とある英雄達の最終兵器
第87話 ねぇママ?シッ!見ちゃいけません!
~テップside~
「ママー! あのお兄ちゃん噴水の上に座ってるよー! すごーい!」
「シッ、見ちゃいけませんっ!!」
微笑ましい幼妻の奥さんと可愛らしい女の子が手を引いて歩いている。そして俺を指さしてそう言うなり、奥さんは女の子の手を強く引っ張り足早に遠ざかっていった。ッフ。そうさ俺は見ちゃいけないような人間なんだよ……。
「もし? そこの方?」
にしても勢いで走ってきてしまったが、これからどうしようか……。なんとなくすぐ戻るのも恥ずかしいし、かと言ってすぐ帰らないのも恥ずかしいし……う~ん。
「もしー? 聞こえていますか? そこの噴水の上に体育座りで座っているお方」
ん? 俺か? いや、こんなあやしい奴に話しかける人なんて――。いや、しかし、噴水の上に体育座りするのは俺くらいだろう……。ってことはやっぱり俺か?
チラッと、体育座りして抱え込んでいた頭を上げて目の前の話しかけてきたかも知れない人物を覗き見る。
ヒラヒラ~。目の前のちょっと高貴っぽい修道服を着た美少女が手を振ってきた。
ヒラヒラ~。ッハ!! 気付いたら俺も手を振り返してしまった……。
「そのー、何かおツライことでもあったのでしょうか? 噴水の上で体育座りするとなるとよほどのことがあったとお見受けしますが……」
「え? あ。いえ、なんでもないんです。ただ、ちょっと噴水の上で体育座りをしたい衝動に駆られただけなんで大丈夫です。つーか、自分週3回くらいは噴水の上で体育座りしてますんで」
普段ならこんなチャンスは見逃さず修道服美少女をナンパするところだが、流石に今は……ね。
「えっと、もしよろしければ話だけでもしてみませんか? 人は誰かにツライことや苦しいことを話すだけで少し楽になれますよ? 私はユウリと申します。あなたのお名前は?」
どうやら目の前の修道服美少女は俺の与太話を信じていないみたいだ……。しかも可愛い顔して結構強引な感じだぞ……。
「ステップ……」
テップはニコニコしながら名前待ちしている美少女に根負けして名前を告げる。
「はい、ありがとうございます。ステップさん。では、どうでしょう? こちらに降りてきてお話ししませんか?」
「……俺は金もなければ宗教心もないすよ?」
「えぇ、構いません。ただステップさんのお話しを聞くだけですから。もちろんお金なんていりませんよ」
な、なんなんだ? この子? 何の見返りもなしに、噴水の上に座っている見知らぬ男の話を聞きたいだぁ? 聖女かよ。
仕方ない。どうせ一人で噴水の上で体育座りしててもしょうがないんだ。テップは言う通り、少女の前に飛び降りて近くのベンチへ腰掛ける。
「ありがとうございます。私はそうですね。壁だと思って話して見て下さい。相槌をする壁。フフ、自分で言っておきながらおかしいですね」
あぁ、とびっきりおかしいね。
「はぁ……。テップだ、俺の知り合いはみんなそう呼ぶ。ユウリさんだっけ? あんた相当変わってるな。相槌を打つ壁ねぇ……」
「テップさんですね? 分かりました。はい、どうぞ♪」
ニコニコ顔で隣に座って話を聞く気満々なユウリ。
「ったく、つまらない話だぞ。つーか、改めて話す程の話じゃないし、俺自身正直どうでも良くなっちまったような――」
「聞きたいです!」
