とある英雄達の最終兵器
第124話 昔の話……そう大体87話目くらいの話さ……
そして、テュール達はと言うと、食事前はぎくしゃくしていたが、いざ目の前にご馳走が並べば――。
「お、美味しいのだぁぁぁあ!! このカリッジュワッほわわ~んなのおかわりなのだ!!」
「……肉うまし。はむはむ。……肉うまし」
「こら、ミア? はしたないぞ? 両手で掴むな。ほら、こっちは置いて……ほら拭くぞ。あー、ありがとう食べさせてくれるん――じゃないのか」
「おくの、やー! うーの食べるっ! あーむ! んぐんぐ。あーむ!」
「フフ、ウーミアちゃんは欲張りさんですね? 私のも食べますか?」
「せしりあのはおいしくないからやー」
「うぅー。ひどいです……。確かに薄味ですけど、薄味ですけど……」
「アハハ……、何もそんな涙ぐまなくても……。けど、ウーミアちゃん? ママの言うことは聞かないとメッだよっ?」
「あーい」
と、いうように女性陣はどこ吹く風でご機嫌で食事を楽しんでいた。そして、それを見たアンフィスはあまりの変わり身の速さに――。
「ったく。女ってのは本当にコロコロと気が変わる生き物だな」
と、呆れながらキロ単位の肉にかぶりついてた。
「あっ、アンフィスそういうのを女性差別って言うんだよー? そーれーにー、アンフィスが女の子を語れるの?」
と、言うのは体長60cmはあろうかというロブスターらしき甲殻類をバリボリと殻ごと食べているヴァナル。
「フフ、違いありませんね。まぁ、ですが私達もアンフィスの全てを知っているわけではありませんから。もしかしたらどこぞの誰かのように知らないところで声をかけているのかも知れませんよ?」
綺麗にフォークとナイフを使い、上品に食事を進める執事。そして、執事はそんなセリフとともにチラリとテップへ視線を配る。
「んぐっ? ふぃや、へふひほんらはんへーらなびっべ」
「おい、こら。そんなんで誤魔化されないぞ? きちんと飲み込んでから喋れ。おっと、新たに詰め込もうったってそうはいかないぞ?」
誤魔化すように口一杯に食事を詰め込んだまま喋るテップ。更にテップは追撃を免れるため右手にパッサパッサの硬いパンを握りしめる。だが、テュールがそれを許さない。
「もう、テュールくん? テップ君? 食事の場所であんまりはしたないことしないでねっ?」
「そーだ! そーだ! 折角美味しいのだから、黙って食べるのだ!」
「そーだ! そーだ! なのだー!」
「むぅー! 真似するななのだー!」
カグヤが苦笑しながら諌め、リリスがそれに同調するが、結局ウーミアにからかわれ、はしたない組に堕ちてしまうのであった。
「ですが、本当にどういうお知り合いなんですか?」
そして、一瞬の会話の隙間に最も流しにくいであろう相手――セシリアがテップに尋ねる。そして、周りもセシリアに船頭を譲るのが最も難破しない道のりだと考え、黙って同調しテップに目線だけで圧力をかける。
「な、難破……もとい、ナンパじゃないぞ? いや、本当だから。えぇ……これ話さなきゃダメ? ……はいはい分かりました。えぇと、あれは確か――あぁ、そうだ、あれは俺がリーシャ先輩に人違いだったからとバッサリフラれた日のことだ――」
「……グッ。……その節は、すまなかった」
全員の視線がぐるりと周りアンフィスに合った所でピタッと止まる。アンフィスはその視線の冷たさに言葉が詰まるが、なんとか謝罪の言葉を絞り出す。
そして、皆はそれを聞き届けるとテップへと視線を戻す。
「あぁ。もう昔の話さ、気にしないでくれ。んで、その日破れかぶれに駆け出した俺は大広場の噴水の上で体育座りをしていた。ハハ、今になって思えばなんであんなこと――」
