二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?

ハタケシロ

第48話 新学期と転校生

「悪いな陽向。最近歳のせいか耳が遠くなってきてな。もう一度言ってくれるか?」

「何を言ってるんですか先生。全然先生は若いですって」

「おっ。嬉しいこと言ってくれるじゃないか。でだ、もう一度言ってくれるか?」

「えーと、なんの」

「もう一度言ってくれるか?」

先生の鋭い眼光が俺のチキンハートを貫く。
今の俺の状況は蛇に睨まれた蛙だ。

俺はバレないように深呼吸をした後、意をけして先生に言った。
夏休み明けの多くの同胞達が言うであろう言葉を。

「課題を忘れて来ました」

しかし待って欲しい。
俺は本当に課題を忘れただけだ。

「ほう。それも私の担当する現国の課題をな〜」

そう。なぜか、絶対に忘れちゃいけない先生の課題を。

いや、先生聞こえてたじゃないですかとは、口が裂けても言えない。
そんなことを言ってしまえば、絶対殺られる!

「他の課題はちゃんと出して私の出した現国の課題を忘れるとは、いい度胸してるな陽向〜」

「ちゃちゃちゃ、ちゃんとやったんすよ?でも家に忘れて」

「その目の下のクマはなんだ?あん?」

やばい。もはや先生が聖職者に見えない。
ただのヤンキーに見えるのは気のせいだろうか。

「えーと、これはその……徹夜でアニメを見ていたら」
「徹夜でアニメ?」

「すんまっせんしたー!!」

生徒指導室に俺の魂の篭った叫びが響く。
この際、うだうだ言い訳を言うより謝った方が早いからだ。
ちなみに、俺は昨日の夜、徹夜でアニメ観賞なんてしていない。
今日から始まる聖戦。みんな大好き一番くじを……

「陽向。そのポケットの膨らみはなんだ?ん?」

「な、ななな。なんのことですか?」

「今朝方、棒ふんふんマートで、うちの制服を着た見覚えのある男子生徒を見かけたんだが……身に覚えはないか?」

「……さぁ?」

「ほう。いい度胸だ。よし陽向」

「なんですか?」

「ジャンプしろ」

「は?」

「聞こえなかったか?ジャンプしろ」

「聞こえてますよ。俺が言いたいのはどうしてジャンプしなきゃいけないのかってことで」

こんなことを要求してくるのはカツアゲしてくるヤンキーと、先生くらいなもんだろう。

「やましいことがなければ、すぐにでも出来るはずだ。いいから飛べ。ほら」

「まぁ、分かりました」

べ、別にやましいことなんか全然ねぇし?
ジャンプなんて余裕だし?

「思いっきり飛べよ?手を抜いたら」

細くしなやかな先生の指から、女性の指から鳴ってはいけない、ボキボキという音が聞こえた。

「わ、分かってますよ。見てて下さいよ?……I あいきゃんふらい!」

ジャラジャラ

ジャラジャラジャラ

ジャラジャラジャラジャラ

ジャラジャラジャラジャラジャラジャラ……


これでもかと言うほど、ポケットから戦利品が落ちまくった。

「…………」

思わず、反射的に両手で顔をふさいでしまった。
別に先生の顔を見るのが怖いだからじゃないんだからねっ!

「これはなんだ?陽向」

ポケットから落ちた戦利品の1つ、F賞のハンカチを拾いあげながら聞いてくる先生。

「それは、ハンカチです」

未だふさいだ顔を開けれない俺が答える。

「このハンカチにプリントされているのはなんだ?」

「この世とは別の世界に住んでいる美少女です」

「おや?こっちのマグカップにも同じ異世界の美少女がプリントされているようだが……これはなにか共通点があるのか?」

「…………勘弁してください」

深く、深く、深く……。そして、深く。
俺は頭を下げ謝った。



「で、今日から始まる一番くじをやりたいがために、朝早く家を出たところ、ろくすっぽカバンの中を確認せずに来てしまったというわけか」

「その通りです」

「そして、私の出した現国の課題だけを忘れたと」

「その通りです」

「まったく何をやってるんだ」

先生の俺を見る目は、どこか呆れるを通り越して、慈愛すら感じるものだった。

「まぁいい。今回は許すとしよう」

「え?まじすか!?」

「一番くじなら仕方な……んん。人間誰でも失敗はあるしな」

一番くじなら仕方ないと言った気もしたが、気のせいか。
つか先生一番くじがどんな物なのか知ってるんですね。

「今朝も副校長はげに……いや、これは関係ないな」

先生、今朝副校長と何があったんですか?

「あ、そうだ陽向」

「なんすか?」

「あの時間から高校生が出歩いているのは関心できないぞ。欲しいものがあるとはいえ、深夜徘徊に間違われないように」

「すんません。でも先生もあの時間に俺を見たって言うなら、先生はなにやってたんですか?」

「あぁそれは、チョッ……と散歩をな」

「健康志向なんですね」

午前3時から散歩するなんて先生レベルともなるとやっぱり違うな。

「そうだ陽向に聞きたいことがあったんだ」

「なんすか?」

「篠原となにかあったのか?」

先生のこの言葉に一瞬ドキリとした。
思い出すのは、夏祭りに行った日に桃から告白されたこと。

「えと、まぁあったちゃありましたけど」

告白されたとはなぜだか言えなかった。
言ってしまってもいい気はしたが、心のどこかが引っかかり、濁す結果になった。

「そうか。だから篠原はあんなにもスッキリした顔をしていたんだな」

先生はそれだけ言うと、何も言わなくなった。

「理由は聞かないんですか?」

「ん?聞いて欲しいのか?」

「いえ、そう言う訳では」

「はは。私は生徒が言いたくないことは聞かないぞ?なんたって教師だからな」

教師ならヤンキーまがいのことはしないで下さいと言いたくなった。

コンコン

『先生少しよろしいですか?』

「あ、ハg…副校長」

先生、ハゲって言いかけましたよね?

