Creation World Online
第57話
『第5界層がクリアされました。メインクエスト【亡者の呻き】が開始されました。終了条件:敵の殲滅、又は第1界層の拠点崩壊。[進行度:0/3]』
そんなアナウンスが全界層に流れる。
そのアナウンスを聞いたプレイヤー達、特に1界層に引きこもっていたプレイヤー達は慌てふためいた。
何故なら彼等のワールドマップの上、北部にボスクラスの敵を表す大きな赤点が何百、何千と表示されていたからだ。
当然5界層にいたプレイヤー達も1界層のワールドマップを開いて慌てていたが、そんな中で俺とナク、エンリベルはスキルをフル活用して1界層を目指していた、クエストのクリアの為ではない、クエストクリアなど二の次だ。
俺達にとって最も重要なこと、それはアンリの蘇生である。
この為だけに、俺は生きていた。失敗は許されない。もし、失敗したなら俺は自身でこの命を終わらせるか、この先、ただひたすらにあのメガネを殺すために生き続ける復讐者になるだろう。
そんな俺達の目の前に転移用の光り輝く支柱が見えてくる。
俺はそれを操作する前にクエストの進行状況とワールドマップを確認すると、クエストの進行度が[1/3]に変化していた。
そして、赤点も着実に1界層の始まりの街へと近づいていた。
☆
俺達が1界層の始まりの街に転移完了した時、既に周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図と呼んでも過言ではない状態だった。
「うわぁあああ!やめろ!やめてくれ!」
「止まれ!止まってくれ!」
男性プレイヤーがもう1人の男性プレイヤーに斬りつけながら両者ともそう叫んでいる。
2人の頬を流れ落ちるのは涙。
「あなた!」
「ぐっ…!頼む!頼むから、殺してくれ!」
「そんなの、出来るわけないじゃない!」
そう言って涙を流す男女のプレイヤー。
先程から攻撃を仕掛けているプレイヤー達に共通していること、それはマップ上で全員『赤点』で表されている、と言う点だ。
そんなマップの中で俺は見たことのない点を発見する。
赤の中にたった1つだけ紫色の点を見つけたのだ。
『ふむ…主様。紫色の点を目指してください。貴方のお探しの人物がいるでしょう』
やはり、ボスモンスターは特殊な能力でも付けられているのだろうか。まあ、助かるんだけど。
エンリベルに言われた通り、紫点目掛けて街を駆けていくと、先の曲がり角から爆音と共に黒焦げになったプレイヤーが吹き飛んで来て、光の粒子に変わる。
曲がり角を曲がると、そこは別世界だった。
黒く焦げ、半壊した家屋。
石畳が抉れ、ガラス状に変化した地面。
そして、そんな惨劇の中心で死んだような目で涙を流し続ける少女_アンリの姿がそこにはあった。
「アンリ!」
「…シュウ君…?シュウ君!来ないでください!」
目に生気を取り戻したアンリが杖を振ると、小さな針のようなものが俺の右腕の肘に刺さり爆発する。
まるでギャグのように俺の右腕が吹き飛び、消し飛ばされた右肘部分からは夥しい量の血液が流れ落ちた。
痛え…でも、この程度なら大したことはない。
即座に【再生の灯火】で右腕を生やすと、アンリの元へと駆け出した。
そんな俺の両肩目掛けて針が刺さると、爆発して俺は両腕を失うが即座に再生させる。
服がノースリーブになってしまった所為でダサくて仕方ないが我慢するしかないだろう。
アンリは相変わらず泣いていた。
「シュウ君…逃げて…逃げてください…!」
「バカか!黙ってろ!すぐに助け出してやる!」
「無理ですよ!だから!私のことを殺して止めてください!これ以上…私に人を殺させないで…」
アンリの裾から小さなオレンジの箱が飛び出して俺の右足を吹き飛ばす。
だから、そんな悲しそうな顔すんなっての。
「い、イヤァアアア!やめて!もういや!」
これは心が壊れかけてるのか?目から生気がまた感じられなくなってしまった。こんな時は…
「おい!バカアンリ!何バカのくせに考え込んでんだ!」
「なっ!バカってなんですか!」
「そのまんまの意味だよ!バーカ!」
「むっきー!バカバカバカバカうるさいですよ!誰がバカですか!ていうかさっさと逃げてくださいよ!なんで逃げないんですか!そっちこそバカでしょ!?」
「お前ごときになんで俺が逃げなきゃならないんだよ!ボケ!」
「はぁあああ!?ボケってなんですかボケって!」
そんな風に叫び合いながら俺はアンリに近づいて、漸くアンリの腕を掴む。
「おら、バカアンリ。帰るぞ」
「無理ですよ…どうやって帰るっていうんですか。自分で自分の身体もまともに動かせないのに…」
そう言って目を伏せるアンリを抱き寄せると俺はスキル【00ex.anri_rev】を発動させる。
すると、俺の身体から赤と黒の粒子が放出してアンリに吸い込まれると、アンリの服の裾からオレンジ色の粒子が零れ落ちて霧散する。
アンリを解放すると、その顔は真っ赤になっていた。
「い、いきなりなに考えてるんですか!」
「まあまあ、それはそうとどうだ?身体の調子は」
「そんなもの前と変わら…えっ、自由に動かせる…?ちょ、シュウ君なにして_」
そう言った瞬間アンリが頭を抱えて蹲る。
まさか失敗…?
