オレハ、スマホヲテニイレタ
3-13 オレハ、シュギョウスル
俺は今、窮地に立たされていた。いや、座らされてるんだけどね。
額から滲む汗は留まることを知らず、避けることのできない不快な感覚が両足に襲いかかる。
さらにそこに追い撃ちをかけるが如く降り注ぐ一つの冷たい視線。
ナンクンに襲われたその日の午後、俺はスマホゲームに嵌まり晩御飯の時間になったことも気付かないほど熱中しているところ、ヴィエラさんに見つかりそのまま説教に移行したということだ。
そう、絶賛説教中なのだ!!
「ユウト、お前今何かいらないことを考えているだろう。」
何故ばれたし。
「い、いやぁっ考えてないですよ?」
「ユウトお兄ちゃんは他のことを考えるときに眼の焦点が合わなくなるにゃ。」
なんだと、それは早急に直さねばおちおち物思いに耽ることが出来ないじゃないか。
「ほら、言った側から焦点があってないにゃ。」
「おっと。」
「ユウト?」
「すみませんでした。はい、余計なこと考えました。」
俺はヴィエラさんの視線にすぐしらを切ることを諦める。
バレてるしね。
っていうか最近ヴィエラさんに説教されるのが気持ち良く・・・いや、考えるのはよそう。
「はぁ、まぁいい。取り合えず明日からの予定をユウトにも伝えておくぞ?」
どうやら説教は終わりのようだ。
俺は話を聞くため、忌まわしき拘束崩す。
「何してるんだ?」
「えっ?説教は終わりですよね?」
「罰が無いとでも?」
「・・・。」
「・・・・・。」
俺はすぐに拘束を受け入れたさ。
「で、明日からだが、まずウルはハロルディアを棄権する。」
「えっ、どこか具合でも悪いの?」
「ふぇんふぇん(全然)?」
ウルは食後のデザートを頬張りながら首を振る。
あ、ニアちゃんに怒られてやんの。
「じゃあなんで?」
「私たちはウルの次の相手がナンクン何じゃないかと考えている。」
「次の相手って誰だっけ?」
「・・・・・んぐっ。ミナミっていう相手だぜ。」
おぉ、今度はきちんと飲み込んでから喋ったな。
まぁ横でニアちゃんが監視しているからだろうけど。
ミナミねぇ、南か?
それで訓読みしてナン。だからミナミ=ナンクンってことか。
あれ、この世界に漢字って無かったよな?
「あの、何でミナミをナンクンだと?」
俺が疑問をぶつけるとヴィエラさんは呆れ顔だ。
あ、溜め息吐いた。
「スパールタが何者かにやられてその一回戦の相手がミナミだ。このハロルディア、いや、世界中を探してもスパールタを倒すことが出来る者は少ないだろう。勿論居るには居るがそんなレベルの奴が闇討ちするとは考えにくい。なら、ミナミを疑うだろう?」
「ですが貴女は一つ勘違いをしている!」
「い、いきなりどうした?」
「すいません。一度探偵の真似をしたかったんです。でもヴィエラさん、五星魔の奴らが大人しくハロルディアに出場したりしますかね?コクト・・・は狂ってるから別としてもマナシア復活を目論む奴らですよ?」
「・・・」
「あれ、ヴィエラさん?」
「その可能性は考えていなかった。ユウトに論破されるとは・・・不覚!」
「あれ、俺ってそんなに頭悪いイメージだったんですか!?」
「「・・・・・」」
「だ、大丈夫にゃ。ユウトお兄ちゃんはすごいにゃ。」
くそっ、ニアちゃん以外目を逸らしやがった。
ここはクラトに・・・
「あれ、クラトはまだ到着してないんですか?」
「ん?そこでニアと戯れてるじゃないか。」
俺の疑問にヴィエラさんはニアちゃんの抱える小型ガブリンを指差す。
あれー?俺の知ってるクラトじゃないんですけど??
