連奏恋歌〜求愛する贖罪者〜
第7話:セカンド・コンタクト①
反省会も終わり、各々がクオンの部屋から退室した。
単独行動を認められた――とはいえ、クオンが部屋に居る際に最低1人は扉の外で待機する事になっている。
ケイクは夜番があったためこれから眠り、ヘリリアも今夜の夜番である。
よって、ミズヤが部屋の前待機していた。
「いいですか〜サラ? これからはクオンやヘリリアさんとも一緒に行動するから、女性に嫌がったりしちゃダメですにゃ」
「にゃー……(わかったわよ……)」
部屋の前で胡座をかいて座り、足の上にサラを座らせて撫でていた。
この座り方はよくしているが、廊下でするのは初の事で、通る人がよくチラ見をする。
「ニャーッ」
「ん? どーしたのー、サラー?」
「……(なんでもないんだけど)」
「……ふにゃーっ」
ミズヤはだらしなく息を吐き、ぼんやりとしながら猫をスリスリと撫でる。
「……サラ〜っ。僕も側近になって、お友達増えたよ〜っ」
「……ニャ?(アレを友達っていうのかしら?)」
「この国では僕も犯罪者じゃないんだし、仕事もこなしてるしっ、良かったね〜っ」
「……ニャー(……まぁ、アンタがいいならいいわよ)」
サラの本当の言葉が伝わらなく、ミズヤにはニャーニャー言ってるようにしか聞こえない。
だからこそ本音で話す。
「こういう当たり前の事、ちょっと憧れてたんだ。贖罪でもあるけれど……クオンと、この生活を守らないとね――」
優しい口調で呟きながらサラの顎を撫でる。
少しは前向きになったミズヤに、サラはコクリと小さく頷くのだった。
◇
日が暮れると、散りばめられた星々の映える美しい夜空が空を満たしていた。
紫、赤、黄色、様々な光が月とともに空にある。
バスレノス城、塔の上にはトメスタスが仰向けに寝転がり、星々を眺めていた。
「こんな所にいていいのか?」
彼の背後に1人の女性が姿を見せる。
月夜に照らされる銀色のポニーテール、鋭い碧眼は煌めき、夜の光もまた彼女を映えさせる。
「姉上こそ、こんな所で油を売っていていいのか? 第一皇女であろう?」
「今日の用事は済んだ。不出来な弟の様子を見に来たら、やはり怠けている。貴様にも第一子の窮屈さを味合わせたいものだ」
「鍛錬もしているからそうなるのだ、っと」
トメスタスは上体を起こし、屋根の上に胡座をかいて座る。
ひゅうひゅうと吹く冷たい夜風は彼らの髪を揺らし、何事もないかのように過ぎていく。
「……なぁ、ラナ」
「なんだ?」
「あの小僧……ミズヤにつっかからなくていいのか? 奴は神楽器を持ってるんだろう? お前がずっと欲しがってた、な……」
「…………」
弟の言葉に、ラナは考えるように目を伏せて黙した。
10秒ほど経って、漸くラナは口を開く。
「何故いきなり、そんな事を問う?」
「……ハッ。俺だって気にしているのだぞ? 第一子のお前ではなく、俺が小太鼓を持っている事にな」
「貴様はあのマフラーがなければ飛べない。それだけだろう?」
「確かに。俺も【無色魔法】が使えれば、な……」
トメスタスは自分の右手を見つめ、強く握りしめる。
神楽器は、3点セットなのだ。
マフラー、刀、楽器、これらが揃っている事が通常である。
その内マフラーには【羽衣天韋】と言うと羽衣となり、空を自由に飛ぶ事が可能なのだ。
空を飛ぶには【無色魔法】がいる。
だがマフラーがあればそんなものは関係なかった。
皇族は4〜5色の魔法が使用でき、それだけであらゆる面において有利であり、神楽器の魔法、【羽衣天技】も多数使用できる。
しかし、ラナは知っていた。
(……それだけでは、ないのだがな)
トメスタスに神楽器を託された別の理由を。
飛べない、それも事実ではある。
だが根っからの理由は別なのだと。
「……ラナ?」
「いや、なんでもないさ」
ラナの顔つきから心配そうにするが、彼女はトメスタスにそう言って空を見上げる。
「話を戻すが、確かにミズヤから神楽器を託されれば、皇族2人が神楽器を使うと国の士気が高まるだろう。だが、ミズヤは“全色”の魔法が使える。そして何年も神楽器を持っていた。アイツに使わせてた方が、国のためになるのだ」
「……。そうか」
「あぁ、そうだ」
国のためになる、その言葉を聞いてトメスタスも納得する。
無言に帰ると、2人は空を見上げた。
こうして姉弟で星空を見ることは、そう少なくない。
何もない静かな夜。
空気が吹き抜け、城下町に映る光が街の賑わいを表していた。
その景色を見るのが、2人の昔からの楽しみでもあったのだ――。
ドォン――!!
