老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
206話 海の神
少し可哀想な海の主は無事に扉を開く鍵になる。
鍵は美しく輝く蒼玉の姿をしている。
普通ボスレベルだとあそこまで極端な状態にはならない。
属性カット率がレベル的に限度があるのでかなり軽減出来て楽はできるが、それなりに苦労する難易度あたりに落ち着くのが普通なのだ。
ところがVOのゲームと異なり、ここは装備のレベル制限がない。
だからやりたい放題が素材さえあれば可能なのだ。
美しく輝く蒼玉を扉へ掲げると、蒼玉は淡く光り扉の中央にあるくぼみへと浮遊する。
ピタリと、そこにあることが過去より定められていたように収まると一層力強く光を放つ。
扉の装飾に青い光が広がって、扉全てに行き渡ると扉が音もなく開いていく。
「素晴らしい……」
ユキムラはこういったギミックにすっかり目を奪われている。
どういう構造で、どういう形で再現できるか、見た目の美しさよりも作りてとしての目線ではあるが。
ガニは芸術面の素晴らしさに感嘆している。
「神々しいという言葉はまさにこういったもののためにあるのですね……」
ため息にも似たつぶやきと共に、扉に目を奪われていた。
不思議なことに扉が開いている途中、そこには虚空の暗闇が広がっている。
そして扉が開ききると同時にMDの入り口に似た空間のゆらぎが生じる。
「それじゃあ、いこうか!」
ユキムラはじっくりと観察した扉の構造に満足して、その歪みへと迷いなく歩きだしていく。
MDに入るときと同じような、集中していればわかる僅かな浮遊感を経て別室へと降り立つ。
神殿の先にある神の座す2つの王座の前、謁見の間のような場所だ。
続いて全員が入場する。生命の気配は全くしない。
よく見れば2つの王座の更に奥に扉がある。
「師匠、あの奥が出口ですかね?」
「そうかもね、神様の姿がないんだけど……」
「うーーー、ワン!」
タロが吠えると王座の頭上にパキンと小さな放電が起きる。
それを合図にしたかのように周囲から光の粒が王座へと集まっていき人型をかたどっていく。
光が弾けて人物が現れる瞬間、いつもの時間停止の兆候が現れガニとイオラナは停止した時間に残される。
【アイタタタタ……いやー、やっと身体を伸ばせる……】
その人型がどんどんとはっきりとしてきて実体としての人体を形成していく。
ウェーブの掛かった深い青い髪、力強くややつり目な瞳にドーンと主張した眉、高い鼻に太い唇。
なんというか、ラテン系の濃いおじさま。という印象を受ける。
服装は神らしく真っ白なローブに三叉の槍。
【よくぞ来たな来訪者諸君~、私が海の神パルスだぁ!
不覚にも魔神の手先によって粒子状にされ固定されておった~……。
そちらの神狼殿に手助けしてもらい~、こうして再び現界できたぁ~! 感謝するぅ~!!】
まるでミュージカルのような身振り手振り、歌うような調子での言葉。
やはりこの神は濃い。
【相変わらずねパルス。無理してキャラ作らなくていいわよ】
久々に登場するアルテス。
【おお、なんだ、アルテスとかもいるのか。元気か?】
落ち着いた渋い声で話し始めるパルス。
はっきり言ってソッチのほうがかっこいいと全員一致で思った。
【ユキムラたちもありがとうね。順調に開放してくれて助かるわ】
その後パルスにアルテスが現状を説明する。
【なるほど、そういうことになっているのか……】
【まったく、恩返しのつもりでユキムラを招いたら、とんだトラブルに巻き込んでしまって……】
「自分は凄く楽しいのでお気になさらないでください! 感謝はしますが今の旅を辛いと思ったことは……一度だけありましたが、助けてもらって感謝してます」
【ありがとう、そう言ってもらえるとせめてもの慰みになるわ】
【さて、そしたら私も力を貸そうか、それがクロノスの箱だな】
タロの首に下げた箱をそっと持ち上げて軽く掲げる。
凄まじい力が箱に流し込まれる。
【しかし、そのお姿……。お人が悪い……】
箱をタロに返しながらつぶやくパルス、タロは返事代わりに頬に軽く鼻をちょんとくっつける。
ふっ、と笑い。アルテスの隣へパルスは戻る。
【さて、ユキムラもこの国はあと少しで旅立てそうだし。こっちも人が増えて大分楽になった。
早くユキムラが本当にゆったりと過ごせる世界になることを陰ながら応援しているわ】
【頑張れよ来訪者とその友たちよぉ!】
オペラ歌手のように仰々しくポーズを取って、パルスはアルテスと一緒に光りに包まれ消えていった。
二人の姿が消えると時間の流れが再び動き出す。
「……? 今なにか光みたいなのがあったような……?」
「ホントですね、光が集まったと思ったら消えてしまいました」
「うーんと、ごめん。来訪者のちからで少し別のところで話してきたんだよ」
「ほお、さすが来訪者、伝説の存在ですな」
魔法の言葉で二人を納得させる。
玉座の後方の扉を抜けると宝の間と外へのワープゲートが置かれた部屋になっていた。
宝はリヴァイアサン討伐報酬とダンジョン攻略報酬の二つが置かれていた。
「ギルド規約に則ってダンジョン報酬には封印を施します」
ユキムラはイオラナに宣誓し封印を施す。
王都フィリポネアに先に送ってもらってウラスタの街を整備してフィリポネアへ向かう。