テップは、俯き加減に自嘲しながらそんなことを言う。皆の視線は、またしてもアンフィスへ――。
「……グッ。だ、だから悪かった。俺が悪かった。すまない」
両手を上げ、頭を深く下げるアンフィス。皆はそれを見て、ゆっくりと頷くとまたテップへ視線を戻す。
「それで、まぁしばらく噴水にお尻を打たれながら物思いに耽っていたら聖女が目の前にいたんだよ。まぁけど流石の俺もその日ばかりはナンパする気もすっかり萎えていたからスルーしていた。そしたら――」
「「「そしたら?」」」
「話しかけてきた。まぁ、聖女だからな。きっと神はなんちゃらとか言いながらありがたい話をするもんだと思っていた。だがあろうことか――」
「「「あろうことか?」」」
「ナンパされた。今日この時、この場所にいる貴方だから話すことができた。あなたと私は似ている。また会いたいってな」
「「「…………」」」
話しかけてくるまではリアリティがあったが、そこから先はどうも怪しいと感じてしまう一同。しかし、確かに聖女の方がテップに関心があるようにも見えたため嘘だとも言いづらい。その為、皆は何も言わずじとーっとした目で見つめる結果になってしまい――。
「だーかーらー言ったろ!! はい、もうこの話は終わり終わり! 次デザート食うぞ! おらっ、リリスここにはプリンも杏仁豆腐もあるぞ!」
そうなることが予想できたからこそ、言いたくなかったテップはデザートで無理やり話題を変えにかかるのであった。
「プリンッ!! 杏仁豆腐!? ほほほほほ本当なのだー!! 店員さんこれとこれを頼むのだー!」
「ママー! うーもぷりんとあーにんどーふ食べるっ!!」
「えっ、杏仁豆腐もあるのっ? 嘘っ……」
「フフ、本当ですよ。このページの隅の方に、あっ、白玉ぜんざいもありますね」
だが、効果は絶大で女性陣はテップの逆ナン話よりデザートの方が優先順位が高くなったようだ。
そして、食事が終わり、セシリアのガイドの下、様々な場所を巡った遊楽団の面々は聖女のことなど頭の隅へと追いやられ、ましてやノインのことなど皆、記憶の彼方であろう。が――。
(それにしても、あの気味の悪い男はなんだったんだ? とても宗教家で慈愛の心を説くような奴には見えなかったが……)
テュールの心の中には小さなしこりとして残り続けた。
こうして二日目の自由行動は終わり、セシリア宅へと戻る一同。その道中――。
「あっ……」
テップが、立ち止まり何かに気付く。
「……ツヨシ。ツヨシ預けたまんま会いに行ってねぇや……」
「……テップ忘れるなんてひどい」
「いやいやいや、お前も忘れてただろうが!」
こうして、テップとレーベだけでなく一同は顔を見合わせ、皆が皆忘れていたということで気まずい表情となる。
一同は早足の限界を越えた早足でツヨシの元へ向かった。だが――。
「ぶるふぁぁあぁ!! ぶるっぶるっふぁっふぁ!! ぶるぶるふぁぁぁぁああ!!」
当然ツヨシは怒っていた。そりゃもう毛をツンツンに逆立てながら怒っていた。これに対しテップが先陣をきってフライング土下座で謝る。
「すまない!! ツヨ――しるぶプれっ!!」
だがツヨシは逆らえないはずのテップを一顧だにせず足蹴にし――。
「……ツヨシごめん」
レーベに根気よくグルーミングされてようやく怒りを収める。
「というわけで、みんなもペットは大事にしよ……う、ぜ。ガクリ」
こうしてテップの尊い犠牲を無駄にしないよう、しばらく騎獣舎でツヨシと遊び、日も暮れた頃にセシリアの家へ戻る。そして帰って開口一番――。
「カカッ、テップなんだい、その顔は? そんな模様いれてもリエースじゃモテやしないさね」