小型のガブリン。
これはまだいい。擬態を持ってるから。
ニアちゃんに愛でられている。
これもいい。確かに小型のガブリンはフレンチブルドッグ的な見た目でかわいい。
でも、
「クラトの擬態なのに青くないっ!?」
そう、ニアちゃんに抱えられているクラトはいつもの青ではなく、白い地肌に黒のぶちという肌色、毛並みまで再現していた。
「クラト、おいで。」
ピコンッ
「ご主人様ー!会いたかったよー。」
クラトは俺が呼ぶと瞬間移動のようにニアちゃんの腕から俺の胸に一瞬で移動してきた。
「ふぉっ!お、おぉ。クラト、速くなったなぁ。」
俺は余りの驚きで出た変な声をごまかすようにクラトを撫でる。
「ヴィエラさん、ちょっと予想よりクラトが成長してるんでハロルディアで振り回されないように調整してきますね。じゃあ!」
「あ、待て。」
ガラッ
バシュッ
俺はヴィエラさんの制止も聞かずに窓から跳び降りる。
飛び降りる瞬間、クラトが俺の足を強化してくれたので飛跳び降りるというより飛んでいく感じになったが。
「あへっ!?ク、クラトさんや、ちょぉーっと飛び過ぎじゃないっすかね?」
(んー、そう??飛ぶならこれくらいじゃないと建物に当たっちゃうよ?)
クラトは答ながら足から背中に移動して何かに擬態する。
「えっ、今跳ぶじゃなくて飛ぶって言った??」
(そうだよー。せーのっ!)
バサッ
クラトは背中に形作った翼を大きく羽ばたかせる。
すると俺の体はグンッと急上昇する。
「ふぉぉぉ!!飛んでる!飛んでるぞクラト!!」
(きーもちいー!!)
「よし、じゃあスパールタさんの倒れてた岩場わかるか?」
(わかるよー。みんなで情報を共有してるからー。)
「じゃあそこまで頼む。あそこなら多少暴れても周りに被害が出ないしな。」
(わかったー。)
クラトは街の上空を大きく旋回しながら岩場へと向かう。
「あ、クラト、今度から飛ぶときは俺の体も覆ってくれる?後、一声かけて。気付いたら上空数十メートルとか軽く恐怖だから。」
(ごめんなさーい。)
姿が大きくなったせいか強化されたクラトの飛行でドラちゃんに連れていってもらった時より速く岩場に着いた俺とクラトは、取り合えず離れる。
「さて、クラトの成長を見ようと思ったけど魔物がいないし、どうするかな。」
(魔物ー?持ってこようかー?)
「いや、やめとこう。魔王ですら一飲みなんだから今更雑魚の魔物を狩るところ見ても違いがわからん。」
俺の声に耳につけたイヤホン型クラトが答える。
もうね、何というかクラトの近代化がハンパない。
数居るクラトのうちの数匹が、常に自由に使えるスマホアプリの"God search"で戦い方を探してるし、より広範囲を索敵できるように、超上空から魔物を監視する衛星型クラトもいるらしいし、もうね、クラトがスライムじゃないんじゃないかって思うわけですよ。はい。
「あ、そうか。アプリで"鑑定カメラ"インストールしてたな。」
個体名:クラト
種族名:勇者スライム(魔王喰い)>>>神喰粘液
ランク:S>>>SS~
繋がり:根暗悠斗の下僕
能力:吸収・消化・分裂・魔族特効>>> 吸収・消化・分裂
分裂数:Max45>>>Max99
吸収歴:
SS・・・0体>>>0 体
S・・・1体>>>13 体
A・・・8体>>>52 体
B・・・23体>>>---
C・・・49体>>>---
D・・・153体>>>---
E・・・67体>>>---
F・・・2976体>>>---
使用可能アプリ:GodMap(任意)、GodSearch(常時)、勇者バッカス(常時反映)
あれ?ツッコミ所が・・・
スライムに神喰粘液って当て字すんなとか、種族名勝手に変わってるとか、ランクってS~は神とかじゃなかったけ?とか、その割に能力減ってるとか、吸収数が低ランクではカンストしてるとか、勇者バッカス、まぁ今日インストールしたゲームだけど、使用できるかどうかじゃなくて常時反映になってるとか、取り合えずクラトはもうスライムじゃないな。
これまバッカスさん。大分はっちゃけたアプリを作りましたね。
(どう?強くなってたー?)
"鑑定カメラ"を使用できないクラトは自分の能力を知ることが出来ないので、俺の報告を今か今かとその場で跳ねながら待っている。
うん。
もうクラト可愛いし何でもいいや。
強くて可愛い。他に何を望むことがあるというのか。
「おぉ。強くなってたぞぉ!頑張ったんだなぁ。偉いぞ!」
(へへへぇー。)
「これは、どうするかなぁ。あっそうだ、クラト。ちょっと俺の動きを補助してくれないか?」
(何するのー?)
