シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第40話】海来る②


 「上を外した方がやりやすいんじゃないかと思って」

 と言いながらビキニの上を外す。起き上がった状態で。

 「え、ちょっ……」

 モロですやん。見ちゃいましたよ……ガッツリ。

 「ちょっとゾラ何やってんの!? 年頃の男の子の前でおっぱい丸出しにする普通!?」

 そらそうですよね……。まさかうつ伏せなる前に外すとは思いもしなかったもん。

 「すまない……つい。ショーくんもごめんね。忘れてくれ」

 「まぁ、忘れるっていうのは衝撃的過ぎて無理だと思うけどね、女の子のおっぱいだし。でも、夏の思い出として胸に留めておいて? エリーゼが聞いたら面倒な事になりそうだから。ゾラも黙っといてね」

 「「はい……」」

 マジトーンのアリスさんと、紅くなりながら俯く2人。原因は互いに違うのだけど。

 「ほら、ゾラもうつ伏せになって」

 「ああ」

 「じゃ、やらせて頂きます」

 まずは、オイルを垂らして……。

 「ひゃっ」

 「ゾラったら可愛い声出しちゃって〜」

 「ショーくん、出来れば手に取るなりして、人肌くらいに温めてから……頼む」

 「あ、すいません……」

 色っぽい声出されると、さっきのシーンがフラッシュバックしてな……。

 「指圧だったりで全身をほぐしつつやってくれ」

 「は、はい……」

 「あっ……」

 「……」

 「んっ……」

 「……」

 「はぁ……」

 「そんな艶っぽい声出されるとやりづらいんですけど……」

 「いや、大丈夫だから続けてくれ」

 「はあ……」

 大丈夫じゃないから言ったのに……。困った。アリスさんは困った俺見て、ニヤニヤしながらゆらゆら揺れてるだけだし。

 「……終わりましたよ」

 「じゃあ今度は……」

 「仰向けになろうとしないで下さい!!」

 ゾラさんの肩を押さえ付けてなんとかこれを回避。

 「ショーくん勿体ないよ〜?」

 「アリスさん!? さすがにここまでモロにされると厳しいっす! 仰向けになられた後、俺どうしたらいいかわかんないっすもん!」

 「えぇ〜意気地無しだなぁ〜。問答無用でこう……」

 「説明しなくていいです!」

 「むう……。そんなに嫌がるなら前は自分で塗るよ……」

 「あ、いや、嫌がった訳じゃ……恥ずかしいだけで」

 凹まれるとこっちが申し訳なくなる……。

 「じゃあ次は僕ね〜」

 と言いながらしっかりと仰向けになってくれるアリスさん。そう言えばもう最近は男っぽい服装する姿も見ないなぁ。

 「……どうしてそうなったんすか」

 「へ? 何が?」

 「ゾラさんにあれだけ言ってて、なんで仰向けになってるのか、ってことです」

 「確かにそれは言えてるな……」

 「だって僕男だし〜」

 「その水着で大嘘つかないで下さいよ」

 「はいはい、分かりましたよーだ」

 ぶーたれながらも何だかんだで素直にうつ伏せになるアリスさん。

 何が正解なんだか……。

 「あ、肩だけ出すからあっち向いてて。まぁ見たかったら別に良いけど……」

 「そこで赤くならないで下さい!」

 「ショーくん。わたしの方でも向いてな。いつお姉さんがこっちを見てるか分からないんだから」

 「はっ……!!」

 桃色の出来事の前につい失念していた。姉さんの監視という存在を。辺りを見やるが、特に誰もいないようだった。

 「そんな慌てなくても大丈夫じゃないかな?」

 「いえ、なんか確認だけでもしとかないと、自分の身体が危ないような気がして……」

 「まぁまぁ気にしないでも平気だと思うよー。こっちお願いー」

 「なんか問い詰められたりしたら2人とも助けてくださいよ〜?」

 「大丈夫大丈夫。……船に乗ったつもりでいてよ!」

 今なんて言った!? 泥舟? 大船?

 「大丈夫だよ。説明責任はちゃんと果たすさ」

 って言ってたのに、アリスさんにサンオイルを塗っていた最中に姉さんがご帰還。日焼けと怒りで赤鬼のようになっていた。そこへゾラさんが宣言通り仲介に入ってくれた。

 「ショーくんは何も悪いことはしてないんだ。ただわたし達に尽くしてくれただけなんだ。その……初めてだからちょっと怖さみたいなのもあったんだけど、ショーくんならいいかなって思って、こっちからお願いしたんだ。すごく気持ちよかったし、完璧にこなしてくれたよ」

 誤解を生み出し状況を悪化させる結果に終わったんだけど。

 そのあと20分近くの間砂の上に正座させられて説教をくらうハメになった。当然接地面には魔法でガードを掛けていたけど。魔法に意識を傾けていたぶん、姉さんの話はほとんど耳から入ることなく消えていっていたが。

 解放された後はみんなで遊んだり、アイテムボックスに保管していた肉や魚を各自魔法で焼いたりしてバーベキューしたりと大いに楽しんだ。

 そんなひと夏の思い出であった。



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