3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

52章 聖都 イステポネ

 朝起きて外に出ると狼に囲まれていた。
 起こされたくないから魔法で音遮断しているから、
 なんかパクパク口開けながらバリアをかじろうとしてる。
 10匹はいるかなー、なんだかなー、あんまり朝一番から殺生はしたくないんだよなー。

 バリアは地中だけは守れない。だからそれを利用する。
 地下を土魔法で掘る。んで、外に通じた穴から火魔法を、正確には火じゃないけどね、
 高温の風をオオカミたちにぶち当てる。やけどはしない程度で。
 バリア内は温度は変わらない、そとは60度位になっている。
 突然熱風を浴びせられてオオカミたちは一目散に逃げ出していった。
 これでよし。

 朝はオムライスでも作るか。
 食事の準備をしていると匂いに誘われて皆が起きてきた。

 「もうすぐできるから顔洗ってきなー」

 リクとクウがめんどくさーいって言っていたがカイが引きずっていく。
 カレンとバッツさんも起きてきた。
 バッツさんのパック姿を見て叫びそうになった。

 食事も済ませたけど今日にも目的地に着く前にやることがある。

 「ちょっと家に戻って商会のお金もらってくるね」

 ちょっとそこまでみたいに転移魔法陣で家に戻る。
 皆もう仕事をしていた。真面目に働いてえらいえらい

 「ワタル様! お戻りでしたか、お帰りなさいませ」

 俺に気がつくとエルフのケイナスが嬉しそうに飛んできた。

 「ちょっと商会のお金を出して欲しいんだ、教皇様にお会いするからね」

 「分かりました、こちらへ」

 ケイナスに連れられて屋敷へ入る。執務室に通される。
 この奥の金庫は魔法技術で入れる人間を制限している。
 その奥にケイナスが入って戻ってくると手にはいくつか綺麗な麻袋を持っている。

 「1,000,000銭が一袋に100枚入っております。1億zです」

 前の世界だったらドン引きだよ。

 「5億も持って行って平気なの?」

 「ええ、今ではバイアングの実を中心に様々な野菜類も飛ぶように売れています。
 かなり強気な値段設定にもかかわらず貴族の間で争奪戦まで起きていますよ」

 ちょっとした宝石みたいな値段なんだけどね。

 「何よりこの間の報酬が……」

 そうだった額が大きすぎて現実感がなくて忘れてた。

 「わかった、ありがとう。なんか困ったことはないかな?」

 「ワタル様のおかげで一同つつがなく暮らしております」

 軽く現状の確認をして館から出ると全員が平伏していた。

 「わわわわ、そ、そういうのやめよう気持ちだけでいいから……」

 オロオロしちゃう小市民です。
 逃げるように魔法陣から皆の元へ戻っちゃいました。

 「おかえりー、さっきからなんか遠巻きに狼の集団が睨んでるけどどうする~ワタ兄?」

 さっきのやつらか、

 「ほっとこう、襲ってきたらその時は仕方ない」

 「はーい」

 俺は運転席に腰掛ける、さぁ、もう街まではあと少しだ!



 「見えてきました」

 カレンの目に首都をとらえた、首都イステポネ、別名聖都イステポネは山を利用した都市だ。
 女神教の聖地でもある聖山 エヴェルダスト その中腹まで街が形成されている。
 山の中腹に大ダンジョンの入り口がありそのすぐ脇に教皇様のいる大聖堂がある。
 聖堂って名前は付いているけど城だね。
 イステポネは宗教国家だ。国教である女神教の信者によって形成されている。
 ダンジョンも修業の場とされており、たとえ冒険者であっても女神教の信徒でないと入れない。

 お約束の聖騎士もいる、厳しい修行に耐え自信も聖魔法、回復魔法を使う人も多く、
 精強だ。軍事国家ウェスティアと戦えるのはこの国だけと言われている。
 冒険者として鍛錬を積む聖騎士も多い、紅き雷のケインさんは聖騎士を目指しているそうだ。

 近づいていくと聖山の巨大さがわかる。てか、これ車無理だな、ちょっと前から歩くしかないね。
 馬車の行列があったので手前で車から降りて徒歩だ。
 それでもちょっとした騒ぎになってしまった。
 変な箱が引く動物も居ないのに近づいてきたら当然警戒するよね。

