とある英雄達の最終兵器
第28話 いやぁ薬屋のばぁさんいい香りだったなぁ~
こうしてウェッジとテュール達四人が詰め所に到着すると早速ウェッジの私室に通される。
「さて、テュール? お前ら成龍騒ぎの時にどこ行ってた? んー?」
「ど、どこだっけなぁ? 薬師のお婆さんのところだったかなぁ? 必死だったからあんまり覚えてないなぁハハハ」
テュールは本当にごまかす気があるのかと思える程の大根っぷりで答える。
「あー、もういい。まどろっこしい問答はいらねぇ。で、龍はどうなったんだ? お前らだろ? アレをやったのは」
どうやらウェッジには確信があるらしく視線を真っ直ぐテュールに定め問いただしてくる。
「えぇと、作戦会議してもいいですか?」
「いいわけねぇだろ。アホが。あの結界内でお前がバカみたいにデケェ声でアンフィス、ヴァナル、ベリトって呼んでたのが聞こえたんだよ。まだシラきるか?」
「いえ……、その、僕達がやりましたです……。はい……」
テュールが誤魔化すのは不可能だと判断し、折れる。他の三人もやれやれと言った様子でそれを見守る。
「ん。さて、んじゃまずは龍がどうなったのか、これを最優先で知りてぇ」
「あー、余分な魔力を意識と一緒に飛ばしたて無事理性を取り戻しました。もう大丈夫でしょう」
「そうか、その言葉信じるぞ?」
街の安全に関わることだ。ウェッジの視線が一際険しくなりテュールに真実か問う。
テュールも先程までとは違い、誤魔化せない以上嘘をついても仕方ない。真実を語るという目でウェッジに視線を返す。
ふむ、お前らはちょっと待ってろ。そう言うと、ウェッジが部屋を出る。恐らく龍の再出現で警戒を高めていた衛兵や冒険者に報告するためだろう。
「あー……厄介事に巻き込まれなきゃいいけどなぁ……」
成龍を四人でなんとかしてしまったんだ。ランクの高い冒険者達も何人か見たがモヨモト達はおろか自分たちに届きそうな人も見たことがない。公表されてしまえば様々な期待と役目を負わされることは目に見えている。
「仕方ありませんね。どうせ何か事件が起きれば私達は力を隠さず解決に当たるでしょう。特に命に関わるものであれば見過ごせるわけもありません。遅かれ早かれですよ」
ベリトは大したことじゃないという風に軽く答える。
「いや、それにしても早すぎだろ……。まだここに来てニ日だぞ? 滅茶苦茶イベント盛りだくさんだったがニ日しか経ってないんだぞ?」
「アハハー、確かにテュールにはイベントがたくさんあったねー。まさかニ日で四人もナンパするとは思わなかったよ」
「ダハハハー、そうだな。よほど島で女のいない生活がつらかったんだろう。解き放たれた野獣だな」
いつものようにヴァナルとアンフィスがからかってくる。
「……はぁ、もういいよそれで。俺は女馴れしてないから正直ペース崩されっぱなしだよ。しかも全員カワイイ、キレイだろ? 俺はもうなんか死ぬんじゃないかなって思ってきたよ、ハハハ……」
陰のある表情で呟くテュール。少し引きつった顔になったヴァナルとアンフィスが慰めてくる。
「戻った。……ん? どうした。なんだこの空気は……」
いえ、なんでもないっす……。と、力ない返事がテュールから返ってくる。
「まぁいい。まずはお前らに感謝する。お前らのおかげで街や人に被害を出さずに済んだ、ありがとう」
そう言って頭を下げるウェッジ。いえいえ、気にしないで下さいと返事をしようとテュールが口を開こうとする。しかし──。
「で、だ。感謝はここまでだ。次は説教だ。お前ら洗いざらい喋れよ?」
そこからのウェッジは厳しかった。誰とも連携を取らず、連絡を取らず、その後の報告もない。ウェッジが怒るのも当然である。
「無事だったからいいものの、お前らみたいなガキ四人に全て任せてお前らを死なせてみろ。衛兵や冒険者達は存在意義を全て崩されるだろうが!」
そう言うウェッジの目から真剣にテュール達の身を案じていることが分かった。
傲慢が過ぎたと反省するテュール達四人は素直に謝罪をする。
「んで、お前らはこの件公表されたくないんだよな?」
説教が終わったところでテュール達にそう尋ねてくるウェッジ。
「えぇ、まぁ、できることなら……」
「ふむ、幸いお前らの存在に気付いているのも俺だけだろう。お前らもその若さで振り回されるのも酷だしな。今回は黙っておいてやる。まぁ街の危機なんてものは数年に一回だ。そうそう同じようなことは起きねぇ」
お前らがトラブルの種を寄せ集めなければな? と街に来てからニ日間でトラブル続きの四人組にそう釘を刺すウェッジ。
四人もトラブル続きなのは自覚があるため苦笑し、感謝と謝罪の言葉を口にする。
こうして成龍事件も無事丸くおさまり、残る憂いもなくな……って……。と考えたところでテュールの頭の中でリフレインするセシリア、リリス、カグヤの声。
しかし、この三人なら無闇やたらに口外することはないだろう。というわけでギルドに戻ったら全てゲロっちゃおうと心のスタミナがゼロになってしまったテュールはそう思うのであった。
そしてギルドに戻り、リリス達三人に事情を説明し、理解してもらったところでテュールの精根は尽き果てる。
もう今日は休むわーと逃げ出すテュールにしかしベリトから声がかかる。お金はあるのですか? と。