チッ……。ペースが狂うな……。普段なら飄々と躱すのが俺だが、なんだかこの子は人の心を掴むというか引き出すのが上手いな……。厄介なタイプだ。
「……本当に変わってるな……。まぁいいや。んじゃこれ聞いたらもう許してくれよ? 最初はまず――」
テップが話し始めるとユウリは真剣に耳を傾け聞いている。時折、表情を変え相槌を打ちながら、結局最後までその姿勢を崩すことはなかった。
「はい、これでお終い。で、感想は?」
「テップさんは優しい方ですね……。それとどことなく私に似ています」
「すごいな……。この話を聞いてそんな感想が返ってくるとは俺も予想外だよ。ま、俺はナンパをよくするが、あんたはナンパ師になったらそれだけで食っていけるよ」
「フフ、そんなことありませんよ? 私は今日この時間、この場所にいる貴方だから声を掛けれたんです」
「…………はぁ。よくそんな歯の浮くようなセリフを……、是非あんたにナンパテクを伝授してもらいたいくらいだね」
テップの皮肉にも表情を崩さずユウリは言葉を続ける。
「でも、とても寂しそう。それはガールフレンドがいないからってことじゃないですよ? そう、あなたは――」
チラッとその続きが気になり、目線をユウリに送るがそんなタイミングで邪魔が入る。
「ユウリ様!! 何をしているんですか!!」
何人かの修道服を着た男がものすごい剣幕で怒鳴りながら走ってくる。
「フフ、残念です。テップさん貴重な時間をありがとうございました。すごく勝手に私はあなたに親近感を覚えました。また、機会があれば是非お話しして欲しいと思っています。ダメでしょうか?」
「あぁ、次はナンパテクを是非教えてくれ」
「ありがとうございます。では、話の途中ですみません。また会える日を楽しみにしています。それでは」
「あぁ、また」
そして、ユウリは小言を貰いながら修道服の男たちに連れられていく。最後に振り返り手を振る仕草は年齢相応の可愛らしいものだが……。
「ありゃとんでもない奴だな。それにしても、聖女様、ねぇ……」
誰に聞こえるわけでもない呟きをつぶやいて、帰路に着くテップであった。
そして、家に帰ると男ども4人が一斉に頭を下げてきた。急いで傷ついているフリをして散々いびる。
お姫様方5人もどうやら今日は優しくしてくれるようで家では至れり尽くせりの時間を過ごす。
「フハハハハー!! お前ら全員脱げぇぇー!!」
と、調子に乗ったらさぁっとみんな去っていったのは言うまでもないけどな。ハハ。
「ママー! あのお兄ちゃん噴水の上に座ってるよー! すごーい!」
「シッ、見ちゃいけませんっ!!」
微笑ましい幼妻の奥さんと可愛らしい女の子が手を引いて歩いている。そして俺を指さしてそう言うなり、奥さんは女の子の手を強く引っ張り足早に遠ざかっていった。ッフ。そうさ俺は見ちゃいけないような人間なんだよ……。
「もし? そこの方?」
にしても勢いで走ってきてしまったが、これからどうしようか……。なんとなくすぐ戻るのも恥ずかしいし、かと言ってすぐ帰らないのも恥ずかしいし……う~ん。
「もしー? 聞こえていますか? そこの噴水の上に体育座りで座っているお方」
ん? 俺か? いや、こんなあやしい奴に話しかける人なんて――。いや、しかし、噴水の上に体育座りするのは俺くらいだろう……。ってことはやっぱり俺か?
