負け組だった男のチートなスキル
第六話 魔法
本日も晴れやかな天気で始まり光助は目を覚ました。
この世界に来てから3日目、そろそろ慣れ始めるころだが、相変わらずゲンジュの起こし方には慣れることはできないでいる。
「ゲンジュさん痛いです」
ゲンジュ独特のベットを持ち上げて揺らす起こし方に対して光助は文句を言った。
「良いじゃねえか確実な起こし方だからな」
ゲンジュは笑いながらそう言って、部屋から出て行った。
残された光助は、寝ぼけ眼で着替えを行ってからゲンジュの後を追い部屋から出た。
食堂へ着くとキィンクもすでに起きており、ゲンジュと共に席について朝食を食べていた。
「待つっていう気は起きないんですか」
「まあな」
何も悪びれる様子も見せずにゲンジュは光助にそう言う。呆れ顔で光助は何も言わなかった。
朝食後、ゲンジュとキィンクは何やら用があるようで別行動することになった。
「何をするかな……」
光助は一人で街をぶらつきながら呟いた。そしてあることを思い出す。
「やらないとな……」
おなかをさすりながら光助は呟く。
やることは一つ。ダイエットである。
今のままでは、間違いなく戦闘にも生活にも評判にも支障をきたしてしまう。そう思ったならばやらなければいけない。コウスケは覚悟を決めた。
まず町の外へ走って出て準備運動を済ます。
今の光助にとっては、町の外に出るまでの距離を走るだけのこの運動は、準備運動のレベルではなくそれだけでクタクタに疲れてしまった。
「はぁはぁ」
息を切らして手を膝について息を整える。自分のことながらとても情けない。
「レベル上げと兼ねて運動だ!」
やることを口に出して気合いを入れる。
光助は魔物が出るのを待った。幸運なことにすぐに魔物は出てきた。
魔物は前に戦ったイノシシ型ではなく、初めて見るスライム型だった。
「スライムだよな?」
目の前に存在する半透明の生き物を見て呟く。
もちろんその半透明な魔物が返事をするわけでもなく、ゆっくりと地面を這いながら近づいてきていた。
「こいつに、武器は効くのか?」
光助は疑問に思いながらも刀をスライムに対して振るう。
ほぼ予想通り、武器はスライムの体に入っただけで、ダメージを与えているようには見えなかった。
そんな平気な様子のスライムに対して悪態をつくコウスケ。
何回か刀をスライムに振るったが、液体を切っているように手ごたえがな全くなく、余計に疲れてしまう。
この相手に対して有効な攻撃手段について、光助は一つ思い当たることがあった。
「魔法か……」
神が言っていた魔法がある世界というのを思い出してボソッと呟く。
しかし光助は魔法というものがどんなものかも知らない。
当たり前のことだが見たことすらないからだ。
何かそれらしいことを唱えてみるか。だが正直恥ずかしい。でも魔物を倒すにはそれしか思いつかない。
その葛藤の中、思い切って叫んだ。
「ふぁ、ファイアー」
光助は恥ずかしそうに手を前に突き出す。
もちろん周りに誰もいないことを確認してだ。
適当な方法だったのだが、何と手のひらに温かい感覚が生まる。そしてそこから小さな火の球が生れ出た。
更にその火の玉がスライムを襲いスライムは蒸発して消え失せた。
「え、えぇ、そんな魔法って簡単なのか?」
光助は思ったよりも、あっさりと魔法が出せたのに面を食らっていた。
後に知ったことだが、この世界の魔法はあまり発達していないため発動方法は簡単であり、それに伴って魔法の数も少ないそうだ。どちらかと言えば魔法よりもスキルの方が発達しており数も多いらしい。
「そうだ、ステータス」
名前 高月光助
種族 異世界人
レベル 2
体力 まだまだ
魔力 若干減った
攻撃力 武器さえあれば
防御力 我慢
敏捷力 なし
スキル〈技能創造〉 隠蔽
ステータスを確認する。レベルは上がっていなかったが魔力の表記が魔力が減っていることを表わしていることに気が付いた。
あの魔法1回でもしっかりと魔力が消費する。
