とある英雄達の最終兵器
第73話 天国への遠足
セシリアの告白しちゃいましたカミングアウトからの皆の騒ぎようはひどく、女子連中はセシリアに、男子連中もセシリアに、師匠連中もセシリアに、問い詰めに――え? 俺放置?
と、思っていると一人だけ俺に問い詰めてくる存在がいた。「「「アウッ」」」 いや、お前はいい。
じゃなく、そう。ラブハンターである彼だ。そう、ステップくん。
テップはやけにうるさくつっかかってきて、告白されて何て答えたんだとか、それ以上のことはしてないだろうな、とかさっきまで修行でヘバッてた人間とは思えない勢いでガンガン攻めてくる。というか、こうなることを予想して他のみんなは俺のところには来なかったのだろう……。
そんなテップの追求をテュールがのらりくらりと躱していると、テップは皆の輪に混ざってセシリアに追求の手を伸ばしはじめた。セシリアはセシリアで告白の後の行為まで口にすることはなかったが、何かを思い出したように頬を赤らめ、ご満悦な表情をするもんだから眺めていたみんなまでご馳走様という表情だ……。
そこからは結局師匠たちや他のみんなにも絡まれて、いい加減うんざりしてきたのでテュールは逃げるようにその場から逃げた。あぁ、つまり逃げた。
そんな生きた心地のしないセシリア告白事件から2日経った――。
「あのー……セシリアさん? やっぱり近くないですか?」
「……ごめんなさい、なんだかテュールさんの傍にいるとすごく心が温かくなるので、気付かないうちにふらふらとつい……。ご迷惑ですよね……」
「いや、全然迷惑とかじゃないんだけど、ほらセシリアもお昼ごはん食べにくくないかなぁ~? なんて……?」
「私は大丈夫ですよ! ほらっ」
そう言ってセシリアはテュールにくっつきながら昼食を食べる。
この2日間、セシリアは俺と顔を合わせる度に肌が触れる距離まで近付いてくる……というか肌が触れている。あぁ、正直に言おう。セシリアの肌はひんやりしてて、もちもちしてて、ふわふわしてて、最高だよ? だからこそ気が気でない……。
ジトー…………
カグヤとテップを筆頭に、レフィー、レーベあたりは俺を汚らわしいモノを見る目でみてくる。俺なの? ねぇ、悪いの俺なの? はい俺ですよね……。
アンフィスとヴァナルとベリトは散々からかった挙句、セシリアを応援すると言って、勝手に応援団になっている。どうやらあいつらは俺の困っている姿を見るのが何よりの大好物のようだ。まぁ知っていた。
変わらないのはリリスだけだ。リリスは告白事件の当日も――ん? セシリアはテューくん好きなのか? 奇遇なのだ! 私もテューくんのことが好きなのだ! と満面の笑みで宣言するが、なぜかセシリアの時と違い、みんな優しく頷くだけだった……。
さて、話は戻るがこのセシリアとの状況……俺的には改めたいと思っている。なぜならこの状況は俺が日本にいた頃、もっとも嫌悪していたバカップルに他ならないからだ。魔法が使えれば、デス○ートと死神の目があればと夢想し、何度公衆の面前でイチャつくアホどもを葬りさりたいと思ったことか……。まさか、自分がそうなる日が来るとは夢にも思わなかったよ。流石異世界。さすいせ。
というわけで――
「というわけで、セシリア。セシリアが近くに来てくれるのは非常に嬉しい。そりゃもうすごい嬉しい。だがしかし、流石に周りに人の目がこれだけある中でくっつきすぎるのは良くないと思う。ほら、それにここは教育機関だし……」
心を鬼にし、そう告げるテュール。
「なにが、というわけで、なのかはわかりませんが……そうです、ね。……分かりました。では、傍にいるのは家の中で二人きりの時にしますねっ」
――ぶっ!!
