【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

愛憎昼ドラの町カレイドスコープ(3)

 リネラス、セイレス、イノンが色々と問題を抱えたり起してた翌日であっても日はきちんと昇り闇を払っていく。
 夜の帳が開けるにつれて太陽からの日差しは、ユウマが寝ている部屋の中をゆっくりと照らしていく。

 俺は、ベッドが降りると体中の間接を鳴らしながらストレッチをする。
 そして昨日、眠れなかった原因を思いだす。

「しかし、なんというか作為的な物をリネラスから感じてたが【エターナルフィーリング】ってのは、金貨100枚もしていたのか。……ってことは7株で700枚か……かなり高いな」

 俺は一人呟きながら首を回すと「ボキボキッ」と音がなる。
 どうやらずっと迷宮内で半年以上も寝泊まりしていたことで、柔らかい布団に体が適用出来ていないようだ。

 但し、身体能力を含む聴力、視力、動体視力などは海の迷宮リヴァルアで鍛えられた影響で常人のそれを遥かに上回っている。
 さらには、迷宮内での些細な物事や変化を敏感に察するために、空気の振動から情報分析をある程度する術も俺は身につけている。

 そのため、昨日の夜にリネラスとイノンの会話は、ほぼ筒抜けであった。
 セイレスが参加してるような話も聞こえてきたが、セイレスはそんな事をする子には見えない。
 もし俺にセイレスが好意を抱いてるとしたら、チョロすぎると思う。

 まぁリネラスの場合はお金第一主義者だからな。
 俺が好きというより俺が稼いでくるお金がきっと好きなんだろう。

 そしてイノンはたぶん、肉親を亡くした時に俺がやさしくしたものだから吊り橋効果みたいな物で好意を抱いてるだけだと思う。

 まぁ、花屋に入った後にリネラスが不自然に手を動かしてるのを見て、何か企んでいるとは少しくらいは思っていた。
 ただ、他の女性にプレゼントをした手前、一人だけ除け者にする訳にはいかない。
 エターナルフィーリングを購入したのは、店の店主とリネラスとの事も考えてだった。

 俺は、洋服を着てから部屋を出る。
 そして廊下を歩きいていくと、昨日は食堂だった場所が酒場になっている。
 酒場になってるというより酒場兼食堂に近い?

 そして、今まで見た事がないエリアがそこには存在していた。

「アイテム買取所?」

 酒場兼食堂の一角に、アイテム買取所と言う看板が下がっておりカウンターが存在していた。
 誰も座ってはいないが、何に使うのか首を傾げる。

「フィンデイカの冒険者ギルドにも存在しなかったよな?」

 俺は一人呟くと誰かが走ってくる。

「ユウマさん、ユウマさん!」

 後ろから抱き着いてきようとするイノン迷宮リヴァルアで備わった無意識のうちの回避行動でサッとかわす。
 そして、俺にかわされたイノンはくるっと振り向いてくる。
 どうやら俺にかわされた事がショックらしく少し怒った顔を見せてくる。
 俺は、そんなイノンの頭の上に手を置く。

「イノン、あまり相手の弱みにつけこんだ事をするんじゃないぞ?」

 俺はため息をつきながらイノンの頭を軽く撫でる。
 するとイノンは驚いた顔をして俺を見て来た。

「え? もしかして……ユウマさん、昨日の夜の事に気がついて?」

 俺はイノンの言葉に頷く。
 するとイノンは、顔を真っ青にしていく。

「ち、違うんです! あれは言葉の綾というかそんな感じなんです!」
「それでもだ。俺達は一緒に旅をしている仲間なんだ。ああいう風に仲間の弱みに付け込んで交渉するのは良くないし、それにイノンもいいとは思っていないだろう?」

 俺の言葉にイノンは顔を伏せる。
 俺は続けて言葉を話す。

「仲間なんだから、その辺はきちんとしないとな。俺は、イノンが本当は良い奴だって知ってるから」
「ユウマさん……私……」

 イノンが涙を零しながら言葉を紡ごうとしたところで――。

「おはようユウマ。今日もいい天気ね!」

 リネラスが、冒険者ギルドの青い色を基調としたスーツを身にまとい姿を現した。

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