Creation World Online
83話
「テメェ!どういうつもりだ!」
シモンの胸倉を掴みながらアキラが叫ぶ。その顔は怒りと悲しみが混ざり合った表情が浮かんでいた。
第28界層にあるギルドルームに帰還して目を覚ましたアキラが最初に行った行為だった。
「なんか言えよ!なあ!?」
「…なかったのです」
「ああ!?」
「仕方なかったのです!」
悔しそうにシモンが叫ぶ。
「もし、我々が戦っても全滅していた!何の為にノイントさんはあなたの身代わりになったと思っているんだ!」
「ッ!…うるさい。もう、いい…」
そう呟くとアキラはギルドルームから出て行く。
「どこに行くのですか?」
「…黙れ。俺は俺の道を行く。さよならだ」
そう言ってアキラが何度かエアディスプレイを操作すると、アキラがギルドを脱退したという通知が表示される。
それを見たアキラは冷めた目を向けるとそのままギルドルームを後にしたのであった。
☆
「これが、私とアキラ…黒コートの男との関係、そして過去です」
そう言ったシモンの目からは涙が溢れていた。
「おっと、これは私としたことが…見苦しい所を見せて申し訳ありません」
「いや…」
俺はそれ以上何も言えなかった。
大事な仲間を失ってバラバラになったギルド、そんな過去があったのか。
俺達もアンリを失った時にそうなっていた可能性もあるんだよな。
「どこで聞きつけたのか、アキラ達もこのゲームを終わらせる方法。シオリに与えられたそれとアンリさん。あなたの事を狙っています」
「なぜ私なんですか?」
そう、器がなにかはわかった。しかし、なぜアンリなのかがわからないのだ。
シモンは真面目な表情になると、口を開く。
「アンリさん。あなたのアバターデータは現在、他のユーザーと違った形になっています」
「ハッ!私の胸が小さいのはそういう…」
「いや、それは変わってない。昔から変わってない」
俺がそうツッコミを入れると、杖の尖った部分で俺をつついてくる。地味に体力が減るのでやめろください。
「あ、いえアバターの外面は変わっていません。中身というか、構成している物質が変化している状態と言いますか…」
ほら見ろ、シモンが困っているじゃないか。
「つまりどういう事だ?」
「はい、アンリさんは一度死に、何かしらの形で復活を果たした。その時にアバターに変化が起きて【Di】を受け入れる状態ができているのです」
「もし俺やシモンが【Di】を取り込んだ場合どうなるんだ?」
「上手く行く可能性はありますが…失敗の確率が高く失敗した場合。良くて廃人といったところですかね」
こっわ。めちゃくちゃ怖えじゃん。
それにしても今日1日でかなり謎が増えたな。おっさんに色々聞いてみるか、首輪についても解析は終わっているだろうしな。
「シモン、俺達は行くけどどうする?」
「いえ、私は行かなければならないところがありますから」
そう言ってシモンはシオリが嵌めていた指輪を取り出す。
28界層に行くのだろう。死んだ恋人との約束を果たす為に。
「そうか、それじゃ…。また会おう」
「ええ、また」
そう言って俺達はアルカトラを後にした。
☆
『いらっしゃいま_また貴方ですか!』
「そう邪険にするなよ」
カウンターの裏からNPCエーテルが威嚇をしてくる。猫かお前は。
「悪いけど行かせてもらうぜ」
『あっ!また!?シュウさんいい加減にしてくださいよ!あなたのお弟子さんも真似して入ろうとするんですからね!?』
あいつら何してんだよ…
先日知り合った初心者プレイヤー2人の顔を思い浮かべて苦笑いをする。
俺とアンリがカウンターを乗り越えると、ナクがカウンターの前で困り顔をする。
「どうした?」
「先に進めない。どうやったら行ける?」
そうだ、忘れてたけどナクは【未踏】を持ってないのか…。しかし、どうしたものか…。
その時俺はある事を思い出す。
「ナク、手を貸してみろ」
俺がカウンターから腕を伸ばすと、不思議そうな顔のままナクが俺の手を取る。
『ユーザー名:ナクに【未踏】を認可しますか?Y/N』
よし、成功だな。
俺は目の前に浮かんだ文字を見て内心ガッツポーズをする。
ユウタが行なっていた【未踏:認可】をナクにも付与してみたのだ。
「たぶんもう行けると思うぞ」
「本当?」
疑いつつナクはカウンターに手を掛けるとヒョイと飛び越え、俺を巻き込んで着地する。
「おお…行けた」
「よかったな。取り敢えず退け」
色々と当たってて大変だ。
俺がそう言うとナクは悪戯を思いついた子供のような顔になる。
「おい待て、何企んでるんだ」
「これは不可抗力」
「だから何_もがっ!?」
俺の顔面に何やら柔らかいものが押し付けられる。
まさかこれはッ_
「きゃうっ!」
「へっ?」
ごつんという音がして、突然ナクが横に倒れる。
恐る恐る音のした方向を見ると、手に入れたばかりの杖を持ち冷たい目で俺を見下ろすアンリの姿があった。
「シュウ君」
「はい」
「行きましょう」
「うっす」
怖い怖い怖い!目が怖い!