テーブルの周りで無関心を装ってた生徒が一斉に吹き出した――。
「っおい! セシリア、何を言ってるんだ? 俺とセシリアが家を行き来することなんてないだろ? まったく何を言っているんだよ? おかしなやつだな、ハハハハ」
ただでさえ目立つ皇女5人と隣の家に住んでいて毎日行き来しているなんてバレたら何を言われるか分からないので、テュールたちはこの事実を秘密にしていた。……だってクルード君怖いし……。
◇
「えっくしっ!!」
「うぉ、団長派手なくしゃみだね……。うわー……、その、鼻からパスタ出てるよ……?」
「うぉ、失礼っ。公爵家の人間にあるまじき絵だったな申し訳ない……。さて、気を取り直そう。……食事が終わったら僕の考えてきた新しい戦術をシミュレートしてみないか?」
「あぁ、いいね! 今度こそ第一団の鼻を明かしてやらないとな!」
「ッフ、そうだろ? いつまでもテュールに負けてはいられないからな」
(……それにしてもくしゃみか……珍しい。誰か僕のことでも……、もしや!? カグヤ様が……? フフ、フフフフ……)
「……あの~、団長? すごい顔ニヤけてますけど、そんなパスタ美味しいんですか?」
「あぁ、最高だ!」
こうしてクルード君は幸せな勘違いをしながら昼休みを過ごす……。
◇
一方、爆弾投下率うなぎ登りのセシリアが放つ問題発言の処理にテュールは焦りに焦っていた。
セシリアも自分が浮かれており失言したのに気付いたのだろう、咄嗟にマズイという顔をしてしまう。これが余計にリアルな感じを出してしまい、周囲がざわつき始める……。
テュールはここからどう誤魔化そうかと考え、仲間を頼ろうと視線を配るが、どいつもこいつも我関せずというようだ。薄情者どもめ……。セシリアを見てみろ、あわあわ、オロオロと今にも目を回しそうだぞ? それでも助けてくれないと言うのか!? …………ふむ、どうやら助けてくれないらしい。
その間にも周囲のざわつきは大きくなり、そして広がっていく。このままでは全校中を噂が駆け回るのも時間の問題だ。テュールは時間がない――そう考え、強硬手段に出た。
「――――――!!」
テュールは全方位に全力の殺気を飛ばす。
いわゆる HA O U SYO KU の HA KI だ。
以前は軽く殺気を飛ばして保健室をパンクさせたが今回は違う。食堂中の人間の意識と記憶を奪うつもりでやった。
そして、結果は――
「ふぅ~、やりすぎたか……。しかし、これで我々の平和は守られた。すまない、平和のために犠牲になった者たちよ……」
ドタドタドタドタ――!
「何事だ!! ここから物凄い殺……気……が……」
………………。
「うっ」
バタリ。3秒程ルーナと目が合ったテュールは、意識を失ったフリをする。
しかし、ルーナは無情にもツカツカと近寄ってきて――
「犯人はどいつだ?」
と、現在食堂で唯一意識のある集団――第一団の面々に尋ねる。
ピッ
セシリアはこの事態を招いた責任は自分にあると思い、手を挙げる。しかし、他の団員の面々の指先は、今しがた意識を失ったであろう人物に向けられる。
「……………………」
「……テュール。5秒数える内に起きて、ついてこい。シラを切るならそのまま永遠の眠りへとつかせてやる。いーち……」
「はいはいはい! 今、目が覚めました! うおっ!? なんだこれは!? 周りの生徒が気を失っている……! あ、新手の集団魔術催眠か!?」
「………………。よし、続きは生徒指導室で聞こう」
「…………はい」
こうして、トボトボとテュールはルーナの後に続き歩いて行く。
結局、直接的な手段での攻撃じゃなかったこと、幸い全員が無事に目が覚め、後遺症がなかったことにより、厳重注意で済ませられる。そして最後にルーナから怒声を浴びせられるのではなく、頼むから卒業まで大人しくしててくれと懇願された時は流石に申し訳ないと思った……。
