とある英雄達の最終兵器
第110話 ロリっ子舐めたらあかんぜよ
そして賑やかな一夜は更け朝が来る――。
「んー、ぬくぬくぅー」
寝ぼけたままテュールは、自分の腕の中にある暖かいものを抱き寄せる。
「むぎゅー……」
そして、腕の中にある暖かいものも負けじとばかりにしがみついてくる。
(あったかくてぇ、やわらけぇ……、あと5分……。ん? 暖かくて柔らかい? んん?)
ふと、テュールは異変に気付き頭が急速に覚醒し始める。恐る恐る布団をめくってみる。
腕の中には薄いネグリジェ一枚のリリスが足を絡ませ、しがみついていた。
(…………どうしてこうなった)
「おい、リリス? おい」
「うにゅ? んー、テューくんおやすみぃー」
「いやいやいや、朝だ。つーか、どうしてここにいる?」
「あったかいのだー……」
(ダ、ダメだ、こいつ朝弱すぎるだろ……さすが吸血鬼……)
とりあえずうにゅうにゅ言いながら寝ぼけているリリスは置いておき、首だけで辺りを見渡す。
「だ、誰もいない……」
既にテント内は綺麗さっぱり片付いており、テュールとリリス以外の姿は見えない。
「あ、テュールくん。やっと起きた? もう朝ごはんみんな食べちゃったよ? そろそろ出発しないとだから起きてね?」
「あ、カグヤ……。う、うん」
そんな時丁度テントにカグヤが入ってきて声を掛けてくる。テュールはなんとなく後ろめたさを感じ、反射的に布団を被り直し、リリスを隠すように腕で抱き寄せる。しかし、リリスの所在など当然カグヤは知っているわけで――。
「ふふ、テュールくん、朝から仲良しだねっ。リリスちゃんも一緒に起こして早く来てねー。あ、けど着替えなきゃか。んー、私リリスちゃんの着替え手伝っちゃうから先に出ててくれる?」
「……お、おう」
若干の気恥ずかしさと気まずさを感じながらリリスを布団の中でそっと剥ぎ取り、立ち上がる。テントの外へ出ると陽はとっくに上っており――。
「フ、ねぼすけ君おはよう」
「テュールさんおはようございます♪」
「ん、ししょー。おはよう。もう修行終わっちゃった」
「おう、みんなおはよう。遅くなってごめん」
一同は優雅にティータイムを楽しんでいた。脇には執事がティーポット片手に佇んでいる。
「はい、テュール様、お顔を洗ってきてくださいませ」
執事はテュールを見つけるとタオルと洗面道具を片手にそんなことを言う。
テュールは礼を言い、道具一式を受け取ると近くの川まで行き、わざわざ水魔法で水を生成し、洗面を行う。
(いや、川の水綺麗っぽいけど、ほらなんかバイ菌とか怖いじゃん?)
日本現代っ子の一面が残っているテュールであった。
洗面が終わり、戻ると簡単な朝食とコーヒーが用意されており、テュールは椅子につく。
「あー、レーベ? ごめんな、朝修行付き合えなくて。どんなことしたんだ?」
パンを齧りながらテュールがレーベに問いかける。
「ん。へーき。ツヨシと綱引きしてた」
「るふぁ♪」
レーベの言葉を受け、ツヨシを見るとどこか得意げな様子だ。どうやらお互いの腰にロープを巻き、反対側へ走り引っ張り合うという筋肉番付的なアレをやっていたという。
(うん、懐かしい。というかベヒーモス相手にとかすげぇな。ムロフシより強いもんなぁ)
と、どうでもいいことを考えているとようやく寝ぼけ姫が登場する。
「んー、おはよーなのだー」
リリスが寝ぼけ眼をこすりながらノロノロと歩いてくる。
「おう、おはよー。いや俺が言うのもなんだがお前も大概ネボスケだな。んぐんぐ」
テュールは手に持ったパンを片付けながらどの口が言うかという内容で朝の挨拶を交わす。
「ふぁー、昨日はテューくんが寝かしてくれなかったからなのだぁー」
「グボハッ!!」
テュールが吐血する。
「うわっ、汚ねっ!! おい、テュールケチャップ飛ばすなよ!!」
近くにいたテップに血が付着する。いや、今しがた食べていたホットドッグのケチャップだ。
そしてリリスのその一言により周りの目が白く染まりはじめる。そりゃもう真っ白だ。ヒソヒソとまさか本当に子作りを、などという声まで聞こえはじめた所で、テュールはここで動かねば社会的に死ぬと悟り、直ぐ様弁明を始める。
「な、なんのことだ!? いや、俺は決してやましいことはしていない! していないはずだ! していないだろう? え? していないよな?」