「……!?」
「爆発かっ!?」
だが、その平穏も今は昔――
「ラナッ!!」
「あぁ!! 行くぞトメス!!!」
今日もまた、諍いが始まる――。
◇
「えーっ!? また僕も行くのぉぉお!!!?」
「いいから来い」
廊下に座っていた所をラナに襟首掴まれ、ミズヤはじたばたしながら無駄なあがきをするのだった。
「僕はクオンの側近なんだよーっ! トメスさんも助けてぇえーっ!」
「お前は強いだろう。いいから、まずは軍議会議室に行くぞ。今なら父上がいるはずだ」
トメスタスも止める気がなく、3人で城の1階軍議会議室へ向かうのだった。
部屋に着くと、そこには皇帝のカライアスがボードを使ってテーブルに着いた者達に何かの説明をしていた。
「会議中失礼! レジスタンスが動き出した! 父上、指示を!」
扉を開いて早々にラナが声を張り上げ、緊張感が会議室に伝わる。
皇帝もその言葉を聞き、ボードに差していた棒を置いた。
「ヘイラ、トメスタス」
「んあー?」
「む?」
会議の椅子に座る1人の男と、トメスタスが疑問符を返す。
皇帝はそれらを無視し、もう1人やの名前も呼んだ。
「そしてミズヤ。この3名は先に出ろ。ラナは城の警備に努めなさい。後ほど増援を寄越す。行け!」
『ハッ!』
「は〜いっ!」
「うーっす」
バスレノス姉弟はサッパリとした返事を、ミズヤとヘイラはだらしない返事を返すのだった。
単独行動を認められた――とはいえ、クオンが部屋に居る際に最低1人は扉の外で待機する事になっている。
ケイクは夜番があったためこれから眠り、ヘリリアも今夜の夜番である。
よって、ミズヤが部屋の前待機していた。
「いいですか〜サラ? これからはクオンやヘリリアさんとも一緒に行動するから、女性に嫌がったりしちゃダメですにゃ」
「にゃー……(わかったわよ……)」
部屋の前で胡座をかいて座り、足の上にサラを座らせて撫でていた。
この座り方はよくしているが、廊下でするのは初の事で、通る人がよくチラ見をする。
「ニャーッ」
「ん? どーしたのー、サラー?」
「……(なんでもないんだけど)」
「……ふにゃーっ」
ミズヤはだらしなく息を吐き、ぼんやりとしながら猫をスリスリと撫でる。
「……サラ〜っ。僕も側近になって、お友達増えたよ〜っ」
「……ニャ?(アレを友達っていうのかしら?)」
「この国では僕も犯罪者じゃないんだし、仕事もこなしてるしっ、良かったね〜っ」
「……ニャー(……まぁ、アンタがいいならいいわよ)」
サラの本当の言葉が伝わらなく、ミズヤにはニャーニャー言ってるようにしか聞こえない。
だからこそ本音で話す。
「こういう当たり前の事、ちょっと憧れてたんだ。贖罪でもあるけれど……クオンと、この生活を守らないとね――」
優しい口調で呟きながらサラの顎を撫でる。
少しは前向きになったミズヤに、サラはコクリと小さく頷くのだった。
◇
日が暮れると、散りばめられた星々の映える美しい夜空が空を満たしていた。
紫、赤、黄色、様々な光が月とともに空にある。
バスレノス城、塔の上にはトメスタスが仰向けに寝転がり、星々を眺めていた。
「こんな所にいていいのか?」
彼の背後に1人の女性が姿を見せる。
月夜に照らされる銀色のポニーテール、鋭い碧眼は煌めき、夜の光もまた彼女を映えさせる。
「姉上こそ、こんな所で油を売っていていいのか? 第一皇女であろう?」
「今日の用事は済んだ。不出来な弟の様子を見に来たら、やはり怠けている。貴様にも第一子の窮屈さを味合わせたいものだ」
「鍛錬もしているからそうなるのだ、っと」
トメスタスは上体を起こし、屋根の上に胡座をかいて座る。
