二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?
第47話 夏の終わり
俺の答えを聞いた桃の顔は、笑顔と言えばいいのか、とにかく、穏やかな表情をしていた。
☆
「お前ってさ。ずるいよな」
「なんのことですか?」
花火大会終了後、来た道を戻る他の客に紛れながら、俺は桃を背負っていた。
他の客に紛れると言っても、花火大会が終わってからもずっとベンチに座っていた俺たちは、少なくなった人通りを歩く。
そのせいか、雑音が少なく、いつも以上に桃の透き通った声が聴こえる。
「鼻緒が切れたせいで、俺があの場から逃げることができなかったじゃねぇか。なにあれ?計算か?」
「計算じゃないですって。それに、鼻緒が切れていなくても陽向くんは逃げないですよね?」
桃の問に俺はすぐに答えることが出来なかった。
俺の読んでるラノベや見ているアニメでは、鈍感主人公やチキン主人公がはぐらかしたり、逃げだしたりしているのがある。
俺ははぐらかしはしなかったものの、もしも逃げ出せる状況だったらどうなのか分からない。
逃げ出す主人公はアホだなと思っていた俺だが、実際自分に同じような状況が訪れると、主人公の気持ちがわかる気がした。
だから、すぐに答えることが出来なかった。
「どうだろうな」
少しの間の後、俺はそう答えた。
「…………」
少しの間に、桃も思うところがあったのか、すぐには何も答えなかった。
「陽向くんは逃げ出さないと思います」
けれど、力強く桃はそう言った。
「私の願望かもしれませんけどね」
「……そうか」
ゆっくりと歩いているせいか、波の音がよく聞こえる。
ザザーザザーという音は人の心を落ち着かせる効果があるのかもしれない。
「陽向くん。お願いしてもいいですか?」
少し話して以来、静かだった桃が言う。
すごくか細い声だ。
「なんだ?」
「背中をお借りしてもいいですか?」
「背中?」
現在進行系で貸している気もするが、そういう事じゃないことくらい俺でも分かる。
なんとなく、貸してもらいたい理由も俺には分かった。
「いいぞ」
「ありがとうございます」
「ちなみになんだが、何に使う気だ?」
「言わせる気なんですか?」
「悪い」
会話はそれだけだった。
ちょっと経ち、再び波の音が聞こえるようになった頃、背中から桃の泣く声が聞こえてきた。
「普通告白した男の背中で泣くか?」
「しょうが…ない……じゃ……ないですかぁ……」
初めて、桃の泣き声を聞いた。
嗚咽を我慢し、なんとか泣くのを我慢しようとしても溢れ出る涙。
背中に冷たいものが広がる。
「我慢しようと……ぐずっ……したんですけど……やっぱり……我慢できなくて……」
「…………」
俺は告白したことは無い。
だから、どうして桃がこんなにも泣くのかが分らなかった。
なんで桃は俺なんかに告白して涙を流しているのだろう。
「どうして泣くんだ?」
「ふられたからに……決まってるじゃ…ないですか……!……大好きな人にふられたからに決まってるじゃないですか……!」
俺の背中に顔をうずめ、周囲に響かない声量で桃はそう言った。
そうだ。俺は3次元の女の子を、桃をふったんだ。
「陽向くん。参考までにふった理由を教えてもらってもいいですか?」
泣きやみ、息の整った桃が聞いてきた。
「それは……悪い」
ふった理由な確かにある。
けど、これを桃に言うのは。
「あの時のことと関係があるんですか?」
「……多少は」
あの時のこととはきっと、桃たちが俺の家に泊まりに来た時のことだろう。
つか、よく察せるもんだ。
「私が嫌いでふったわけではないんですよね?」
「それは……ない」
「今の間はなんですか!?」
「冗談」
「ふぅ。いつもの陽向くんですね」
「あぁ。いつもの俺だ」
告白という、目に見えない何かの一線を超えてしまったけど、案外普通に接することができるものなんだな。
俺だけがそう思ってるのかもしれないけど。
「悪い。桃をふったのは俺自身に問題があるからなんだ。だから、桃にふった理由を話すことはできない」
「なんで謝るんですか?別にふった理由を絶対聞きたいわけではないですよ。ただ」
「ただ?」
「私のことを嫌いじゃなくて良かったです!」
桃の声音から、桃の表情が今どんなものかがなんとなくわかった。
「あれなんですね!3次元だからっていう理由ではないんですね!強制調教のしがいがありましたよ!」
「強制調教ってなんだ!?すげー怖い単語がでたぞ!?それとな、桃が3次元である限り付き合うことはないから安心しろ」
「なにも安心できないんですけど……。ふふっ、これはまた調教……しつけないとだめですね! 」
「言い直せてないからなっ!?」
しつけってなんだ!?
