老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
28話 恐ろしい病
村に到着してすぐに伝えられた情報にユキムラは興奮を隠せなかった。
「僕は採掘、採取、調合を、サリナさんも鍛冶を未経験の人間に指導できるようになりました」
レンはすでに採掘、採取、調合に関してユキムラに比肩する実力を手に入れていた。
サリナも鍛冶に関してはその域まで達している。
素質を持つものがその分野であるところまで極めると、ユキムラと同じようにこの世界の人間に技術を指導できる。
つまり、ゆくゆくはユキムラに頼らずとも人々の指導を任せることが出来るということだ。
これでユキムラが悩んでいた指導面での問題が半分は解決したことになる。
まぁ、素質を持つ人間を探して、しかも気が遠くなるほどの練度をこなさないと到れる境地では無いようだが、それでもファス村の発展の新たなステージであることは間違いなかった。
「師匠がいない3日間で5名移住者が来ています。あとで技術開花をお願いします」
すでに何か怪しい宗教団体の儀式みたいな事になっている……
ユキムラは卓上に並べていく採取した成果を置く手を止める。
「5人か、多いね」
机に置かれたサンプル名をメモしながらレンが答える。
「ええ、やはりギルド支部が出来るという話は影響力が凄いですね。この雪の中街からの移住者が増えています。ギルドができれば発展は約束されたようなものですからね、新天地で一旗あげたいという若い人間が多いです」
ふぅん、とすでに興味は採取したサンプルに移りそうだった意識がある言葉によって引き戻される。
「若い人が多いの?」
「ええ、今回来た5人も20代前半の人たちです。
何か問題でも?」
ユキムラは少し考える、このまま若い人ばかりが集まってくるといろいろと問題が起きる。
その前に村全体を管理してくれる人を探したい。
レンの父であるガッシュに任せてもいいが、ガッシュにこれ以上の負担をかけるのは得策ではない。
そこら辺も今後考えていかないといけないなぁ、ユキムラは少しだけ悩む。
人が増えると悩みも増える、その代わり手に入る物もある。
労働力だ。
「パーセルさんって人はすごかったですね! 鍛冶に採鉱それに作成にまで適正がありました!」
「鍛冶と作成はあんまりいないからね、他の人も適性が複数あるから村の運用も楽になるね」
現在村では素材回収グループ、素材加工グループなど簡単なチーム分けがされていて、ホワイトな職場を目指すユキムラの想いを受けて上手いことシフトをガッシュが引いている。
しかし、ホワイトなシフトを引いても村人はさっぱり守っていない。
ユキムラの取り憑かれたような採取や作成を見ているとついつい残業をしてしまう、中には採取の魅力、採鉱の魅力に取りつかれる人も出ている。
レアアイテムが出たときのアドレナリンの魅力、これがいけない。
自分が行う行動から得られる成果がユキムラに出会ってから圧倒的に向上している。
その結果に自分自身が酔いしれてしまっている、村人たちはそんな状態にあった。
ファス村から生み出される様々な素材や製品は、街を通じて流通されその変化に周囲の町や村は驚いている。
もちろんユキムラは特にそれらの原因を秘匿していないので、視察や入植に何の制限もしていない。
ユキムラに才能を開花してもらい街へ戻り成功する人間も何人か出ている。
春になり交通の行き来が改善すればたぶん凄いことになる。
たまにくるギルドの職員などはそう話している。
ユキムラにとってファス村は大事な場所なので、その村を滅茶苦茶にされるような事態は避けたいと考えていた。
利益になるとわかれば悪意を持って接触してくる人間も出てくることは痛いほど知っている。
味方のふりをして自分の全て、しかも両親を失って得たような代物を剥ぎ取りに来る、笑顔の悪魔たちを山ほど見てきた。
前の世界で唯一無二の味方は弁護士である宗像だけだった。
過去の事を考えて少し気分が悪くなったユキムラは丁度いい時間だったので風呂へと向かう。
大きなお風呂にゆっくりと浸かる。ユキムラが一番リラックスする時間だ。
「ふぃー……」
日本時間でだいたい午後の3時頃なこともあって広い風呂を独り占めする。
天然の木材をふんだんに利用して10人位なら手足を伸ばしても問題ないほどの大きな浴槽。
魔法で作り出され魔法で暖められたお湯ではあるが、木のいい香りをまとっており、リラックス効果は高い。
「やっぱ、そう簡単には変わらないよな……」
誰に話すでもなく一人つぶやくユキムラ。
彼の心に深く刻みつけられた傷は長いVO生活によって作られた厚いかさぶたで隠していた。
この世界での生活でようやくそのかさぶたの下の傷が癒え始めている。
止まった時間が動き出している。
それでも傷が時間をかけて蝕んだものを回復するには、まだ長い時間を必要になるだろう。
それでもユキムラは人とのつながりや、こういった一人の時間、冒険している時間。
その全てが確実に自らの傷を癒やしてくれていることを感じていた。
焦ることはない、これからまだ長い冒険が待っている。
風呂でリラックスして布団に入ると驚くほどスッと眠りにつけた。
寝付きが悪く、浅い眠りで途中で覚めることも多かったユキムラ。
今ではゆっくりと熟睡出来るようになっている。
