(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
祭りの季節は恋模様?・2
「神様、ですか……」
ふとそこで俺は、前にメリューさんから聞いた昔話を思い出した。一瞬のようで、それでいて永遠の出来事にも取れる、あの昔話。
メリューさんがかつては人間だった……今思えば、むしろそうであって当たり前だったのかもしれない。あんなに表情豊かであるのにドラゴンだなんて、正直信じられなかったし。
それにしても、ドラゴン……か。何で俺はこんな『異世界の象徴』と喫茶店を経営することになってしまったのだろう? それを知りたい人間は、きっと俺が思っている以上に多いのかもしれない。少なかったら、ただの驕りに過ぎないのだけれど。
……そう俺が物思いに耽っている、そんなタイミングの出来事だった。
ドン! と短い破裂音があった。
それを聞いて俺は我に返る。音の鳴る方向を急いで振り向いた。
さらに二度、間髪を容れずに破裂音が鳴り響く。それが鳴るにつれて、会場の空気は盛り上がっていく。
「いったい、何が……!」
「そう慌てる必要は無い。上を見てみろよ、ケイタ。そうすれば君の知りたい真実が掴めるさ」
メリューさんは人差し指を立てて、そう言った。
はて、それはいったいどういうことなのか? 理解に苦しむが、俺は上を見た。
――そこには、夜空に花が咲く光景が広がっていた。
「これは……?」
「花火、って言うんだっけか。ケイタの居る世界では」
こくり、と俺はメリューさんに言われるがままに頷く。
さらに、メリューさんの話は続く。
「きっとこれを見て『珍しい』と思ったかもしれないな。まぁ、確かに珍しいかもしれない。この国でもこれほど大々的に花火を打ち上げることは無いからな。何せ、今はこの国の生誕祭だ。めったに打ち上げることのない花火を打ち上げて、国の誕生日を祝う……って話だよ」
国の誕生日を祝う、か。俺の住んでいた国ならそんなことは無い。別に愛国心が無い、ってわけでも無いと思うのだが……まぁ、この国に比べたら負けるかもしれないな。それほどに、熱量が違う。
「……さてと、ざっと見渡したが何か良さげな食材はあったか、ティア」
「入口前のお店で、マキヤソースとスペシャルアイアンメイデンドレッシングが売っていたよ、樽で」
「樽で!? ……何だよ、それ。もっと早く言ってくれないと。入口なんてここから走っても十分以上かかるわよ! 人混み、雑踏の中じゃもっと時間がかかるって言うのに……!」
普段の彼女なら地団駄を踏みたいところだが、そうもいかない。
仕方なく彼女は踵を返して、雑踏の中を分け入るように進んでいった。ティアさんも後を追うように走る。そして最後に、俺。脇目もふらずに走るメリューさんたちに追い付けなくなっていく。姿が小さく、小さくなっていく。ちくしょう、もっと後ろを確認しろよ! そんなツッコミなんて出来る余裕も無かった。
そして俺はとうとう疲れ果て、その場でへたり込んでしまった。
「大丈夫?」
俺の頭上から、そんな優しい声が聞こえたのは……そのときだった。
ふとそこで俺は、前にメリューさんから聞いた昔話を思い出した。一瞬のようで、それでいて永遠の出来事にも取れる、あの昔話。
メリューさんがかつては人間だった……今思えば、むしろそうであって当たり前だったのかもしれない。あんなに表情豊かであるのにドラゴンだなんて、正直信じられなかったし。
それにしても、ドラゴン……か。何で俺はこんな『異世界の象徴』と喫茶店を経営することになってしまったのだろう? それを知りたい人間は、きっと俺が思っている以上に多いのかもしれない。少なかったら、ただの驕りに過ぎないのだけれど。
……そう俺が物思いに耽っている、そんなタイミングの出来事だった。
ドン! と短い破裂音があった。
それを聞いて俺は我に返る。音の鳴る方向を急いで振り向いた。
さらに二度、間髪を容れずに破裂音が鳴り響く。それが鳴るにつれて、会場の空気は盛り上がっていく。
「いったい、何が……!」
「そう慌てる必要は無い。上を見てみろよ、ケイタ。そうすれば君の知りたい真実が掴めるさ」
メリューさんは人差し指を立てて、そう言った。
はて、それはいったいどういうことなのか? 理解に苦しむが、俺は上を見た。
――そこには、夜空に花が咲く光景が広がっていた。
「これは……?」
「花火、って言うんだっけか。ケイタの居る世界では」
こくり、と俺はメリューさんに言われるがままに頷く。
さらに、メリューさんの話は続く。
「きっとこれを見て『珍しい』と思ったかもしれないな。まぁ、確かに珍しいかもしれない。この国でもこれほど大々的に花火を打ち上げることは無いからな。何せ、今はこの国の生誕祭だ。めったに打ち上げることのない花火を打ち上げて、国の誕生日を祝う……って話だよ」
国の誕生日を祝う、か。俺の住んでいた国ならそんなことは無い。別に愛国心が無い、ってわけでも無いと思うのだが……まぁ、この国に比べたら負けるかもしれないな。それほどに、熱量が違う。
「……さてと、ざっと見渡したが何か良さげな食材はあったか、ティア」
「入口前のお店で、マキヤソースとスペシャルアイアンメイデンドレッシングが売っていたよ、樽で」
「樽で!? ……何だよ、それ。もっと早く言ってくれないと。入口なんてここから走っても十分以上かかるわよ! 人混み、雑踏の中じゃもっと時間がかかるって言うのに……!」
普段の彼女なら地団駄を踏みたいところだが、そうもいかない。
仕方なく彼女は踵を返して、雑踏の中を分け入るように進んでいった。ティアさんも後を追うように走る。そして最後に、俺。脇目もふらずに走るメリューさんたちに追い付けなくなっていく。姿が小さく、小さくなっていく。ちくしょう、もっと後ろを確認しろよ! そんなツッコミなんて出来る余裕も無かった。
そして俺はとうとう疲れ果て、その場でへたり込んでしまった。
「大丈夫?」
俺の頭上から、そんな優しい声が聞こえたのは……そのときだった。
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