チラッと、体育座りして抱え込んでいた頭を上げて目の前の話しかけてきたかも知れない人物を覗き見る。
ヒラヒラ~。目の前のちょっと高貴っぽい修道服を着た美少女が手を振ってきた。
ヒラヒラ~。ッハ!! 気付いたら俺も手を振り返してしまった……。
「そのー、何かおツライことでもあったのでしょうか? 噴水の上で体育座りするとなるとよほどのことがあったとお見受けしますが……」
「え? あ。いえ、なんでもないんです。ただ、ちょっと噴水の上で体育座りをしたい衝動に駆られただけなんで大丈夫です。つーか、自分週3回くらいは噴水の上で体育座りしてますんで」
普段ならこんなチャンスは見逃さず修道服美少女をナンパするところだが、流石に今は……ね。
「えっと、もしよろしければ話だけでもしてみませんか? 人は誰かにツライことや苦しいことを話すだけで少し楽になれますよ? 私はユウリと申します。あなたのお名前は?」
どうやら目の前の修道服美少女は俺の与太話を信じていないみたいだ……。しかも可愛い顔して結構強引な感じだぞ……。
「ステップ……」
テップはニコニコしながら名前待ちしている美少女に根負けして名前を告げる。
「はい、ありがとうございます。ステップさん。では、どうでしょう? こちらに降りてきてお話ししませんか?」
「……俺は金もなければ宗教心もないすよ?」
「えぇ、構いません。ただステップさんのお話しを聞くだけですから。もちろんお金なんていりませんよ」
な、なんなんだ? この子? 何の見返りもなしに、噴水の上に座っている見知らぬ男の話を聞きたいだぁ? 聖女かよ。
仕方ない。どうせ一人で噴水の上で体育座りしててもしょうがないんだ。テップは言う通り、少女の前に飛び降りて近くのベンチへ腰掛ける。
「ありがとうございます。私はそうですね。壁だと思って話して見て下さい。相槌をする壁。フフ、自分で言っておきながらおかしいですね」
あぁ、とびっきりおかしいね。
「はぁ……。テップだ、俺の知り合いはみんなそう呼ぶ。ユウリさんだっけ? あんた相当変わってるな。相槌を打つ壁ねぇ……」
「テップさんですね? 分かりました。はい、どうぞ♪」
ニコニコ顔で隣に座って話を聞く気満々なユウリ。
「ったく、つまらない話だぞ。つーか、改めて話す程の話じゃないし、俺自身正直どうでも良くなっちまったような――」
「聞きたいです!」
チッ……。ペースが狂うな……。普段なら飄々と躱すのが俺だが、なんだかこの子は人の心を掴むというか引き出すのが上手いな……。厄介なタイプだ。
「……本当に変わってるな……。まぁいいや。んじゃこれ聞いたらもう許してくれよ? 最初はまず――」
テップが話し始めるとユウリは真剣に耳を傾け聞いている。時折、表情を変え相槌を打ちながら、結局最後までその姿勢を崩すことはなかった。
「はい、これでお終い。で、感想は?」
「テップさんは優しい方ですね……。それとどことなく私に似ています」
「すごいな……。この話を聞いてそんな感想が返ってくるとは俺も予想外だよ。ま、俺はナンパをよくするが、あんたはナンパ師になったらそれだけで食っていけるよ」
「フフ、そんなことありませんよ? 私は今日この時間、この場所にいる貴方だから声を掛けれたんです」
「…………はぁ。よくそんな歯の浮くようなセリフを……、是非あんたにナンパテクを伝授してもらいたいくらいだね」
テップの皮肉にも表情を崩さずユウリは言葉を続ける。
「でも、とても寂しそう。それはガールフレンドがいないからってことじゃないですよ? そう、あなたは――」
チラッとその続きが気になり、目線をユウリに送るがそんなタイミングで邪魔が入る。
「ユウリ様!! 何をしているんですか!!」
何人かの修道服を着た男がものすごい剣幕で怒鳴りながら走ってくる。
「フフ、残念です。テップさん貴重な時間をありがとうございました。すごく勝手に私はあなたに親近感を覚えました。また、機会があれば是非お話しして欲しいと思っています。ダメでしょうか?」
「あぁ、次はナンパテクを是非教えてくれ」
「ありがとうございます。では、話の途中ですみません。また会える日を楽しみにしています。それでは」
「あぁ、また」
そして、ユウリは小言を貰いながら修道服の男たちに連れられていく。最後に振り返り手を振る仕草は年齢相応の可愛らしいものだが……。
「ありゃとんでもない奴だな。それにしても、聖女様、ねぇ……」
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