とある英雄達の最終兵器
閑話 ガリ勉モヤシ君一号 ~アンフィスside~
~アンフィスside~
「あー、笑った、笑った。まだ顎いてぇな。ヴァナルはどうだ?」
「うん、ボクもまだお腹痛いね~。いやー今頃テュール怒ってるだろうね~」
だな。俺はそう答えてからヴァナルとトーナメント会場の裏手をぶらつく。ベリトには保健室に行くと言ってきたが笑いすぎて顎が外れたので診て下さいなんて言えるわけがねぇ。自分で嵌めたぞ? カコンってな。
「とりあえず、テュールの怒りが収まるまでは戻れないな……。どのくらいで収まると思う?」
隣を歩く神獣――ヴァナルにそう問う。
「んー……。お昼ごはん終わるまでかなぁ。けど、きっとテュール、お昼ごはんは師匠たちと食べると思うから下手したら更に機嫌悪くなってるかもね~」
ふむ、一理ある。まぁ、悪かった時は悪かった時でセシリアあたりに縋ってご機嫌を取ってもらおう。
そんなことを話しながら歩いているとふと視線が一箇所に吸われる。
「……ん? おいヴァナル、あれ」
指差した先には男女が二人ずつ……それを見たヴァナルはため息をつく。
「ハァ……せっかくの楽しい気分が台無しだねー」
指差した場所まではかなり離れているが何せ隣にいるのは幻獣界の頂点に立つ神獣と、そしてこちらの世界で身体能力ポテンシャルナンバーワンの生物、龍族だ。耳を塞いだってこの距離の声など拾える――
「ヒュ~、この学校に君たちみたいな可愛い子いるんだねぇ。ちょっとこの学校案内してよ? いいっしょ? いいっしょ?」
男二人の内の一人、派手なシャツを着た方が女生徒二人に声をかけている。
「こ、困ります。その……私達急いでいるんで……」
女生徒のうちの一人、ショートカットの大人しそうな子が答えた。しかし、どうやら男たちは食い下がるみたいだ。
「えぇー、なになにここの生徒は外部から来た人間に学校の案内もしてくれないの~?」
弱々しい返答に押せばいけると思ったのだろうか、別の男、金髪ロン毛野郎が追撃を行う。そして隣の派手シャツに目で合図を送ると――
「そーれーにー! ここにいるガリ勉モヤシ君どもなんかよりぜってぇー楽しませてやれるって! な? ほら、行こうぜ?」
派手シャツ野郎も畳み掛けるようにそんなことを言う。ショートカットの子はおどおどと周りを見渡す。恐らく助けを求めているのだろう。顔を確認できる位置まで来た俺たちと目が合う。ほいほい今行きますよっ――
というところで今まで目を閉じ、黙って腕組みをしていたもう一人の女生徒、ポニーテールの勝気そうな女が目を開いて、前に出る。
「あんた達うるさい、臭い、消えて? お呼びじゃなーいの。そんなに案内して欲しいなら案内してあげる。あっちへまっすぐ行けば正門が見えるわ。どうぞおかえりはあちらへ~」
ポニーテールの子はそう言いながらビシッと指をさす。その先にはトーナメント会場。ふむ、経路ではなく方向だけを示したようだ。そしてそんな態度の女生徒に当然男どもは――
「あん? なんだこのドブス。うっわー白けた。おい、行こうぜ。こんなイモ学校にはトロール女しかいねぇみたいだ」
「ちげぇねぇ。じゃあなドブースちゃん」
「っぷ、お前ドブースって最高っ、超笑えるっ。んじゃ街で暇そうな人妻でもひっかけようぜ」
ナンパが成功する見込みがないと悟ったや否や手のひらをくるりと返し、ドブス呼ばわりして去ろうとする男達。うむ、清々しいまでのクソ野郎どもだな。まぁ、けどトラブルにならなくて済んだのだから良しとするか。
「さぁて、どうやら俺たちの手は必要なくなったみたいだ。行こうぜ――」
ヴァナルに話しかけ、そのままクルリと踵を返す。もうここに用はない。しかし、歩き出そうとした瞬間にポニーテール女の声が聞こえた。
「ド、ドドドドドブス!? あんた達、冗談はそのセンスゼロのシャツと、気持ち悪いロン毛だけにしてちょうだい。私がドブス? ならあんた達は芸術ね。歩くアートだわ。醜いというのは度を過ぎると人を惹きつけるのだから!! ププ!」
……あちゃー。折角ナンパ野郎どもは帰る気満々だったのになんで呼び止めるかなぁ……。理解に苦しむぜ……。
「リ、リーシャ! もういいよ! いこうよ!」
どうやらポニーテールの勝気な女はリーシャと言うらしい。おいリーシャとやら、ショートカット女の言う通りだぞ。野良犬に噛まれたとでも思って割り切れよ。
案の定背を向けて歩き出していたナンパ野郎二人はリーシャの言葉に振り返り――
「おい、こいつ今なんか言ったか?」
派手シャツ男が金髪ロン毛男にわざとらしく尋ねる。
「さぁ? なんか喚いてたみたいだけどあいにくトロール語は習ったことねぇからな。まぁなんとか意思疎通図ってみるわ。ブースブスブスブース?」
うっわー……5歳児並のやり返しだな。流石にアホすぎてリーシャも相手にしない――
「殺すっ!!」
なんてことはなく殺気を放ってた。ってアホかーーー!! なんであんなアホな挑発に乗るんだよ!!
