シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第42話】文化祭準備




 夏休みも終わり、楽しい地獄の日々が再開。エアコンが無い以上教室は蒸し風呂状態だし。そんな中届いた、1ヶ月後に文化祭開催の報せ。

 何故か姉さんが学校全体における実行委員長になってるのには驚かされたのだが。ローズも事情は知らないみたいだし。人徳かな、やっぱ姉さんだし。

 授業が終わってのホームルームで早速、文化祭の出し物についての話し合いが行われた。他所ではもうある程度決まっているらしく、案を2つ3つ出せとのこと。俺らの同期もといクラスは20人しかいないんだけど……。

 全体として5期100人ぐらいの生徒数な筈だったのに、3つ出せってのはなんかなぁ。何か切羽詰まってるのかな姉さん。

 「で、皆は何かやりたいってのありますか〜?」

 うちのクラスの進行役はローズだ。まぁローズが意見する側に回っても、どうせ食事関連の物しか挙がらないと皆分かっているからなんだろうか、推薦ですんなり収まった。

 まぁ最年少でマスコット的な要素もあるのかもしれない、可愛いし。

 「……」

 だが意見は特に誰からも出なかった。

 「もー。みんなー黙ってないでよー」

 そう言われてもなぁ……。この学校らしい事って思いつかないんだよなぁ〜。劇とかもあるけど、向こうのパクってもこっちの人に伝わるかも分からんし……。かといってこっちの昔話について俺は詳しくないし。

 メイド喫茶とかも定番か……。ただ言い出しっぺが俺ってのは。まだこっちでは12なんだし。

 「モーリス、なんかないかぁ?」

 「ここで僕に振るのかい!?」

 「可愛い妹が困ってるからなぁ」

 「それなら兄のショーが助け舟を……」

 「いや、それは出来ない」

 「どうして?」

 「名案が浮かばないからだ」

 「単純明快だったね……」

 「一応あるっちゃあるんだけどな」

 「どんな?」

 「メイド喫茶」

 「メイド喫茶って、あのメイドさん?」

 どのメイドさんをイメージしたんだかな。

 「あの?」

 「あの……以前任務で宿選びした時の『いらっしゃいませ、ご主人様』っていう挨拶のやつ」

 「あぁ、それで俺の中のイメージと一緒だ」

 「ローズちゃん!」

 「はい、モーリス君!」

 「メイド喫茶を提案します!」

 「メイド喫茶ね……。って、えぇ!!?」

 クラス中がザワつく。メイドを知らない人もいるし、ありがとうと叫ぶやつもいるし、そんな趣味なんだモーリス君……なんて声も聞こえてくる。だから嫌だったんだ。俺が答えるのは。済まないモーリス。

 「以前任務で他の街へ行った時に、食堂だと思って入ったら……ということがあってね」

 さすがに宿を比較するために覗いたとは言わなかったか。

 「この学園の周りの店でもそんな店は無いし、物珍しさが受けるかもしれないだろ?」

 ちょっとフォロー。

 「お兄ちゃんもメイドさん好きなの!?」

 「なんでそーなる。てかモーリスはメイド好きって認識で固まっちまったのか……」

 「ローズちゃん。たしか文化祭には他所からのお偉いさんも来るんだったよね。なら尚更物珍しさっていうのは、僕らの強みになるんじゃないかな。お客様の投票で1位になった所は御褒美もあるって言うし」

 「どう、皆?」

 「メイド喫茶だと女子の負担が大きくなーい?」

 「それについては考えてある。男子は執事として従事すれば負担は五分五分になるはずだよ」

 「……」

 ローズが俺を見ながら何か呟いている。何だろ。

 「わたしは賛成。皆は?」

 「そうか、ローズ、ありがとう!」

 「「「賛成!!」」」

 「じゃあ、全会一致の賛成でわたし達の出し物は決まりね!」

 「でも、これじゃ1つだよね?」

 クラスの中の1人が呟いた言葉が教室中に響き渡った。

 「「「あっ……」」」

 そうでした。姉さんからの通達で2つ3つ用意しろって話だったっけか。

 「でもどうする? ショー、なんかさっきみたいな案はないか?」

 「んー。まぁ、物は言いようだけどさ。メイドという文化というものを紹介するってので1つ。喫茶店で2つ。これでいいんじゃね?」

 「ショーくん、策士……」

 「狡猾な参謀になりそう……」

 「今度からあいつを呼ぶ時は悪代官だな……」

 積みだ。こうなるとは思いもしなかった。

 「じゃあ、面倒だしお兄ちゃんの案でいっか!」

 「「「さんせーい!!」」」

 「じゃあ次は提供するもの。まぁ喫茶なんだから珈琲や紅茶は当然として、食べ物をどうするかだよね」

 「なぁ、ショー。こないだ泊まった時に出てきた緑茶ってのも出せないかな?」

 「いいんじゃねーか? ひと月もあれば仕入れなんて屁でもないだろうし」

 「じゃあ本題の食べ物! 食べ物!! 皆、じゃんじゃん案を出して!」

 さすがローズ。気合いの入り方が違う。

 「「「……」」」

 みんな悩んでいるようだ。まぁ食の神、ローズを納得させるものを提案するのは確かに骨が折れるかもしれない。おい、みんな、そんな目でこっちを見るんじゃない。

 「ショー。出番だよ」

 「モーリスまで……。よよよよ…」

 「お兄ちゃん、何かあるの?」

 なんか笑顔が怖いんだがな……。とりあえず兄に向ける顔じゃねえよ。

 「あれだ。トンカツだ」

 「「「おお!!」」」

 「学食としては定番になったが世間ではまだまだだろう? ここも物珍しさで勝負ってのもありかなって。それに緑茶との相性もバツグンなんだぞ?」

 みんなが唾を飲むような音が聴こえたような……。学食にもお茶は無いからなぁ。文化祭が終わった頃には並ぶようになるかもな。

 あとは他のメニューや、設営場所を決めるだけだな!









 

「シスコンと姉妹と異世界と。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く