しかし、俺の心配は杞憂に終わる。
何事も無かったかのようにアンリが立ち上がったのだ、しかし前と全く違う点が1つ。
その左目から、青白い0と1を放出し続けていたのだ。
「シュウ君、ある程度のことはわかりました。今、この場をなんとかするのにシュウ君の力が必要なんです。力を…貸してくれませんか?」
アンリはこちらに手を伸ばす。
俺はその手を迷わずに握ると、アンリはニコッと笑う。
次の瞬間、俺の脳が焼き切れた。
正確には、それ程の情報量が一挙に俺の脳内を駆け巡り、かき混ぜ、そして収納される。
短くも長い時間を終えた俺の身体には変化があったようには見えない。
なんだったんだ…?
その時、チラリと俺は視界の端に薄緑のものを捉えた。
見てみようとするが、よく見えない位置にあるようでよくは見えない、なので手で触れてみようとすると、僅かな空気の揺らぎを感じることができた。
その感覚を頼りに出所に手を近づけていった結果、最終的にたどり着いたのは俺の首だった。
ん?ほんとどうなってんの?
「それじゃ、シュウ君。サポートお願いします【セーブ】」
『プレイヤー【アンリ】が拡散の申請をしています。認可しますか?Y/N』
俺が頭に疑問符を浮かべていると、アンリがそう言うと俺の目の前にそんな選択肢が現れる。
よくわからなかったが、俺はY、つまり認可した。
次の瞬間、街の至る所から光の柱が伸びる、そしてその上空には大きな魔法陣が描かれていた。
光の柱を登るように何千人ものプレイヤーが魔法陣に吸い込まれ、消えていく。
そして、吸い込まれた光の柱から消滅していく。
最後の一本が消え去ったのを確認したアンリは杖を地面にトンっと突いて「ロック」と言うと巨大な魔法陣に二本の槍のようなマークが交差して魔法陣が消滅したのであった。
こうして、メインクエスト【亡者の呻き】はある1人の少女によって失敗に終わったのであった。          
そんなアナウンスが全界層に流れる。
そのアナウンスを聞いたプレイヤー達、特に1界層に引きこもっていたプレイヤー達は慌てふためいた。
何故なら彼等のワールドマップの上、北部にボスクラスの敵を表す大きな赤点が何百、何千と表示されていたからだ。
当然5界層にいたプレイヤー達も1界層のワールドマップを開いて慌てていたが、そんな中で俺とナク、エンリベルはスキルをフル活用して1界層を目指していた、クエストのクリアの為ではない、クエストクリアなど二の次だ。
俺達にとって最も重要なこと、それはアンリの蘇生である。
この為だけに、俺は生きていた。失敗は許されない。もし、失敗したなら俺は自身でこの命を終わらせるか、この先、ただひたすらにあのメガネを殺すために生き続ける復讐者になるだろう。
そんな俺達の目の前に転移用の光り輝く支柱が見えてくる。
俺はそれを操作する前にクエストの進行状況とワールドマップを確認すると、クエストの進行度が[1/3]に変化していた。
そして、赤点も着実に1界層の始まりの街へと近づいていた。
☆
俺達が1界層の始まりの街に転移完了した時、既に周囲は阿鼻叫喚の地獄絵図と呼んでも過言ではない状態だった。
「うわぁあああ!やめろ!やめてくれ!」
「止まれ!止まってくれ!」
男性プレイヤーがもう1人の男性プレイヤーに斬りつけながら両者ともそう叫んでいる。
2人の頬を流れ落ちるのは涙。
「あなた!」
「ぐっ…!頼む!頼むから、殺してくれ!」
「そんなの、出来るわけないじゃない!」
そう言って涙を流す男女のプレイヤー。
先程から攻撃を仕掛けているプレイヤー達に共通していること、それはマップ上で全員『赤点』で表されている、と言う点だ。
そんなマップの中で俺は見たことのない点を発見する。
赤の中にたった1つだけ紫色の点を見つけたのだ。
『ふむ…主様。紫色の点を目指してください。貴方のお探しの人物がいるでしょう』
やはり、ボスモンスターは特殊な能力でも付けられているのだろうか。まあ、助かるんだけど。
エンリベルに言われた通り、紫点目掛けて街を駆けていくと、先の曲がり角から爆音と共に黒焦げになったプレイヤーが吹き飛んで来て、光の粒子に変わる。
曲がり角を曲がると、そこは別世界だった。
黒く焦げ、半壊した家屋。
石畳が抉れ、ガラス状に変化した地面。
そして、そんな惨劇の中心で死んだような目で涙を流し続ける少女_アンリの姿がそこにはあった。
「アンリ!」
「…シュウ君…?シュウ君!来ないでください!」