俺はペットかなにかか!?
それは霧咲の役目だろ!
「まぁいい。俺はやっぱり二次元美少女と恋をしたい!」
「何を言ってるんですか?そんなことさせないですよ?」
霧咲さんや、柏木さんにもさらに協力してもらいましょうと言っているが、更にってなんだ?とくに霧咲の更にってなんだ!?
あれが更にどうなるって言うんだ!?
「陽向くん。いつか、いつかでいいので、ふった理由を教えてくださいね」
「おう。教えれれば。いつかな」
「はい……!」
「夏休み明けも部活あるので、ちゃんと来てくださいね?」
「分かってるよ」
一応言っておきますけどね?桃さん?
あの部作っの俺なんですよ。
☆
「お前ってさ。ずるいよな」
「なんのことですか?」
花火大会終了後、来た道を戻る他の客に紛れながら、俺は桃を背負っていた。
他の客に紛れると言っても、花火大会が終わってからもずっとベンチに座っていた俺たちは、少なくなった人通りを歩く。
そのせいか、雑音が少なく、いつも以上に桃の透き通った声が聴こえる。
「鼻緒が切れたせいで、俺があの場から逃げることができなかったじゃねぇか。なにあれ?計算か?」
「計算じゃないですって。それに、鼻緒が切れていなくても陽向くんは逃げないですよね?」
桃の問に俺はすぐに答えることが出来なかった。
俺の読んでるラノベや見ているアニメでは、鈍感主人公やチキン主人公がはぐらかしたり、逃げだしたりしているのがある。
俺ははぐらかしはしなかったものの、もしも逃げ出せる状況だったらどうなのか分からない。
逃げ出す主人公はアホだなと思っていた俺だが、実際自分に同じような状況が訪れると、主人公の気持ちがわかる気がした。
だから、すぐに答えることが出来なかった。
「どうだろうな」
少しの間の後、俺はそう答えた。
「…………」
少しの間に、桃も思うところがあったのか、すぐには何も答えなかった。
「陽向くんは逃げ出さないと思います」
けれど、力強く桃はそう言った。
「私の願望かもしれませんけどね」
「……そうか」
ゆっくりと歩いているせいか、波の音がよく聞こえる。
ザザーザザーという音は人の心を落ち着かせる効果があるのかもしれない。
「陽向くん。お願いしてもいいですか?」
少し話して以来、静かだった桃が言う。
すごくか細い声だ。
「なんだ?」
「背中をお借りしてもいいですか?」
「背中?」
現在進行系で貸している気もするが、そういう事じゃないことくらい俺でも分かる。
なんとなく、貸してもらいたい理由も俺には分かった。
「いいぞ」
「ありがとうございます」
「ちなみになんだが、何に使う気だ?」
「言わせる気なんですか?」
「悪い」
会話はそれだけだった。
ちょっと経ち、再び波の音が聞こえるようになった頃、背中から桃の泣く声が聞こえてきた。
「普通告白した男の背中で泣くか?」
「しょうが…ない……じゃ……ないですかぁ……」
初めて、桃の泣き声を聞いた。
嗚咽を我慢し、なんとか泣くのを我慢しようとしても溢れ出る涙。
背中に冷たいものが広がる。
「我慢しようと……ぐずっ……したんですけど……やっぱり……我慢できなくて……」
「…………」
俺は告白したことは無い。
だから、どうして桃がこんなにも泣くのかが分らなかった。
なんで桃は俺なんかに告白して涙を流しているのだろう。
「どうして泣くんだ?」
「ふられたからに……決まってるじゃ…ないですか……!……大好きな人にふられたからに決まってるじゃないですか……!」
俺の背中に顔をうずめ、周囲に響かない声量で桃はそう言った。
そうだ。俺は3次元の女の子を、桃をふったんだ。