俺は気絶したナクを担ぐと、その場で更に【未踏】を発動する。
バチっという音がなると、目の前に黒いゲートが開く。
アンリが進んだのを確認して、俺はエーテルからの「早く行け」という視線に軽く手を振って返すと、ゲートに足を踏み入れる。
シモンの胸倉を掴みながらアキラが叫ぶ。その顔は怒りと悲しみが混ざり合った表情が浮かんでいた。
第28界層にあるギルドルームに帰還して目を覚ましたアキラが最初に行った行為だった。
「なんか言えよ!なあ!?」
「…なかったのです」
「ああ!?」
「仕方なかったのです!」
悔しそうにシモンが叫ぶ。
「もし、我々が戦っても全滅していた!何の為にノイントさんはあなたの身代わりになったと思っているんだ!」
「ッ!…うるさい。もう、いい…」
そう呟くとアキラはギルドルームから出て行く。
「どこに行くのですか?」
「…黙れ。俺は俺の道を行く。さよならだ」
そう言ってアキラが何度かエアディスプレイを操作すると、アキラがギルドを脱退したという通知が表示される。
それを見たアキラは冷めた目を向けるとそのままギルドルームを後にしたのであった。
☆
「これが、私とアキラ…黒コートの男との関係、そして過去です」
そう言ったシモンの目からは涙が溢れていた。
「おっと、これは私としたことが…見苦しい所を見せて申し訳ありません」
「いや…」
俺はそれ以上何も言えなかった。
大事な仲間を失ってバラバラになったギルド、そんな過去があったのか。
俺達もアンリを失った時にそうなっていた可能性もあるんだよな。
「どこで聞きつけたのか、アキラ達もこのゲームを終わらせる方法。シオリに与えられたそれとアンリさん。あなたの事を狙っています」
「なぜ私なんですか?」
そう、器がなにかはわかった。しかし、なぜアンリなのかがわからないのだ。
シモンは真面目な表情になると、口を開く。
「アンリさん。あなたのアバターデータは現在、他のユーザーと違った形になっています」
「ハッ!私の胸が小さいのはそういう…」
「いや、それは変わってない。昔から変わってない」
俺がそうツッコミを入れると、杖の尖った部分で俺をつついてくる。地味に体力が減るのでやめろください。
「あ、いえアバターの外面は変わっていません。中身というか、構成している物質が変化している状態と言いますか…」
ほら見ろ、シモンが困っているじゃないか。
「つまりどういう事だ?」
「はい、アンリさんは一度死に、何かしらの形で復活を果たした。その時にアバターに変化が起きて【Di】を受け入れる状態ができているのです」
「もし俺やシモンが【Di】を取り込んだ場合どうなるんだ?」
「上手く行く可能性はありますが…失敗の確率が高く失敗した場合。良くて廃人といったところですかね」
こっわ。めちゃくちゃ怖えじゃん。
それにしても今日1日でかなり謎が増えたな。おっさんに色々聞いてみるか、首輪についても解析は終わっているだろうしな。
「シモン、俺達は行くけどどうする?」
「いえ、私は行かなければならないところがありますから」
そう言ってシモンはシオリが嵌めていた指輪を取り出す。
28界層に行くのだろう。死んだ恋人との約束を果たす為に。
「そうか、それじゃ…。また会おう」
「ええ、また」
そう言って俺達はアルカトラを後にした。
☆
『いらっしゃいま_また貴方ですか!』
「そう邪険にするなよ」
カウンターの裏からNPCエーテルが威嚇をしてくる。猫かお前は。
「悪いけど行かせてもらうぜ」
『あっ!また!?シュウさんいい加減にしてくださいよ!あなたのお弟子さんも真似して入ろうとするんですからね!?』
あいつら何してんだよ…
先日知り合った初心者プレイヤー2人の顔を思い浮かべて苦笑いをする。
俺とアンリがカウンターを乗り越えると、ナクがカウンターの前で困り顔をする。
「どうした?」
「先に進めない。どうやったら行ける?」
そうだ、忘れてたけどナクは【未踏】を持ってないのか…。しかし、どうしたものか…。
その時俺はある事を思い出す。
「ナク、手を貸してみろ」
俺がカウンターから腕を伸ばすと、不思議そうな顔のままナクが俺の手を取る。
『ユーザー名:ナクに【未踏】を認可しますか?Y/N』
よし、成功だな。
俺は目の前に浮かんだ文字を見て内心ガッツポーズをする。
ユウタが行なっていた【未踏:認可】をナクにも付与してみたのだ。
「たぶんもう行けると思うぞ」
「本当?」
疑いつつナクはカウンターに手を掛けるとヒョイと飛び越え、俺を巻き込んで着地する。
「おお…行けた」
「よかったな。取り敢えず退け」
色々と当たってて大変だ。
俺がそう言うとナクは悪戯を思いついた子供のような顔になる。
「おい待て、何企んでるんだ」
「これは不可抗力」
「だから何_もがっ!?」
俺の顔面に何やら柔らかいものが押し付けられる。
まさかこれはッ_
「きゃうっ!」
「へっ?」
ごつんという音がして、突然ナクが横に倒れる。
恐る恐る音のした方向を見ると、手に入れたばかりの杖を持ち冷たい目で俺を見下ろすアンリの姿があった。
「シュウ君」
「はい」
「行きましょう」
「うっす」
怖い怖い怖い!目が怖い!
俺は気絶したナクを担ぐと、その場で更に【未踏】を発動する。
バチっという音がなると、目の前に黒いゲートが開く。
アンリが進んだのを確認して、俺はエーテルからの「早く行け」という視線に軽く手を振って返すと、ゲートに足を踏み入れる。
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