負け組だった男のチートなスキル
第十九話 同郷者
聖剣は見事にドラゴンの脳天を貫いた。だがさすがはドラゴンといったところか。即死はせず咆哮をあげながら首をブンブンと振り回している。
コウスケは頭に刺した聖剣を握り、その遠心力に耐えていた。
「うおおおおおぉ!」
振り回されながら絶叫をあげるコウスケ。こんな経験、ジェットコースターでも味わえないスリルがある。いや、スリルを楽しむという次元ではない。この手を離せば死ぬのだから。
「『聖剣』顕現!」
洞窟内に女性の声音が響いた。もちろんその声の主は美月である。
その言葉の内容をコウスケは振り回され三半規管が狂った状態のままかろうじて聞いていた。
聖剣を出現させる時の掛け声なのだろう。現に美月の手には輝く聖剣らしき剣が握られていた。美月が新しく聖剣を出したので、コウスケの握る聖剣は消えてしまうのでは、という危惧があったのだがそうはならず、相変わらずコウスケの命綱的役割を果たしていた。
美月はその後、聖剣をこちらへ投擲した。
両手が塞がれ防御、回避不可能な状態で、光る剣がこちら目がけて飛んでくるというのはとても恐ろしい体験だった。美月はコウスケと同じことを考えたのだろう。その光る剣はドラゴンの顔目がけて綺麗に飛んできていた。
彼女の肩がそんなに強いとは思えない。であれば、投げた聖剣の効果なのか。投げられた聖剣は見事ドラゴンの眉間に突き刺さった。
さすがのドラゴンも脳天と眉間に聖剣を食らっては無事では済まないだろう。
「グラアアアアアアアアアア!」
けたたましい咆哮をあげるドラゴン。あれだけの攻撃を受けてもこれだけの声を出せるドラゴンの生命力は凄まじいものだと改めて思い知らされた。だが相当効いたのだろう。頭の振りが先ほどより緩やかになっている。
「トドメだ」
コウスケは呟きと同時に、右手を突き上げ拳を握る。
そして『強化』されたコウスケの右拳が、突き刺さっている聖剣目がけて振り下ろされた――
しばらくの沈黙。
次第にドラゴンの頭がユラユラと揺れ始め、ドスンと大きな音を立てて倒れた。
ドラゴンの亡骸を眺めるコウスケ。ドラゴンといえば高級な素材を思い浮かべる。あの爪なんて武器にぴったりだ。
であれば、まずすることは、ドラゴンを解体すること。皮を剥いだり、爪、牙を抜いたり、肉を食べたり。
「な、何をしているんですか?」
「見てわからないか? ドラゴンを解体するんだよ。このまま放置ってわけにもいかないしな」
そのままドラゴンを放置して誰かに手柄を奪われるのも癪だ。だがそれ以上にドラゴンの肉には興味がある。美味しい美味しくないに問わず、腹が減っていた。
まず持っていた聖剣でぎこちない手つきで解体していく。聖剣をこのように使うのは贅沢ではあるが、今手持ちの刃物はこれしかないので仕方がない。
「な、何を!?」
「ん?」
再び美月が声をあげた。
今はコウスケがドラゴンの肉を食っている最中だ。
「肉を食っているだけだが?」
「魔物の肉を食うなんて……」
「毒はないはずだが」
「毒はなくても、魔物の魔力が多く入っていて人体に異常をきたすと……」
コウスケは美月の言葉に首を傾げる。
確か鑑定では無害と表記されていたはずだ。だが彼女の反応を見るに嘘はついていないようだ。ならばもう一度確かめるしかない。
コウスケはそう考え、ドラゴンの肉を鑑定しようとしたが、もしかするとドラゴンは魔物の肉と表記が異なるかもしれないと思い、一度洞窟を戻り適当な魔物を殺して鑑定した。
『魔獣の肉』
魔獣の肉。食用には向かないが毒はない。人体には無害とされているが――
ここまでは前回見た表記と同じだ。だが、続きがあった。
――過度に摂取することによって人体に異常をきたす場合がある。摂取量、食べ合わせによっては種族変異をもたらす可能性もある。
「……はは」
