二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?

ハタケシロ

第50話 ようた

俺に指を指しながら、転校生の金髪縦ロール、セラフィ・クリスティアーノは「ようた!」と高らかに叫んだ。

つか、ほんとに金髪で縦ロールなんているんだな。
金髪は桃で見慣れてるけど、縦ロールなんてそうそう居ねぇぞ?

この世には縦ロールなんて居たんだな。
ここはなんでもありの日本ですよ。
そうだったー。
と、一人芝居をし始めるレベルだぜこれは。

しかし、いきなりの登場で何をどうすればいいのかが分からない。

「「「…………」」」

「皆さんなぜ無反応ですの!?」

そりゃ、そうだろ。
この部室に「ようた」という名前の人間はいないわけだし。
反応するにもしようがない。

「特にあなたはなぜ無反応ですの!?このわたくしが名前を呼んで差し上げてますのよ!?」

やはり俺のことを指さしながら、金髪縦ロールは若干キレ気味で俺に言う。

「……俺?」

本当に俺なのか確認する。

「そうですわよ!瀬尾ようた!」

うーん。名前が違うんだよなー。
やっぱり俺じゃねぇーんじゃねーか?
苗字は合ってんだけどなー。

「もしかしてですけど、セラフィさん?」

「なんですの?って、あら?桃さん?」

「え?」

「お久しぶりですわ!桃さん!3年ぶりくらいかしら?」

「3年ぶり……」

金髪縦ロールが嬉しそうに桃に言い寄る。
が、桃はどこかというかピンと来てない感じだ。

俺はそんな桃にこっそりと耳打ちをする。

「知り合いだったのか?」

「いえ、知り合いではないとは……でも見覚えはあるような……ないような……」

「どっちなんだよ」

桃にしては珍しく歯切れの悪い回答だった。
知り合いではないとすれば、金髪縦ロールが勝手に桃のことを友達かなんかと勘違いしてるパターンなのかもしれない。
けど、桃さんって桃のことを呼んでるあたり知り合いではあるとは思うんだけどな。

「もしかして覚えてないですの?」

桃の反応の鈍さを不安に思ったのか、金髪縦ロールもまた、不安そうに聞く。

「……すみません」

桃は素直に謝った。

「そうですの」

桃に謝られた金髪縦ロールは、悲しげに肩を落とした。
俺も智和とかに10年後とかにたまたま会って、誰?とかって言われたらこうなるかもしれない。

「しょうがないですわね。約3年も月日が経ってますものね。あの時とは髪型も若干……そうですわ!」

いきなり、金髪縦ロールは大きな声を出した。
俺含め、霧咲、柏木もびっくりしたからそういうのはやめてくれ。

「桃さんこの写真覚えてますかしら?」

金髪縦ロールはポケットからスマホを取り出すと、桃に見えるように画面を見せる。
桃の近くにいた俺もまた、スマホの画面を覗くことが出来た。

「……!これは……!」

スマホのガ見た桃が、声を上げる。

スマホの画面に写っていたのは、一枚の写真だった。
写真には金髪の少女二人が写っており、ニコニコしながらピースをしている。
歳は……13といったところか……。


……中学生は最高だなっ!
それも金髪美少女のツーショット!

「覚えてます!覚えてますよこれ!」

そして、歓喜に満ち溢れた声で桃がはしゃぐ。

「たしか、パーティーで退屈していた時に、一緒にいた女の子と遊んだ時の写真ですよ!……ということは……もしかしてあの時の?」

「そうですわ!やっと思い出してくれたのですね!」

桃が思い出した事が嬉しいのか、金髪縦ロールもさっきとは違い元気を取り戻した。

「まさか、あの時の女の子がセラフィさんだったなんて!思い出せなくてすみませんでした」

「気にしないでいいですわ。あの時とは髪型も違いますし、名前も名乗っていなかったのですから」

「そう言えば、私しか名前を言ってなかったでしたね!」

二人で楽しく会話をしている。
髪型も違うって。あっ。ほんとだ。
このセミロングは桃だな。うん。キュートだ。ナイス中学生だ。
となると、こっちのツインテールの子が縦ロールなんだろう。
ツインテールも悪くない。

