【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

ヤンクルさんが空気キャラな件について

<a href="//655400.mitemin.net/i235851/" target="_blank"><img src="//655400.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i235851/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>

ユウマ村概略


 ウラヌス十字軍が村の北側に陣地を布いてからすでに一週間が経過していた。
 そして俺の魔力っぽい何かは回復しない所か減る一方である。
 男エルフが弓と矢を作り攻撃してくるたびに《武器破壊》の魔法で分子結合を解き破壊しているからその分ずつ力が無くなっていっているのだ。
 しかも最近では『えくすかりばあああああああああ』とか勇者が叫んで木で作られた木剣を振り下ろしてくる。
 その都度、壁が壊れる。
 俺は壁を修復しながら勇者が持つ木剣も破壊する。
 おかげで、俺の魔力がどんどん減っていく。

 しかも特技ってのは武器さえ持ってれば発動する。
 そして威力は激減するようだが発動条件は木で作られた武器でも良いらしい。
 おかげで日中は掘りの外から傭兵やウラヌス十字軍第三騎士団の特技持ちの連中からの攻撃に晒されて土を高圧縮して作った土壁がボロボロになっている。
 特技を使える人間が50人も居ないのが救いだとも言えるが、残りの従軍してきた連中は木を倒して薪にしたり木剣を作って在庫を確保したりと余念がない。
 それにすらあぶれた連中はと言えば森の中に入って獲物を狩りだした。

 正直言って、村の周辺の森は人口が400人程度の村だからこそ必要分の動物性たんぱく質を供給できていたわけで、5000人近い軍の供給を賄えるとは到底思えない。
 このままだと森の生態系が破壊されてしまう。
 後、問題なのがウラヌス十字軍に見つかる恐れがあるため、俺が昼間に狩りに出かける事が出来ないという点だ。
 おかげで夜行性の動物しか狩ることができず、食料が不足になることは無いと思うがたんぱく質である生肉の供給が滞ってきている。

 後は、ウラヌス十字軍が攻めてきていると村の皆に話せていない事か。
真実を話せば村の皆がパニックになる恐れもある事から本当の事はいまだに話せてない。
 魔物が攻めてきたままでの設定でいまだに押し通している。
 ただ、現状は村から出られない状態な事からもしかしたら、村の皆に窮屈な思いをさせているのと思う。
 その事で、ウカル様へ相談に行く人が増えている。
 その都度、ウカル様は『アース教会は皆様を守るために尽力を尽くしています。もうしばらくすればイルスーカ公爵様が来られます。みんなで頑張りましょう!』と力説しているらしい。
 人は極限な状態になると神様頼りになる事もあり、昨日などウカル様が来て『ユウマ君!君の言ったとおりだよ!信者がたくさん増えたよ!今まで数人しか加入してくれなかったのに……ううっ……これで、出世ができるよ…」とか俺に言っていたけど、数日前に出世には興味が無いとか聞いた記憶があったんだが……きっと俺の気のせいなんだろうと思うことにして『あ、はい』とだけ答えておいた。
 でもウカル様、気がついていますか?
 それは一時的なものにしか過ぎないんですよ?
 過大な期待に答えられない時の村人の怒りは全部ウカル様にいくんですよ?と思ったが言わずにおいた。
 誰だって夢は見たいのだ。
 俺がそれを壊したらいけないな。
 そこまで考えた所で、これからどうしたらいいか考える。
 最初は、どう考えてもアホっぽい人達しかいなかったから、簡単にあしらえると思っていた。
 特に勇者とかどう見てもアホぽかった。
 だけど連日の攻防をしているとジリ貧だと言う事に気が付いた。
 これを見越してウラヌス教会が軍を撤退せずに、村に圧力をかけてきたなら彼らの背後にはかなりの策士がいるのだろう。
 まさしく諸葛孔明のレベルだ。

「おにいちゃん、おにいちゃん!」

「ユウマ君……」
 考え込んでいた所に妹アリアの声が聞こえてくる。
 聞こえてきた方へ視線を向けるとアリアが手を振って近づいてくる。

「今日はお家に帰ってこられるの?」
 妹が胸の前で両手を握り締めて、塀の上で座っている俺に対して熱弁してくる。

「今日は無理かな?」

「――えええー。壁作ってから一日も帰ってこないよね?倦怠期なの、ねえ倦怠期なの?」
 妹が何かを言ってくるが、倦怠期って言葉を10歳の女の子がどこで覚えてくるのだろうか?
 今度、教えている奴を見たら少しお話をしないといけないのかも知れない。

「アリア、分かってくれ。これはお前を守るために必要な事なんだ」

「……う、うん。わかった……」
 妹はそれだけ言うと顔を真っ赤にして家の方向へトボトボと歩いていく。
 その背中を見ながら俺は……一日24回も聞きに来るのはやめてほしいなと思った。
 そして……

「ユーウーマーくーん」
 妹と入れ替わりに来たのは幼馴染のリリナだった。今日は腰まである金色の髪の毛をポニーテールに纏めてあり、動きやすそうなシックな服装だ。

「えへへ……きちゃた!」
 照れながら俺に話しかけてくるが、俺としては何と反応していいのか分からない。
 そろそろ日が暮れるから万が一の事を考えて家に戻ってほしいのだが……。

「どうかしたのか?」
 とりあえず話しを聞くことにする。

「何か無いと来たら駄目なの!?血が繋がった妹はよくて私は駄目なの!?」
 何をそんなに怒っているのだろうか?
 別に妹は関係ないと思うのだが……。
 どうも女心と言うのは理解できない。
 仕方なく塀の上から跳躍し掘りを通り越してリリナの前に着地する。
 そしてリリナの両手を持ちながら声を掛ける。

「よく聞いてくれ。妹は関係ない、俺たちは一緒に育ってきた家族みたいなモノだろう?」
 そう俺はヤンクルさんに弟子入りしてから時折、ヤンクルさんの家に泊まっていたのだ。
 冒険者としての必用学である薬草の見分け方や動物の解体の仕方など夜通し教えてもらったこともある。
 これはもう家族、つまり身内としてカウントされているんじゃないだろうか?
 俺の言葉を聞いたリリナは顔を赤く染めていく。

「だから、もうリリナは俺の家族の一員みたいなものなんだ。だから、妹のアリアと自分を見比べて卑下しないでほしい。俺にとってはリリナも大事な人なんだから」

「―――う、うん……ユウマがそう言うなら……わかった……」
 そう、いつかリリナが結婚することになったとしても俺はリリナの家族として祝福してやろうじゃないか!そのくらいの度量は持っていたいと思う。

「ユウマ君、マジ刺されても知らないよ?」
 いつの間にかヤンクルさんが傍にいた。
「ヤンクルさん、いつからそこに?」

「最初からいたよ!?『おにいちゃん』って妹さんが君に話しかけた時に、私も話しかけたじゃないか?」
 ……やばい。全然気がつかなかったわ。

「そ、ソーデスヨネ」 

「まったく、ユウマ君。あまりそういう無自覚な事をしていると大変な事になって背中から包丁生えてくる事になるよ?」
 わかりましたからあまり不吉な事を言うのは止めて欲しいです。
 俺は、妹のアリアや幼馴染のリリナに幸せになってもらいたいだけですから。





コメント

  • ウォン

    ヤンクルさんいいキャラしてるね

    1
  • ポリプロピレンs

    私は頭が大草原になりました

    5
  • ノベルバユーザー268806

    俺のケツから草が生えました

    4
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