[休止]The#迷走のディフォンヌ

芒菫

第十走 「ドMの神髄」

「儂とエレミーは本当に家族なんじゃ」

—————唐突過ぎて空気のが重い。時刻は午前2時を回っている。エレミーは、セシュレの背中ですっかり寝てい、コブ爺は善蔵と俺でなんとか支えながら歩っている状態。
 一応、コブ爺の応急処置は済んでいるが、さほど良くないのが現状。
もしこのまま怪我が治らなかったら。というのが前提で、俺達はセシュレが仕えている「マリア・ローズ」の屋敷に運ぶことに決まった。
なんと、おまけ付きで俺達もだそうだ。これで寝床につけるぜヒャッハー!!
と、ニヤニヤしながら想像を膨らませている俺に、善蔵がブーイングサインで合図してくる。
 泣けるぜ・・・

「そう、エレミーは儂の孫でな。儂の息子夫婦はエレミーを生んだ数日後、消息不明。ばぁさまも儂より先に逝ってしまってな。それで儂が、本当の家族だというのを告げずに見守っているという事なのじゃ」

 「へぇ。そんな悲しいエピソードが・・・・爺さんに一本取られたぜ」

 「とか言って、レイジ泣いてないでしょ?」

と、セシュレんから俺の心に矢が突き刺さるような痛みが。完全に見くびられたぁ・・・
落ち込んでいる俺に、満面の笑みを込めて声を抑えている善蔵が真面目に羨ましくてならん。いっそのこと此奴を斬ってやりたいもんだ。
とは言え、この1日・・いや2日で善蔵に3回も助けられている。これは運命の悪戯か。それとも偶然なのか。

 「神の礎なのかもな」

 「え?」

 俺は、キョトンとした顔で善蔵に答えを返したらしい。またしても善蔵が笑いをこらえる。そんなに笑われると、自分の顔が可笑しいのか本当、気になるわぁ

「忘れたのか礼司。俺の能力。もう日にちが変わってるからな。ただお前の気持ちを知りたかっただけよ。今使っておいてよかったわ」

 仲間外れにされていると思ったのか、セシュレは頬を膨らませて俺達を見つめて完全に怒っていた・・
彼女の眼差しは、俺の心に刺さった矢に温もりをかけるように感じた。

 「え、そんな眼で見つめられるとハァハァ・・ぎょ!?俺もしかしてM?」

 「あぁ、Mかもな」

 「ねぇレイジ!さっきも言ってたけどエムってどういう意味なのさ!教えてよぉ~」

 先程とは違い、俺達に平和が戻った。と思っていた。
 夜なのに、昼間感じる生暖かい風が、木の葉と一緒に俺達を導くように当たってゆく。
そう感じたのも無理はない。何故なら————
初めて「仲間」の大切さを知ることが出来たのだから・・・・


 バァン!!!と上の街から大きな音がした。その状況下に置かれていた、セシュレと善蔵も警戒態勢に入る。
やはり、平和はそう簡単に訪れるものではないな。

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