「決まってるだろ?新たな強敵にやられたり、使いこなせない新たな力に目覚めたら、お約束だ!」
「ネクラユウトの奴、思ったより用心深い野郎の様だぜ?」
「まさかもう襲いに行ったのか?」
ハロルドの裏路地。
そこで同じようなローブを着て、フードを目深に被った二人が会話していた。
一方はローブの上からでもわかるがっちりとした体格と声で男とわかるが、もう一方は背は高いが痩せている戦闘に向いていなさそうな男だ。
「残念ながら雑魚の影武者だったがな。目の前に立っていても警戒しねぇわ、そのまま回し蹴りをモロにくらうわ。あれじゃ逆立ちしてもコクトどころかBの魔物にもやられるぜ。ネクラユウトもなんでそんな奴を影武者にしたのか。俺みたいに賢い奴じゃなきゃ気付かねぇだろうがな!」
体格のいい男はそう言って上機嫌に笑う。
その様を見て、痩せた方男はため息をつく。
(はぁ、五星魔きっての脳筋が何をほざいているのか。)
「おいっ。」
「何だ、ぐっ!」
「お前、憑依体の分際で調子に乗んなよ?俺レベルになると相手の思考も解るんだからな?」
「な、何を。その手を離、」
「俺は脳筋じゃねぇ。」
体格のいい男は、そのまま痩せた男の首を掴む手に力を入れる。
ゴキィッ
体格のいい男は力を失った肉塊から手を離し、一瞥するときびすを返す。
「おやおや、ナンクンさん。またですか?」
体格のいい男、ナンクンがその場を去ろうとすると、死んだはずの男から軽薄そうな声がする。
その声は機械で変えたように声色だけでは男か女か判断が付かない。
「あぁ?そう言うならテメェが直接来いや。毎回毎回俺のことを馬鹿だと勘違いする奴を憑依体にしやがって。」
「いえいえ、それは紛れも無い事じ、」
バチュッ
ナンクンは肉塊が言い切るより先にその体躯を蹴り、衝撃で肉塊が跡形もなく消える。
「けっ、胸糞悪い奴だぜ。」
ナンクンは今度こそその路地を後にする。
路地に残ったのは夥しい血液だけであった。
額から滲む汗は留まることを知らず、避けることのできない不快な感覚が両足に襲いかかる。
さらにそこに追い撃ちをかけるが如く降り注ぐ一つの冷たい視線。
ナンクンに襲われたその日の午後、俺はスマホゲームに嵌まり晩御飯の時間になったことも気付かないほど熱中しているところ、ヴィエラさんに見つかりそのまま説教に移行したということだ。
そう、絶賛説教中なのだ!!
「ユウト、お前今何かいらないことを考えているだろう。」
何故ばれたし。
「い、いやぁっ考えてないですよ?」
「ユウトお兄ちゃんは他のことを考えるときに眼の焦点が合わなくなるにゃ。」
なんだと、それは早急に直さねばおちおち物思いに耽ることが出来ないじゃないか。
「ほら、言った側から焦点があってないにゃ。」
「おっと。」
「ユウト?」
「すみませんでした。はい、余計なこと考えました。」
俺はヴィエラさんの視線にすぐしらを切ることを諦める。
バレてるしね。
っていうか最近ヴィエラさんに説教されるのが気持ち良く・・・いや、考えるのはよそう。
「はぁ、まぁいい。取り合えず明日からの予定をユウトにも伝えておくぞ?」
どうやら説教は終わりのようだ。
俺は話を聞くため、忌まわしき拘束崩す。
「何してるんだ?」
「えっ?説教は終わりですよね?」
「罰が無いとでも?」
「・・・。」
「・・・・・。」
俺はすぐに拘束を受け入れたさ。
「で、明日からだが、まずウルはハロルディアを棄権する。」
「えっ、どこか具合でも悪いの?」
「ふぇんふぇん(全然)?」
ウルは食後のデザートを頬張りながら首を振る。
あ、ニアちゃんに怒られてやんの。
「じゃあなんで?」
「私たちはウルの次の相手がナンクン何じゃないかと考えている。」
「次の相手って誰だっけ?」
「・・・・・んぐっ。ミナミっていう相手だぜ。」
おぉ、今度はきちんと飲み込んでから喋ったな。
まぁ横でニアちゃんが監視しているからだろうけど。
ミナミねぇ、南か?