後に、この事件は、気を失う寸前に天国にいる家族と会えたという話が多かったことから天国への遠足という事件名がついて、ハルモニア七不思議に数えられたとか数えられなかったとか。
幸いにして、この事件後は浮かれていたセシリアも反省し、冷静になったようで節度ある接し方になった。まぁ、それでも以前よりは好意をストレートに表現してくることが増えているので、テュールはタジタジなのだが……。
とにもかくにもその後5日間は平穏に過ごし、修行に精を出す第一団の面々。そして、本日は校内闘技大会のクラス応募の期限日となる――。
と、思っていると一人だけ俺に問い詰めてくる存在がいた。「「「アウッ」」」 いや、お前はいい。
じゃなく、そう。ラブハンターである彼だ。そう、ステップくん。
テップはやけにうるさくつっかかってきて、告白されて何て答えたんだとか、それ以上のことはしてないだろうな、とかさっきまで修行でヘバッてた人間とは思えない勢いでガンガン攻めてくる。というか、こうなることを予想して他のみんなは俺のところには来なかったのだろう……。
そんなテップの追求をテュールがのらりくらりと躱していると、テップは皆の輪に混ざってセシリアに追求の手を伸ばしはじめた。セシリアはセシリアで告白の後の行為まで口にすることはなかったが、何かを思い出したように頬を赤らめ、ご満悦な表情をするもんだから眺めていたみんなまでご馳走様という表情だ……。
そこからは結局師匠たちや他のみんなにも絡まれて、いい加減うんざりしてきたのでテュールは逃げるようにその場から逃げた。あぁ、つまり逃げた。
そんな生きた心地のしないセシリア告白事件から2日経った――。
「あのー……セシリアさん? やっぱり近くないですか?」
「……ごめんなさい、なんだかテュールさんの傍にいるとすごく心が温かくなるので、気付かないうちにふらふらとつい……。ご迷惑ですよね……」
「いや、全然迷惑とかじゃないんだけど、ほらセシリアもお昼ごはん食べにくくないかなぁ~? なんて……?」
「私は大丈夫ですよ! ほらっ」
そう言ってセシリアはテュールにくっつきながら昼食を食べる。
この2日間、セシリアは俺と顔を合わせる度に肌が触れる距離まで近付いてくる……というか肌が触れている。あぁ、正直に言おう。セシリアの肌はひんやりしてて、もちもちしてて、ふわふわしてて、最高だよ? だからこそ気が気でない……。
ジトー…………
カグヤとテップを筆頭に、レフィー、レーベあたりは俺を汚らわしいモノを見る目でみてくる。俺なの? ねぇ、悪いの俺なの? はい俺ですよね……。
アンフィスとヴァナルとベリトは散々からかった挙句、セシリアを応援すると言って、勝手に応援団になっている。どうやらあいつらは俺の困っている姿を見るのが何よりの大好物のようだ。まぁ知っていた。
変わらないのはリリスだけだ。リリスは告白事件の当日も――ん? セシリアはテューくん好きなのか? 奇遇なのだ! 私もテューくんのことが好きなのだ! と満面の笑みで宣言するが、なぜかセシリアの時と違い、みんな優しく頷くだけだった……。
さて、話は戻るがこのセシリアとの状況……俺的には改めたいと思っている。なぜならこの状況は俺が日本にいた頃、もっとも嫌悪していたバカップルに他ならないからだ。魔法が使えれば、デス○ートと死神の目があればと夢想し、何度公衆の面前でイチャつくアホどもを葬りさりたいと思ったことか……。まさか、自分がそうなる日が来るとは夢にも思わなかったよ。流石異世界。さすいせ。
というわけで――
「というわけで、セシリア。セシリアが近くに来てくれるのは非常に嬉しい。そりゃもうすごい嬉しい。だがしかし、流石に周りに人の目がこれだけある中でくっつきすぎるのは良くないと思う。ほら、それにここは教育機関だし……」
心を鬼にし、そう告げるテュール。
「なにが、というわけで、なのかはわかりませんが……そうです、ね。……分かりました。では、傍にいるのは家の中で二人きりの時にしますねっ」
――ぶっ!!