ひゅうひゅうと吹く冷たい夜風は彼らの髪を揺らし、何事もないかのように過ぎていく。
「……なぁ、ラナ」
「なんだ?」
「あの小僧……ミズヤにつっかからなくていいのか? 奴は神楽器を持ってるんだろう? お前がずっと欲しがってた、な……」
「…………」
弟の言葉に、ラナは考えるように目を伏せて黙した。
10秒ほど経って、漸くラナは口を開く。
「何故いきなり、そんな事を問う?」
「……ハッ。俺だって気にしているのだぞ? 第一子のお前ではなく、俺が小太鼓を持っている事にな」
「貴様はあのマフラーがなければ飛べない。それだけだろう?」
「確かに。俺も【無色魔法】が使えれば、な……」
トメスタスは自分の右手を見つめ、強く握りしめる。
神楽器は、3点セットなのだ。
マフラー、刀、楽器、これらが揃っている事が通常である。
その内マフラーには【羽衣天韋】と言うと羽衣となり、空を自由に飛ぶ事が可能なのだ。
空を飛ぶには【無色魔法】がいる。
だがマフラーがあればそんなものは関係なかった。
皇族は4〜5色の魔法が使用でき、それだけであらゆる面において有利であり、神楽器の魔法、【羽衣天技】も多数使用できる。
しかし、ラナは知っていた。
(……それだけでは、ないのだがな)
トメスタスに神楽器を託された別の理由を。
飛べない、それも事実ではある。
だが根っからの理由は別なのだと。
「……ラナ?」
「いや、なんでもないさ」
ラナの顔つきから心配そうにするが、彼女はトメスタスにそう言って空を見上げる。
「話を戻すが、確かにミズヤから神楽器を託されれば、皇族2人が神楽器を使うと国の士気が高まるだろう。だが、ミズヤは“全色”の魔法が使える。そして何年も神楽器を持っていた。アイツに使わせてた方が、国のためになるのだ」
「……。そうか」
「あぁ、そうだ」
国のためになる、その言葉を聞いてトメスタスも納得する。
無言に帰ると、2人は空を見上げた。
こうして姉弟で星空を見ることは、そう少なくない。
何もない静かな夜。
空気が吹き抜け、城下町に映る光が街の賑わいを表していた。
その景色を見るのが、2人の昔からの楽しみでもあったのだ――。
ドォン――!!
「……!?」
「爆発かっ!?」
だが、その平穏も今は昔――
「ラナッ!!」
「あぁ!! 行くぞトメス!!!」
今日もまた、諍いが始まる――。
◇
「えーっ!? また僕も行くのぉぉお!!!?」
「いいから来い」
廊下に座っていた所をラナに襟首掴まれ、ミズヤはじたばたしながら無駄なあがきをするのだった。
「僕はクオンの側近なんだよーっ! トメスさんも助けてぇえーっ!」
「お前は強いだろう。いいから、まずは軍議会議室に行くぞ。今なら父上がいるはずだ」
トメスタスも止める気がなく、3人で城の1階軍議会議室へ向かうのだった。
部屋に着くと、そこには皇帝のカライアスがボードを使ってテーブルに着いた者達に何かの説明をしていた。
「会議中失礼! レジスタンスが動き出した! 父上、指示を!」
扉を開いて早々にラナが声を張り上げ、緊張感が会議室に伝わる。
皇帝もその言葉を聞き、ボードに差していた棒を置いた。
「ヘイラ、トメスタス」
「んあー?」
「む?」
会議の椅子に座る1人の男と、トメスタスが疑問符を返す。
皇帝はそれらを無視し、もう1人やの名前も呼んだ。
「そしてミズヤ。この3名は先に出ろ。ラナは城の警備に努めなさい。後ほど増援を寄越す。行け!」
『ハッ!』
「は〜いっ!」
「うーっす」
バスレノス姉弟はサッパリとした返事を、ミズヤとヘイラはだらしない返事を返すのだった。
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