【書籍化作品】無名の最強魔法師
猟師の弟子
「………分かった……村長にはそう伝えておく。どうかよろしく頼む」
ヤンクルさんは、10歳の俺に向けて頭を下げてきた。
俺は頷きながらも、まずやる事を頭の中で組み立てていく。
そして、その中の最優先項目をまず行う事にする。
まずは怪我の治療。
俺が5歳の時に教会のウカル司祭使っていた回復魔法を見てから練習していたもの。
それは世界の理であり、この世界の魔法の真髄。
最初、ウカル司祭様が使っていた魔法と呼ばれる奇跡の術は、俺にとってまったく馴染みがないものであった。
でも俺は、神父が使った回復魔法を見た事で世界には魔法と呼ばれるものが存在していることを知った。
だから俺は毎日、どうやれば魔法が発動するかを研究した。
そして、一ヶ月が経過した頃に俺は魔法の発動する方法を見つけた。
人に対して使うのは初めてだが……。
俺は骨折しているヤンクルさんの右足に手を添える。
「ヤンクルさん、弟子になる条件と等価交換という事で、今からする事は絶対に秘密にしてください」
ただでさえ、勧誘がうるさいのだ。大人に知られると面倒になる事は目に見えている。
「――秘密?どういうことだ?」
俺の質問に疑問で返してくるのを聞きながら俺はもう一度、言葉を発する。
「約束してください。これからする事は絶対に秘密にしてください。それはリリナにも言えます。もし守って頂けるのでしたら、森での狩猟を俺が手伝う事を約束しますし、皆さんが村から追い出される事もないと思います。どうしますか?」
幼馴染の親御さんには、こういった話はしたくないが極力、自分の力は隠しておきたい。
まぁ助ける時点でいつかは漏れる事になると思うが成人まで時間が稼げればいい。
だから頷いてくれれば俺としては楽だし、全員が助かる道でもある。
「私は、誰にも言わないよ!」
リリナがまず賛同してくれた。
村から追い出されなくなるという言葉に、心が動かされたのだろう。
「わかった。一切他言しない事を誓おう」
ヤンクルさんも俺の提案を受け入れざるを得ないと理解していたのか承諾してくれた。
「ありがとうございます。それでは――」
組み上げるのは事象にして万能。
積み上げるのは記憶にして再生。
頭の中で細胞が分裂し神経、骨、筋肉、血管、皮膚が再生し接合していく光景を思い浮かべる。
これは、地球では誰もが習う高校までの人体の形であり縫合。
そして必要になる魔法発動媒体の鍵は漢字を頭の中でくみ上げる事。
《肉体再生》の魔法を発動させる。
俺が発動させた魔法はヤンクルさんの足をの骨を正しく接合していく神経、筋肉、血管、皮膚を含めた全体の肉体の修復と再生を行う。
それはアライ村の教会にいる司祭ウカルの回復魔法とは隔絶したもの。
極光の白い光がヤンクルさんの体を包み込み霧散する。
すると、そこには怪我一つない健康体となったヤンクルさんが居た。
「……え?……あ?……え?……」
ヤンクルさんは、今起きたことを理解出来ていないのか自分の体を何度も見ている。
リリナも突然の出来事に驚いて言葉を発する事が出来ないようであった。
「それでは、ヤンクルさん。契約はきちんと守ってください」
俺はそれだけ言うと村の周囲を意識する。
そして上空から周囲を見渡すように意識しながら《探索》魔法を発動させる。
「”探索”」
発動した魔法は、村だけではなく周囲の森や山の中まで魔法の波動が吹き抜けていく。
そしてすぐに自分の頭の中に周辺の地図が表示される。
その地図の中、森深くに一人の人間がいるのを確認した。
光点が緑という事もあり、これは村人だろう。
それとその緑色の光点に近づく赤い光点が確認できる。
どうやら、何らかの魔物もしくは動物にターゲットにされてる可能性がある。