その大切な部分を見逃したあの時の自分に呆れ返る。結果として腕が生えたのは種族変異のおかげなのかもしれないが、あの痛みを経験したのもこの表記を見なかったのが原因だ。最終的に見なかったことが幸いなのか災いなのかは判断しにくい。摂取量はそれ以外食べ物がなかったから仕方がない、だが食べ合わせについてはどう考えたってあのキノコのせいだ。食べなければあの痛みは味合わずに済んだと考えると、複雑な気持ちになる。何という偶然だろうか。
しかしもうコウスケはもう心配する必要はない。とっくに種族変異は終えた。しかも身体が再生するという特典付きだ。
そして腹が減っている。ならば食う。そうして美月の視線を受けながらコウスケはドラゴンの肉を食らった。
長い時間をかけてコウスケはドラゴンを未熟ながらも解体し終えた。
改めて考えると、まさかあのドラゴンを倒せるだなんて思ってもみなかったことである。
しかし今回は一人では倒せなかっただろう。とチラリと美月の方を見て思う。
だが巻き込まれたのもそいつらのせいであることは変わりないのだが。
「美月。お前は何でここにいる?」
「……何で名前を」
美月は怪訝そうな顔でコウスケを見た。落ち着いたところで、ようやく今まで自分が名前で呼ばれていることに気づいたのだろう。
コウスケの方はその黒髪を見ているだけで歯ぎしりしたくなる思いを必死に抑え口を開いていた。いくら平静を装っているとはいえ心の中ではドロドロとした感情が確かに存在しているのだ。
「『鑑定』だよ、お前ら勇者全員持ってただろ?」
「……何でそれを」
その言葉に苦い表情を浮かべる美月。
まさかそんな表情を浮かべるとは思ってもいなかったコウスケは目元をピクリと動かした。
てっきり驚いた顔か、疑うような顔を浮かべると思っていたところで、まさかの苦い顔。つまり何かやましいことがあったということだ。まさかとは思うが、コウスケを見捨てたことに対する後ろめたい気持ちを持っているというのだろうか。
「……え!?」
美月が驚いたような表情で声を上げた。恐らく『鑑定』でもしたのだろう。
「鑑定でもしたか? そうだよ俺は光助だ、お前らからゴミのような扱いを受けていた」
「……っ」
コウスケの言葉を受け、美月は言葉を失った。その表情からは何を考えているかは伺えない。
「それでさっきの質問に答えて貰おうか。どうしてここにいる?」
「それは……迷子になって」
「迷子ねぇ、じゃあここがどこか分かるか?」
「ここは……迷宮じゃないんですか?」
美月は不思議そうな声音でコウスケを見た。
確かにこんなところに目的もなく入る人なんていないし、そもそも迷宮なんて危ない所は、入る時には警備兵あたりに確認を求められるだろう。つまり迷宮と知らずに入る人なんていないはずなのだ。
だがコウスケは知らない。何せ目覚めた時にはすでにここにいたのだから。
「迷宮か……なんだそれは」
迷宮という単語を考察するが、迷路のような洞窟というイメージしか湧かない。
そんな様子のコウスケに、美月はますます不思議そうな顔をしていた。
「勇者が来るくらいなんだ、修行場みたいなもんなんだろ?」
「は、はい、そんなところです」
恐らくそんな簡単な場所ではない。だがそんなことは身をもって経験している。ドラゴンなんて初心者が相手をしていいものじゃない。
「そんなビクビクしなくてもこれは返すよ」
「え、あ、はい」
コウスケは手に持っていた聖剣を美月へ返す。
このまま借りパクしても良いのだが、これ以上借りを作りたくないのと、魔族という種族のためか、聖剣からの反発が強い。これではどれだけ使い込んでも馴染むことはないだろう。それが理由だった。
「意外だな、俺だと知ると、勇者どもは態度をでかくすると思ってたんだがな」