魔法を始めて出せた光助は楽しくなり、他の魔法もいろいろ試したいという欲求が沸き出していた。
「魔力を使い切るまでいろいろ試すか、せっかくだから魔物相手に」
そう言って魔物が現れるのを光助は待つ。
そう思っている時に来ないのがよくあるパターンなのだが、この世界ではそうではないらしい。
すぐに魔物が現れたのだ。
「よっしゃ、って何で三体も!?」
現れたのはイノシシ型一体に、スライム型一体、もう一体は見たことがない魔物で木? だった。
魔物を待っていたから出てきたのは嬉しいことだが、三体はさすがに多い。それに木が歩いてるのは不気味だ。
「どうにでもなれファイアー」
先ほどと同じように手を前に突き出し言葉を叫ぶ。
まず炎に襲われたのは、動きが鈍いスライムと木だった。初めに木に引火し燃えていく。その熱でスライムが蒸発したのだ。
「残りはイノシシだけか」
イノシシ型は燃えている魔物に対して気にも留めずに、既に走り出すモーションに入っていた。
光助は慌てて先ほどとは違う言葉を叫ぶ。
今度は手を地面に付けて。
「ぐ、グラウンド」
すると前方一直線の地面がグラグラと揺れ始め、穴が一つできた。
その穴に対して気にするそぶりも見せずに光助に突っ込んでくるイノシシ。誰もが予想できるように、イノシシは穴へ落ちて行った。
穴を覗くと下が見える程度の浅い穴であることがわかる。
そこにイノシシが入って動けずにもがいていた。
このままでもいいのだが経験値が欲しいのと、他にも魔法を試したいので倒すことに決めた。
「サンダー」
光助は手を上へ掲げて叫ぶ。
その言葉に呼応されるように光助の真上に黒い雲ができ、続いて光助が腕を振り下ろすと、イノシシへ向かって雷が落ちた。
今までの魔法の中でも特別威力がすごかった。
「終わったぁ、ステータス」
名前 高月光助
種族 人間族
レベル 2
体力 疲れた
魔力 枯渇
攻撃力 武器さえあれば
防御力 我慢の達人
敏捷力 なし
スキル〈技能創造〉 隠蔽
魔法を結構使ったのだが、ちょうど最後ので枯渇状態のようだ。
たぶん弱い魔法だけだからだろうか。だが十分に良い収穫ができた。
後、気になることと言えばこの倦怠感だ。魔力が枯渇したからだろうか。
とりあえず今日はもう帰って休むことにしよう。そう思い光助は町へ戻った。
だがその帰路の途中に、会いたくない一団が町から出て行こうとしているところだった。
そう勇者達御一行である。
「あ……」
光助はあからさまに嫌そうな顔をして近くにある木の裏へ身をひそめた。幸いにも見つかることなく勇者達一行は去っていく。一つ気になることと言えば大将が一番前を歩いていたところだけか。
恐らく勇者集団のリーダーになったのだろうと、今までの大将から受けた仕打ちを思い出してそう判断した。
隠れている間、今までの経験を思い出したせいで冷や汗が止まらなかったが見つからずに通り過ぎて行ったので、ホッとしすぐに町へ入ろうとする。
「うわあああ」
ところが突然の悲鳴が響いた。その方向は間違いなく勇者たちのいる方向だ。
そこには勇者達が魔物と戦闘中だった。だがなぜかあんなに大勢でいるのに、いかにもあの中で弱そうな無防備の1年生だけに魔物との戦闘をさせていたのが非常に気になる。
「な、何であんなことを」
勇者達の半分が唖然としてその様子を見守っていた。
助けてあげたいのだろうが、大将の圧力で手が出せないのだろう。
しかしそんな彼らの顔とは対照的に大将は楽しそうにその様子を見ていた。
魔物は光助が初めて会った魔物のイノシシ型であったが、さすがに勇者といえど、無知と無防備では危険である。
それを見て思わず体が飛び出してしまいそうになるが、勇者達の中に見慣れた顔をいくつか見つけた。玲那や勝利達である。
彼らは武器を持っており何かを相談していた。
勝手ではあるがそれを見た光助は安心する。
彼女たちならきっと助けてくれるだろうと信用して。