と、ルチアに笑われるのであった。
「お、美味しいのだぁぁぁあ!! このカリッジュワッほわわ~んなのおかわりなのだ!!」
「……肉うまし。はむはむ。……肉うまし」
「こら、ミア? はしたないぞ? 両手で掴むな。ほら、こっちは置いて……ほら拭くぞ。あー、ありがとう食べさせてくれるん――じゃないのか」
「おくの、やー! うーの食べるっ! あーむ! んぐんぐ。あーむ!」
「フフ、ウーミアちゃんは欲張りさんですね? 私のも食べますか?」
「せしりあのはおいしくないからやー」
「うぅー。ひどいです……。確かに薄味ですけど、薄味ですけど……」
「アハハ……、何もそんな涙ぐまなくても……。けど、ウーミアちゃん? ママの言うことは聞かないとメッだよっ?」
「あーい」
と、いうように女性陣はどこ吹く風でご機嫌で食事を楽しんでいた。そして、それを見たアンフィスはあまりの変わり身の速さに――。
「ったく。女ってのは本当にコロコロと気が変わる生き物だな」
と、呆れながらキロ単位の肉にかぶりついてた。
「あっ、アンフィスそういうのを女性差別って言うんだよー? そーれーにー、アンフィスが女の子を語れるの?」
と、言うのは体長60cmはあろうかというロブスターらしき甲殻類をバリボリと殻ごと食べているヴァナル。
「フフ、違いありませんね。まぁ、ですが私達もアンフィスの全てを知っているわけではありませんから。もしかしたらどこぞの誰かのように知らないところで声をかけているのかも知れませんよ?」
綺麗にフォークとナイフを使い、上品に食事を進める執事。そして、執事はそんなセリフとともにチラリとテップへ視線を配る。
「んぐっ? ふぃや、へふひほんらはんへーらなびっべ」
「おい、こら。そんなんで誤魔化されないぞ? きちんと飲み込んでから喋れ。おっと、新たに詰め込もうったってそうはいかないぞ?」
誤魔化すように口一杯に食事を詰め込んだまま喋るテップ。更にテップは追撃を免れるため右手にパッサパッサの硬いパンを握りしめる。だが、テュールがそれを許さない。
「もう、テュールくん? テップ君? 食事の場所であんまりはしたないことしないでねっ?」
「そーだ! そーだ! 折角美味しいのだから、黙って食べるのだ!」
「そーだ! そーだ! なのだー!」
「むぅー! 真似するななのだー!」
カグヤが苦笑しながら諌め、リリスがそれに同調するが、結局ウーミアにからかわれ、はしたない組に堕ちてしまうのであった。
「ですが、本当にどういうお知り合いなんですか?」
そして、一瞬の会話の隙間に最も流しにくいであろう相手――セシリアがテップに尋ねる。そして、周りもセシリアに船頭を譲るのが最も難破しない道のりだと考え、黙って同調しテップに目線だけで圧力をかける。
「な、難破……もとい、ナンパじゃないぞ? いや、本当だから。えぇ……これ話さなきゃダメ? ……はいはい分かりました。えぇと、あれは確か――あぁ、そうだ、あれは俺がリーシャ先輩に人違いだったからとバッサリフラれた日のことだ――」
「……グッ。……その節は、すまなかった」
全員の視線がぐるりと周りアンフィスに合った所でピタッと止まる。アンフィスはその視線の冷たさに言葉が詰まるが、なんとか謝罪の言葉を絞り出す。
そして、皆はそれを聞き届けるとテップへと視線を戻す。
「あぁ。もう昔の話さ、気にしないでくれ。んで、その日破れかぶれに駆け出した俺は大広場の噴水の上で体育座りをしていた。ハハ、今になって思えばなんであんなこと――」
テップは、俯き加減に自嘲しながらそんなことを言う。皆の視線は、またしてもアンフィスへ――。
