【書籍化作品】無名の最強魔法師
親類の絆(8)
その視線には苛立ちが含まれているようにも感じられ――。
「何を根拠に、そのようなことを?」
「理由はいくつがあるが――。そうだな、一番の理由はお前がリネラスを助けることに積極的になった点だな」
「それは、どういう意味でしょうか?」
「お前は、リネラスがこういう状況に置かれるまで、手をまったく出してこなかった――そう言えば分かるか?」
目の前の椅子に座っていたエリンフィートは眉元を潜めると、手を置いていたスカートを布地を無意識かも知れないが握りしめている。
「私は、ただ族長としてリネラスさんを救いたいだけで……「ほんとうにそうか?」……何を言いたいのでしょうか? はっきりと言ってもらえませんか?」
「なら、ハッキリと言わせてもらおう。お前が視ることが出来る制限、それは迷宮内を除外したエルフの視線であり耳であると。だから、お前はリネラスが迷宮に入って仮死状態になるまで一切、手を出してこなかった。それは、何故ならお前が干渉できる場所では無かったから」
「それは面白い考えですね?」
「そうか? 少し考えてみれば分かる内容だと思うがな?」
「お前が居た部屋だか、あそこは迷宮だろう? お前は自分が預かりしならない場所で起きる出来事について予測不可能なことにならないように自分の身をわざと迷宮の中に部屋を作って住んでいたんだ」
俺はさらに指を立ててエリンフィートを見据えながら言葉を紡ぐ。
それにしても……。
話してる間にも、次から次へと問題のパズルがはまり込んでいくように、絵図らが完成していく。
まるで、それらを知っているかのように自分の中から知識が湧き出してくる。
「そして、お前は断絶していた別の空間から、共感できる固体――つまり、エルフという魔力を見ることが出来る者が接触した際に、その端末から情報を得ることが出来る。そう俺は結論付けたのだがどうだ?」
「ユウマさん……。あなたは一体……何者―ー?」
目を見開いたエリンフィートは俺に問いかけてくるが。
「俺は、俺以外の何者でもないし、それ以外の何者でもない」
「あなたの使っている言葉は、まるで……」
「お前の見解はどうでもいい。問題はだ――」
俺は一度、言葉を切る。
そして……。
「お前は、リネラスが迷宮つまりダンジョンから運び出されたときに、仮死状態のリネラスから、リネラスが魔力を見ることが出来る体質に変化したことに気がついた。だから、手を差し伸べてきた。そうだろう? そしてあわよくば、俺の監視役にでも使おうとしたってところか?」
「――そうですか……どうして、その結論まで至ることが出来たのか、私には理解が及びませんが……」
「ただ、一つ気になることがある」
「なんでしょうか?」
そう、一つに気になることがある、
どうして、魔力を見るエルフを重宝してる癖に男エルフがエルフガーデンから出ていくのを黙っていたのかということだが――。
「ああ……。そういうことか」
俺は一人で納得する。
たしかに、そう考えれば辻褄があう。
エリンフィートは、遺伝子劣化と遺伝子の掛け合わせを知らない? なら、別の種族を掛け合わせることでも問題ないと考えたのかもしれない。
ただ、そこには落とし穴があり異常が出るまで時間を必要とした。
だから、エリンフィートは、その対策としてどうにかしようと俺に依頼をしてきた。
それは迷宮を攻略するという手法。
「エリンフィート、エルフガーデンに存在していた迷宮はお前が作った迷宮だな?」
沈黙で答えてくるエリンフィートに俺は肯定として受け止め考察する。
ただし、迷宮に関して気になるのは外界と迷宮を隔てる空間というのは完全に断絶されている。
それにより、外に影響が及ぶことは崩壊以外は考えられ――。
いや、まてよ?
エリンフィートが迷宮を作ったのなら、その主が何も出来ないというのはおかしい。
なら……。
「エルフガーデンの迷宮を作ったのは本当にお前なのか?」
「それは、あなたには関係の無いことでしょう? それよりも、もう時間がありませんよ? 日が沈むまでにリネラスを助けださなければ目を覚ますことはなくなりますから」
エリンフィートは話を逸らしてくる。
何か触れられたくない部分があるからなのか、わからないが――。
現状判明している内容だけでは、これ以上はエリンフィートを追い詰めるだけの証拠が足りない。
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