(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~

巫夏希

ワインレッドの心・中編

「それにしても私が来る前にもうメニューをいうとは。それに、ここは喫茶店だぞ。酒があると思っているのか」
「でも、ありますよね? 確か」
「うん……まあ、そりゃあ、な。無いことはない。でも、お前たちに出してもらうことはやめるか。一応、酒だ。この世界なら問題はないが、もともと住んでいる世界は未成年が酒を提供するのはまずいのだろう?」

 それどころか、未成年は酒を提供する店には勤務できなかったはずだけれど。たぶん。
 メリューさんは踵を返し、豚肉を取り出した。

「……とりあえず、料理は作るよ。ワインは私が選定しておくから、適当に待機しておいてくれ。時間的に直ぐ終わるから、場をつないでくれ。会話がなかったらないで、残っている仕事を片付けておいてくれよ。よろしく」

 そう言われて俺は、その通り仕事をやるしかなかった。まあ、実際時間もあるし、仕事を片付けたほうがいいだろうしな。
 そうして俺も踵を返すと、残っている仕事を片付けるべく、カウンターへと戻っていった。
 カウンターに戻るとサクラが洗い物の残りをしていた。確かにある程度残っていたけれど、やっておいてくれとは言っていない。まあ、言わずにやるのはベストなのかもしれないけれど、お前、何か別の仕事任されていなかったのか?



 メリューさんが料理を完成させるまで、そう時間はかからなかった。それについては相変わらずのことだし、ほんとうにいつもすごいことだと思う。

「お待たせしました」

 そう言ってメリューさんはお皿とワインを置いた。

「注いでもよろしいでしょうか?」

 それを聞いた女性は頷き、ワイングラスを傾ける。
 メリューさんはボトルを開けて、そしてワイングラスに注ぎ始める。
 大体七割程度注いだところでそれをやめると、ボトルをテーブルに置いた。

「ごゆっくりお楽しみください」

 頭を下げて、メリューさんは厨房へ向かう。そのとき、メリューさんは俺とサクラを呼びつけた。いったい何があったのだろうか――そう思って俺とサクラは厨房に向かった。


 ◇◇◇


「どうしました?」
「いや、一応説明しておこうと思ってね。……あのお客さん、どうしてここに来たと思う?」
「どうして、って……。食事をしにきたわけではない、ということですか?」
「うーん、まあ、そうかなあ。間違ってはいないけれど、正しいとも言えない。きっと、彼女は失恋しているのだと思うよ。まあ、それがほんとうかどうか解らないけれど、つらい思いを抱いていることについては間違いないだろうね」
「つらい思い……ですか」
「そういうこと。今回は私が対処するから見ておいて、今度の対策にすべきだね」

 そう言ってメリューさんは再びカウンターへと戻っていった。

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