テュールは縋るようにリリスに無罪の証明を求める。途中で自信がなくなってしまったのは男子なら誰しも理解できるであろう。しかし、リリスの答えは――。
「初めてだったから痛かったのだ……。けどすごく幸せだったのだ~♪」
陶磁器のような白い頬を朱く染め、目を閉じ、クネクネと体を揺らしながらぽやや~んと緩んだ表情でそう答えた。
「流石だな。うちの大将は。ヤル時はヤル男だと思ってたぜ? おめでとう」
「うんうんー。まさかボク達が寝ている横でそんなことになってるなんてびっくりだけど、祝福するよおめでとう」
アンフィスとヴァナルが腕を組み、うんうんと頷き、祝福の言葉をテュールに浴びせる。
「違う……俺はヤッていない、そんな、嘘だ……。知らない間に卒業とか笑えない……。うわぁぁあああああ!!」
四肢を地面に投げ出し、慟哭を上げるテュール。
「さて、皆様このままテュール様をいじめるのも一興ですが、そろそろ急がないと遅刻になりますよ?」
――はーい。
「むー、朝ごはん食べたかったのだー」
「ん、寝坊したリリスが悪い」
「むー、そうだけど、お腹空いたのだー!!」
「はい。リリスさん。とっておいたので車で食べましょう?」
「わーい、セシリアありがとなのだー! ごっはん♪ ごっはん♪」
こうして女性陣は仲良くお喋りしながら車へと乗り込んでいく。そして、車に足をかけたリリスが最後に振り返り――。
「ふふん、テューくん。リリスを子供だと舐めてるから痛い目見るのだ♪」
そう言ってウィンクをするのであった。
(なっ……)
普段とは違う、大人びて少し艶のある表情のリリスに先程以上に衝撃を受け、固まってしまうテュール。
「な? 女ってのは怖いだろ? 俺もよーく分かる。よーく分かるぞ。うんうん。しかし、安心しろ。お前はリリスを舐めていたがペロペロはしていない、俺達も横で寝てたんだ、流石に分かる。そう落ち込むな。まだ君は僕と同じ童貞君なんだから」
そっと、テュールの肩を抱き、労るような声で話しかけてくるテップ、しかしその表情は満面の笑みであり意地の悪さが出てしまっていた。
(それはそれで、なんだか嫌だ……)
テュールはテップの言葉にようやくノロノロと動き出し、内心複雑な気持ちを抱えつつ、車に無言で乗り込む。女性陣は尚も楽しそうに談笑していた。
こうして、一同はキャンプを大いに楽しみ、目的地であるリエース共和国へと向かう。と、言っても目的地はキャンプしていた場所から目と鼻の先、ツヨシにかかれば僅か数分で――。
「ツヨシ、ストーーーップ」
「ぶるふぁーー」
到着だ。一同の目の前には大きな関所のような建物があり、そこには――。
「おい、お前ら……どういうつもりだ? Sクラスのお前らが最下位、そしてふざけた牛と車……。だが、それですら些細な問題だ。貴様ら一体どこをほっつき歩いていた? 昨晩お前ら、そうセシリアを捜索する部隊まで結成されて夜通し探したんだぞ? ……ふぅ。セシリア以外全員正座だッッッッ!! そこに並べぇッッ!!」
怒り心頭のルーナがおり、第一団の面々に怒号を浴びせる。
ピシッ。ッザ。
一同は素早く気を付けの姿勢になり、まるでラインダンスかのように一糸乱れぬ隊列で膝を折り、正座の姿勢を取る。
「おい、ベリト……どうなってんだ?」
ルートからは外れているものの、近くにいたのだから見つからないわけがない。訝しげに思ったテュールは隣で正座しているベリトに耳打ちをする。
「いえ、邪魔が入らないように我々の半径500mには認識阻害の結界を張らせてもらっていました」
(なるほどね……)
無駄に優秀な執事がどうやら無駄な気遣いを見せたようだ。いや、おかげで楽しい夜を過ごせたテュールは文句を言うべきではないが。そして――。
「せんせー。なんでセシリアだけ――ヒッッッ!!」
テップが余計なことを言い、射殺さんばかりの視線を浴び黙るのであった。こうしてクドクドとルーナの説教と尋問が始まり、一同が流石にうんざりした所で――。
「カカ、ルーナ。その辺にしてやりな。あとはあたしが叱っとくさね。こんなところに他所様の王族を座らせておくとウチも色々と困るんでね」
聞き慣れた声が耳に届く。
「んー、ぬくぬくぅー」
寝ぼけたままテュールは、自分の腕の中にある暖かいものを抱き寄せる。
「むぎゅー……」
そして、腕の中にある暖かいものも負けじとばかりにしがみついてくる。
(あったかくてぇ、やわらけぇ……、あと5分……。ん? 暖かくて柔らかい? んん?)
