3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

40章 さらば! 魔法食いのバッツ(●´ω`●)

 「ウフフフフフフフフフフ(*´艸`*)」

 すっごい視線を感じる。

 「いいわぁ、引き締まってるわぁ。
 結構鍛えているわねぇ、うふふ美味しそうლ(´ڡ`ლ)」

 ぞわぞわぞわ~と寒気が走る。

 「ちょ、ちょっとバッツさん前衛なんだから一番前歩きましょうよ!」

 「いや~ん(>ω<) バッティ怖い~! 
 ワタルきゅんの盾でまもってほ・し・い・な(´ε` )」

 さっきからこんな感じでダンジョンを進んでいる。
 背後からの強力なプレッシャーは僕を消耗させている。

 「バッツ、ワタル様が困っているから止めなさい」

 「キャー、カレンちゃんが妬いてる(*´艸`*) ワタルきゅんバッティこわーい(TOT)」

 僕は貴方のほうが怖いです。

 「ははは、バッティ面白いねワタル!」

 「可愛らしい人ですね」

 「でも、隙がない流石」

 変なとこに感心しないでよ、あなた達の未来の旦那さんの貞操の危機なんだよ?
 たまに「あら~こんなトコに む・し・が」とかいいながら身体触ってきてるんだよぉ~!

 「敵が来ます」カレンさんが警告を発する。

 「あん!? 邪魔すんじゃねーぞゴラァ!!!」
 敵が現れるか現れないか、その一瞬ですでにバッツさんは魔剣を振り下ろしていた。

 「いつのまに……」

 「見えなかった」

 「すごーいバッティ、抜剣で上空のコウモリを真っ二つ、振り下ろしで蟻が真っ二つ」

 「あらー! クウちゃん見えたの!? すっごーい(>ω<)
 バッティの剣筋見える人は世界でも指折りしか居ないのよぉ∠(`・ω・´)」

 振り下ろしたことしか見えなかった。
 この人もとんでもない実力者だ……

 「やっだぁ(*´艸`*) そんなにおねーさん見つめちゃだ・め・よ(●´ω`●)」

 殴りたい。

 今は中層への道に向って歩いている。
 善は急げということで、黒衣の死神を捉えるために、
 バッツさんをメンバーとしてダンジョンへ侵入した。
 今回はアレス神からの御達しで師匠sが一緒に来ている。
 安全のために空間魔法で隔離空間でのんびりしてもらっている。
 その後もバッツさんは軽口を叩きながらも戦闘をほぼ一人で敵を一刀両断で倒していく。
 なんなんだこの最強残念おっさんは……

 「あの性格と魔剣の呪いさえなければほんとに世界屈指の冒険者なんですよ……」

 カレンがため息混じりにそう教えてくれる。

 「あらー魔剣の呪いは厄介だけど魔法を気にしなければ楽なのよ~、
 それに私の性格は個性よこ・せ・い(ΦωΦ)」

 なんにせよ、バッツさんは滅茶苦茶つよい、
 全く苦労もせずに(気苦労は凄いけど)下層入り口、紅き雷を助けた場所まで到達した。

 「バッティちょっとお腹減っちゃったなー(>ω<)」

 「そういえばいい時間ですね。少し休憩しましょう」

 アイテムからテーブルと椅子、食事などを出す。

 「まぁ、こんなところでこんな立派な食事に出会えるなんて(*^^*)
 ワタルきゅんに感謝しないとね(^_-)-☆」

 ゾワッっとした。

 「いっただきま~す。あ~ん、ん? んんんん?? な、なにこれ!?」

 しまった!! 気持ち悪くて普通の人用の食事と僕が作った物を間違えて出してっしまった!

