3人の勇者と俺の物語
35章 戦いの前日
明日で交月の週は終わる。
ダンジョン解放後の入場は抽選になる。
当然ダンジョン切り替わり直後は大人気だ。
今日はその抽選の結果発表を見に来ている。
「まぁまぁですね。正午過ぎに入れますね」
カレンさん曰く、ここのような大型ダンジョンだと初日に入れれば御の字だそうだ。
僕たちにとっては初めてのダンジョン探索になる。
最初からガンガン攻めるのではなく、ある程度慎重に慣れていくので、
順位はそれほど気にしていない。
ただ最初はガンガン行く冒険者が多く、モンスターの沸きが安定しなくて思わぬモンスタ―溜りができることもあるそうで油断はできない。
冒険者ギルドから帰る途中に教会がある。
ヴェルダンディ様を信仰する女神教。この世界の最大宗教だ。
まぁ、女神の奇跡は時折起きるので、そりゃそうだよね。
僕は無宗教だけど、さすがに実際に神に会えば神様の否定はしないさ。
「あれ、何してるの?」
教会の前で神父とシスターと冒険者が円になっている。
神父が冒険者を指さして
「センディー」
すると指された冒険者が別の冒険者を指さし
「メティオン」
最後に指さされた冒険者の両脇の人が手を上に翳し
「ネハネハ!」
その後その人がセンディーと指さす。これをしばらく続けていた。
「あれはダンジョンに潜る冒険者に神のご加護がありますようにと祈る儀式です。
ワタル様もおやりになりますか? 寄付をすればやっていただけますよ」
うーん、どう考えても日本で遊びでやる、アレに見えるんだよなぁ……
「センディとかなんとかって何なの?」
「センディは女神教の言葉で『神のご加護が彼の者にあらんことを』メティオンが『この加護が皆を優しく包み込むように』ネハネハは『皆の幸福をここに祈り奉る』という意味になります。
それを皆で繰り返すことで加護を重ねていく。
それがセンディメティオンガイムと言われる祈りの儀式です」
「せん○みつ○ゲームじゃねーか!」
  「早く長く続けるほどに加護を得られるのですよ」
  「ゾーンと言われる域に達するとアイテムドロップがよくなったり罠にかからなくなったりするので、不運持ちの私には高難易度ダンジョン攻略に必須でした。ですので、なかなかの腕前なのですよ」
  「ほほう」
  それを僕にいっちゃいますか、友人の間でせ◯だ◯つおの神とまで言われる僕に。
  「オーケー、やろうか」
  「ボクもやるー、カイもクウもやろー!」
教会で受付をする、受付をしているシスターの格好はしているものの、
眼帯に傷だらけの肌、とても堅気とは思えない初老の女性がじろりと一同を見回す。
「ほう、噂の神弓のカレンのパーティかい。こりゃシスターじゃぁ荷が重いね」
そういうとニヤリと顔をゆがませた。
「アイナ、大司教を呼んできな。面白いもん見せてやるよ」
しばらくすると教会の中から優しそうな白髪のおじいさんが出てくる、
上等なつくりの聖服を着ているので、さっき言っていた大司教なんだろう。
「ほぅ、カタリナが呼ぶから何かと思ったら。S級冒険者カレン氏がおるとは
初めましてになるかのう、わしが大司教のアインだ」
「セ(ンディ)メ(ティオン)ガ(イム)をご所望だよあんた。久々腕が鳴るねぇ」
「まさか!? 千手のアインと超越のカタリナ!? 冒険者を引退したとは聞いたが、
そうですか、教会でセメガを施していたのですね」
「ほほう、我らを知っていてくださるとは光栄じゃの」
「セメガをすれば右に出るものはいないと言われる伝説の冒険者。
冒険者をしていればその伝説の数々は嫌でも耳に入ります」
セメガってなんだよ、って突っ込んだら負けな気がする。
「さて、そしたら嬢ちゃん4人に坊ちゃん1人、かるーく相手してやるかのぉ……」
ほぉ、今の発言はちょっとカチンと来ちゃったよボク
「くっくっく、新しい時代の波を感じていただければ幸いです」
「いつまでその大言続けられるかのぉ~」
オイ、伝説の二人がセメガをやるらしいぞ!!
相手はあのカレンだっていうじゃないか!?
