【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

限界を超えた究極のダンジョン(前編)

「ギルド内にダンジョンを作る? それはマズイんじゃないのか?」

 ただでさえダンジョンコアと【エターナルフィーリング】で、海の港町カレイドスコープは男女の仲が壊滅状態に陥ったというのに、そこからリネラスは何も学んでないのだろうか? と思いながらも俺は思わずリネラスに突っ込みを入れる。

「ふふふ、良く聞いて! たしかに制御できないダンジョンは危険よ? でもね! 制御出来たらダンジョンは膨大な利益を私に齎してくれるわ!」

 リネラスは、青い瞳をお金マークにしながら俺に力説してきた。
 しかも利益が私のためとか言いきってきった。
 ギルドのためじゃないのかよ……。
 まったく……。
 というか、俺達は追われてる身なのに、こんな事をしていていいのだろうか?

 俺は溜息をつきながら、天使の輪のように光輝いているリネラスの金色の髪の毛の上に手を置く。

「そうか、がんばってくれ!」

 とりあえず、このトンデモナイ事を言っているリネラスは放置しておくとしよう。「どうしてよー!」と俺の服を掴みながら手伝って欲しそうに上目づかいしてくるが無視だ、無視。

 中庭を見渡しながら被害状況を確認していく。
 中庭の中央部に存在していた花壇は綺麗に吹き飛んでいて5メートルほどくぼ地になっている。
 さらには、そこからクレーター上に直径20メートルほどの円を描いて周囲の地面を抉り、中庭に面している壁が崩壊、そして窓ガラスに至っては全て無くなっている。
 窓ガラスの残骸が見当たらないと言う事は、イノンが掃除をしたのだろう。
 壁の残骸に至っては細かい物は見当たらないが大きな物がある事から持ち運びが出来ない事から放置されたと見た方がいいか……。

「ユウマ! ユウマったら! 無視しないで!」

 リネラスが必死に俺の腰の服を引っ張ってくるが、絶対にロクな事にならないと言う予感がある。
 とりあえずはまずは、建物の修理を行いたいのだが……俺に建築の知識が無い。

 木材をどの位置で、どうのように配置していいかが検討もつかない。
 俺の魔法は、自身が理解しており想像することが出来て初めて現象を編み上げ事象に干渉する事が出来る。
 簡単に言うなら地球と言う世界の科学に沿った現象を、魔法という形にして発動させてるに過ぎない。
 だから、何でもは出来ないのだ。

「さて……どうしたものか」

 まずは壁の補修だが、俺の中にある知識だと壁の素材はサイディング、もしくはコンクリートとなっているが……はっきり言わせてもらうと、良く分からないんだよな……。
 俺は壁に近寄っていく。
 砕けた壁を見ると木や草に堅い石のような物が使われてるのが分かる。
 ただ、木や草なら分かるんだが……建物を壁を覆っている壁がどのような材質で来てるのかまでは分からない。

「うーむ」

 もう、この際……全部、鉄筋コンクリート製にするか。
 鉄ならイメージが簡単だしな! 強度もあるし……。

 【探索】の魔法を発動。

 俺の探索魔法は、自身の魔力を音波として飛ばし相手の位置や周囲の地形を確認する。
 そのために、建物の構造状態なら確認する事が可能。

「さてと……」

 確認できた建物の柱の部分の木々を原子配列を変換し金属結合することで分子を組み上げ、宿屋内の骨格を鉄筋と鉄骨に変換していく。
 それと同時に、重量に耐えられるように、建物の床下部分の全てを原子配列と分子構造の変換を行いコンクリートに変えていく。
 それらを行った後に、建物の外側を全てコンクリート製に組み替えると同時に外側の数センチの部分を白い大理石に変換し補修していく。
 続けてガラスの構成は簡単だ。
 ガラスは、アルコキシドに水を加える事により分解した後に分子内から水を取り除いた分子の連続結合を焼いた物だ。
 その現象を頭の中で考えながら組み上げながら魔法を発動。
 そして作りあげたガラスを中庭に面した窓ガラスがあった場所へ嵌めこんでいく
 出来あがった宿を見て。

「ふむ、こんなもんか……」

 見た目は、依然よりも遥かに綺麗に光り輝いてると思うし耐久・強度ともに数倍に跳ね上がっているはずだ。
 さて、あとは終わった事をイノンに報告して俺の作業は終わりだな。

 中庭から宿に戻ろうとしたところで、痺れを切らしたのかリネラスが腕に抱きついてきた。


「【書籍化作品】無名の最強魔法師」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く