「……グッ。だ、だから悪かった。俺が悪かった。すまない」
両手を上げ、頭を深く下げるアンフィス。皆はそれを見て、ゆっくりと頷くとまたテップへ視線を戻す。
「それで、まぁしばらく噴水にお尻を打たれながら物思いに耽っていたら聖女が目の前にいたんだよ。まぁけど流石の俺もその日ばかりはナンパする気もすっかり萎えていたからスルーしていた。そしたら――」
「「「そしたら?」」」
「話しかけてきた。まぁ、聖女だからな。きっと神はなんちゃらとか言いながらありがたい話をするもんだと思っていた。だがあろうことか――」
「「「あろうことか?」」」
「ナンパされた。今日この時、この場所にいる貴方だから話すことができた。あなたと私は似ている。また会いたいってな」
「「「…………」」」
話しかけてくるまではリアリティがあったが、そこから先はどうも怪しいと感じてしまう一同。しかし、確かに聖女の方がテップに関心があるようにも見えたため嘘だとも言いづらい。その為、皆は何も言わずじとーっとした目で見つめる結果になってしまい――。
「だーかーらー言ったろ!! はい、もうこの話は終わり終わり! 次デザート食うぞ! おらっ、リリスここにはプリンも杏仁豆腐もあるぞ!」
そうなることが予想できたからこそ、言いたくなかったテップはデザートで無理やり話題を変えにかかるのであった。
「プリンッ!! 杏仁豆腐!? ほほほほほ本当なのだー!! 店員さんこれとこれを頼むのだー!」
「ママー! うーもぷりんとあーにんどーふ食べるっ!!」
「えっ、杏仁豆腐もあるのっ? 嘘っ……」
「フフ、本当ですよ。このページの隅の方に、あっ、白玉ぜんざいもありますね」
だが、効果は絶大で女性陣はテップの逆ナン話よりデザートの方が優先順位が高くなったようだ。
そして、食事が終わり、セシリアのガイドの下、様々な場所を巡った遊楽団の面々は聖女のことなど頭の隅へと追いやられ、ましてやノインのことなど皆、記憶の彼方であろう。が――。
(それにしても、あの気味の悪い男はなんだったんだ? とても宗教家で慈愛の心を説くような奴には見えなかったが……)
テュールの心の中には小さなしこりとして残り続けた。
こうして二日目の自由行動は終わり、セシリア宅へと戻る一同。その道中――。
「あっ……」
テップが、立ち止まり何かに気付く。
「……ツヨシ。ツヨシ預けたまんま会いに行ってねぇや……」
「……テップ忘れるなんてひどい」
「いやいやいや、お前も忘れてただろうが!」
こうして、テップとレーベだけでなく一同は顔を見合わせ、皆が皆忘れていたということで気まずい表情となる。
一同は早足の限界を越えた早足でツヨシの元へ向かった。だが――。
「ぶるふぁぁあぁ!! ぶるっぶるっふぁっふぁ!! ぶるぶるふぁぁぁぁああ!!」
当然ツヨシは怒っていた。そりゃもう毛をツンツンに逆立てながら怒っていた。これに対しテップが先陣をきってフライング土下座で謝る。
「すまない!! ツヨ――しるぶプれっ!!」
だがツヨシは逆らえないはずのテップを一顧だにせず足蹴にし――。
「……ツヨシごめん」
レーベに根気よくグルーミングされてようやく怒りを収める。
「というわけで、みんなもペットは大事にしよ……う、ぜ。ガクリ」
こうしてテップの尊い犠牲を無駄にしないよう、しばらく騎獣舎でツヨシと遊び、日も暮れた頃にセシリアの家へ戻る。そして帰って開口一番――。
「カカッ、テップなんだい、その顔は? そんな模様いれてもリエースじゃモテやしないさね」
と、ルチアに笑われるのであった。
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