
クラトが選んだ形態は魔王ヒゲヅラが持っていた両刃の大斧。その凶刃が身動きの取れない神喰狼にグングン近づく。
「ぐうぉっ!ぐぉぉぉぉぉん!」
近づく凶刃に気が付いた神喰狼は暴れてその軌道から逃れようとするが、関節を固定したミニクラトにその動きを阻まれる。
ヒューーーー
「がぁぁぁぁぁぁ!」
ズバンッ
この世界で圧倒的な強者であった神喰狼はこの瞬間、この世界で圧倒的な弱者であるスライムに屈した。
「んー、流石"God式"。神喰狼の調理がピッタリ3分だね。」
クラトたちはそう言いつつ、飛び散った血液や衝撃で飛んでいった頭部まで、余すところなく手分けして捕食する。
「よしっ、捕食完了!!ご主人様、今から行くよー!!」
「うぉぉぉぉぉぉんっ!!」
水色の神喰狼は音を置いて走る。全てはご主人様の命令を守るために。
「あー、もう。木が邪魔だなぁ。」
「尻尾で薙ぎ倒す?」
「よし、任せたよ。尻尾クラト!」
ズガガガガガッ
クラトはこの時始めて適材適所を知ったのだった。
これが役に立つのは一時間後であった。
自分の油断がこの事態を作り出した原因であることは重々承知なのだが、愚痴を溢さずにはいられなかった。
「もー!何で飛ばされた先に湖があるのさ!!折角鳥に変形したのに意味無かったじゃん!」
クラトはプリプリと怒りながらスライムの姿で岸へと向かって泳ぐ。
バシャバシャバシャッ
途中、水面に浮かぶクラトに向けて大量の肉食魚が襲いかかってくるが、クラトはめげずに泳ぎ続ける。
バシャバシャバシャッ
すいーっ
バシャバシャバシャッ
すーい
バシャバシャバシャッ
イラッ
バクンッ・・・けぷっ
すいーっ
クラトは遂に我慢の限界を超え、肉食魚を辺りの水毎喰い尽くす。
そして何事もなかったかのように水泳を再開する。
ザバッ
「ふー、やっと岸に着いた。んーと、他のクラトはこっちかな?ちょっと離れてるな。一番速いのは、えーと、風美鳥だね。」
クラトは自分の感覚に従って、ブラックエレファントを捕食しているであろう分身の元へ、最近補食した極彩鳥の如くカラフルな鳥に変形し飛び立つ。
余談であるが風美鳥の肉は非常に美味であるが、飛行速度が速く、捕まえるのは困難であるため貴族ですら特別な機会でしか食すことが出来ない最高級食材の一種である。
バサッ
少し飛ぶと、鳥クラトは分身同士の位置を把握することが出来る超感覚的なものである異変を感知する。
「あれ?ご主人様に着いていったクラトの反応が小さくなった?」
「クラトー、どうしたの?」
「心配しないで良いよー。ウルとニアの体に毒物が入ったからそれを取るために僕も二人の体に入っただけだからー。」
「ご主人様は無防備ってこと?」
「・・・っは!?しまったー!ご主人様の命令だからついつい二人の体に入っちゃったけど、どーしよっ!」
「落ち着いてっ、クラト。今二人の体から出ちゃったらご主人様に怒られちゃう!これからミニクラトをそっちに送るよ。」
「ありがとー、鳥クラト。はー、やっちゃったなー。」
「あ、ちょっと、クラト、落ち込まないで。クラトが落ち込んじゃうと僕たちも落ち込んじゃうから。」
鳥クラトはそう言いつつ、隠れやすさを重視した手のひらサイズのミニ風美鳥を分離し、ご主人様の元へと送り届ける。
ミニクラトが上手く飛んでいくのを確認した鳥クラトは再び他のクラトの元へと羽を進める。
シュパッ
すると、今しがた飛び立った筈のミニクラトが墜落したように高度を下げたことを感知する。
「!?ミニクラト?どうしたの?」
「・・・わかんなーい。何かに食べられたみたいー。」
「食べられた?あんなに高く飛んでたのに?」
「うん。えーとね、んしょっ、わぁっ!おっきな狼さんだねー。」
「風美鳥より速い狼?」
「えーとー、あ、神喰狼だってさー。」
報告を聞いた鳥クラトと他のクラトも"God Search"で神喰狼を検索する。
神喰狼。討伐難度S~とされているが、過去出現した個体を討伐したという記録が無いため正確には知られていない。