テーブルの周りで無関心を装ってた生徒が一斉に吹き出した――。
「っおい! セシリア、何を言ってるんだ? 俺とセシリアが家を行き来することなんてないだろ? まったく何を言っているんだよ? おかしなやつだな、ハハハハ」
ただでさえ目立つ皇女5人と隣の家に住んでいて毎日行き来しているなんてバレたら何を言われるか分からないので、テュールたちはこの事実を秘密にしていた。……だってクルード君怖いし……。
◇
「えっくしっ!!」
「うぉ、団長派手なくしゃみだね……。うわー……、その、鼻からパスタ出てるよ……?」
「うぉ、失礼っ。公爵家の人間にあるまじき絵だったな申し訳ない……。さて、気を取り直そう。……食事が終わったら僕の考えてきた新しい戦術をシミュレートしてみないか?」
「あぁ、いいね! 今度こそ第一団の鼻を明かしてやらないとな!」
「ッフ、そうだろ? いつまでもテュールに負けてはいられないからな」
(……それにしてもくしゃみか……珍しい。誰か僕のことでも……、もしや!? カグヤ様が……? フフ、フフフフ……)
「……あの~、団長? すごい顔ニヤけてますけど、そんなパスタ美味しいんですか?」
「あぁ、最高だ!」
こうしてクルード君は幸せな勘違いをしながら昼休みを過ごす……。
◇
一方、爆弾投下率うなぎ登りのセシリアが放つ問題発言の処理にテュールは焦りに焦っていた。
セシリアも自分が浮かれており失言したのに気付いたのだろう、咄嗟にマズイという顔をしてしまう。これが余計にリアルな感じを出してしまい、周囲がざわつき始める……。
テュールはここからどう誤魔化そうかと考え、仲間を頼ろうと視線を配るが、どいつもこいつも我関せずというようだ。薄情者どもめ……。セシリアを見てみろ、あわあわ、オロオロと今にも目を回しそうだぞ? それでも助けてくれないと言うのか!? …………ふむ、どうやら助けてくれないらしい。
その間にも周囲のざわつきは大きくなり、そして広がっていく。このままでは全校中を噂が駆け回るのも時間の問題だ。テュールは時間がない――そう考え、強硬手段に出た。
「――――――!!」
テュールは全方位に全力の殺気を飛ばす。
いわゆる HA O U SYO KU の HA KI だ。
以前は軽く殺気を飛ばして保健室をパンクさせたが今回は違う。食堂中の人間の意識と記憶を奪うつもりでやった。
そして、結果は――
「ふぅ~、やりすぎたか……。しかし、これで我々の平和は守られた。すまない、平和のために犠牲になった者たちよ……」
ドタドタドタドタ――!
「何事だ!! ここから物凄い殺……気……が……」
………………。
「うっ」
バタリ。3秒程ルーナと目が合ったテュールは、意識を失ったフリをする。
しかし、ルーナは無情にもツカツカと近寄ってきて――
「犯人はどいつだ?」
と、現在食堂で唯一意識のある集団――第一団の面々に尋ねる。
ピッ
セシリアはこの事態を招いた責任は自分にあると思い、手を挙げる。しかし、他の団員の面々の指先は、今しがた意識を失ったであろう人物に向けられる。
「……………………」
「……テュール。5秒数える内に起きて、ついてこい。シラを切るならそのまま永遠の眠りへとつかせてやる。いーち……」
「はいはいはい! 今、目が覚めました! うおっ!? なんだこれは!? 周りの生徒が気を失っている……! あ、新手の集団魔術催眠か!?」
「………………。よし、続きは生徒指導室で聞こう」
「…………はい」
こうして、トボトボとテュールはルーナの後に続き歩いて行く。
結局、直接的な手段での攻撃じゃなかったこと、幸い全員が無事に目が覚め、後遺症がなかったことにより、厳重注意で済ませられる。そして最後にルーナから怒声を浴びせられるのではなく、頼むから卒業まで大人しくしててくれと懇願された時は流石に申し訳ないと思った……。
後に、この事件は、気を失う寸前に天国にいる家族と会えたという話が多かったことから天国への遠足という事件名がついて、ハルモニア七不思議に数えられたとか数えられなかったとか。
幸いにして、この事件後は浮かれていたセシリアも反省し、冷静になったようで節度ある接し方になった。まぁ、それでも以前よりは好意をストレートに表現してくることが増えているので、テュールはタジタジなのだが……。
とにもかくにもその後5日間は平穏に過ごし、修行に精を出す第一団の面々。そして、本日は校内闘技大会のクラス応募の期限日となる――。
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