こりゃ、すげーもんが見れるぞ! おい、人集めてこい!
席順はアインさんから時計回りにリク、カイ、クウ、カタリナさん、僕、カレンさんだ。
「それじゃ、皆の旅路に女神の加護が在らん事を、センディ」
序盤の立ち上がりはごく自然にまるで呼吸がするように始まった。
アインからカレンへ流れるように指名がいく、この動き。かなり出来る。
「メティオン」
カレンも流石だ指名されてから次への指名が淀みない。S級冒険者の名は伊達じゃない。
カレンが指名したのはカイ、いきなりの指名に動揺もすることなくカイは不動。
リクとクウが天に手を伸ばし
「「ネハネハ」」
よどみのない動き、3人娘も死線を潜り抜けてきた歴戦の冒険者だ。
アインもカタリナもその動きにただものではない雰囲気を察したのか、
緩んでいた雰囲気が締まっていくような感覚を覚える。
すごいな、皆一流のセメガーだな。
おい、今のやり取りでわかるのか?
ああ、一流の動きってのはすぐにわかっちまう、あの嬢ちゃんたちも、やるぜ。
周囲も僕たちの実力にざわめきだした。
しかし、カイは周囲の雑踏になど揺らされない
「センディ」指名は僕。「メティオン」ここで少しつっかけてみる。カタリナさんを指す。そのまま「「ネハネハ」」しかし、カタリナさんは不動。ニヤリとはしたものの不動。クウにも動揺はない。
おい、あの坊主いきなり隣人の幸福を使ってきやがったぜ!
ああ、序盤から一気に場を温めてきやがった。
しかもメティオンからネハネハの動きに一瞬の淀みもない、あいつも、やるぜ。
「センディ」少しスピードが上がった、指名はリク、「メティオン」「「ネハネハ」」指名してきたカタリナへ指名のお返し。僕もクウも戸惑うことはない。カタリナさんも余裕だ。
おお、今度は幸運のお裾分けか、すげぇ攻防だ。
ああ、こんな序盤からこれだけの技の応酬、こりゃ早い段階での加護が見られそうだ。
「センディ」指名はアイン、「メティオン」指名はカタリナ、「「ネハネハ」」、「センディ」アインへ「メティオン」カタリナへ「「ネハネハ」」「センディ」アインへ「メティオン」カタリナへ「「ネハネハ」」「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」ドンドンスピードを上げながらアインとカタリナの間を加護のキャッチボールが進む。
こ、これは伝説の!?
そうだ、これが伝説の 加護を分かつ者!!
二人の間で増大し加速する加護、いつ何時その加護が渡されるか、ほかの参加者は生きた心地がしないだろう!
何度目だろう、今では高速に加護が移動している。その時だった。異変が起きたのは、
「センディ」アインへここまではいつも通りだった。しかし次の瞬間「メティオン」カタリナへ向かうはずの腕はまっすぐと、まるでもともと置いてあったかのように僕へ向いている「「ネハネハ」」カレンとカタリナは乱されることなく動く。僕は……不動。この程度の揺さぶりで動くようなら神などと呼ばれていない。
おおおおおおおおお!!! 神々の気まぐれを見事にさばいた!!
あの坊主ただものじゃねぇ、眉一つ動かしてねぇ。
「センディ」リクへ「メティオン」カレンへ「「ネハネハ」」だいぶ速度が上がっている。
心なしか僕らの座っている周囲には円形に風が舞い始めた。
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」……
気の性じゃない、風がドンドン強くなる。
こ、この短時間ですでに最初の祝福ありえねぇ、どれだけの加護が渦巻いているんだ!?
あれだけハイレベルな応酬だ顕現してもおかしくねぇぜ!!
これは、伝説になるぞ!
いつの間にか周囲には人だかりができている、
エールはいかがっすかぁ!
焼きたてのオーク串はいかがっすかぁ!
さぁ、はったはった!! 今のとこはカレンが大穴、カタリナ、アインも熱いぜー!!
超大穴は前人未到の全ての人に愛と祝福を だ!!
お祭り騒ぎだ。
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」「センディ」クウから僕への指名。ここで仕掛ける!
「メティオン」
あれはーーーー!!!???
今まで右手で指名していた腕を伸ばすも手は握りしめたまま、右手の動きに周囲の視線を向けさせて左手でリクを指名した―――!!