ふと、テュールは異変に気付き頭が急速に覚醒し始める。恐る恐る布団をめくってみる。
腕の中には薄いネグリジェ一枚のリリスが足を絡ませ、しがみついていた。
(…………どうしてこうなった)
「おい、リリス? おい」
「うにゅ? んー、テューくんおやすみぃー」
「いやいやいや、朝だ。つーか、どうしてここにいる?」
「あったかいのだー……」
(ダ、ダメだ、こいつ朝弱すぎるだろ……さすが吸血鬼……)
とりあえずうにゅうにゅ言いながら寝ぼけているリリスは置いておき、首だけで辺りを見渡す。
「だ、誰もいない……」
既にテント内は綺麗さっぱり片付いており、テュールとリリス以外の姿は見えない。
「あ、テュールくん。やっと起きた? もう朝ごはんみんな食べちゃったよ? そろそろ出発しないとだから起きてね?」
「あ、カグヤ……。う、うん」
そんな時丁度テントにカグヤが入ってきて声を掛けてくる。テュールはなんとなく後ろめたさを感じ、反射的に布団を被り直し、リリスを隠すように腕で抱き寄せる。しかし、リリスの所在など当然カグヤは知っているわけで――。
「ふふ、テュールくん、朝から仲良しだねっ。リリスちゃんも一緒に起こして早く来てねー。あ、けど着替えなきゃか。んー、私リリスちゃんの着替え手伝っちゃうから先に出ててくれる?」
「……お、おう」
若干の気恥ずかしさと気まずさを感じながらリリスを布団の中でそっと剥ぎ取り、立ち上がる。テントの外へ出ると陽はとっくに上っており――。
「フ、ねぼすけ君おはよう」
「テュールさんおはようございます♪」
「ん、ししょー。おはよう。もう修行終わっちゃった」
「おう、みんなおはよう。遅くなってごめん」
一同は優雅にティータイムを楽しんでいた。脇には執事がティーポット片手に佇んでいる。
「はい、テュール様、お顔を洗ってきてくださいませ」
執事はテュールを見つけるとタオルと洗面道具を片手にそんなことを言う。
テュールは礼を言い、道具一式を受け取ると近くの川まで行き、わざわざ水魔法で水を生成し、洗面を行う。
(いや、川の水綺麗っぽいけど、ほらなんかバイ菌とか怖いじゃん?)
日本現代っ子の一面が残っているテュールであった。
洗面が終わり、戻ると簡単な朝食とコーヒーが用意されており、テュールは椅子につく。
「あー、レーベ? ごめんな、朝修行付き合えなくて。どんなことしたんだ?」
パンを齧りながらテュールがレーベに問いかける。
「ん。へーき。ツヨシと綱引きしてた」
「るふぁ♪」
レーベの言葉を受け、ツヨシを見るとどこか得意げな様子だ。どうやらお互いの腰にロープを巻き、反対側へ走り引っ張り合うという筋肉番付的なアレをやっていたという。
(うん、懐かしい。というかベヒーモス相手にとかすげぇな。ムロフシより強いもんなぁ)
と、どうでもいいことを考えているとようやく寝ぼけ姫が登場する。
「んー、おはよーなのだー」
リリスが寝ぼけ眼をこすりながらノロノロと歩いてくる。
「おう、おはよー。いや俺が言うのもなんだがお前も大概ネボスケだな。んぐんぐ」
テュールは手に持ったパンを片付けながらどの口が言うかという内容で朝の挨拶を交わす。
「ふぁー、昨日はテューくんが寝かしてくれなかったからなのだぁー」
「グボハッ!!」
テュールが吐血する。
「うわっ、汚ねっ!! おい、テュールケチャップ飛ばすなよ!!」
近くにいたテップに血が付着する。いや、今しがた食べていたホットドッグのケチャップだ。
そしてリリスのその一言により周りの目が白く染まりはじめる。そりゃもう真っ白だ。ヒソヒソとまさか本当に子作りを、などという声まで聞こえはじめた所で、テュールはここで動かねば社会的に死ぬと悟り、直ぐ様弁明を始める。
「な、なんのことだ!? いや、俺は決してやましいことはしていない! していないはずだ! していないだろう? え? していないよな?」
テュールは縋るようにリリスに無罪の証明を求める。途中で自信がなくなってしまったのは男子なら誰しも理解できるであろう。しかし、リリスの答えは――。