そしてナンパ野郎二人はここに来て挑発を続ける。
「おいおい、外部の人間に暴力振るう気だぜ? うわ、こいつ最低だ。マジでトロールレベルの理性だわ。殴っちゃうの? 魔法使っちゃうの? 退学だよ? 牢屋行きだよ? それでもいいならどーぞ? ギャハハハハハ!!」
自分達に手を出せない状況だと分かっているからだろう。ナンパ野郎二人は余裕な態度を崩さない。まぁ確かにこの状況じゃ手は出せないわな。って――
「後のことなんか知らないわ! 私を舐めことを地獄で後悔しなさい!」
「リ、リーシャ!! ダメ!!」
どうやらリーシャは完全にブチキレてるらしい。ナンパ野郎どもが初めて焦りの表情を浮かべる。
そしてこれから起こる惨劇を予想したヴァナルがにこやかに手を振って送り出そうとする。
「アンフィス、いってらっしゃ~い」
……ッチ、しゃーない。行きますか。
早くしないと向こうでリーシャがクライマックスを迎えつつある。
「安心して、痛みはないわ。一瞬よ。もう一秒たりともあなた達の存在を許せそうにないみたい、ごめんね? はい、さようなら!」
そしてナンパ野郎との距離を詰め、恐ろしいまでの速さと重さの蹴りを振り抜――
ガシッ
「はい、そこまでー。おい、ナンパ野郎ども死にたくなけりゃ今すぐ消えろ」
リーシャの蹴りを掴み、背後のナンパ野郎にそう忠告する。
「て、てめぇ誰だ!! つーか今、この女暴力を振るおうと――!!」
此の期に及んでまだナンパ野郎どもは状況が理解できていないらしい。いい加減にしろよな?
「あん? ガリ勉モヤシ君一号だよ。んで、聞こえなかったのか? 死にたくなけりゃ消えろっつってんだよ」
分かりやすいよう殺気を乗せて睨んでやる。
「ぐっ……。ッチ!! クソが!! 二度とこんなとこ来るかよ!!」
そんな捨て台詞を吐いてナンパ野郎どもは去っていった。はぁー、これで一件落着だな。
そこでようやくアンフィスは足を離すと――
「ハッ!!!」
お礼とばかりにリーシャから拳が飛んでくるのであった。
「あー、笑った、笑った。まだ顎いてぇな。ヴァナルはどうだ?」
「うん、ボクもまだお腹痛いね~。いやー今頃テュール怒ってるだろうね~」
だな。俺はそう答えてからヴァナルとトーナメント会場の裏手をぶらつく。ベリトには保健室に行くと言ってきたが笑いすぎて顎が外れたので診て下さいなんて言えるわけがねぇ。自分で嵌めたぞ? カコンってな。
「とりあえず、テュールの怒りが収まるまでは戻れないな……。どのくらいで収まると思う?」
隣を歩く神獣――ヴァナルにそう問う。
「んー……。お昼ごはん終わるまでかなぁ。けど、きっとテュール、お昼ごはんは師匠たちと食べると思うから下手したら更に機嫌悪くなってるかもね~」
ふむ、一理ある。まぁ、悪かった時は悪かった時でセシリアあたりに縋ってご機嫌を取ってもらおう。
そんなことを話しながら歩いているとふと視線が一箇所に吸われる。
「……ん? おいヴァナル、あれ」
指差した先には男女が二人ずつ……それを見たヴァナルはため息をつく。
「ハァ……せっかくの楽しい気分が台無しだねー」
指差した場所まではかなり離れているが何せ隣にいるのは幻獣界の頂点に立つ神獣と、そしてこちらの世界で身体能力ポテンシャルナンバーワンの生物、龍族だ。耳を塞いだってこの距離の声など拾える――
「ヒュ~、この学校に君たちみたいな可愛い子いるんだねぇ。ちょっとこの学校案内してよ? いいっしょ? いいっしょ?」
男二人の内の一人、派手なシャツを着た方が女生徒二人に声をかけている。
「こ、困ります。その……私達急いでいるんで……」
女生徒のうちの一人、ショートカットの大人しそうな子が答えた。しかし、どうやら男たちは食い下がるみたいだ。
「えぇー、なになにここの生徒は外部から来た人間に学校の案内もしてくれないの~?」
弱々しい返答に押せばいけると思ったのだろうか、別の男、金髪ロン毛野郎が追撃を行う。そして隣の派手シャツに目で合図を送ると――
「そーれーにー! ここにいるガリ勉モヤシ君どもなんかよりぜってぇー楽しませてやれるって! な? ほら、行こうぜ?」
派手シャツ野郎も畳み掛けるようにそんなことを言う。ショートカットの子はおどおどと周りを見渡す。恐らく助けを求めているのだろう。顔を確認できる位置まで来た俺たちと目が合う。ほいほい今行きますよっ――
というところで今まで目を閉じ、黙って腕組みをしていたもう一人の女生徒、ポニーテールの勝気そうな女が目を開いて、前に出る。