なんてこった!?あの坊主、妖精の悪戯の使い手か!?
「「ネハネハ」」
馬鹿な!? 誰一人動揺しないだと!!??
くっ、僕は少し舐めていた。こいつら、やる。
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」
すげぇ、もう目で追いきれねぇ!
おい、来るぞ祝福の増幅だ!!
僕たちの周りを巡る風はさらに強くなり、僕たちの座る椅子が浮きはじめ回転を始める。
すげぇ、あの速度であの高さ! ここまでの祝福は見たことがねぇ!!
しかし7人に動揺は皆無。動揺をしているひまなどない!
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」「センディ」カタリナが指名される「メティオン」
その瞬間ぞくりと背筋を嫌な雰囲気が走る。おかしい、何かがおかしい、
しかし、僕の体は歴戦の経験から動いている「「ネハネハ」」手を挙げたのは僕とクウ。
そうだ、今までひっそりと動くことのなかったカタリナが【メティオンで自分自身を指名したのだ】
うおおおお!! カタリナの必殺技、自らを抱く腕を破った!!!
すげぇすげぇよ!!
坊主も嬢ちゃんもあれに反応するだと!?
今のは少し危なかったぜ、しかし、そういう奇策は一度で決めないといけない。二度目はない。
「センディ」少しの動揺もなくアインを指名するカタリナ。流石だ。
「メティオン」指名はアイン!! この一番ありえないタイミングで虚を突きに来た!!
逆に無いタイミングであえて使う!! アイン、この男も間違いなく超一流のセメガーだ!!
「「ネハネハ」」しかし、カレンとリクには通用しない。ここにいる人間は選ばれし人間なんだ!
すげぇ、すげぇよ!! 俺涙が出てきた!!
見ろ!! 空をハトが舞っている!! 満たされし祝福 だ!
ま、まさか、いっちまうのか!? 全ての人に愛と祝福を まで……!!
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」早い! すでに策を弄すると逆に策に溺れる速さだ!
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」一瞬のスキをついて皆の顔を見渡す、
全員余裕はない、カレン、アイン、カタリナ、リク、カイ、クウ、僕。
全員が周りの人間の動きを全力で探っている。集中している。
そう、集中している。いや、集中しすぎている。
こういう時に単純な手を使うと……
「センディ」僕が指名される。条件は整った。ここだ、ここしかない。
センの時点で腕は置いてある。
まっすぐとクウへ、しかし指先は違う。
そう違うのだ90度曲げた指が指すのはカタリナ、これだけじゃない、さらに左手をほんの少しわかりやすくカレンに向けるそぶりだけする。
完璧なタイミングでの完璧な陽動。勝利を確信し、両手を天に突きだす!!
「「ネハネハ」」
動いているのは、僕と……
クウ!!!
カタリナ動かず!! クウ惑わされず!!
ニヤリ、カタリナの口が確かにゆがんだ。額から汗も流れる。ギリギリだったのだ!
今の一瞬に最高のやり取りを行ったのだ!
その時、僕とクウの手にハトがとまる。それと同時に光の柱が僕ら7人を包み込んだ。
一切の音が、消えた。
今までの喧騒が嘘のように静まり返る。
それは感情の引き波、これから訪れる感動の大波の準備だった。
うううううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
熱波のような歓声が周囲から上がる。
それと同時に僕たち7人は地面にいた。
まるで今までの祝福が夢かのように最初と同じように。
ついに成ったぞ!! すべての人に愛と祝福を だ!!!
うおおお! 俺は伝説をこの目で見たぞ!!
信じらんねぇ!! 信じらんねぇ!!!
各人己の持つ最大級の賛辞を7人に贈っていた。
「すごい世界を見させてもらった。礼を言う」
アインさんが手を差し伸べる。僕はぐっとその手を握る。
「やるじゃないか、あたしがもうちょっと若ければ惚れてたよ」
「今のカタリナさんも魅力的ですよ」
熱い握手を交わす。
その後七人はそれぞれ熱い握手を交わした。
のちの世まで語り継がれる、伝説の祝福と7人の聖人の誕生であった。
しばらく歩いてるとなんで僕あんなことで熱くなったんだ。
せんだみつおゲームじゃんって冷静になった。
とりあえずおなかすいたからみんなで飯食って帰った。
さーて、明日からがんばろっと!