「あの……陽向さん」

桃と縦ロールが盛り上がっていると、霧咲が近くにやって来て、耳元で囁くように聞いてきた。

「やっぱり篠原さんってお嬢様なんですね。普段あんまりそういうのをださいので意識してなかったですけど」

「たしかにな。イベントごとがあるとお嬢様キャラの力を問答無用で使うけど、普段は使わねーからな。パーティーの話とかしてるとほんとにお嬢様なんだなーって再認識する」

「逆に縦ロールはお嬢様感が丸出しだな」

柏木もまた、近くにやって来た。

「だな。喋り口調といい、胸と言い、金髪といい、胸と言い、縦ロールといい、どこの代表候補生だよって感じだ」

「篠原さんに聞こえたら怒られちゃいますよ?」

「大丈夫だ。もうすでに背中で「ふ」の持ち主で悪かったですね!って語ってる」

「あはは」

まぁ、気にするな桃よ。
まだまだこれからだぞお前の戦いは。
打ち切りエンドにしか思えねー。

「で、セラフィさん」

「なんですの?」

「陽向くんについてなんですけど」

「ひなた?」

さっきの盛り上がっていた感じから、今は落ち着きのある会話を二人はしていた。そろそろ会話も終わるだろう。

「そ、そうだったのですの。だから、無反応でしたのね」

「ようたと読み間違えるのも分からなくはないですけど」

なんか、さっきから俺の事をチラチラと見てるな。
某中学校前をうろうろしてたらチラチラ見てくる警備員みたいだからやめてくれ。

「んん。そ、そのひなた?呼びずらいですわね」

悪かったな呼びずらい名前で。

「なんだ?入部希望なら用紙に書いて桃に出してくれ。うちはいつでも歓迎するから」

「結局私にいろいろさせるんですね」

しょうがねぇだろ?事務仕事ばっかり桃に任せてたら、事務処理関係てんで分かんなくなったんだから。
要はあれだ適材適所だな。

「入部希望?ということはここはあれですの?ここは部活動かなにかの集まりですの?」

「そうだけどって知らないできたのか?」

「ええ。まぁ」

「でもポスター見たって言ってましたよね?」

霧咲の疑問も分かる。
確かに金髪縦ロールがこの部屋に入る前にポスターを見たって言っていた。

「ええ。そうですわよ。担任の先生から渡されたポスターを頼りに、ひなた?やっぱり言いづらいですわね」

「じゃあようたでいいよ」

ひなたもようたもどっちもどっちって感じで言いづらくないと思うんだけとなー。

「いいですの?ではお言葉に甘えまして。ようたがこの部屋に居ると書いてありましたので、来たのですわ」

「その言い方だと瀬尾に用があって来たって感じだな」

「えぇまぁ。それにしてもなんですの?ここは」

「ここか?ここは友人部っていう名前で活動してる部活動だ。で、活動内容は趣味の合う友達を見つけること」

最近は趣味の合う友達を見つけるっていう活動を全然してないんだけどねっ!

「違いますわ。わたくしが言いたいのはこの部屋の男女比についてですわ」

「男女比?」

「おかしいとは思いませんの?男性1人に女性3人ですのよ?」

金髪縦ロールに言われたので、ざっとメンバーを確認する。

まずは俺、男性。

桃、3次元の女の子。

霧咲、3次元の女の子。

柏木、3次元の女の子。

たかが、ヤロー1人に3次元の女の子が3人いるだけじゃねーか。

「なんでそう不思議な顔ができますの?男性一人の場に3人もの女性がいるんですのよ!?」

おかしいとは思いませんの!?
と、金髪縦ロールは続けた。

俺がおかしいのかは分からないが、おかしいとは思わないんだよなー。これが。

だって、3次元の女の子が3人いるだけだぜ?

「無駄ですよセラフィさん。陽向くんにそんなことを言っても」

「そうですよセラフィさん。陽向さんはなんとも思わないですから」

「たかが、3次元の女の子が3人いるだけだぜ?って思ってるだけだからな」

桃たち三人が俺を擁護するかのように語る。
若干言葉にトゲがあるのえに思えたが気のせいだろう。

「3次元?」

キョトンと金髪縦ロールは首をかしげた。

「陽向くんについてはあとで話すとして、どうして今日はここに来たんですか?」

「そうですの。忘れるところでしたわこのようたという男に用がありましたの」

そう言うと、金髪縦ロールは俺の目の前までくると、

「どうしてわたくしに興味をしめさなかったのですの!?」

と、若干涙目になりながら言った。

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