 「うおおおおお!!! な、なんじゃこりゃぁ!! うめぇ!! 超うめぇ!
 おい! ワタルなんだこれ!? どうなってんだこの旨さ!!」

 「これワタルが作ったんだよ」

 「ええ、ワタルさんは天才ですから」

 「ワタ兄の料理に私達は虜」

 「すっげぇ! ワタルがこれ作ったのか!? おめーすげーな!! ますます気に入った!!」

 ガクガクと肩を揺らさられ、力が強いから体全身がグワングワン振られる、きぼちわるい……

 「バッツ、それくらいにしないとワタル様の脳みそが壊れちゃいますよ」

 「キャッ(>ω<) ごめんねワタルきゅん、あんまりに美味しいからバッティ興奮しちゃった(^_-)」

 そのあと5回のおかわりを求められてやっと満足してもらえた。

 「はぁぁぁぁぁぁぁ( ´Д`)=3 こんなにおいしい食事は初めて(*´ェ`*)
 ダンジョンに入ること忘れちゃった(*ノω・*)」

 「バッツこのことは内密にして欲しい。ワタル様の御身に危険が迫る」

 「ええ、わかってるわよ、でも、たまにごちそうしてね(^_-)-☆」

 「ええ、たまーーーーーーーーーに遊びに来てください^^」

 「ちょ、ひどーい(´;ω;`)」

 場はすっかりと和んだ。

 「さって、こっからか」

 バッツさんの真面目な一言で場の空気が一気に締まる。一流の冒険者はこういうものなんだな。

 「こっから先はマジになる。俺が先行する。一瞬の油断が死につながる。
 俺とカレンの指示に従え」

 ごくり、思わず生唾を飲み込む。これが本当のバッツさんなんだ。


 下層へ降りる。
 今までが洞窟だとするとここからは遺跡のようだ、
 石のような壁に所々に光るクリスタルのような物が生えている。
 それが照明代わりになっており、上中層よりも明るい。

 「俺とカレンの間からでるな、物も触るな、わかったな、守らなければ。死ぬぞ」

 みんな真剣にその言葉に頷く。
 バッツさんはすでに抜剣している。
 周囲のあらゆる気配に集中している。

 「あっちがおかしいな、慎重に行くぞ。魔法が使えないこともう一度胸に刻んどけ」

 僕には何もわからないがバッツさんは迷わずに異変を読み取って進んでいく。
 何体か下層のモンスターとの先頭になる、武装したトカゲ、リザードマン。
 ホブゴブリン、ハイコボルト、出来る限り速攻で戦闘を終わらせる、
 運が悪いとドラゴンとかにも鉢合わすらしいけど運が良かった。
 3人娘も派手な攻撃をせずともしっかりとやるべき仕事をこなしていく。

 そして、道の途中で右手を斜め下に降ろす。
 これは事前に教わった手信号のひとつ、【止まれ。】
 その後手信号で【この先に人の気配有り注意】
 リク、カイ、クウにも緊張が走る。

 【目標発見、交戦中】

 耳を澄ますと剣撃と爆発音が聞こえる。
 たぶんかなりの距離がありそうだ、この距離で一切魔法を介せず認知するか、
 改めてバッツさんの能力に驚く。

 「どうする、突っ込むか?」

 不思議と通る声でバッツさんが聞いてくる。
 正直判断がつかない、【お二人に任せます】

 「もう少し進むとたぶんあの戦いの魔力に影響を与えちまうから、行くなら一気に距離を詰めて一気に決めるしか無い」

 「どうやら戦いはもうすぐ終わりそう戦いの音が減ってきている。」

 「ふむ、カレン、この嬢ちゃん達、ほんとうに使えるんだろうな?」

 「戦力分析で私見はいれない、客観的事実のみ伝えた。今までの戦闘でも50%ってとこ」

 「そうか、よし、頼りにしてるぞ、戦闘が終わる瞬間に一気に行く」

 この話法を使えるのはカレンとバッツさんだけ、僕たちは黙って頷く。
 正直僕はあまり戦力にならない。すでにA~S級の実力がある3人とカレンとバッツさんが今回の作戦の肝だ。黒衣の死神のメンバーはA級の実力はあるがS級の級ほどではない、3人娘のほうが上のはず。
 聞こえる音が減っていく。
 【準備しろ】
 バッツさんがタイミングを見計らう。