ダンジョン解放後の入場は抽選になる。
当然ダンジョン切り替わり直後は大人気だ。
今日はその抽選の結果発表を見に来ている。
「まぁまぁですね。正午過ぎに入れますね」
カレンさん曰く、ここのような大型ダンジョンだと初日に入れれば御の字だそうだ。
僕たちにとっては初めてのダンジョン探索になる。
最初からガンガン攻めるのではなく、ある程度慎重に慣れていくので、
順位はそれほど気にしていない。
ただ最初はガンガン行く冒険者が多く、モンスターの沸きが安定しなくて思わぬモンスタ―溜りができることもあるそうで油断はできない。
冒険者ギルドから帰る途中に教会がある。
ヴェルダンディ様を信仰する女神教。この世界の最大宗教だ。
まぁ、女神の奇跡は時折起きるので、そりゃそうだよね。
僕は無宗教だけど、さすがに実際に神に会えば神様の否定はしないさ。
「あれ、何してるの?」
教会の前で神父とシスターと冒険者が円になっている。
神父が冒険者を指さして
「センディー」
すると指された冒険者が別の冒険者を指さし
「メティオン」
最後に指さされた冒険者の両脇の人が手を上に翳し
「ネハネハ!」
その後その人がセンディーと指さす。これをしばらく続けていた。
「あれはダンジョンに潜る冒険者に神のご加護がありますようにと祈る儀式です。
ワタル様もおやりになりますか? 寄付をすればやっていただけますよ」
うーん、どう考えても日本で遊びでやる、アレに見えるんだよなぁ……
「センディとかなんとかって何なの?」
「センディは女神教の言葉で『神のご加護が彼の者にあらんことを』メティオンが『この加護が皆を優しく包み込むように』ネハネハは『皆の幸福をここに祈り奉る』という意味になります。
それを皆で繰り返すことで加護を重ねていく。
それがセンディメティオンガイムと言われる祈りの儀式です」
「せん○みつ○ゲームじゃねーか!」
  「早く長く続けるほどに加護を得られるのですよ」
  「ゾーンと言われる域に達するとアイテムドロップがよくなったり罠にかからなくなったりするので、不運持ちの私には高難易度ダンジョン攻略に必須でした。ですので、なかなかの腕前なのですよ」
  「ほほう」
  それを僕にいっちゃいますか、友人の間でせ◯だ◯つおの神とまで言われる僕に。
  「オーケー、やろうか」
  「ボクもやるー、カイもクウもやろー!」
教会で受付をする、受付をしているシスターの格好はしているものの、
眼帯に傷だらけの肌、とても堅気とは思えない初老の女性がじろりと一同を見回す。
「ほう、噂の神弓のカレンのパーティかい。こりゃシスターじゃぁ荷が重いね」
そういうとニヤリと顔をゆがませた。
「アイナ、大司教を呼んできな。面白いもん見せてやるよ」
しばらくすると教会の中から優しそうな白髪のおじいさんが出てくる、
上等なつくりの聖服を着ているので、さっき言っていた大司教なんだろう。
「ほぅ、カタリナが呼ぶから何かと思ったら。S級冒険者カレン氏がおるとは
初めましてになるかのう、わしが大司教のアインだ」
「セ(ンディ)メ(ティオン)ガ(イム)をご所望だよあんた。久々腕が鳴るねぇ」
「まさか!? 千手のアインと超越のカタリナ!? 冒険者を引退したとは聞いたが、
そうですか、教会でセメガを施していたのですね」
「ほほう、我らを知っていてくださるとは光栄じゃの」
「セメガをすれば右に出るものはいないと言われる伝説の冒険者。
冒険者をしていればその伝説の数々は嫌でも耳に入ります」
セメガってなんだよ、って突っ込んだら負けな気がする。
「さて、そしたら嬢ちゃん4人に坊ちゃん1人、かるーく相手してやるかのぉ……」
ほぉ、今の発言はちょっとカチンと来ちゃったよボク
「くっくっく、新しい時代の波を感じていただければ幸いです」
「いつまでその大言続けられるかのぉ~」
オイ、伝説の二人がセメガをやるらしいぞ!!
相手はあのカレンだっていうじゃないか!?
こりゃ、すげーもんが見れるぞ! おい、人集めてこい!