その未知数な実力と主に魔王を食べていることが相まって、討伐依頼が出されない。
移動速度は音を抜き去り、咆哮は数キロ離れた岩を砕くと云われている。(God Searchより)
「なるほどねー。よしっ、ミニクラト。お腹から食べちゃって!」
「りょうかーい。でも大きいから時間かかるよー?」
「なら僕たちも全員そっちに向かうね。」
「クラト、今どこにいる?」
鳥クラトと他のクラトが移動を開始しようとしたとき、ご主人様の言葉が全クラトの中に響く。
「あっ、ご主人様!えーとね、森の中ー!」
「あー、すまん。質問が悪かった。ガロティス帝国からどのくらいの位置に居る?」
「ガロティス帝国?んーとね、ちょっと"God Earth"で調べるから待っててね。・・・あっ、出た。ガロティス帝国まで一時間か二時間くらいかな。」
「そうか。なら少し急いで来てくれないか?今ガロティス帝国に大量の魔物が攻めてきているらしくて、ピンチなんだ。」
「わかった!すぐに行くね!」
ご主人様との会話でクラト全ての行動は決まった。
今から最速で神喰狼を捕食して、その音速の脚を以てしてご主人様の元へ駆けつける。
その為にクラトは密かにご主人様がインストールしていた"God式"を開く。
「えーと、神喰狼3分クッキングっと。なになに。」
まずは神喰狼はこの世界でも三本の指に入るほどの速度の持ち主です。なので捕獲するときは真正面からではなく不意討ちで。
具体的にはエサに睡眠薬や麻痺薬などを仕掛けましょう。
「これはもうミニクラトが食べられちゃってるからそれでいいか。次はー。」
エサを食べさせることが出来たら次は捕獲です。神喰狼は警戒心が高く、いくら強力な睡眠薬を使っても外敵の気配に反応します。なのでもし、睡眠薬を使用するなら不用意に近づかずに遠距離から四肢を狙って機動力を奪いましょう。
詳しい機動力の奪い方は15ページへ。
「んー、これもいいかな。よし、ミニクラト。お腹の中から食べ進めるのと同時に手足を拘束しちゃって。」
「りょーかーい。・・・はいっ、手足を縛ったよー。これで暴れるけど速くは動けないと思うよー。」
仕事の早いミニクラトの報告を聞いて、鳥クラトは"God式"を読み進める。
では、身動きできない神喰狼に止めを差しましょう。心臓を狙っても中々死なず、寧ろ死に際の悪足掻きで思わぬしっぺ返しを受けることがあります。なので止めを差すときは頭部を正確に破壊しましょう。
詳しい頭部の破壊方法は23ページへ。
そこまで読み進めてようやく鳥クラトは他のクラトたちと合流し、ミニクラトに拘束されて暴れる神喰狼を見つける。
「よーし、よくやったよミニクラト。いっくよー!!」
ミニクラト以外のクラトと合体し、風美鳥の姿で遥か上空へと飛び上がる。
そして倒れる神喰狼の頭部の上空に位置取り、変形を始める。
ヒューーー
うにうにうにっ
クラトが選んだ形態は魔王ヒゲヅラが持っていた両刃の大斧。その凶刃が身動きの取れない神喰狼にグングン近づく。
「ぐうぉっ!ぐぉぉぉぉぉん!」
近づく凶刃に気が付いた神喰狼は暴れてその軌道から逃れようとするが、関節を固定したミニクラトにその動きを阻まれる。
ヒューーーー
「がぁぁぁぁぁぁ!」
ズバンッ
この世界で圧倒的な強者であった神喰狼はこの瞬間、この世界で圧倒的な弱者であるスライムに屈した。
「んー、流石"God式"。神喰狼の調理がピッタリ3分だね。」
クラトたちはそう言いつつ、飛び散った血液や衝撃で飛んでいった頭部まで、余すところなく手分けして捕食する。
「よしっ、捕食完了!!ご主人様、今から行くよー!!」
「うぉぉぉぉぉぉんっ!!」
水色の神喰狼は音を置いて走る。全てはご主人様の命令を守るために。
「あー、もう。木が邪魔だなぁ。」
「尻尾で薙ぎ倒す?」
「よし、任せたよ。尻尾クラト!」
ズガガガガガッ
クラトはこの時始めて適材適所を知ったのだった。
これが役に立つのは一時間後であった。
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