コウスケは口元を吊り上げ、皮肉を口にする。とはいえ、この言葉は本心だった。自分があの光助だと知れば、態度を急変させ、横暴な態度を取ってくると思っていた。思っていたのだが、美月はその逆。光助だと知ると、態度が小さくなった。
「そんなことは……」
「まあお前らに対する俺の感情は変わらないけどな」
コウスケの言葉に美月はビクッと体を震わせた。コウスケの今までの扱いを知っているのであれば、当然の反応だ。
自分たちは憎まれている。そんなことは誰だって推測できる。
「だから俺はお前が異世界人だと知ったとき、助けなければ良かったと思ったよ」
コウスケの言葉に美月は何も言わず顔を伏せたままだ。
「はぁ、まさか復讐相手と共闘するなんてな。つくづく運命ってのは……」
運命に今更文句を言うつもりはない。だがあの神がそうしたことを引き起こしているのであれば、一言文句を言ってやりたい。と思うコウスケだった。
「あ、あの……光助先輩」
「何だ? ってかお前後輩だったのか」
異世界である以上先輩後輩どうでもいいのだが、こういうところはキッチリしているらしい。しかもあの光助相手にだ。コウスケが先輩と呼ばれる経験なんてほとんどなかったのだ。
「私は……」
「心の底ではいじめに反対していたってか? それがどうした、表面上は決して批判はしてないんだろ? ならお前も同罪だ」
「……はい」
コウスケの憎しみのこもった口調に言葉を失う美月。
ひと時の間が空き、息を吸ってコウスケが言葉を発した。
「だが、お前がいなければ俺はここから進むことなんて出来なかった」
その言葉を聞いて美月が顔をあげる。
「だからお前は殺さない」
「え?」
美月が戸惑いの声をあげるが、そこへ複数の足音が洞窟内に響いた。
人であることは、音を聞いて分かる。そして最悪の事態はそれが美月を探しに来た勇者であることだ。しかもその可能性が結構高い。
「はぁ、次から次へと」
ため息を吐きながらコウスケは、近づく足音に対して身構えた。
コウスケは頭に刺した聖剣を握り、その遠心力に耐えていた。
「うおおおおおぉ!」
振り回されながら絶叫をあげるコウスケ。こんな経験、ジェットコースターでも味わえないスリルがある。いや、スリルを楽しむという次元ではない。この手を離せば死ぬのだから。
「『聖剣』顕現!」
洞窟内に女性の声音が響いた。もちろんその声の主は美月である。
その言葉の内容をコウスケは振り回され三半規管が狂った状態のままかろうじて聞いていた。
聖剣を出現させる時の掛け声なのだろう。現に美月の手には輝く聖剣らしき剣が握られていた。美月が新しく聖剣を出したので、コウスケの握る聖剣は消えてしまうのでは、という危惧があったのだがそうはならず、相変わらずコウスケの命綱的役割を果たしていた。
美月はその後、聖剣をこちらへ投擲した。
両手が塞がれ防御、回避不可能な状態で、光る剣がこちら目がけて飛んでくるというのはとても恐ろしい体験だった。美月はコウスケと同じことを考えたのだろう。その光る剣はドラゴンの顔目がけて綺麗に飛んできていた。
彼女の肩がそんなに強いとは思えない。であれば、投げた聖剣の効果なのか。投げられた聖剣は見事ドラゴンの眉間に突き刺さった。
さすがのドラゴンも脳天と眉間に聖剣を食らっては無事では済まないだろう。
「グラアアアアアアアアアア!」
けたたましい咆哮をあげるドラゴン。あれだけの攻撃を受けてもこれだけの声を出せるドラゴンの生命力は凄まじいものだと改めて思い知らされた。だが相当効いたのだろう。頭の振りが先ほどより緩やかになっている。
「トドメだ」
コウスケは呟きと同時に、右手を突き上げ拳を握る。
そして『強化』されたコウスケの右拳が、突き刺さっている聖剣目がけて振り下ろされた――
しばらくの沈黙。
次第にドラゴンの頭がユラユラと揺れ始め、ドスンと大きな音を立てて倒れた。
