3人の勇者と俺の物語
118章 カウンター
会議は4人の報告から開始された、
「まず敵は全て【黒】化しているモンスターでした」
「村の結界を覆わんばかりの量だったよ」
「モンスターだけでなく小型動物も多かったけど、とにかく数が多い」
「たぶん目的とかがあるわけではなくとりあえず目に映る者を襲っているような印象を受けました」
一番の脅威はその圧倒的な敵の量だった。
「最近各地で【黒】の報告が減っている理由はこれだったのか……」
「この大陸に戦力を集中してここから敵さんも反撃するつもりなんだろうねー」
ガッシリとした体格、重厚な鎧から生える四肢はがっしりと太い。
いかにも軍人の風貌、この男がノーザンラクト国軍のトップにして最強、最高の男と呼ばれるレン=タイラー提督である。
武勲においても実力も並ぶものなし。
女王と戦って勝利し得るのはこの国ではこの男一人である。
しかし、彼の一番の能力は知略軍略である。
戦局全体を正確に把握し奇略も含めて無限とも言える策を企画構築できる能力を持っている。
現在も与えられた情報から最適な行動を算出する。
「まずは避難。一切の交戦を禁止して私の手勢と女神の盾の皆様で撹乱。
敵をキルヒアレン渓谷に誘い込み狭い渓谷内で各個撃破。それしかないでしょう」
雪崩のように溢れ出ている敵を多方面で抑えるのは不可能、そこで渓谷という土地を利用して正面から当たる敵の数を制限する。キルヒアレン渓谷は底は安全だがその壁には強力なモンスターであるワイバーンが巣食っている。
そこに誘い込めば完全な面の戦いに持ち込める。
「情報からすると誘導自体はそんなに困難ではなさそうですが、避難はスピードが命ですね」
「軍馬に無理やり車をつけて急増の馬車を用意した、すぐに出立できる」
「俺達で転移魔法が使えるカイ、カレン、俺、クウと組んで四方向から敵を誘導します」
「地図上で誘導するラインを把握して下さい、接触は出来る限り避けて下さい、
ぶつかり合う前に戦力が減ると困ります」
「タイラーは相変わらずだが女神の盾のメンバーは百戦錬磨、お前の期待に答えてくれる」
「正直女王が一番心配ですよ、熱くならないでくださいね」
「ははは、ぬかしよる」
なんか少しうれしそうな王女様。この国で王女様は絶対的な存在だから軽口を叩いてくれる人間が少ない。タイラーは女王に対しても結構ずけずけとした物言いをして周囲の者を焦らせる。
当の女王は実はそれを楽しんでいたりする。
「一刻も早く動きましょう、陽動を早く開始すればそれだけ国民を逃す時間が稼げます。
すでに馬車部隊は各街へと派遣しています、さぁ出ましょう!」
「会議なんてする必要ないじゃない、まったくタイラーはいつもそう、全部動かしておいてから許可を求めてくる……」
王女のぼやきを無視して全員が動き始める。
麓に散在する村からつぎの街への接触には多少距離がある。
山間部の過酷な地形がこの場合ワタル達にはプラスに働く。
ある程度の【黒】達の進行ルートを予想することが出来る。
その各点に女神の盾メンバーが急行する、そこから黒達をキルヒアレン渓谷へと誘導していく。
位置関係を見ても戦場の設定としてもこれ以上ない素晴らしい計画だった。
「すごいな、この構想を形にして運用までする。噂通りの男のようだタイラー提督は」
バッツが通信機で皆と通話しながら素直な感心を表す、口調も忘れるほどだ。
「ええ、我々の報告を聞く前から動いてないとこの速度で準備はできません。
いったいどこまでわかっていたのか、そら恐ろしくあります……」
冒険者経験の長いバッツとカレンはタイラー提督の話をよく耳にしており、そのうわさ話を裏付けるかのような彼の企画立案実行力に舌をまいていた。
「あと上王様タイラー提督好き」
「だよね」
「ですね」
「え? なんでそんなことわかるの?」
「ワタル君、女性が他の人に見せない表情を見せるのは好きな男か嫌いな男なんだよ」
「まぁ、あの女王様もマトモに意見言ってくるの彼くらいみたいだし特別な人になったのかもね~」
「でも、お似合いですよねあのお二人! そう思いませんかワタルさん」
「う、うん。そうだね……」
「ワタ兄、まさかがっかりしてたりシないよね」
通信機を通してもわかる殺気をワタルは敏感に感じ取り震え上がる。
「そ、そんなことはございません!!」
「ワタルはほんと胸おっきい人好きだよね-」
「い、いえ、そのようなことは……」
「……」
通信機に一言も話さずに明確な殺意と冷気を感じさせる女性が一人……
ワタルは触れてはいけないものに触れてしまったようだ。
「と、とりあえず。早いとこ目的の場所に皆移動して役目を果たそう」
「ワタルさん。露骨に話題を変えるということはなにか思うところがあるんですね」
残念回りこまれてしまった。
その後も移動中ずっと針のむしろのように傷めつけられるワタルの精神力。
タイラー提督の読みと寸分違わずに敵影を見るその時までワタルのSAN値はガリガリ削られていくのでありました。
「敵影見ゆ!」
「こっちも!」
「同じく!」
ワタルの開放と戦いの開始を告げる通信が同時に入る。
ワタルの眼前に敵が見えるのもほぼ同時であった。
タイラーの指示した地点と寸分たがわぬ場所で全員が接敵する。