宿泊費は五千ゴルド。そしてテュールの所持金は三千ゴルド。
「貸して?」
ニッコリ。
こうして、泣く泣くギルドの書類整理というFランク依頼をこなすことになり、なんとかニ日目を終えるテュールであった。
「さて、テュール? お前ら成龍騒ぎの時にどこ行ってた? んー?」
「ど、どこだっけなぁ? 薬師のお婆さんのところだったかなぁ? 必死だったからあんまり覚えてないなぁハハハ」
テュールは本当にごまかす気があるのかと思える程の大根っぷりで答える。
「あー、もういい。まどろっこしい問答はいらねぇ。で、龍はどうなったんだ? お前らだろ? アレをやったのは」
どうやらウェッジには確信があるらしく視線を真っ直ぐテュールに定め問いただしてくる。
「えぇと、作戦会議してもいいですか?」
「いいわけねぇだろ。アホが。あの結界内でお前がバカみたいにデケェ声でアンフィス、ヴァナル、ベリトって呼んでたのが聞こえたんだよ。まだシラきるか?」
「いえ……、その、僕達がやりましたです……。はい……」
テュールが誤魔化すのは不可能だと判断し、折れる。他の三人もやれやれと言った様子でそれを見守る。
「ん。さて、んじゃまずは龍がどうなったのか、これを最優先で知りてぇ」
「あー、余分な魔力を意識と一緒に飛ばしたて無事理性を取り戻しました。もう大丈夫でしょう」
「そうか、その言葉信じるぞ?」
街の安全に関わることだ。ウェッジの視線が一際険しくなりテュールに真実か問う。
テュールも先程までとは違い、誤魔化せない以上嘘をついても仕方ない。真実を語るという目でウェッジに視線を返す。
ふむ、お前らはちょっと待ってろ。そう言うと、ウェッジが部屋を出る。恐らく龍の再出現で警戒を高めていた衛兵や冒険者に報告するためだろう。
「あー……厄介事に巻き込まれなきゃいいけどなぁ……」
成龍を四人でなんとかしてしまったんだ。ランクの高い冒険者達も何人か見たがモヨモト達はおろか自分たちに届きそうな人も見たことがない。公表されてしまえば様々な期待と役目を負わされることは目に見えている。
「仕方ありませんね。どうせ何か事件が起きれば私達は力を隠さず解決に当たるでしょう。特に命に関わるものであれば見過ごせるわけもありません。遅かれ早かれですよ」
ベリトは大したことじゃないという風に軽く答える。
「いや、それにしても早すぎだろ……。まだここに来てニ日だぞ? 滅茶苦茶イベント盛りだくさんだったがニ日しか経ってないんだぞ?」
「アハハー、確かにテュールにはイベントがたくさんあったねー。まさかニ日で四人もナンパするとは思わなかったよ」
「ダハハハー、そうだな。よほど島で女のいない生活がつらかったんだろう。解き放たれた野獣だな」
いつものようにヴァナルとアンフィスがからかってくる。
「……はぁ、もういいよそれで。俺は女馴れしてないから正直ペース崩されっぱなしだよ。しかも全員カワイイ、キレイだろ? 俺はもうなんか死ぬんじゃないかなって思ってきたよ、ハハハ……」
陰のある表情で呟くテュール。少し引きつった顔になったヴァナルとアンフィスが慰めてくる。
「戻った。……ん? どうした。なんだこの空気は……」
いえ、なんでもないっす……。と、力ない返事がテュールから返ってくる。
「まぁいい。まずはお前らに感謝する。お前らのおかげで街や人に被害を出さずに済んだ、ありがとう」
そう言って頭を下げるウェッジ。いえいえ、気にしないで下さいと返事をしようとテュールが口を開こうとする。しかし──。
「で、だ。感謝はここまでだ。次は説教だ。お前ら洗いざらい喋れよ?」
そこからのウェッジは厳しかった。誰とも連携を取らず、連絡を取らず、その後の報告もない。ウェッジが怒るのも当然である。
「無事だったからいいものの、お前らみたいなガキ四人に全て任せてお前らを死なせてみろ。衛兵や冒険者達は存在意義を全て崩されるだろうが!」
そう言うウェッジの目から真剣にテュール達の身を案じていることが分かった。
傲慢が過ぎたと反省するテュール達四人は素直に謝罪をする。
「んで、お前らはこの件公表されたくないんだよな?」
説教が終わったところでテュール達にそう尋ねてくるウェッジ。
「えぇ、まぁ、できることなら……」
「ふむ、幸いお前らの存在に気付いているのも俺だけだろう。お前らもその若さで振り回されるのも酷だしな。今回は黙っておいてやる。まぁ街の危機なんてものは数年に一回だ。そうそう同じようなことは起きねぇ」
お前らがトラブルの種を寄せ集めなければな? と街に来てからニ日間でトラブル続きの四人組にそう釘を刺すウェッジ。
四人もトラブル続きなのは自覚があるため苦笑し、感謝と謝罪の言葉を口にする。
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しかし、この三人なら無闇やたらに口外することはないだろう。というわけでギルドに戻ったら全てゲロっちゃおうと心のスタミナがゼロになってしまったテュールはそう思うのであった。
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