ドラゴンの亡骸を眺めるコウスケ。ドラゴンといえば高級な素材を思い浮かべる。あの爪なんて武器にぴったりだ。
であれば、まずすることは、ドラゴンを解体すること。皮を剥いだり、爪、牙を抜いたり、肉を食べたり。
「な、何をしているんですか?」
「見てわからないか? ドラゴンを解体するんだよ。このまま放置ってわけにもいかないしな」
そのままドラゴンを放置して誰かに手柄を奪われるのも癪だ。だがそれ以上にドラゴンの肉には興味がある。美味しい美味しくないに問わず、腹が減っていた。
まず持っていた聖剣でぎこちない手つきで解体していく。聖剣をこのように使うのは贅沢ではあるが、今手持ちの刃物はこれしかないので仕方がない。
「な、何を!?」
「ん?」
再び美月が声をあげた。
今はコウスケがドラゴンの肉を食っている最中だ。
「肉を食っているだけだが?」
「魔物の肉を食うなんて……」
「毒はないはずだが」
「毒はなくても、魔物の魔力が多く入っていて人体に異常をきたすと……」
コウスケは美月の言葉に首を傾げる。
確か鑑定では無害と表記されていたはずだ。だが彼女の反応を見るに嘘はついていないようだ。ならばもう一度確かめるしかない。
コウスケはそう考え、ドラゴンの肉を鑑定しようとしたが、もしかするとドラゴンは魔物の肉と表記が異なるかもしれないと思い、一度洞窟を戻り適当な魔物を殺して鑑定した。
『魔獣の肉』
魔獣の肉。食用には向かないが毒はない。人体には無害とされているが――
ここまでは前回見た表記と同じだ。だが、続きがあった。
――過度に摂取することによって人体に異常をきたす場合がある。摂取量、食べ合わせによっては種族変異をもたらす可能性もある。
「……はは」
その大切な部分を見逃したあの時の自分に呆れ返る。結果として腕が生えたのは種族変異のおかげなのかもしれないが、あの痛みを経験したのもこの表記を見なかったのが原因だ。最終的に見なかったことが幸いなのか災いなのかは判断しにくい。摂取量はそれ以外食べ物がなかったから仕方がない、だが食べ合わせについてはどう考えたってあのキノコのせいだ。食べなければあの痛みは味合わずに済んだと考えると、複雑な気持ちになる。何という偶然だろうか。
しかしもうコウスケはもう心配する必要はない。とっくに種族変異は終えた。しかも身体が再生するという特典付きだ。
そして腹が減っている。ならば食う。そうして美月の視線を受けながらコウスケはドラゴンの肉を食らった。
長い時間をかけてコウスケはドラゴンを未熟ながらも解体し終えた。
改めて考えると、まさかあのドラゴンを倒せるだなんて思ってもみなかったことである。
しかし今回は一人では倒せなかっただろう。とチラリと美月の方を見て思う。
だが巻き込まれたのもそいつらのせいであることは変わりないのだが。
「美月。お前は何でここにいる?」
「……何で名前を」
美月は怪訝そうな顔でコウスケを見た。落ち着いたところで、ようやく今まで自分が名前で呼ばれていることに気づいたのだろう。
コウスケの方はその黒髪を見ているだけで歯ぎしりしたくなる思いを必死に抑え口を開いていた。いくら平静を装っているとはいえ心の中ではドロドロとした感情が確かに存在しているのだ。
「『鑑定』だよ、お前ら勇者全員持ってただろ?」
「……何でそれを」
その言葉に苦い表情を浮かべる美月。
まさかそんな表情を浮かべるとは思ってもいなかったコウスケは目元をピクリと動かした。
てっきり驚いた顔か、疑うような顔を浮かべると思っていたところで、まさかの苦い顔。つまり何かやましいことがあったということだ。まさかとは思うが、コウスケを見捨てたことに対する後ろめたい気持ちを持っているというのだろうか。
「……え!?」
美月が驚いたような表情で声を上げた。恐らく『鑑定』でもしたのだろう。