その後多少の不安は抱きながらも疲れには勝てず夕食後には直ぐに熟睡した。
この世界に来てから3日目、そろそろ慣れ始めるころだが、相変わらずゲンジュの起こし方には慣れることはできないでいる。
「ゲンジュさん痛いです」
ゲンジュ独特のベットを持ち上げて揺らす起こし方に対して光助は文句を言った。
「良いじゃねえか確実な起こし方だからな」
ゲンジュは笑いながらそう言って、部屋から出て行った。
残された光助は、寝ぼけ眼で着替えを行ってからゲンジュの後を追い部屋から出た。
食堂へ着くとキィンクもすでに起きており、ゲンジュと共に席について朝食を食べていた。
「待つっていう気は起きないんですか」
「まあな」
何も悪びれる様子も見せずにゲンジュは光助にそう言う。呆れ顔で光助は何も言わなかった。
朝食後、ゲンジュとキィンクは何やら用があるようで別行動することになった。
「何をするかな……」
光助は一人で街をぶらつきながら呟いた。そしてあることを思い出す。
「やらないとな……」
おなかをさすりながら光助は呟く。
やることは一つ。ダイエットである。
今のままでは、間違いなく戦闘にも生活にも評判にも支障をきたしてしまう。そう思ったならばやらなければいけない。コウスケは覚悟を決めた。
まず町の外へ走って出て準備運動を済ます。
今の光助にとっては、町の外に出るまでの距離を走るだけのこの運動は、準備運動のレベルではなくそれだけでクタクタに疲れてしまった。
「はぁはぁ」
息を切らして手を膝について息を整える。自分のことながらとても情けない。
「レベル上げと兼ねて運動だ!」
やることを口に出して気合いを入れる。
光助は魔物が出るのを待った。幸運なことにすぐに魔物は出てきた。
魔物は前に戦ったイノシシ型ではなく、初めて見るスライム型だった。
「スライムだよな?」
目の前に存在する半透明の生き物を見て呟く。
もちろんその半透明な魔物が返事をするわけでもなく、ゆっくりと地面を這いながら近づいてきていた。
「こいつに、武器は効くのか?」
光助は疑問に思いながらも刀をスライムに対して振るう。
ほぼ予想通り、武器はスライムの体に入っただけで、ダメージを与えているようには見えなかった。
そんな平気な様子のスライムに対して悪態をつくコウスケ。
何回か刀をスライムに振るったが、液体を切っているように手ごたえがな全くなく、余計に疲れてしまう。
この相手に対して有効な攻撃手段について、光助は一つ思い当たることがあった。
「魔法か……」
神が言っていた魔法がある世界というのを思い出してボソッと呟く。
しかし光助は魔法というものがどんなものかも知らない。
当たり前のことだが見たことすらないからだ。
何かそれらしいことを唱えてみるか。だが正直恥ずかしい。でも魔物を倒すにはそれしか思いつかない。
その葛藤の中、思い切って叫んだ。
「ふぁ、ファイアー」
光助は恥ずかしそうに手を前に突き出す。
もちろん周りに誰もいないことを確認してだ。
適当な方法だったのだが、何と手のひらに温かい感覚が生まる。そしてそこから小さな火の球が生れ出た。
更にその火の玉がスライムを襲いスライムは蒸発して消え失せた。
「え、えぇ、そんな魔法って簡単なのか?」
光助は思ったよりも、あっさりと魔法が出せたのに面を食らっていた。
後に知ったことだが、この世界の魔法はあまり発達していないため発動方法は簡単であり、それに伴って魔法の数も少ないそうだ。どちらかと言えば魔法よりもスキルの方が発達しており数も多いらしい。
「そうだ、ステータス」
名前 高月光助
種族 異世界人
レベル 2
体力 まだまだ
魔力 若干減った
攻撃力 武器さえあれば
防御力 我慢
敏捷力 なし
スキル〈技能創造〉 隠蔽
ステータスを確認する。レベルは上がっていなかったが魔力の表記が魔力が減っていることを表わしていることに気が付いた。
あの魔法1回でもしっかりと魔力が消費する。