「すまんな陽向。貴重な昼休みを使わせてしまって」

「悪いのは俺ですし」

「それが分かっているのならよろしい。戻っていいぞ。午後のテストも頑張れよ」

「はい」



「くーやっとテストも終わったな陽向!」

「だな」

智和が休み明けテストから開放された疲れからか、軽く伸びをしながら言う。

今回のテストを振り返ってみる。

まぁ、夏安明けのテストなんて成績に反映されないから大丈夫。……大丈夫のはずだ。
本番は中間だぞ。俺!

それにしても、テスト終わりに次頑張らねばと思ってしまうのは何故だろうか?不思議だ。
数学に英語をチョロッと取り入れてくるのも不思議だ。

「どうだ?この後夏休みの思い出報告会兼、テストの打上げでファミレスでも」

「あーわり、この後部活あるんだ」

祭りの日に桃に、参加する旨を言ってしまっているため、行かないわけにもいかない。
なんたって部長は俺なわけだし。

でも、イケテル男子高校生風に放課後友達と、友達と!ファミレスも行ってみたい。

「あー、あれなあのハーレム部活」

「どこがハーレムだよ」

たかが3次元の女の子が3人いるだけじゃねーか。

「お前もそろそろこっちの世界に帰還しろって。つか、羨ましいぜ!うちのクラスの篠原さんに他クラスで人気の霧咲さんに不良だけど、美少女の柏木ぱいせんだろ?羨ましすぎるぞこのやろう!」

柏木は同学年だけどな。
でもやっぱり俺と智和は気が合うな。
柏木はどう見ても不良だ。

「なら入らないか?」

こんだけ、羨ましがってるし、いっそのこと誘ってしまおうと思った俺は、智和を誘ってみた。

男が俺1っていうのも居心地かそこその悪い気もしたりしなかったりするから、智和が入ってくれれば俺は嬉しい。

「だから俺にはあの美少女3人と一緒の部活は緊張するって。辞めとくよ」

「そうか。残念だ」

智和と、この後もたわいもない会話をしていると、先生が教室に入ってきた。
なにやら、いつもと雰囲気が違う。
が、訓練された我がEクラスは雰囲気がいつもと違う先生が入って来ても、いつもやっているように席につき、背筋を伸ばし、先生の話を聞く態勢を作る。
なーに、先生のクラスで生きていたければこれくらいやらないとダメだからな。

「よし、席につけ。というかついてるな。突然だが、転校生を紹介する」

ほんとに突然だ。
先生の雰囲気がいつもと若干違ってたのは、転校生にいい顔をしたかったからか。納得だ。

「喜べ男子諸君。転校生は女だ」

先生のこの言葉をきっかけに、あちこちから「おぉ」だの「うぉおおお!!」だの「俺このクラスで良かったであります」だのと聞こえて来た。

つか、まだ転校生の姿を見てないのに、この反応って。

「やったな陽向!女の子だってよ!」

智和がこっそりと耳打ちしてくる。

「え?あぁそうだな」

「おい。そんな超興味無さそうな返答するなよ」

仕方ねーだろ?実際興味ないんだから。

「まったく、ブレねぇなぁ陽向も」

「男だったら良かったのにな」

「もしかしてお前、こっちの毛があるのか?」

「ちげーよ。男だったら俺と同じ趣味を持ってる確率が高いだろ?そしてもしかしたら友達になれるかもしれないだろ?」

「あぁそういうことか。残念だな」

まったくだ。超残念。
また3次元の女の子が増えるとかなんなの?
どうせ増えるなら二次元美少女をお願いしますよ先生。それは無理ですよって顔をするな桃。

興味を無くした俺は、横目で窓の外を見ながら今月発売されたラノベの新刊の内容を思い出していた。
あー今思い出しても、面白かったなー。
つか、あずさたん可愛いすぎるだっ!何あれ?!オレの嫁!?

なんてことを思っていると、教室の歓声が大きくなった。
どうやら、転校生が来たらしい。

「フランス人?ロシア人?いや、アメリカ人か?長い金髪に、縦ロールだと……!?おっぱいがめちゃくちゃでけぇ!見た目からして絶対にお嬢様だな…!そして、すげぇ美少女!」

隣から聞こえてくる智和の転校生解説実況が聞こえてくる。

智和の言葉だけ聞いてるとISのセ〇リアでも来たの?ってなる。

「よし、じゃあ自己紹介を」

「はい先生」

黒板にチョークを走らせている音が聞こえ、音がなくなったと思ったら転校生は口を開いたみたいだ。

「セラフィ・クリスティアーノと申しますわ。ロシア出身ですが、この通り日本語は喋れますので、皆さんお気軽にお話ください」

転校生の自己紹介が終わったのと同時くらいに、教室内は拍手に包まれた。
隣の智和なんか、興奮してる。

外国人と言う事で少しだけ興味の湧いた俺は、転校生をチラリと見た。








ただの金髪の3次元の女の子がいただけだった。


金髪は桃だけで十分だっての。
少しでも二次元美少女が来たんじゃね?と思った俺が馬鹿だった。

ここで俺は完全に転校生に興味を無くした。

「二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • ハタケシロ

    もちろん知ってますよ!

    0
  • XLA

    ISのセシリアを知っているとは

    1
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