目に生気を取り戻したアンリが杖を振ると、小さな針のようなものが俺の右腕の肘に刺さり爆発する。
まるでギャグのように俺の右腕が吹き飛び、消し飛ばされた右肘部分からは夥しい量の血液が流れ落ちた。
痛え…でも、この程度なら大したことはない。
即座に【再生の灯火】で右腕を生やすと、アンリの元へと駆け出した。
そんな俺の両肩目掛けて針が刺さると、爆発して俺は両腕を失うが即座に再生させる。
服がノースリーブになってしまった所為でダサくて仕方ないが我慢するしかないだろう。
アンリは相変わらず泣いていた。
「シュウ君…逃げて…逃げてください…!」
「バカか!黙ってろ!すぐに助け出してやる!」
「無理ですよ!だから!私のことを殺して止めてください!これ以上…私に人を殺させないで…」
アンリの裾から小さなオレンジの箱が飛び出して俺の右足を吹き飛ばす。
だから、そんな悲しそうな顔すんなっての。
「い、イヤァアアア!やめて!もういや!」
これは心が壊れかけてるのか?目から生気がまた感じられなくなってしまった。こんな時は…
「おい!バカアンリ!何バカのくせに考え込んでんだ!」
「なっ!バカってなんですか!」
「そのまんまの意味だよ!バーカ!」
「むっきー!バカバカバカバカうるさいですよ!誰がバカですか!ていうかさっさと逃げてくださいよ!なんで逃げないんですか!そっちこそバカでしょ!?」
「お前ごときになんで俺が逃げなきゃならないんだよ!ボケ!」
「はぁあああ!?ボケってなんですかボケって!」
そんな風に叫び合いながら俺はアンリに近づいて、漸くアンリの腕を掴む。
「おら、バカアンリ。帰るぞ」
「無理ですよ…どうやって帰るっていうんですか。自分で自分の身体もまともに動かせないのに…」
そう言って目を伏せるアンリを抱き寄せると俺はスキル【00ex.anri_rev】を発動させる。
すると、俺の身体から赤と黒の粒子が放出してアンリに吸い込まれると、アンリの服の裾からオレンジ色の粒子が零れ落ちて霧散する。
アンリを解放すると、その顔は真っ赤になっていた。
「い、いきなりなに考えてるんですか!」
「まあまあ、それはそうとどうだ?身体の調子は」
「そんなもの前と変わら…えっ、自由に動かせる…?ちょ、シュウ君なにして_」
そう言った瞬間アンリが頭を抱えて蹲る。
まさか失敗…?
しかし、俺の心配は杞憂に終わる。
何事も無かったかのようにアンリが立ち上がったのだ、しかし前と全く違う点が1つ。
その左目から、青白い0と1を放出し続けていたのだ。
「シュウ君、ある程度のことはわかりました。今、この場をなんとかするのにシュウ君の力が必要なんです。力を…貸してくれませんか?」
アンリはこちらに手を伸ばす。
俺はその手を迷わずに握ると、アンリはニコッと笑う。
次の瞬間、俺の脳が焼き切れた。
正確には、それ程の情報量が一挙に俺の脳内を駆け巡り、かき混ぜ、そして収納される。
短くも長い時間を終えた俺の身体には変化があったようには見えない。
なんだったんだ…?
その時、チラリと俺は視界の端に薄緑のものを捉えた。
見てみようとするが、よく見えない位置にあるようでよくは見えない、なので手で触れてみようとすると、僅かな空気の揺らぎを感じることができた。
その感覚を頼りに出所に手を近づけていった結果、最終的にたどり着いたのは俺の首だった。
ん?ほんとどうなってんの?
「それじゃ、シュウ君。サポートお願いします【セーブ】」
『プレイヤー【アンリ】が拡散の申請をしています。認可しますか?Y/N』
俺が頭に疑問符を浮かべていると、アンリがそう言うと俺の目の前にそんな選択肢が現れる。
よくわからなかったが、俺はY、つまり認可した。
次の瞬間、街の至る所から光の柱が伸びる、そしてその上空には大きな魔法陣が描かれていた。
光の柱を登るように何千人ものプレイヤーが魔法陣に吸い込まれ、消えていく。
そして、吸い込まれた光の柱から消滅していく。
最後の一本が消え去ったのを確認したアンリは杖を地面にトンっと突いて「ロック」と言うと巨大な魔法陣に二本の槍のようなマークが交差して魔法陣が消滅したのであった。
こうして、メインクエスト【亡者の呻き】はある1人の少女によって失敗に終わったのであった。          
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