俺はすぐに立ち上がる。
そしてヤンクルさんへ視線を向けて言葉をかける。
「ヤンクルさん、奥さん……ユニイさんが危険です。すぐに助けに向かいますので失礼します」
俺の言葉にヤンクルさんは立ち上がろうとしたが、完全に回復したとは言えしばらく動かしていなかったのだ。すぐに動かせるようになるのは無理だ。
「ユウマ君!」
リリナが俺へ何故か熱い視線を向けてきている。
きっと父親の回復と、母親が危険だという事に頭が追いつかずどうしたらいいのか分からないのだろう。
俺は、リリナの頭の上に手を載せて撫でる。
「あとは任せて。俺が君と君の家族を守るから……だから安心して待って居てくれればいいから」
すぐに俺は、草履を履くと家から出た。
そして《肉体強化》魔法を発動させる。
魔法が発動すると同時に体中の細胞が活性化していくのが手に取るように分かる。
俺は、探索の魔法により頭の中で表示された位置へ向けて移動を開始した。
ヤンクルさんの家は村の外れにあり森へも近い。
魔法を使っても誰にも見られる事はない。
すぐに森の中へ入り枝を蹴りながら高速で移動していく。
村からかなりの距離に存在していた光点へ近づくとそこには、リリナを大人にしたような美しい女性が4メートルはある巨大熊に襲われていた。
高速で移動したままの速度で草鞋を鋼鉄に変化させる。
そしてそのまま熊の頭を蹴りつける。
肉体強化魔法で強化された蹴りで巨大熊の頭が砕け散った。
周囲に巨大熊の血が舞う。
俺は溜息を吐きながらその場に着地すると舞った血から逃れるようにリリナの母親であるユニイさんの体を掴んでその場から飛びのいた。
「大丈夫でしたか?」
俺はユニイさんに言葉をかけたが、どうやら巨大熊に殺されかけた事で失神していた。
4メートル近くある熊の死体と、失神しているユニイさんを見て村まで戻るのは大変そうだと俺は溜息をついた。
ヤンクルさんは、10歳の俺に向けて頭を下げてきた。
俺は頷きながらも、まずやる事を頭の中で組み立てていく。
そして、その中の最優先項目をまず行う事にする。
まずは怪我の治療。
俺が5歳の時に教会のウカル司祭使っていた回復魔法を見てから練習していたもの。
それは世界の理であり、この世界の魔法の真髄。
最初、ウカル司祭様が使っていた魔法と呼ばれる奇跡の術は、俺にとってまったく馴染みがないものであった。
でも俺は、神父が使った回復魔法を見た事で世界には魔法と呼ばれるものが存在していることを知った。
だから俺は毎日、どうやれば魔法が発動するかを研究した。
そして、一ヶ月が経過した頃に俺は魔法の発動する方法を見つけた。
人に対して使うのは初めてだが……。
俺は骨折しているヤンクルさんの右足に手を添える。
「ヤンクルさん、弟子になる条件と等価交換という事で、今からする事は絶対に秘密にしてください」
ただでさえ、勧誘がうるさいのだ。大人に知られると面倒になる事は目に見えている。
「――秘密?どういうことだ?」
俺の質問に疑問で返してくるのを聞きながら俺はもう一度、言葉を発する。
「約束してください。これからする事は絶対に秘密にしてください。それはリリナにも言えます。もし守って頂けるのでしたら、森での狩猟を俺が手伝う事を約束しますし、皆さんが村から追い出される事もないと思います。どうしますか?」
幼馴染の親御さんには、こういった話はしたくないが極力、自分の力は隠しておきたい。
まぁ助ける時点でいつかは漏れる事になると思うが成人まで時間が稼げればいい。
だから頷いてくれれば俺としては楽だし、全員が助かる道でもある。
「私は、誰にも言わないよ!」
リリナがまず賛同してくれた。
村から追い出されなくなるという言葉に、心が動かされたのだろう。