彼の回復も一歩一歩確実に進んでいた。
「僕は採掘、採取、調合を、サリナさんも鍛冶を未経験の人間に指導できるようになりました」
レンはすでに採掘、採取、調合に関してユキムラに比肩する実力を手に入れていた。
サリナも鍛冶に関してはその域まで達している。
素質を持つものがその分野であるところまで極めると、ユキムラと同じようにこの世界の人間に技術を指導できる。
つまり、ゆくゆくはユキムラに頼らずとも人々の指導を任せることが出来るということだ。
これでユキムラが悩んでいた指導面での問題が半分は解決したことになる。
まぁ、素質を持つ人間を探して、しかも気が遠くなるほどの練度をこなさないと到れる境地では無いようだが、それでもファス村の発展の新たなステージであることは間違いなかった。
「師匠がいない3日間で5名移住者が来ています。あとで技術開花をお願いします」
すでに何か怪しい宗教団体の儀式みたいな事になっている……
ユキムラは卓上に並べていく採取した成果を置く手を止める。
「5人か、多いね」
机に置かれたサンプル名をメモしながらレンが答える。
「ええ、やはりギルド支部が出来るという話は影響力が凄いですね。この雪の中街からの移住者が増えています。ギルドができれば発展は約束されたようなものですからね、新天地で一旗あげたいという若い人間が多いです」
ふぅん、とすでに興味は採取したサンプルに移りそうだった意識がある言葉によって引き戻される。
「若い人が多いの?」
「ええ、今回来た5人も20代前半の人たちです。
何か問題でも?」
ユキムラは少し考える、このまま若い人ばかりが集まってくるといろいろと問題が起きる。
その前に村全体を管理してくれる人を探したい。
レンの父であるガッシュに任せてもいいが、ガッシュにこれ以上の負担をかけるのは得策ではない。
そこら辺も今後考えていかないといけないなぁ、ユキムラは少しだけ悩む。
人が増えると悩みも増える、その代わり手に入る物もある。
労働力だ。
「パーセルさんって人はすごかったですね! 鍛冶に採鉱それに作成にまで適正がありました!」
「鍛冶と作成はあんまりいないからね、他の人も適性が複数あるから村の運用も楽になるね」
現在村では素材回収グループ、素材加工グループなど簡単なチーム分けがされていて、ホワイトな職場を目指すユキムラの想いを受けて上手いことシフトをガッシュが引いている。
しかし、ホワイトなシフトを引いても村人はさっぱり守っていない。
ユキムラの取り憑かれたような採取や作成を見ているとついつい残業をしてしまう、中には採取の魅力、採鉱の魅力に取りつかれる人も出ている。
レアアイテムが出たときのアドレナリンの魅力、これがいけない。
自分が行う行動から得られる成果がユキムラに出会ってから圧倒的に向上している。
その結果に自分自身が酔いしれてしまっている、村人たちはそんな状態にあった。
ファス村から生み出される様々な素材や製品は、街を通じて流通されその変化に周囲の町や村は驚いている。
もちろんユキムラは特にそれらの原因を秘匿していないので、視察や入植に何の制限もしていない。
ユキムラに才能を開花してもらい街へ戻り成功する人間も何人か出ている。
春になり交通の行き来が改善すればたぶん凄いことになる。
たまにくるギルドの職員などはそう話している。
ユキムラにとってファス村は大事な場所なので、その村を滅茶苦茶にされるような事態は避けたいと考えていた。
利益になるとわかれば悪意を持って接触してくる人間も出てくることは痛いほど知っている。
味方のふりをして自分の全て、しかも両親を失って得たような代物を剥ぎ取りに来る、笑顔の悪魔たちを山ほど見てきた。
前の世界で唯一無二の味方は弁護士である宗像だけだった。
過去の事を考えて少し気分が悪くなったユキムラは丁度いい時間だったので風呂へと向かう。
大きなお風呂にゆっくりと浸かる。ユキムラが一番リラックスする時間だ。
「ふぃー……」
日本時間でだいたい午後の3時頃なこともあって広い風呂を独り占めする。
天然の木材をふんだんに利用して10人位なら手足を伸ばしても問題ないほどの大きな浴槽。
魔法で作り出され魔法で暖められたお湯ではあるが、木のいい香りをまとっており、リラックス効果は高い。
「やっぱ、そう簡単には変わらないよな……」
誰に話すでもなく一人つぶやくユキムラ。
彼の心に深く刻みつけられた傷は長いVO生活によって作られた厚いかさぶたで隠していた。
この世界での生活でようやくそのかさぶたの下の傷が癒え始めている。
止まった時間が動き出している。
それでも傷が時間をかけて蝕んだものを回復するには、まだ長い時間を必要になるだろう。
それでもユキムラは人とのつながりや、こういった一人の時間、冒険している時間。
その全てが確実に自らの傷を癒やしてくれていることを感じていた。
焦ることはない、これからまだ長い冒険が待っている。
風呂でリラックスして布団に入ると驚くほどスッと眠りにつけた。
寝付きが悪く、浅い眠りで途中で覚めることも多かったユキムラ。
今ではゆっくりと熟睡出来るようになっている。
彼の回復も一歩一歩確実に進んでいた。
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