シスコンと姉妹と異世界と。

花牧優駿

【第52話】下ごしらえ⑦




 「アリスっていつもあんな感じ?」

 「と、いうと?」

 「みんなの前でも『わたし』って自分のこと言ってる?」

 「そうっすね。最近はもうずっとそうじゃないですか?」

 「うん。お兄ちゃんの言う通りだと思います」

 「へぇ〜。ホントに仲が良いんだね。心が許せる相手の前でしかそう言ってなかったみたいだからさ、今まで」

 「へぇ〜」

 そんな話をしているとアリスさんが帰ってきた。

 「話はつけてきたよ。メイド服の提供から技術指導まで何でもござれ。クラリスもしばらく借りていいってさ!」

 「凄いなアリスは……一体何をしたんだ……」

 「ん、アリスはここを経営してる人の娘って立場だよ。ご令嬢って感じ」

 「ええ!?」

 「マジっすか……」

 箸が使える家庭で、メイド喫茶経営って……。お父さんは確実に元日本人なんだろうな。記憶が戻ってるかは知らないけど。記憶戻ってなくても本能的にメイド喫茶始めたんなら、それはそれで怖いんだけど。

 「てかわたし貸し出されるの? 給料ちゃんと出る?」

 「学園の空き部屋にでも泊まればいいんじゃない? そのへんの手続きはパパがやってくれるみたいよ」

 パパって呼ばせてんのかい! しかもやる気凄いな。どんだけ実は娘大好きなんだよ……。

 「あ、あの……」

 「どうしたの? ローズちゃん」

 「うちのメイド・執事候補の寸法纏めてあるんですけど、これで服も用意できますか?」

 「大丈夫! そこまでやってくれてるのに用意出来なかったらうちの名が廃るわ。とりあえず明後日にはクラリスも学校に向かってもらうから、そこに服も持たせるわ」

 「そんな、自分の荷物に加え服まで? クラリスは大丈夫なのか?」

 「ご心配には及びませんよ、エリーゼ様。メイドは特別な訓練を受けております故」

 「いや、しかし……」

 「はいはい、クラリス。嘘つかないの。収納魔法が使えるから、見た目は手ぶらで来れるわよね」

 「そういう事です」

 パチンとクラリスさんがウインク1つ☆

 「……なら良かった。それにわたしにも様はいらないぞ。同い歳なんだし気を使わなくていい」

 「じゃ、エリーゼで!」

 切り替えが速い……。

 「ショーくん、クラリスにイタズラしたらダメよ? 身体から暗器出てきて痛い思いすることになるからね〜」

 「しないですって!」

 「クラリスさんは今も何か出せるんですか、武器とか?」

 「出せるけど他のお客さんもいるからね。一応専属メイドって護衛でもあるから。……それでは、遅くなりましたがお部屋へご案内致します」


______。



 「「「おお〜」」」

 部屋は宿の大きさに違わず広めの洋室。theホテルといった感じ。

 「じゃ、とりあえず……」

 クラリスさんが背中に手を回したと思ったらトレーがその手に抱えられて出現。そのトレーを叩くと水の入ったグラスが人数分とボトルが。いつから収納してたんだろうか……。アイテムボックスと同じで劣化しない仕様ならいいけど。2日前の水とかだったら嫌だし。

 「お水はここに置いておくね。夕飯の時間になったら館内放送流れるから。まあアリスもいるから当然個室でゆっくりしてもらうことになるけどね。お風呂は貸切風呂があるから、いつでもそこ使って。部屋出て左へ向かって突き当たりでまた左ね。別に大浴場行ってきてもいいと思うけど、貸切の方が落ち着くでしょ?」

 このへんのシステムはさすがに向こうのを踏襲してるんだなぁ。

 「わかった! じゃ、クラリスまた後でね〜」

 「はい、失礼致します」

 クラリスさんが退室。改めて部屋を見ると、ベッドが3つ。簡易ベッドにトランスフォームしそうなソファが1つ。俺はまあそこだろうな。

 「先に俺風呂行っていい? みんなは後でゆっくり入ってよ」

 「……あぁ、そうだな。まだ夕食まで時間があるようだしゆっくりしてくるといい」

 「行ってらっしゃい、お兄ちゃん」

 「左行って突き当たりを左だからね〜」

 「はーい、ありがとうございます」 

 そう言って部屋を後にする。ベッドの場所とかは3人で決めてもらえばいいし。にしてもどんな風呂か楽しみだな〜。洋風のホテルっぽいしバラとか浮いてるのかな。それとも日本人らしくヒノキとかかな?

 塩風呂だったら死ぬな。それだけは間違いない。いろいろ擦りむけてるんだろうし……。そうだったら魔法でなんとかするけど。



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