【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

エルフガーデン(13)

「わかった。次に精霊眼を持たない子供達の対応だが――」
「精霊眼を持たないエルフについは、ユウマ様の好きにしてくださって構いません。精霊眼を持たないと言うことは魔力を見る事が出来ないと言うことですから――」

 エリンフィートのあんまりな言い方に、俺自身、自分の眉間に皺が寄ったのが分かった。

「つまり、エルフ達が言うように出来損ないのエルフは必要ないと? そういう認識でいいのか?」
「――そうではありませんが、魔力を見る事が出来ないと言うことは世界の真理を見る事が出来ないと言うことです。価値観の違う者同士が一緒に暮らしていても混乱しか生まないでしょう?」
「混乱か……」

 俺は、エリンフィートを見下ろしながら言葉を紡ぐ。

 そんな俺の視線をエリンフィートはまっすぐに受け止め「ユウマ様も分かっていると思いますが、知能のある生物は自分の理解できない存在、異なる言語に容姿と価値観から容易に他者を排除します。人の世から争いが無くならないのはそれが原因だと言うことをユウマ様も知っていると思いますから、詳しくは説明致しませんが、私が魔力を見る事が出来ないエルフを排除しているのは、無益な争いを避けるための予防策であると言うことを理解していただきたいのです」と話してきた。

「そうか――」

 物は言いようだなと思いながらも「わかった」と頷いたあと部屋を出ようとしたところでエリンフィートの方を一度、振り返ってから神と言うだけあって、人とは異なった考えをしているんだなと感じたあと部屋から出た。



 エリンフィートと話をした後に、部屋を出るとサマラが壁に寄り掛かって俺を待っていた。
 俺が部屋から出てきたことに気が付くと「族長との話は終わったのか?」と語りかけてきた。

「ああ、エリンフィートとの話は終わった」
「エリンフィート? 族長がその名前で呼んでいいと?」

 サマラは驚いた表情で俺を見てくるが肩を竦めて「許可はとってないな」と答えると、呆気にとられた顔を見せたあと「だが、我らに何も言ってこないと言うことは問題ないのだろう」と、一人呟いていたのが印象的であった。

 しばらく、地下通路を歩いていると前方からエルフ達が走って近づいてきた。

「サマラ様、そちらの――かた……は……!? おとこ……」
「エイフェル、こちらの方が話題になっているユウマ様になる」

 サマラの言葉に、4人のエルフから熱い視線を向けられてくる。
 おいおい、話題ってなんだよ……。
 そんなに男がめずらし……いんだよな……。

「ところでサマラ様、族長は何と?」

 エイフェルという女性に問われたサマラは「わからないが――」と、言いながら俺へと視線を向けてくると「ユウマさん、族長とはどのような話をされたのですか?」と問いかけてきた。

「どのような話か……」

 俺は、サマラの言葉を聞きながらも何と答えていいか考える。
 今は、あまり余計な情報を与える必要もないだろう。
 生活必要物資が不足しているなら情報を得る為に親しくする必要も出てくるが、そこまででもないからな。

「簡単に言えば、冒険者ギルドとしてエルフガーデン内の調査だな」
「エルフガーデン内の調査ですか?」

 サマラが首を傾げて問うてくる。

「ああ――だが、それ以上は、エリンフィート――つまりお前たちの族長との話になるし、仕事の詳細内容を安易に第三者に漏らすのは、よくはないからな。この辺で納得してほしいんだが?」

 俺の言葉に何か含むものがあったのかサマラを筆頭としたエルフ達は、何やら考えたあとに、「わかりました」と引き下がった。

 もう少し食い下がってくると思っていたが、すぐに引き下がったエルフ達に違和感を覚えながらもサマラが出口に向かって歩き出してしまったので、思考を中断せざる得なかった。

 地上へ上がる階段を上りエルフ村の集落中央に出ると辺りは薄暗かった。
 空を見上げるが大樹の枝や葉で覆われていた事から、直接、日の光が入ってこないことから、太陽が沈みかけているのは分かったが何時か把握する事はできない。

「ユウマさん、そろそろ日が沈みますので夕飯などを用意しましたが、今日は私の家で泊まっていきませんか?」

 サマラが、頬を赤く染めて俺に話しかけてくると、他の4人のエルフ達も俺を食事に誘ってくる。
 ふむ……。
 たしかに――。
 普段から女性にモテない男性にとっては、とてもいい場所なのかもしれないな。

 

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