「初めてだったから痛かったのだ……。けどすごく幸せだったのだ~♪」
陶磁器のような白い頬を朱く染め、目を閉じ、クネクネと体を揺らしながらぽやや~んと緩んだ表情でそう答えた。
「流石だな。うちの大将は。ヤル時はヤル男だと思ってたぜ? おめでとう」
「うんうんー。まさかボク達が寝ている横でそんなことになってるなんてびっくりだけど、祝福するよおめでとう」
アンフィスとヴァナルが腕を組み、うんうんと頷き、祝福の言葉をテュールに浴びせる。
「違う……俺はヤッていない、そんな、嘘だ……。知らない間に卒業とか笑えない……。うわぁぁあああああ!!」
四肢を地面に投げ出し、慟哭を上げるテュール。
「さて、皆様このままテュール様をいじめるのも一興ですが、そろそろ急がないと遅刻になりますよ?」
――はーい。
「むー、朝ごはん食べたかったのだー」
「ん、寝坊したリリスが悪い」
「むー、そうだけど、お腹空いたのだー!!」
「はい。リリスさん。とっておいたので車で食べましょう?」
「わーい、セシリアありがとなのだー! ごっはん♪ ごっはん♪」
こうして女性陣は仲良くお喋りしながら車へと乗り込んでいく。そして、車に足をかけたリリスが最後に振り返り――。
「ふふん、テューくん。リリスを子供だと舐めてるから痛い目見るのだ♪」
そう言ってウィンクをするのであった。
(なっ……)
普段とは違う、大人びて少し艶のある表情のリリスに先程以上に衝撃を受け、固まってしまうテュール。
「な? 女ってのは怖いだろ? 俺もよーく分かる。よーく分かるぞ。うんうん。しかし、安心しろ。お前はリリスを舐めていたがペロペロはしていない、俺達も横で寝てたんだ、流石に分かる。そう落ち込むな。まだ君は僕と同じ童貞君なんだから」
そっと、テュールの肩を抱き、労るような声で話しかけてくるテップ、しかしその表情は満面の笑みであり意地の悪さが出てしまっていた。
(それはそれで、なんだか嫌だ……)
テュールはテップの言葉にようやくノロノロと動き出し、内心複雑な気持ちを抱えつつ、車に無言で乗り込む。女性陣は尚も楽しそうに談笑していた。
こうして、一同はキャンプを大いに楽しみ、目的地であるリエース共和国へと向かう。と、言っても目的地はキャンプしていた場所から目と鼻の先、ツヨシにかかれば僅か数分で――。
「ツヨシ、ストーーーップ」
「ぶるふぁーー」
到着だ。一同の目の前には大きな関所のような建物があり、そこには――。
「おい、お前ら……どういうつもりだ? Sクラスのお前らが最下位、そしてふざけた牛と車……。だが、それですら些細な問題だ。貴様ら一体どこをほっつき歩いていた? 昨晩お前ら、そうセシリアを捜索する部隊まで結成されて夜通し探したんだぞ? ……ふぅ。セシリア以外全員正座だッッッッ!! そこに並べぇッッ!!」
怒り心頭のルーナがおり、第一団の面々に怒号を浴びせる。
ピシッ。ッザ。
一同は素早く気を付けの姿勢になり、まるでラインダンスかのように一糸乱れぬ隊列で膝を折り、正座の姿勢を取る。
「おい、ベリト……どうなってんだ?」
ルートからは外れているものの、近くにいたのだから見つからないわけがない。訝しげに思ったテュールは隣で正座しているベリトに耳打ちをする。
「いえ、邪魔が入らないように我々の半径500mには認識阻害の結界を張らせてもらっていました」
(なるほどね……)
無駄に優秀な執事がどうやら無駄な気遣いを見せたようだ。いや、おかげで楽しい夜を過ごせたテュールは文句を言うべきではないが。そして――。
「せんせー。なんでセシリアだけ――ヒッッッ!!」
テップが余計なことを言い、射殺さんばかりの視線を浴び黙るのであった。こうしてクドクドとルーナの説教と尋問が始まり、一同が流石にうんざりした所で――。
「カカ、ルーナ。その辺にしてやりな。あとはあたしが叱っとくさね。こんなところに他所様の王族を座らせておくとウチも色々と困るんでね」
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