席順はアインさんから時計回りにリク、カイ、クウ、カタリナさん、僕、カレンさんだ。
「それじゃ、皆の旅路に女神の加護が在らん事を、センディ」
序盤の立ち上がりはごく自然にまるで呼吸がするように始まった。
アインからカレンへ流れるように指名がいく、この動き。かなり出来る。
「メティオン」
カレンも流石だ指名されてから次への指名が淀みない。S級冒険者の名は伊達じゃない。
カレンが指名したのはカイ、いきなりの指名に動揺もすることなくカイは不動。
リクとクウが天に手を伸ばし
「「ネハネハ」」
よどみのない動き、3人娘も死線を潜り抜けてきた歴戦の冒険者だ。
アインもカタリナもその動きにただものではない雰囲気を察したのか、
緩んでいた雰囲気が締まっていくような感覚を覚える。
すごいな、皆一流のセメガーだな。
おい、今のやり取りでわかるのか?
ああ、一流の動きってのはすぐにわかっちまう、あの嬢ちゃんたちも、やるぜ。
周囲も僕たちの実力にざわめきだした。
しかし、カイは周囲の雑踏になど揺らされない
「センディ」指名は僕。「メティオン」ここで少しつっかけてみる。カタリナさんを指す。そのまま「「ネハネハ」」しかし、カタリナさんは不動。ニヤリとはしたものの不動。クウにも動揺はない。
おい、あの坊主いきなり隣人の幸福を使ってきやがったぜ!
ああ、序盤から一気に場を温めてきやがった。
しかもメティオンからネハネハの動きに一瞬の淀みもない、あいつも、やるぜ。
「センディ」少しスピードが上がった、指名はリク、「メティオン」「「ネハネハ」」指名してきたカタリナへ指名のお返し。僕もクウも戸惑うことはない。カタリナさんも余裕だ。
おお、今度は幸運のお裾分けか、すげぇ攻防だ。
ああ、こんな序盤からこれだけの技の応酬、こりゃ早い段階での加護が見られそうだ。
「センディ」指名はアイン、「メティオン」指名はカタリナ、「「ネハネハ」」、「センディ」アインへ「メティオン」カタリナへ「「ネハネハ」」「センディ」アインへ「メティオン」カタリナへ「「ネハネハ」」「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」ドンドンスピードを上げながらアインとカタリナの間を加護のキャッチボールが進む。
こ、これは伝説の!?
そうだ、これが伝説の 加護を分かつ者!!
二人の間で増大し加速する加護、いつ何時その加護が渡されるか、ほかの参加者は生きた心地がしないだろう!
何度目だろう、今では高速に加護が移動している。その時だった。異変が起きたのは、
「センディ」アインへここまではいつも通りだった。しかし次の瞬間「メティオン」カタリナへ向かうはずの腕はまっすぐと、まるでもともと置いてあったかのように僕へ向いている「「ネハネハ」」カレンとカタリナは乱されることなく動く。僕は……不動。この程度の揺さぶりで動くようなら神などと呼ばれていない。
おおおおおおおおお!!! 神々の気まぐれを見事にさばいた!!
あの坊主ただものじゃねぇ、眉一つ動かしてねぇ。
「センディ」リクへ「メティオン」カレンへ「「ネハネハ」」だいぶ速度が上がっている。
心なしか僕らの座っている周囲には円形に風が舞い始めた。
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」……
気の性じゃない、風がドンドン強くなる。
こ、この短時間ですでに最初の祝福ありえねぇ、どれだけの加護が渦巻いているんだ!?
あれだけハイレベルな応酬だ顕現してもおかしくねぇぜ!!
これは、伝説になるぞ!
いつの間にか周囲には人だかりができている、
エールはいかがっすかぁ!
焼きたてのオーク串はいかがっすかぁ!
さぁ、はったはった!! 今のとこはカレンが大穴、カタリナ、アインも熱いぜー!!
超大穴は前人未到の全ての人に愛と祝福を だ!!
お祭り騒ぎだ。
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」「センディ」クウから僕への指名。ここで仕掛ける!
「メティオン」
あれはーーーー!!!???
今まで右手で指名していた腕を伸ばすも手は握りしめたまま、右手の動きに周囲の視線を向けさせて左手でリクを指名した―――!!