「鑑定でもしたか? そうだよ俺は光助だ、お前らからゴミのような扱いを受けていた」
「……っ」
コウスケの言葉を受け、美月は言葉を失った。その表情からは何を考えているかは伺えない。
「それでさっきの質問に答えて貰おうか。どうしてここにいる?」
「それは……迷子になって」
「迷子ねぇ、じゃあここがどこか分かるか?」
「ここは……迷宮じゃないんですか?」
美月は不思議そうな声音でコウスケを見た。
確かにこんなところに目的もなく入る人なんていないし、そもそも迷宮なんて危ない所は、入る時には警備兵あたりに確認を求められるだろう。つまり迷宮と知らずに入る人なんていないはずなのだ。
だがコウスケは知らない。何せ目覚めた時にはすでにここにいたのだから。
「迷宮か……なんだそれは」
迷宮という単語を考察するが、迷路のような洞窟というイメージしか湧かない。
そんな様子のコウスケに、美月はますます不思議そうな顔をしていた。
「勇者が来るくらいなんだ、修行場みたいなもんなんだろ?」
「は、はい、そんなところです」
恐らくそんな簡単な場所ではない。だがそんなことは身をもって経験している。ドラゴンなんて初心者が相手をしていいものじゃない。
「そんなビクビクしなくてもこれは返すよ」
「え、あ、はい」
コウスケは手に持っていた聖剣を美月へ返す。
このまま借りパクしても良いのだが、これ以上借りを作りたくないのと、魔族という種族のためか、聖剣からの反発が強い。これではどれだけ使い込んでも馴染むことはないだろう。それが理由だった。
「意外だな、俺だと知ると、勇者どもは態度をでかくすると思ってたんだがな」
コウスケは口元を吊り上げ、皮肉を口にする。とはいえ、この言葉は本心だった。自分があの光助だと知れば、態度を急変させ、横暴な態度を取ってくると思っていた。思っていたのだが、美月はその逆。光助だと知ると、態度が小さくなった。
「そんなことは……」
「まあお前らに対する俺の感情は変わらないけどな」
コウスケの言葉に美月はビクッと体を震わせた。コウスケの今までの扱いを知っているのであれば、当然の反応だ。
自分たちは憎まれている。そんなことは誰だって推測できる。
「だから俺はお前が異世界人だと知ったとき、助けなければ良かったと思ったよ」
コウスケの言葉に美月は何も言わず顔を伏せたままだ。
「はぁ、まさか復讐相手と共闘するなんてな。つくづく運命ってのは……」
運命に今更文句を言うつもりはない。だがあの神がそうしたことを引き起こしているのであれば、一言文句を言ってやりたい。と思うコウスケだった。
「あ、あの……光助先輩」
「何だ? ってかお前後輩だったのか」
異世界である以上先輩後輩どうでもいいのだが、こういうところはキッチリしているらしい。しかもあの光助相手にだ。コウスケが先輩と呼ばれる経験なんてほとんどなかったのだ。
「私は……」
「心の底ではいじめに反対していたってか? それがどうした、表面上は決して批判はしてないんだろ? ならお前も同罪だ」
「……はい」
コウスケの憎しみのこもった口調に言葉を失う美月。
ひと時の間が空き、息を吸ってコウスケが言葉を発した。
「だが、お前がいなければ俺はここから進むことなんて出来なかった」
その言葉を聞いて美月が顔をあげる。
「だからお前は殺さない」
「え?」
美月が戸惑いの声をあげるが、そこへ複数の足音が洞窟内に響いた。
人であることは、音を聞いて分かる。そして最悪の事態はそれが美月を探しに来た勇者であることだ。しかもその可能性が結構高い。
「はぁ、次から次へと」
ため息を吐きながらコウスケは、近づく足音に対して身構えた。
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