「わかった。一切他言しない事を誓おう」
ヤンクルさんも俺の提案を受け入れざるを得ないと理解していたのか承諾してくれた。
「ありがとうございます。それでは――」
組み上げるのは事象にして万能。
積み上げるのは記憶にして再生。
頭の中で細胞が分裂し神経、骨、筋肉、血管、皮膚が再生し接合していく光景を思い浮かべる。
これは、地球では誰もが習う高校までの人体の形であり縫合。
そして必要になる魔法発動媒体の鍵は漢字を頭の中でくみ上げる事。
《肉体再生》の魔法を発動させる。
俺が発動させた魔法はヤンクルさんの足をの骨を正しく接合していく神経、筋肉、血管、皮膚を含めた全体の肉体の修復と再生を行う。
それはアライ村の教会にいる司祭ウカルの回復魔法とは隔絶したもの。
極光の白い光がヤンクルさんの体を包み込み霧散する。
すると、そこには怪我一つない健康体となったヤンクルさんが居た。
「……え?……あ?……え?……」
ヤンクルさんは、今起きたことを理解出来ていないのか自分の体を何度も見ている。
リリナも突然の出来事に驚いて言葉を発する事が出来ないようであった。
「それでは、ヤンクルさん。契約はきちんと守ってください」
俺はそれだけ言うと村の周囲を意識する。
そして上空から周囲を見渡すように意識しながら《探索》魔法を発動させる。
「”探索”」
発動した魔法は、村だけではなく周囲の森や山の中まで魔法の波動が吹き抜けていく。
そしてすぐに自分の頭の中に周辺の地図が表示される。
その地図の中、森深くに一人の人間がいるのを確認した。
光点が緑という事もあり、これは村人だろう。
それとその緑色の光点に近づく赤い光点が確認できる。
どうやら、何らかの魔物もしくは動物にターゲットにされてる可能性がある。
俺はすぐに立ち上がる。
そしてヤンクルさんへ視線を向けて言葉をかける。
「ヤンクルさん、奥さん……ユニイさんが危険です。すぐに助けに向かいますので失礼します」
俺の言葉にヤンクルさんは立ち上がろうとしたが、完全に回復したとは言えしばらく動かしていなかったのだ。すぐに動かせるようになるのは無理だ。
「ユウマ君!」
リリナが俺へ何故か熱い視線を向けてきている。
きっと父親の回復と、母親が危険だという事に頭が追いつかずどうしたらいいのか分からないのだろう。
俺は、リリナの頭の上に手を載せて撫でる。
「あとは任せて。俺が君と君の家族を守るから……だから安心して待って居てくれればいいから」
すぐに俺は、草履を履くと家から出た。
そして《肉体強化》魔法を発動させる。
魔法が発動すると同時に体中の細胞が活性化していくのが手に取るように分かる。
俺は、探索の魔法により頭の中で表示された位置へ向けて移動を開始した。
ヤンクルさんの家は村の外れにあり森へも近い。
魔法を使っても誰にも見られる事はない。
すぐに森の中へ入り枝を蹴りながら高速で移動していく。
村からかなりの距離に存在していた光点へ近づくとそこには、リリナを大人にしたような美しい女性が4メートルはある巨大熊に襲われていた。
高速で移動したままの速度で草鞋を鋼鉄に変化させる。
そしてそのまま熊の頭を蹴りつける。
肉体強化魔法で強化された蹴りで巨大熊の頭が砕け散った。
周囲に巨大熊の血が舞う。
俺は溜息を吐きながらその場に着地すると舞った血から逃れるようにリリナの母親であるユニイさんの体を掴んでその場から飛びのいた。
「大丈夫でしたか?」
俺はユニイさんに言葉をかけたが、どうやら巨大熊に殺されかけた事で失神していた。
4メートル近くある熊の死体と、失神しているユニイさんを見て村まで戻るのは大変そうだと俺は溜息をついた。
コメント
ともと
セリフと地の文のバランスよくて読みやすいです