 「お主達の身分を証明するものを見せていただいてもよろしいか?」

 真っ白な鎧を着た騎乗兵の集団に誰何された。
 冒険者ギルドの証と特別名誉信者の証を見せた。
 特に後者は効果テキメンですぐに騎士が走っていったと思ったら馬車が用意された、
 そのまま教会へドナドナされた。順番待ちは免除されたのだから文句はない。

 「ようこそいらっしゃいましたワタル様。
 私はこちらの教会の教会長をさせていただいておる司祭のセレス=マクラーレンともうします。」

 立派な法衣を着たナイスミドルなおじさまに挨拶をされた。
 この人は侮れないな、なぜかって? 細目キャラは強キャラって相場が決まってるんだ。

 「司祭様にお目にかかれて光栄です。これも女神様のお導きでしょう」

 両膝をついて胸の前で手を組む。
 女神教の祈りのポーズだ。

 「ワタル様はこちらの教会にいらす経験な信者の力添えになりたいと、
 こちらを」

 カレンが恭しく革袋を横に控えたシスターの持つ台に置く。
 秘書的ポジションはカレンさんにお任せだ。
 リク、カイ、クウも友達が神父の娘なので所作は完璧だった。
 俺だけ付け焼き刃でヒヤヒヤする。

 シスターが耳打ちすると カッ! と効果音を付けたくなるように司祭様の目が見開いた。
 まぁ、ふらっと来て1億も寄付したらビビるよね。

 「敬虔な女神教の信徒に女神の大いなる福音がありますように」

 その後教皇との面会の日程などをカレンさんが話してくれた。
 3日後のお昼だそうだ。

 ここでの滞在は大ダンジョン攻略のために結構長くなる。
 こちらにも拠点を用意するつもりだ。
 教会を後にした俺らはふた手に分かれて冒険者ギルドと商業ギルドへこの街への滞在の報告へ行く。
 あとで商会の人間を連れて来てこの街での商店の設立などをやってもらうつもりだ。
 商会にも外から人を雇ったりしてみな洗脳ワタルノシモベカした後に働いてもらっている。
 優秀な人材も増えているそうだ。

 商業ギルドから紹介されたのは山の麓の一角だ。
 メインの道からは離れているが広さは充分だ。
 これから開拓されていく周辺都市の一角を青田刈りで広く抑えた。
 まぁ、道なんて整備すりゃいいのよ、魔法でバシッとね。
 ってことで、夕方なので急いで今日の寝るとこを作っちゃいましょ。

 農業魔法チート魔法チートであっという間に立派な道をメインの街道までつなげる。
 むしろこっちの道のほうが立派になってしまったけど、仕方ないね。
 教皇様にお会いしたら城下街から結ぶ道は整備させてもらおっと。
 購入した土地を囲むように壁を形成。もう、プチ城壁だ。
 同じように守護者ガーディアンを設置する。
 建物は寮式以外にも作る。一軒家が連なる新興住宅街みたいにしよう。
 さっき見た聖都内の建物を参考にあまり華美にならないように建築していく。
 20棟ほど作る。家庭を持つ人もこの先出てくるだろうから、この先もこういう作りにしよう。

 自分たちの家も作る。まぁ別荘みたいなものだから執務室に個人の部屋、と食堂、応接間、こんなもんでいいかな。ちょちょいと作る。
 農地も作成、作付もやっておこう、気候的に適したものと目玉商品バイアングだ。
 後ろで大口開けている商人ギルドの人に各家や、
 施設に必要な家具などを書いた紙をカレンに作ってもらって渡す。
 支度金として1000万ほど渡す。メモの内容と渡した金額にさらに口が開く。顎外れるよ?

 今日は車で過ごす。
 寝具とか考えてなかったよ。ははは。
 異次元魔法で呼ぶゴーレムを利用して魔道具による設備を設置していく。
 便利便利。

 「寝るのは車でよくても、これは絶対に妥協できないんだよねー日本人だから」

 家を手に入れたらいつもの様に温泉だ。
 山の麓だけあってあんまり滅茶苦茶な地殻変動チートせずに源泉が見つかった。
 やっぱり広いお風呂は最高だ。
 そうだ、あっちの街にもこの街にも公衆浴場作ってあげよっと。
 今までの経験から今回のお風呂は屋敷の最上階、屋根はあるけど扉を開くと四方が吹き抜けだ。
 お湯はどうやって上げてるか? 魔法チートです。

 さて、3日の間でいろんなことをしないとね。明日は忙しくなるぞー!


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なおこのエリアを中心に中央街に勝るとも劣らない街が広がっていくのは少し先の話。
 

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