それで訓読みしてナン。だからミナミ=ナンクンってことか。
あれ、この世界に漢字って無かったよな?
「あの、何でミナミをナンクンだと?」
俺が疑問をぶつけるとヴィエラさんは呆れ顔だ。
あ、溜め息吐いた。
「スパールタが何者かにやられてその一回戦の相手がミナミだ。このハロルディア、いや、世界中を探してもスパールタを倒すことが出来る者は少ないだろう。勿論居るには居るがそんなレベルの奴が闇討ちするとは考えにくい。なら、ミナミを疑うだろう?」
「ですが貴女は一つ勘違いをしている!」
「い、いきなりどうした?」
「すいません。一度探偵の真似をしたかったんです。でもヴィエラさん、五星魔の奴らが大人しくハロルディアに出場したりしますかね?コクト・・・は狂ってるから別としてもマナシア復活を目論む奴らですよ?」
「・・・」
「あれ、ヴィエラさん?」
「その可能性は考えていなかった。ユウトに論破されるとは・・・不覚!」
「あれ、俺ってそんなに頭悪いイメージだったんですか!?」
「「・・・・・」」
「だ、大丈夫にゃ。ユウトお兄ちゃんはすごいにゃ。」
くそっ、ニアちゃん以外目を逸らしやがった。
ここはクラトに・・・
「あれ、クラトはまだ到着してないんですか?」
「ん?そこでニアと戯れてるじゃないか。」
俺の疑問にヴィエラさんはニアちゃんの抱える小型ガブリンを指差す。
あれー?俺の知ってるクラトじゃないんですけど??
小型のガブリン。
これはまだいい。擬態を持ってるから。
ニアちゃんに愛でられている。
これもいい。確かに小型のガブリンはフレンチブルドッグ的な見た目でかわいい。
でも、
「クラトの擬態なのに青くないっ!?」
そう、ニアちゃんに抱えられているクラトはいつもの青ではなく、白い地肌に黒のぶちという肌色、毛並みまで再現していた。
「クラト、おいで。」
ピコンッ
「ご主人様ー!会いたかったよー。」
クラトは俺が呼ぶと瞬間移動のようにニアちゃんの腕から俺の胸に一瞬で移動してきた。
「ふぉっ!お、おぉ。クラト、速くなったなぁ。」
俺は余りの驚きで出た変な声をごまかすようにクラトを撫でる。
「ヴィエラさん、ちょっと予想よりクラトが成長してるんでハロルディアで振り回されないように調整してきますね。じゃあ!」
「あ、待て。」
ガラッ
バシュッ
俺はヴィエラさんの制止も聞かずに窓から跳び降りる。
飛び降りる瞬間、クラトが俺の足を強化してくれたので飛跳び降りるというより飛んでいく感じになったが。
「あへっ!?ク、クラトさんや、ちょぉーっと飛び過ぎじゃないっすかね?」
(んー、そう??飛ぶならこれくらいじゃないと建物に当たっちゃうよ?)
クラトは答ながら足から背中に移動して何かに擬態する。
「えっ、今跳ぶじゃなくて飛ぶって言った??」
(そうだよー。せーのっ!)
バサッ
クラトは背中に形作った翼を大きく羽ばたかせる。
すると俺の体はグンッと急上昇する。
「ふぉぉぉ!!飛んでる!飛んでるぞクラト!!」
(きーもちいー!!)
「よし、じゃあスパールタさんの倒れてた岩場わかるか?」
(わかるよー。みんなで情報を共有してるからー。)
「じゃあそこまで頼む。あそこなら多少暴れても周りに被害が出ないしな。」
(わかったー。)
クラトは街の上空を大きく旋回しながら岩場へと向かう。
「あ、クラト、今度から飛ぶときは俺の体も覆ってくれる?後、一声かけて。気付いたら上空数十メートルとか軽く恐怖だから。」
(ごめんなさーい。)
姿が大きくなったせいか強化されたクラトの飛行でドラちゃんに連れていってもらった時より速く岩場に着いた俺とクラトは、取り合えず離れる。
「さて、クラトの成長を見ようと思ったけど魔物がいないし、どうするかな。」
(魔物ー?持ってこようかー?)