魔法を始めて出せた光助は楽しくなり、他の魔法もいろいろ試したいという欲求が沸き出していた。
「魔力を使い切るまでいろいろ試すか、せっかくだから魔物相手に」
そう言って魔物が現れるのを光助は待つ。
そう思っている時に来ないのがよくあるパターンなのだが、この世界ではそうではないらしい。
すぐに魔物が現れたのだ。
「よっしゃ、って何で三体も!?」
現れたのはイノシシ型一体に、スライム型一体、もう一体は見たことがない魔物で木? だった。
魔物を待っていたから出てきたのは嬉しいことだが、三体はさすがに多い。それに木が歩いてるのは不気味だ。
「どうにでもなれファイアー」
先ほどと同じように手を前に突き出し言葉を叫ぶ。
まず炎に襲われたのは、動きが鈍いスライムと木だった。初めに木に引火し燃えていく。その熱でスライムが蒸発したのだ。
「残りはイノシシだけか」
イノシシ型は燃えている魔物に対して気にも留めずに、既に走り出すモーションに入っていた。
光助は慌てて先ほどとは違う言葉を叫ぶ。
今度は手を地面に付けて。
「ぐ、グラウンド」
すると前方一直線の地面がグラグラと揺れ始め、穴が一つできた。
その穴に対して気にするそぶりも見せずに光助に突っ込んでくるイノシシ。誰もが予想できるように、イノシシは穴へ落ちて行った。
穴を覗くと下が見える程度の浅い穴であることがわかる。
そこにイノシシが入って動けずにもがいていた。
このままでもいいのだが経験値が欲しいのと、他にも魔法を試したいので倒すことに決めた。
「サンダー」
光助は手を上へ掲げて叫ぶ。
その言葉に呼応されるように光助の真上に黒い雲ができ、続いて光助が腕を振り下ろすと、イノシシへ向かって雷が落ちた。
今までの魔法の中でも特別威力がすごかった。
「終わったぁ、ステータス」
名前 高月光助
種族 人間族
レベル 2
体力 疲れた
魔力 枯渇
攻撃力 武器さえあれば
防御力 我慢の達人
敏捷力 なし
スキル〈技能創造〉 隠蔽
魔法を結構使ったのだが、ちょうど最後ので枯渇状態のようだ。
たぶん弱い魔法だけだからだろうか。だが十分に良い収穫ができた。
後、気になることと言えばこの倦怠感だ。魔力が枯渇したからだろうか。
とりあえず今日はもう帰って休むことにしよう。そう思い光助は町へ戻った。
だがその帰路の途中に、会いたくない一団が町から出て行こうとしているところだった。
そう勇者達御一行である。
「あ……」
光助はあからさまに嫌そうな顔をして近くにある木の裏へ身をひそめた。幸いにも見つかることなく勇者達一行は去っていく。一つ気になることと言えば大将が一番前を歩いていたところだけか。
恐らく勇者集団のリーダーになったのだろうと、今までの大将から受けた仕打ちを思い出してそう判断した。
隠れている間、今までの経験を思い出したせいで冷や汗が止まらなかったが見つからずに通り過ぎて行ったので、ホッとしすぐに町へ入ろうとする。
「うわあああ」
ところが突然の悲鳴が響いた。その方向は間違いなく勇者たちのいる方向だ。
そこには勇者達が魔物と戦闘中だった。だがなぜかあんなに大勢でいるのに、いかにもあの中で弱そうな無防備の1年生だけに魔物との戦闘をさせていたのが非常に気になる。
「な、何であんなことを」
勇者達の半分が唖然としてその様子を見守っていた。
助けてあげたいのだろうが、大将の圧力で手が出せないのだろう。
しかしそんな彼らの顔とは対照的に大将は楽しそうにその様子を見ていた。
魔物は光助が初めて会った魔物のイノシシ型であったが、さすがに勇者といえど、無知と無防備では危険である。
それを見て思わず体が飛び出してしまいそうになるが、勇者達の中に見慣れた顔をいくつか見つけた。玲那や勝利達である。
彼らは武器を持っており何かを相談していた。
勝手ではあるがそれを見た光助は安心する。
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