老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
210話 カルフーイ火山
「ユキムラ達はこのような装備を使っているのか……これは武具というよりも戦術兵器……いや、戦略兵器だな……私の弓でさえおいそれと街中では放てん」
ユキムラ達と装備の試打をしたアスリの感想である。
ユキムラたちも普通に鍛錬や模擬戦をすると地形を変えてしまうので、最近は専用の魔道具内での鍛錬をしないと周囲への影響が大きすぎる。
ゲームではなく現実だとそういうことを気にしなくてはならない。
慣れていればきちんと力加減をもって訓練も出来るが、急速に強くなった場合などはうまく調整ができずに大惨事、なんてことになりかねない。
ガニとイオラナの父のように……不幸な事件だった……
めでたく? 二人は婚約を発表できたのだから、結果良ければ全て良しなのだ。
アスリは自分の職務の引き継ぎをあっという間に済ませた。普段からそういった備えはしてあったそうで、自分に何かあっても問題がないようにしてあるそうだ。
ユキムラはそういった準備の大切さの重要性を改めて学ばせてもらった。
白狼隊やサナダ商会の幹部連と非常事態マニュアル作りは『あの事件』から行っていた。
そこにアスリのノウハウが加わりより完成度の高い物になっていく。
「さて、そしたら明日には出発しましょう。予定より少し遅れましたが、フィリポネア王都へは余裕を持って到着できるでしょう」
数日の訓練を経て出立の準備が完成する。
相変わらず短期間でファンをつくるレン、ソーカ、ヴァリィは衛兵たちに惜しまれながら出立する。
猛烈な速度で移動しながらその衝撃を殆ど感じない移動手段にアスリは驚きを隠せない。
「もう、我々の考えている戦いは別の次元になりそうだな……」
「そうですねー、魔王や魔神の侵攻が始まったら人同士のいがみ合いなんてしている暇はなくなると思いますよー」
 
「確かに南には人の入れない死の海がある。
その向こうには魔王が統べる大陸があるとは伝えられているが……」
「マギカポイント魔国、魔王ザルティスが治める国。おとぎ話の話ですよね師匠?」
ユキムラがいろいろとネタバレを話そうとするといつもの耳鳴りと同時に女神の声が聞こえる。
『ユキムラ、駄目よ話しちゃ。その話はその時が来るまで禁止。
もし話しても貴方以外には意味不明に聞こえるように変えますからね』
そしてすぐに女神の声は聞こえなくなる。神様が出てくる時の独特の空間、雰囲気も消失する。
「う、うん。まぁおいおいきっとわかるさ」
あまりの突然の出来事にぎこちなく返答するので精一杯だった。
多少のネタバレはしてきたけど、まだ明かされていない謎の大陸の詳細を話すのはどうやら駄目なようだ……それにしても、女神たちはユキムラ達をそれなりに見ていてくれているんだな、とユキムラは変なところに感心していた。
「見えてきましたな、あの白煙が上がっている山がカルフーイ火山です。
もう少し進むと地面から火柱やガスなども出ており危険地帯になってくる」
「師匠、そう言えばそのダンジョンにはどうやって近づくんですか?」
「そうか、説明してなかったね。実は火山から少し離れた場所に火山の地下へとつながる洞窟が有るんだよ、今はそこに向かっているんだよ」
「なんと!? そんなことは聞いたこともなかったが、ユキムラが言うならそうなんだろう……」
「カルフーイ火山の南の小島にある打ち捨てられた祠。その祠に海神の護りを祀ることで扉は開かれるのです。そして海神の護りはこないだのリヴァイアサンの宝に入っていたってわけだよ」
「ユキムラさんはなんでも知っているんですねー」
「いやー、最近は知らないことのほうが多いから、たまに知っていることがあるってぐらいに思っておいてもらったほうが嬉しいなぁ……。自分たちで考えることは忘れないでね」
ユキムラもあまりにVOの知識に頼る危険性は感じていた。
すでにゲームで言ったら別ゲーになっている。
各地の一部のイベントはこの世界でも知識を使ってなんとかなることもある。その程度に考えることにしている。
武器の情報やアイテムの情報としての知識、技や魔法の知識はユキムラの真骨頂として役に立てまくれるので、ユキムラとしてはそちらを活かして今後の冒険に寄与したいと思っている。
「ユキムラ! 目の前は海だぞ! うおっ!!