それがユキムラ達の今後の予定だ。
こうしてガニとイオラナ育成とダンジョン攻略は大成功で幕を閉じる。
鍵は美しく輝く蒼玉の姿をしている。
普通ボスレベルだとあそこまで極端な状態にはならない。
属性カット率がレベル的に限度があるのでかなり軽減出来て楽はできるが、それなりに苦労する難易度あたりに落ち着くのが普通なのだ。
ところがVOのゲームと異なり、ここは装備のレベル制限がない。
だからやりたい放題が素材さえあれば可能なのだ。
美しく輝く蒼玉を扉へ掲げると、蒼玉は淡く光り扉の中央にあるくぼみへと浮遊する。
ピタリと、そこにあることが過去より定められていたように収まると一層力強く光を放つ。
扉の装飾に青い光が広がって、扉全てに行き渡ると扉が音もなく開いていく。
「素晴らしい……」
ユキムラはこういったギミックにすっかり目を奪われている。
どういう構造で、どういう形で再現できるか、見た目の美しさよりも作りてとしての目線ではあるが。
ガニは芸術面の素晴らしさに感嘆している。
「神々しいという言葉はまさにこういったもののためにあるのですね……」
ため息にも似たつぶやきと共に、扉に目を奪われていた。
不思議なことに扉が開いている途中、そこには虚空の暗闇が広がっている。
そして扉が開ききると同時にMDの入り口に似た空間のゆらぎが生じる。
「それじゃあ、いこうか!」
ユキムラはじっくりと観察した扉の構造に満足して、その歪みへと迷いなく歩きだしていく。
MDに入るときと同じような、集中していればわかる僅かな浮遊感を経て別室へと降り立つ。
神殿の先にある神の座す2つの王座の前、謁見の間のような場所だ。
続いて全員が入場する。生命の気配は全くしない。
よく見れば2つの王座の更に奥に扉がある。
「師匠、あの奥が出口ですかね?」
「そうかもね、神様の姿がないんだけど……」
「うーーー、ワン!」
タロが吠えると王座の頭上にパキンと小さな放電が起きる。
それを合図にしたかのように周囲から光の粒が王座へと集まっていき人型をかたどっていく。
光が弾けて人物が現れる瞬間、いつもの時間停止の兆候が現れガニとイオラナは停止した時間に残される。
【アイタタタタ……いやー、やっと身体を伸ばせる……】
その人型がどんどんとはっきりとしてきて実体としての人体を形成していく。
ウェーブの掛かった深い青い髪、力強くややつり目な瞳にドーンと主張した眉、高い鼻に太い唇。
なんというか、ラテン系の濃いおじさま。という印象を受ける。
服装は神らしく真っ白なローブに三叉の槍。
【よくぞ来たな来訪者諸君~、私が海の神パルスだぁ!
不覚にも魔神の手先によって粒子状にされ固定されておった~……。
そちらの神狼殿に手助けしてもらい~、こうして再び現界できたぁ~! 感謝するぅ~!!】
まるでミュージカルのような身振り手振り、歌うような調子での言葉。
やはりこの神は濃い。
【相変わらずねパルス。無理してキャラ作らなくていいわよ】
久々に登場するアルテス。
【おお、なんだ、アルテスとかもいるのか。元気か?】
落ち着いた渋い声で話し始めるパルス。
はっきり言ってソッチのほうがかっこいいと全員一致で思った。
【ユキムラたちもありがとうね。順調に開放してくれて助かるわ】
その後パルスにアルテスが現状を説明する。
【なるほど、そういうことになっているのか……】
【まったく、恩返しのつもりでユキムラを招いたら、とんだトラブルに巻き込んでしまって……】
「自分は凄く楽しいのでお気になさらないでください! 感謝はしますが今の旅を辛いと思ったことは……一度だけありましたが、助けてもらって感謝してます」
【ありがとう、そう言ってもらえるとせめてもの慰みになるわ】
【さて、そしたら私も力を貸そうか、それがクロノスの箱だな】
タロの首に下げた箱をそっと持ち上げて軽く掲げる。
凄まじい力が箱に流し込まれる。
【しかし、そのお姿……。お人が悪い……】
箱をタロに返しながらつぶやくパルス、タロは返事代わりに頬に軽く鼻をちょんとくっつける。
ふっ、と笑い。アルテスの隣へパルスは戻る。
【さて、ユキムラもこの国はあと少しで旅立てそうだし。こっちも人が増えて大分楽になった。
早くユキムラが本当にゆったりと過ごせる世界になることを陰ながら応援しているわ】
【頑張れよ来訪者とその友たちよぉ!】
オペラ歌手のように仰々しくポーズを取って、パルスはアルテスと一緒に光りに包まれ消えていった。
二人の姿が消えると時間の流れが再び動き出す。
「……? 今なにか光みたいなのがあったような……?」
「ホントですね、光が集まったと思ったら消えてしまいました」
「うーんと、ごめん。来訪者のちからで少し別のところで話してきたんだよ」
「ほお、さすが来訪者、伝説の存在ですな」
魔法の言葉で二人を納得させる。
玉座の後方の扉を抜けると宝の間と外へのワープゲートが置かれた部屋になっていた。
宝はリヴァイアサン討伐報酬とダンジョン攻略報酬の二つが置かれていた。
「ギルド規約に則ってダンジョン報酬には封印を施します」
ユキムラはイオラナに宣誓し封印を施す。
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