3人の勇者と俺の物語

穴の空いた靴下

53章 聖都観光

 色鮮やかだった王都サウソレスに比べるとこの聖都は白。
 すべての建物が白い。
 山の麓に真っ白な建物が坂道にそって綺麗に並んでいる。
 屋敷の屋上から街を見上げているが非常に美しい。
 その一番上には巨大な城。
 ヨーロッパの有名なヴぁなんとか城の写真を見たことがあるがそんな感じ。
 しかも城の少し奥に巨大な滝がある。
 それが神秘的で荘厳な雰囲気を作っている。
 高い位置に水場があるのはいいね、上水的にも下水的にも。
 ま、魔法で処理しちゃうんだけどね。

 頼んだ職員さんが有能なのか午前中には頼んだ寝具や食器調理器具などを運ぶ馬車が到着した。
 とんでもない商い量なので各商会の商会長が直々に何名も挨拶に来ていた。
 カレン秘書発動である。
 お近づきの印ということでかなり安くしてくれた。
 みんなにこれからの看板商品となるバイアングの実を小ビンに入れておみやげに差し上げた。
 噂程度はすでに入っているらしく皆ギラギラした目で受け取っていた。

 その後商会の職員で希望した者を連れてきた。
 今この地に奴隷商のパルゾイさんが必死に向かってるらしい。
 言ってくれれば転送ハコンデさせてあげるのに……
 聖都とか宗教国家と言っても奴隷はいる。
 もちろん性奴隷とか過酷な労働を無理やり強いるのは表立っては禁止しているけど、
 ある意味口減らしで殺されたりするより仕事につけるという側面もある。
 救いなんだそうだ。
 奴隷用の術具は教会の人が扱う人が多かったりもするからね。
 ま、そういう感じだ。
 この街でも俺は偽善を続けるさ。

 いろいろやってると夕方になった。
 この街は宗教国家の総本山なので質素倹約。
 あまり華美なお店もないし、娯楽もあまりない。
 女性陣はの~んびりした時間を楽しんでいる。
 バッツさんは街の酒場へ出かけていった。
 食事も終えてまったりだ。

 「お風呂入ってくるねー」

 この時間が俺の何よりの楽しみ。
 全員が当たり前のようについてこようとするので、
 前々から言おうと思っていた事を言う。

 「はい、皆さんよく聞いてください。
 わたくしから担当制を提案したいと思います」

 「担当制?」

 「皆様全員と一緒に過ごす時間は大変素晴らしいものです、本当に素晴らしい、
 ただ、いつもなのはいけない。繰り返される甘美な時間はやがて停滞を迎えます。
 そこで、担当制です。一人の人とゆっくりと過ごす。こういう時間も素敵じゃありませんか?」

 「うん、そうだね。確かに」

 「ゆっくり二人でかぁ~ワタ兄と……」

 「う、嬉しいです! いまだにちょっと恥ずかしいんです……」

 「ワタル様と二人っきり、二人っきり、二人っきり……」

 概ね良好だ。

 「ですので、日にちを決めましょう。順番に、もちろんみんな仲良しの日も作りましょう、
 日替わり、もしくは週替りでもいいです。いかがでしょう?」

 「「「賛成 (です)」」」「ワタル様の御心のままに」

 こうして今日はじゃんけんで勝ったカイとのんびりとお風呂へ浸かっている。

 闇夜に浮かぶ厳かな光に浮いた聖都を見つめながらキャンドルライトに照らされた露天風呂、
 俺はハイボール、カイはフルーツの炭酸ジュースを飲みながらゆっくりと過ごす。

 「最高だ」

 「いいですね、なんかよく考えると初めてな気がしますこんなにワタルさんと二人でゆっくりするの」

 「いいでしょ? ゆったり」

 「そうですね、いつも、その、なんていうか、凄いですから……」

 真っ赤になってうつむくカイ、こういう女の子らしいところがカイの魅力だよね、
 あ、なんかそのうなじ、うん。いい。

 ゆったりとお風呂に浸かり、その後主寝室でゆったりとカイに浸かりました。

 カイのノロケは大層他の人たちを刺激したようで、
 皆自分の番を楽しみにして、いかにその時間を素晴らしい時間にするかに励むようになって、
 お互いにとって素晴らしい結果を生む提案になりました。
 頑張った俺!
 皆の日もより燃え上がるようになったとさ。

 
 教皇様との面会の日までやることが山積みで飛ぶように過ぎてしまった。
 面会の日は朝から身を清めて教会へ向かう。
 山下の教会で先に洗礼を受け、大聖堂へは女神教が用意してくれた真っ白な馬車で向かう。
 パーティメンバーも全員女神教の信者が特別な時に着る礼服に着替える。
 真っ白で飾りっけのないそれでいて上品な礼服だ。
 バッツさんは手を加えたそうだったけどね。

 大聖堂は前に来るとでかい!
 なんてでかさだ。
 そりゃ城に見えるよね。
 聖騎士の方々がビシッと整列している。
 なんか、凄いことになってるけど、ここまでしてもらっていいのかな?
 一緒に来ている司教様に聞いても、大丈夫ですよ。とニッコリ微笑まれた。

 大聖堂という名前の通り、扉を開くと巨大な礼拝堂になっている。
 俺たちは正面の巨大なステンドグラスの横の小さいながらも美しい装飾のされた扉を抜けて、
 通称奥の院と呼ばれる区画へ招待される。
 応接室に通されて全員にお茶を出される。

 「あ、この味……美味しい」

 「ワタル様は気に入っていただけましたか? それは教皇様の好きなお茶なのです」

 緑茶だった。すこしほうじ茶っぽい香りもする。
 それが余計に嬉しかった。

 「ほっとする、味です」

 顔がほころんでしまう。なんだかんだで懐かしい味に嬉しくなってしまった。

 「もしよければあとで茶葉をお持ちください」

 「ホントですか!? ありがとうございます!」

 司教様は俺の反応に満足したように余計にニコニコしていた。



 その後係りの者に呼ばれ奥の院のさらに奥、謁見の間に通される。
 女神教のお祈りの姿勢で教皇様を待つ。

 ゾクリとした。

 巨大な魔力を感じる。
 思わず臨戦態勢を取りそうになってしまった。

 「おもてをあげてください、教皇様がお見えになられました」

 純白の法衣に身を包み高帽子をかぶる優しそうな白ひげの男性。
 カーネルの人ににたその人が、魔力の出処だった。

 「敬虔な信徒である女神の盾の皆様に逢えて大変嬉しく思います。
 私が不遜の身を教皇の座に置かせていただいております、
 ヴェルス=ケイオン=イステポネと申します。
 今後とも我が女神教の教えを共に深めてまいりましょう」

 やさしい口調なんだけどガンガン魔力に威圧を混ぜて来るのはやめてくださ、死んでしまいます。
 なんなのさ、国の王様は化け物揃いか……

 あとはカレン様に任せて面会は厳かに進められた。
 改めて教会への寄付を革袋2つほどしておいた。
 【神の与えし試練の場】への入場は無事に許可された。
 冒険者ギルドからはすでに許可を受けているのでこれで正式にダンジョン攻略を行える。

 プレッシャーに包まれた面会を終えるとやっと肩の力が抜ける。
 おみやげに茶葉ももらえたのであの胃痛に耐えたかいがあったよ。

 「知らずに教皇様と面会すると気絶する方もいるのですが、さすがはA級PTの皆様ですね」

 司祭様の爆弾発言が投下された。

 教皇様の趣味らしい、悪趣味な!!






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