なんてこった!?あの坊主、妖精の悪戯の使い手か!?
「「ネハネハ」」
馬鹿な!? 誰一人動揺しないだと!!??
くっ、僕は少し舐めていた。こいつら、やる。
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」
すげぇ、もう目で追いきれねぇ!
おい、来るぞ祝福の増幅だ!!
僕たちの周りを巡る風はさらに強くなり、僕たちの座る椅子が浮きはじめ回転を始める。
すげぇ、あの速度であの高さ! ここまでの祝福は見たことがねぇ!!
しかし7人に動揺は皆無。動揺をしているひまなどない!
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」「センディ」カタリナが指名される「メティオン」
その瞬間ぞくりと背筋を嫌な雰囲気が走る。おかしい、何かがおかしい、
しかし、僕の体は歴戦の経験から動いている「「ネハネハ」」手を挙げたのは僕とクウ。
そうだ、今までひっそりと動くことのなかったカタリナが【メティオンで自分自身を指名したのだ】
うおおおお!! カタリナの必殺技、自らを抱く腕を破った!!!
すげぇすげぇよ!!
坊主も嬢ちゃんもあれに反応するだと!?
今のは少し危なかったぜ、しかし、そういう奇策は一度で決めないといけない。二度目はない。
「センディ」少しの動揺もなくアインを指名するカタリナ。流石だ。
「メティオン」指名はアイン!! この一番ありえないタイミングで虚を突きに来た!!
逆に無いタイミングであえて使う!! アイン、この男も間違いなく超一流のセメガーだ!!
「「ネハネハ」」しかし、カレンとリクには通用しない。ここにいる人間は選ばれし人間なんだ!
すげぇ、すげぇよ!! 俺涙が出てきた!!
見ろ!! 空をハトが舞っている!! 満たされし祝福 だ!
ま、まさか、いっちまうのか!? 全ての人に愛と祝福を まで……!!
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」早い! すでに策を弄すると逆に策に溺れる速さだ!
「センディ」「メティオン」「「ネハネハ」」一瞬のスキをついて皆の顔を見渡す、
全員余裕はない、カレン、アイン、カタリナ、リク、カイ、クウ、僕。
全員が周りの人間の動きを全力で探っている。集中している。
そう、集中している。いや、集中しすぎている。
こういう時に単純な手を使うと……
「センディ」僕が指名される。条件は整った。ここだ、ここしかない。
センの時点で腕は置いてある。
まっすぐとクウへ、しかし指先は違う。
そう違うのだ90度曲げた指が指すのはカタリナ、これだけじゃない、さらに左手をほんの少しわかりやすくカレンに向けるそぶりだけする。
完璧なタイミングでの完璧な陽動。勝利を確信し、両手を天に突きだす!!
「「ネハネハ」」
動いているのは、僕と……
クウ!!!
カタリナ動かず!! クウ惑わされず!!
ニヤリ、カタリナの口が確かにゆがんだ。額から汗も流れる。ギリギリだったのだ!
今の一瞬に最高のやり取りを行ったのだ!
その時、僕とクウの手にハトがとまる。それと同時に光の柱が僕ら7人を包み込んだ。
一切の音が、消えた。
今までの喧騒が嘘のように静まり返る。
それは感情の引き波、これから訪れる感動の大波の準備だった。
うううううううううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
熱波のような歓声が周囲から上がる。
それと同時に僕たち7人は地面にいた。
まるで今までの祝福が夢かのように最初と同じように。
ついに成ったぞ!! すべての人に愛と祝福を だ!!!
うおおお! 俺は伝説をこの目で見たぞ!!
信じらんねぇ!! 信じらんねぇ!!!
各人己の持つ最大級の賛辞を7人に贈っていた。
「すごい世界を見させてもらった。礼を言う」
アインさんが手を差し伸べる。僕はぐっとその手を握る。
「やるじゃないか、あたしがもうちょっと若ければ惚れてたよ」
「今のカタリナさんも魅力的ですよ」
熱い握手を交わす。
その後七人はそれぞれ熱い握手を交わした。
のちの世まで語り継がれる、伝説の祝福と7人の聖人の誕生であった。
しばらく歩いてるとなんで僕あんなことで熱くなったんだ。
せんだみつおゲームじゃんって冷静になった。
とりあえずおなかすいたからみんなで飯食って帰った。
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