 【GO!!】

 風のような速度で5人が飛び出す。僕は少し遅れてダッシュでついていく。 
 まだ闘気を纏う訳にはいかない、自力の足で走る。
 あの角の向こうだ。すでにみんなは交戦しているだろう、
 通路から部屋に出ると想像もしてない状況だった、
 地面に横たわるローブを着た冒険者、
 そしてバッツさん達は敵、黒衣の死神ではなく、黒いオーラを放つオーガと対峙していた。

 「どうなってんだこりゃ……」

 バッツさんも困惑している。
 倒れている人は8人黒衣の死神のフルパーティと思われる。
 そう考えれば目の前のたった一体がこいつらを倒したことになる。
 リク、カイ、クウは青い顔をしている。

 「こいつ、あの時の気配がする……」

 「カレン、バッティ、こいつはヤバイ。死ぬ気で逃げたほうがいいかも」

 「知っているのクウ?」

 「私たちはラビートにコレが憑依したものに一瞬で殺されました」

 「確かにやべぇ空気がビリビリしてる」

 目の前のオーガは僕達に別になんの興味もないように鼻をスンスンしながら周囲をうかがっている。

 「絶対手は出すなよ」

 バッツさんも汗だくだ。僕も身体が動かせない。こんな恐怖を感じたことはない。
 しばらく周囲を探っていたオーガは何かに気がついたかのように僕達と反対方向へ歩き出した

 フー……

 バッツさんの気配が緩んだその瞬間だった。
 何故か歴戦の戦士であるバッツさんやカレンでも気がつかないその一撃に僕が反応した。

 オーガは肩についたホコリでも払うように手に持つ鉄棍を振るった。
 禍々しい塊が僕以外誰も認知できない速度で迫る。
 時間が止まったような感覚の中、魔法盾を全て前方に展開して最大化させる。
 盾まで含め一瞬でも持てばいい気合で闘気をまとう。

 「がぁはっぁ!!」「キャァ!」「ぐぅお!」

 バッツさんたちをかばって魔法盾は一瞬で砕け散り全員を巻き込みながら壁に叩きつけられた。

 「ごぶぅぁ」

 口の中に液体が広がる、しばらくしてそれが血液であることに気がつく、
 背後ではリク、カイ、クウがぐったりとしている。
 バッツさんは僕の体の上でぐったりとしている。

 「わ、ワタルさぁま、今のは……」

 カレンがなんとか意識を失わずにいる。

 「アイツから攻撃の気配がしておもわブハッ」

 さらに大量の血液に思わずむせてしまった、この量、大丈夫か? 大丈夫じゃないよな……
 自分の体の状態を確かめると、胸部のミスリルアーマーは見事に砕けている、
 呼吸もしづらい、驚くことに女神の盾にヒビが生じていた。

 「ワタル様!?」

 その声にオーガが反応してしまった、めんどくさそうにこちらに振り返り鉄棍を振りかぶる、
 まずい、流石に指一本動かないぞ、

 「く、くそがぁ……」

 バッツさんが身体を起こす、だが怪我をしているのか頭からかなりの血を流している。
 剣を持つ腕はあらぬ方向を向いている、関節のない場所で曲がっている。
 思わずアイテムからポーションを乱暴に取り出して天井へ投げつけた、
 天井で割れたポーションが降り注ぐ。盾は割れてもアイテムボックスは使えた。

 「良い判断だ、だが、無理かもな」

 奴が腕を振るう、あの漆黒の塊が急速に迫る。
 コレが死。
 僕たちはここで死ぬのか……

 「【俺】がさせるかよ」

 【僕】はバッツさんの剣を持つ手を握っていた。
 その瞬間バッツさんの魔剣が激しく光りだす。
 目の前が真っ白になるほどの光。

 僕の意識はそこで途切れる。


 

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