シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第10話】入校試験②







 俺達が狂戦士たちに襲われてから30分が経過。ようやく試験開始の案内が放送された。
 ローズも持ち直したようで、一安心である。

 「ほら、行ってこい。そろそろお前達2人の番だ」

 「うん」「はい、お姉様!」

 「ちょぉっとまったぁぁあ!!」

 「「「うぇ!?」」」

 母さんだった。物凄い速さで走ってくる。魔法使ってる??

 「はぁ、疲れた。間に合ってよかったわ」

 言葉とは裏腹に見た所汗一つかかずに、呼吸も乱れていない。どこをどう受け取れば「疲れた」になるのかがまるで分からない。母さんすげえ。

 「はーい、頑張ってらっしゃい」

 両手を広げハグを求めるお母様。なぜこの場でこちらから行くことを要求していらっしゃるのでしょうか。試験会場であり、周りの目が気になって仕方ない。

 「ちょっとお母様恥ずかしいですよぉ〜」

 そう言いながらも、母の胸の中に飛び込んでいくその顔はかなり嬉しそうであった。

 「ほら、ショーもおいで?」

 え?そこにですか?まだ妹がスリスリしてますけど。

 「ほらお兄ちゃん早くう」

 ローズさんが呼んじゃいます??

 「仕方ない……」

 諦めきった。白旗です。投了です。和了です。違うか。

 「ふふっ、もう照れちゃって……」

 満足そうな声で母さんが笑う。どうせなら……

 「ほら、姉さんも来なよ」

 「わわ、わたしぃ!?いや、それは……」

 完全に油断していた姉さんを巻き込む。一切驚きを隠せないその様子、親衛隊の方々に見せてあげたかった。萌えすぎて発狂する者が出そうだな。

 「「ほら~お姉ちゃん(様)も〜」」

 「なんでわたしまでこんな目に……」

 校庭で家族4人揃って抱き合うこの様は、他人からはどのように映るのだろうか。想像しただけで辛い。いつも寂しい父さんに代わってあげたい。

 でも姉さん、「こんな目」は酷いよ……

 「失礼。ローラ様、よろしいでしょうか?」

 「あらシャンティー、久しぶりぃ」

 「あらシャンティー、ではありませんよ。皆を待たせてしまっているので……」

 「申し訳ありません、先生……」

 騎士科程の教育担当であるシャンティー。銀髪の麗人ってのがしっかりくる。女性としては長身で、なんだろう。戦国○女に追加メンバーで招集されそうな気がする。

 「おや、エリーゼか。いい。お前が謝ることじゃない」

 「あのね2人とも。シャンティーはね、以前職場で一緒で、その頃からの付き合いの友達なのよ。弟子なんて言い方も出来るかしら」

 「そうだったのですか!?先生」

 「ああ。よく可愛がられたよ。『紅蓮の幼女』に」

 「『白銀の聖母マリア』に褒められるなんて光栄ね」

 「聖母、ですか?」

 ローズが尋ねる。

 「そっ!12年前の大戦の時に、ね。父さんとも一緒に戦ってたのよ。治癒魔法や補助魔法で味方を救い、自らはその剣戟で敵を一掃したのよ。今と変わらぬ見た目でね」

 母さんがニヤニヤしながら教えてくれる。今の見た目は正直にいえば超美人のアラサー女性という感じだ。だが12年前からこの見た目と??

 「は?え?今、シャンティーさん幾つなんですか??」

 「こら、ショー。女性に歳を聞くなんて失礼よ」

 思わず失言。姉さんに窘められる。

 「大戦の時で……16だった」

 28歳シャンティーさんが答えてくれた。心苦しそうに。
 16歳でアラサーに見えていた、と。なるほど、だから聖母か。

 「わたしのほうが3つ上だったのだけど、ね。わたしが幼女で、シャンティーが聖母。あべこべ師弟もいいところだったわ」

 「ま、まぁ昔話はこの辺で……。さぁ試験に向かいましょう。わたしまでこの輪に加わってしまうと、リーヴァ先生に叱られちゃう」

 シャンティーさん、母さんと喋って本音が出てますよ。素にも戻ってるし……。

 「こら!シャンティー!!貴方まで何をしてるの!早く試験を始めるわよ!!その2人で最後なのよ!」

 「あら、リーヴァまで此処に。同窓会でも開けちゃいそうね」

 試験開始まで、もう少しかかりそうだった。







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