……なんと……私は夢を見ているのか……船でもないものが海を走っている……」
わざと黙っていてアスリを驚かせることには成功して、目的の島へと到着する。
小さな小島に静かな森、そしてその森を暫く進むと真っ白な石で作られた祠が、ところどころ崩れてはいたが、たしかにそこに存在していた。
「みんなで手分けして祠を修復しよう」
全員で崩れた祠を修復していく。場合によっては手持ちの石材などを利用して出来る限り元の形に近いように作り上げていく。
「この中に海神の護りをお供えすれば……完成っと!」
美しく輝く蒼い龍を象った像を祠の中へ供える。
森に囲まれた祠の直上から光が差し込み、龍の像へと降り注ぐ。
周囲に青い光を反射させ、そして像が光り輝いていく。
ドドドドドと地面が振動を起こす。
祠の背後の大きな石が後方へとずれて、火山へと通じる洞窟の入り口が口を開く。
その入口にはいつもの空間の歪みが存在しており、MDであることを示している。
「そしたら、ここからが本番だから、気をつけていこう」
ユキムラの指示で全員がその階段を降りていく。
その先には入り口からは想像ができない美しい通路が広がっていた。
ユキムラ達と装備の試打をしたアスリの感想である。
ユキムラたちも普通に鍛錬や模擬戦をすると地形を変えてしまうので、最近は専用の魔道具内での鍛錬をしないと周囲への影響が大きすぎる。
ゲームではなく現実だとそういうことを気にしなくてはならない。
慣れていればきちんと力加減をもって訓練も出来るが、急速に強くなった場合などはうまく調整ができずに大惨事、なんてことになりかねない。
ガニとイオラナの父のように……不幸な事件だった……
めでたく? 二人は婚約を発表できたのだから、結果良ければ全て良しなのだ。
アスリは自分の職務の引き継ぎをあっという間に済ませた。普段からそういった備えはしてあったそうで、自分に何かあっても問題がないようにしてあるそうだ。
ユキムラはそういった準備の大切さの重要性を改めて学ばせてもらった。
白狼隊やサナダ商会の幹部連と非常事態マニュアル作りは『あの事件』から行っていた。
そこにアスリのノウハウが加わりより完成度の高い物になっていく。
「さて、そしたら明日には出発しましょう。予定より少し遅れましたが、フィリポネア王都へは余裕を持って到着できるでしょう」
数日の訓練を経て出立の準備が完成する。
相変わらず短期間でファンをつくるレン、ソーカ、ヴァリィは衛兵たちに惜しまれながら出立する。
猛烈な速度で移動しながらその衝撃を殆ど感じない移動手段にアスリは驚きを隠せない。
「もう、我々の考えている戦いは別の次元になりそうだな……」
「そうですねー、魔王や魔神の侵攻が始まったら人同士のいがみ合いなんてしている暇はなくなると思いますよー」
 
「確かに南には人の入れない死の海がある。
その向こうには魔王が統べる大陸があるとは伝えられているが……」
「マギカポイント魔国、魔王ザルティスが治める国。おとぎ話の話ですよね師匠?」
ユキムラがいろいろとネタバレを話そうとするといつもの耳鳴りと同時に女神の声が聞こえる。
『ユキムラ、駄目よ話しちゃ。その話はその時が来るまで禁止。
もし話しても貴方以外には意味不明に聞こえるように変えますからね』
そしてすぐに女神の声は聞こえなくなる。神様が出てくる時の独特の空間、雰囲気も消失する。
「う、うん。まぁおいおいきっとわかるさ」
あまりの突然の出来事にぎこちなく返答するので精一杯だった。
多少のネタバレはしてきたけど、まだ明かされていない謎の大陸の詳細を話すのはどうやら駄目なようだ……それにしても、女神たちはユキムラ達をそれなりに見ていてくれているんだな、とユキムラは変なところに感心していた。
「見えてきましたな、あの白煙が上がっている山がカルフーイ火山です。
もう少し進むと地面から火柱やガスなども出ており危険地帯になってくる」
「師匠、そう言えばそのダンジョンにはどうやって近づくんですか?」
「そうか、説明してなかったね。実は火山から少し離れた場所に火山の地下へとつながる洞窟が有るんだよ、今はそこに向かっているんだよ」
「なんと!? そんなことは聞いたこともなかったが、ユキムラが言うならそうなんだろう……」
「カルフーイ火山の南の小島にある打ち捨てられた祠。その祠に海神の護りを祀ることで扉は開かれるのです。そして海神の護りはこないだのリヴァイアサンの宝に入っていたってわけだよ」
「ユキムラさんはなんでも知っているんですねー」
「いやー、最近は知らないことのほうが多いから、たまに知っていることがあるってぐらいに思っておいてもらったほうが嬉しいなぁ……。自分たちで考えることは忘れないでね」
ユキムラもあまりにVOの知識に頼る危険性は感じていた。
すでにゲームで言ったら別ゲーになっている。
各地の一部のイベントはこの世界でも知識を使ってなんとかなることもある。その程度に考えることにしている。
武器の情報やアイテムの情報としての知識、技や魔法の知識はユキムラの真骨頂として役に立てまくれるので、ユキムラとしてはそちらを活かして今後の冒険に寄与したいと思っている。
「ユキムラ! 目の前は海だぞ! うおっ!!
……なんと……私は夢を見ているのか……船でもないものが海を走っている……」
わざと黙っていてアスリを驚かせることには成功して、目的の島へと到着する。
小さな小島に静かな森、そしてその森を暫く進むと真っ白な石で作られた祠が、ところどころ崩れてはいたが、たしかにそこに存在していた。
「みんなで手分けして祠を修復しよう」
全員で崩れた祠を修復していく。場合によっては手持ちの石材などを利用して出来る限り元の形に近いように作り上げていく。
「この中に海神の護りをお供えすれば……完成っと!」
美しく輝く蒼い龍を象った像を祠の中へ供える。
森に囲まれた祠の直上から光が差し込み、龍の像へと降り注ぐ。
周囲に青い光を反射させ、そして像が光り輝いていく。
ドドドドドと地面が振動を起こす。
祠の背後の大きな石が後方へとずれて、火山へと通じる洞窟の入り口が口を開く。
その入口にはいつもの空間の歪みが存在しており、MDであることを示している。
「そしたら、ここからが本番だから、気をつけていこう」
ユキムラの指示で全員がその階段を降りていく。
その先には入り口からは想像ができない美しい通路が広がっていた。
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