大陸と世界の命数をかけた戦いの第一ステージが開始される。
「まず敵は全て【黒】化しているモンスターでした」
「村の結界を覆わんばかりの量だったよ」
「モンスターだけでなく小型動物も多かったけど、とにかく数が多い」
「たぶん目的とかがあるわけではなくとりあえず目に映る者を襲っているような印象を受けました」
一番の脅威はその圧倒的な敵の量だった。
「最近各地で【黒】の報告が減っている理由はこれだったのか……」
「この大陸に戦力を集中してここから敵さんも反撃するつもりなんだろうねー」
ガッシリとした体格、重厚な鎧から生える四肢はがっしりと太い。
いかにも軍人の風貌、この男がノーザンラクト国軍のトップにして最強、最高の男と呼ばれるレン=タイラー提督である。
武勲においても実力も並ぶものなし。
女王と戦って勝利し得るのはこの国ではこの男一人である。
しかし、彼の一番の能力は知略軍略である。
戦局全体を正確に把握し奇略も含めて無限とも言える策を企画構築できる能力を持っている。
現在も与えられた情報から最適な行動を算出する。
「まずは避難。一切の交戦を禁止して私の手勢と女神の盾の皆様で撹乱。
敵をキルヒアレン渓谷に誘い込み狭い渓谷内で各個撃破。それしかないでしょう」
雪崩のように溢れ出ている敵を多方面で抑えるのは不可能、そこで渓谷という土地を利用して正面から当たる敵の数を制限する。キルヒアレン渓谷は底は安全だがその壁には強力なモンスターであるワイバーンが巣食っている。
そこに誘い込めば完全な面の戦いに持ち込める。
「情報からすると誘導自体はそんなに困難ではなさそうですが、避難はスピードが命ですね」
「軍馬に無理やり車をつけて急増の馬車を用意した、すぐに出立できる」
「俺達で転移魔法が使えるカイ、カレン、俺、クウと組んで四方向から敵を誘導します」
「地図上で誘導するラインを把握して下さい、接触は出来る限り避けて下さい、
ぶつかり合う前に戦力が減ると困ります」
「タイラーは相変わらずだが女神の盾のメンバーは百戦錬磨、お前の期待に答えてくれる」
「正直女王が一番心配ですよ、熱くならないでくださいね」
「ははは、ぬかしよる」
なんか少しうれしそうな王女様。この国で王女様は絶対的な存在だから軽口を叩いてくれる人間が少ない。タイラーは女王に対しても結構ずけずけとした物言いをして周囲の者を焦らせる。
当の女王は実はそれを楽しんでいたりする。
「一刻も早く動きましょう、陽動を早く開始すればそれだけ国民を逃す時間が稼げます。
すでに馬車部隊は各街へと派遣しています、さぁ出ましょう!」
「会議なんてする必要ないじゃない、まったくタイラーはいつもそう、全部動かしておいてから許可を求めてくる……」
王女のぼやきを無視して全員が動き始める。
麓に散在する村からつぎの街への接触には多少距離がある。
山間部の過酷な地形がこの場合ワタル達にはプラスに働く。
ある程度の【黒】達の進行ルートを予想することが出来る。
その各点に女神の盾メンバーが急行する、そこから黒達をキルヒアレン渓谷へと誘導していく。
位置関係を見ても戦場の設定としてもこれ以上ない素晴らしい計画だった。
「すごいな、この構想を形にして運用までする。噂通りの男のようだタイラー提督は」
バッツが通信機で皆と通話しながら素直な感心を表す、口調も忘れるほどだ。
「ええ、我々の報告を聞く前から動いてないとこの速度で準備はできません。
いったいどこまでわかっていたのか、そら恐ろしくあります……」
冒険者経験の長いバッツとカレンはタイラー提督の話をよく耳にしており、そのうわさ話を裏付けるかのような彼の企画立案実行力に舌をまいていた。
「あと上王様タイラー提督好き」
「だよね」
「ですね」
「え? なんでそんなことわかるの?」
「ワタル君、女性が他の人に見せない表情を見せるのは好きな男か嫌いな男なんだよ」
「まぁ、あの女王様もマトモに意見言ってくるの彼くらいみたいだし特別な人になったのかもね~」
「でも、お似合いですよねあのお二人! そう思いませんかワタルさん」
「う、うん。そうだね……」
「ワタ兄、まさかがっかりしてたりシないよね」
通信機を通してもわかる殺気をワタルは敏感に感じ取り震え上がる。
「そ、そんなことはございません!!」
「ワタルはほんと胸おっきい人好きだよね-」
「い、いえ、そのようなことは……」
「……」
通信機に一言も話さずに明確な殺意と冷気を感じさせる女性が一人……
ワタルは触れてはいけないものに触れてしまったようだ。
「と、とりあえず。早いとこ目的の場所に皆移動して役目を果たそう」
「ワタルさん。露骨に話題を変えるということはなにか思うところがあるんですね」
残念回りこまれてしまった。
その後も移動中ずっと針のむしろのように傷めつけられるワタルの精神力。
タイラー提督の読みと寸分違わずに敵影を見るその時までワタルのSAN値はガリガリ削られていくのでありました。
「敵影見ゆ!」
「こっちも!」
「同じく!」
ワタルの開放と戦いの開始を告げる通信が同時に入る。
ワタルの眼前に敵が見えるのもほぼ同時であった。
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