「陽向くん。参考までにふった理由を教えてもらってもいいですか?」
泣きやみ、息の整った桃が聞いてきた。
「それは……悪い」
ふった理由な確かにある。
けど、これを桃に言うのは。
「あの時のことと関係があるんですか?」
「……多少は」
あの時のこととはきっと、桃たちが俺の家に泊まりに来た時のことだろう。
つか、よく察せるもんだ。
「私が嫌いでふったわけではないんですよね?」
「それは……ない」
「今の間はなんですか!?」
「冗談」
「ふぅ。いつもの陽向くんですね」
「あぁ。いつもの俺だ」
告白という、目に見えない何かの一線を超えてしまったけど、案外普通に接することができるものなんだな。
俺だけがそう思ってるのかもしれないけど。
「悪い。桃をふったのは俺自身に問題があるからなんだ。だから、桃にふった理由を話すことはできない」
「なんで謝るんですか?別にふった理由を絶対聞きたいわけではないですよ。ただ」
「ただ?」
「私のことを嫌いじゃなくて良かったです!」
桃の声音から、桃の表情が今どんなものかがなんとなくわかった。
「あれなんですね!3次元だからっていう理由ではないんですね!強制調教のしがいがありましたよ!」
「強制調教ってなんだ!?すげー怖い単語がでたぞ!?それとな、桃が3次元である限り付き合うことはないから安心しろ」
「なにも安心できないんですけど……。ふふっ、これはまた調教……しつけないとだめですね! 」
「言い直せてないからなっ!?」
しつけってなんだ!?
俺はペットかなにかか!?
それは霧咲の役目だろ!
「まぁいい。俺はやっぱり二次元美少女と恋をしたい!」
「何を言ってるんですか?そんなことさせないですよ?」
霧咲さんや、柏木さんにもさらに協力してもらいましょうと言っているが、更にってなんだ?とくに霧咲の更にってなんだ!?
あれが更にどうなるって言うんだ!?
「陽向くん。いつか、いつかでいいので、ふった理由を教えてくださいね」
「おう。教えれれば。いつかな」
「はい……!」
「夏休み明けも部活あるので、ちゃんと来てくださいね?」
「分かってるよ」
一応言っておきますけどね?桃さん?
あの部作っの俺なんですよ。
「二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?」を読んでいる人はこの作品も読んでいます
-
-
3万
-
4.9万
-
-
9,711
-
1.6万
-
-
1.2万
-
4.8万
-
-
5,217
-
2.6万
-
-
8,191
-
5.5万
-
-
9,448
-
2.4万
-
-
2.1万
-
7万
-
-
1,301
-
8,782
-
-
23
-
3
-
-
89
-
139
-
-
218
-
165
-
-
6,681
-
2.9万
-
-
62
-
89
-
-
1.3万
-
2.2万
-
-
614
-
1,144
-
-
450
-
727
-
-
614
-
221
-
-
2,534
-
6,825
-
-
1,000
-
1,512
-
-
62
-
89
-
-
3,548
-
5,228
-
-
33
-
48
-
-
6,237
-
3.1万
-
-
398
-
3,087
-
-
71
-
63
-
-
27
-
2
-
-
14
-
8
-
-
104
-
158
-
-
42
-
14
-
-
1,391
-
1,159
-
-
215
-
969
-
-
183
-
157
-
-
6,199
-
2.6万
コメント