「いや、やめとこう。魔王ですら一飲みなんだから今更雑魚の魔物を狩るところ見ても違いがわからん。」
俺の声に耳につけたイヤホン型クラトが答える。
もうね、何というかクラトの近代化がハンパない。
数居るクラトのうちの数匹が、常に自由に使えるスマホアプリの"God search"で戦い方を探してるし、より広範囲を索敵できるように、超上空から魔物を監視する衛星型クラトもいるらしいし、もうね、クラトがスライムじゃないんじゃないかって思うわけですよ。はい。
「あ、そうか。アプリで"鑑定カメラ"インストールしてたな。」
個体名:クラト
種族名:勇者スライム(魔王喰い)>>>神喰粘液
ランク:S>>>SS~
繋がり:根暗悠斗の下僕
能力:吸収・消化・分裂・魔族特効>>> 吸収・消化・分裂
分裂数:Max45>>>Max99
吸収歴:
SS・・・0体>>>0 体
S・・・1体>>>13 体
A・・・8体>>>52 体
B・・・23体>>>---
C・・・49体>>>---
D・・・153体>>>---
E・・・67体>>>---
F・・・2976体>>>---
使用可能アプリ:GodMap(任意)、GodSearch(常時)、勇者バッカス(常時反映)
あれ?ツッコミ所が・・・
スライムに神喰粘液って当て字すんなとか、種族名勝手に変わってるとか、ランクってS~は神とかじゃなかったけ?とか、その割に能力減ってるとか、吸収数が低ランクではカンストしてるとか、勇者バッカス、まぁ今日インストールしたゲームだけど、使用できるかどうかじゃなくて常時反映になってるとか、取り合えずクラトはもうスライムじゃないな。
これまバッカスさん。大分はっちゃけたアプリを作りましたね。
(どう?強くなってたー?)
"鑑定カメラ"を使用できないクラトは自分の能力を知ることが出来ないので、俺の報告を今か今かとその場で跳ねながら待っている。
うん。
もうクラト可愛いし何でもいいや。
強くて可愛い。他に何を望むことがあるというのか。
「おぉ。強くなってたぞぉ!頑張ったんだなぁ。偉いぞ!」
(へへへぇー。)
「これは、どうするかなぁ。あっそうだ、クラト。ちょっと俺の動きを補助してくれないか?」
(何するのー?)
「決まってるだろ?新たな強敵にやられたり、使いこなせない新たな力に目覚めたら、お約束だ!」
「ネクラユウトの奴、思ったより用心深い野郎の様だぜ?」
「まさかもう襲いに行ったのか?」
ハロルドの裏路地。
そこで同じようなローブを着て、フードを目深に被った二人が会話していた。
一方はローブの上からでもわかるがっちりとした体格と声で男とわかるが、もう一方は背は高いが痩せている戦闘に向いていなさそうな男だ。
「残念ながら雑魚の影武者だったがな。目の前に立っていても警戒しねぇわ、そのまま回し蹴りをモロにくらうわ。あれじゃ逆立ちしてもコクトどころかBの魔物にもやられるぜ。ネクラユウトもなんでそんな奴を影武者にしたのか。俺みたいに賢い奴じゃなきゃ気付かねぇだろうがな!」
体格のいい男はそう言って上機嫌に笑う。
その様を見て、痩せた方男はため息をつく。
(はぁ、五星魔きっての脳筋が何をほざいているのか。)
「おいっ。」
「何だ、ぐっ!」
「お前、憑依体の分際で調子に乗んなよ?俺レベルになると相手の思考も解るんだからな?」
「な、何を。その手を離、」
「俺は脳筋じゃねぇ。」
体格のいい男は、そのまま痩せた男の首を掴む手に力を入れる。
ゴキィッ
体格のいい男は力を失った肉塊から手を離し、一瞥するときびすを返す。
「おやおや、ナンクンさん。またですか?」
体格のいい男、ナンクンがその場を去ろうとすると、死んだはずの男から軽薄そうな声がする。
その声は機械で変えたように声色だけでは男か女か判断が付かない。
「あぁ?そう言うならテメェが直接来いや。毎回毎回俺のことを馬鹿だと勘違いする奴を憑依体にしやがって。」
「いえいえ、それは紛れも無い事じ、」
バチュッ
ナンクンは肉塊が言い切るより先にその体躯を蹴り、衝撃で肉塊が跡形もなく消える。
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