「あんた達うるさい、臭い、消えて? お呼びじゃなーいの。そんなに案内して欲しいなら案内してあげる。あっちへまっすぐ行けば正門が見えるわ。どうぞおかえりはあちらへ~」
ポニーテールの子はそう言いながらビシッと指をさす。その先にはトーナメント会場。ふむ、経路ではなく方向だけを示したようだ。そしてそんな態度の女生徒に当然男どもは――
「あん? なんだこのドブス。うっわー白けた。おい、行こうぜ。こんなイモ学校にはトロール女しかいねぇみたいだ」
「ちげぇねぇ。じゃあなドブースちゃん」
「っぷ、お前ドブースって最高っ、超笑えるっ。んじゃ街で暇そうな人妻でもひっかけようぜ」
ナンパが成功する見込みがないと悟ったや否や手のひらをくるりと返し、ドブス呼ばわりして去ろうとする男達。うむ、清々しいまでのクソ野郎どもだな。まぁ、けどトラブルにならなくて済んだのだから良しとするか。
「さぁて、どうやら俺たちの手は必要なくなったみたいだ。行こうぜ――」
ヴァナルに話しかけ、そのままクルリと踵を返す。もうここに用はない。しかし、歩き出そうとした瞬間にポニーテール女の声が聞こえた。
「ド、ドドドドドブス!? あんた達、冗談はそのセンスゼロのシャツと、気持ち悪いロン毛だけにしてちょうだい。私がドブス? ならあんた達は芸術ね。歩くアートだわ。醜いというのは度を過ぎると人を惹きつけるのだから!! ププ!」
……あちゃー。折角ナンパ野郎どもは帰る気満々だったのになんで呼び止めるかなぁ……。理解に苦しむぜ……。
「リ、リーシャ! もういいよ! いこうよ!」
どうやらポニーテールの勝気な女はリーシャと言うらしい。おいリーシャとやら、ショートカット女の言う通りだぞ。野良犬に噛まれたとでも思って割り切れよ。
案の定背を向けて歩き出していたナンパ野郎二人はリーシャの言葉に振り返り――
「おい、こいつ今なんか言ったか?」
派手シャツ男が金髪ロン毛男にわざとらしく尋ねる。
「さぁ? なんか喚いてたみたいだけどあいにくトロール語は習ったことねぇからな。まぁなんとか意思疎通図ってみるわ。ブースブスブスブース?」
うっわー……5歳児並のやり返しだな。流石にアホすぎてリーシャも相手にしない――
「殺すっ!!」
なんてことはなく殺気を放ってた。ってアホかーーー!! なんであんなアホな挑発に乗るんだよ!!
そしてナンパ野郎二人はここに来て挑発を続ける。
「おいおい、外部の人間に暴力振るう気だぜ? うわ、こいつ最低だ。マジでトロールレベルの理性だわ。殴っちゃうの? 魔法使っちゃうの? 退学だよ? 牢屋行きだよ? それでもいいならどーぞ? ギャハハハハハ!!」
自分達に手を出せない状況だと分かっているからだろう。ナンパ野郎二人は余裕な態度を崩さない。まぁ確かにこの状況じゃ手は出せないわな。って――
「後のことなんか知らないわ! 私を舐めことを地獄で後悔しなさい!」
「リ、リーシャ!! ダメ!!」
どうやらリーシャは完全にブチキレてるらしい。ナンパ野郎どもが初めて焦りの表情を浮かべる。
そしてこれから起こる惨劇を予想したヴァナルがにこやかに手を振って送り出そうとする。
「アンフィス、いってらっしゃ~い」
……ッチ、しゃーない。行きますか。
早くしないと向こうでリーシャがクライマックスを迎えつつある。
「安心して、痛みはないわ。一瞬よ。もう一秒たりともあなた達の存在を許せそうにないみたい、ごめんね? はい、さようなら!」
そしてナンパ野郎との距離を詰め、恐ろしいまでの速さと重さの蹴りを振り抜――
ガシッ
「はい、そこまでー。おい、ナンパ野郎ども死にたくなけりゃ今すぐ消えろ」
リーシャの蹴りを掴み、背後のナンパ野郎にそう忠告する。
「て、てめぇ誰だ!! つーか今、この女暴力を振るおうと――!!」
此の期に及んでまだナンパ野郎どもは状況が理解できていないらしい。いい加減にしろよな?
「あん? ガリ勉モヤシ君一号だよ。んで、聞こえなかったのか? 死にたくなけりゃ消えろっつってんだよ」
分かりやすいよう殺気を乗せて睨んでやる。
「ぐっ……。ッチ!! クソが!! 二度とこんなとこ来るかよ!!」
そんな捨て台詞を吐いてナンパ野郎どもは去っていった。はぁー、これで一件落着だな。
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