【書籍化作品】無名の最強魔法師
親類の絆(16)
「母親の気持ちを確かめる? 取り込まれてる状態で確かめるも何もないんじゃないのか?」
「それでも、尚のこってことかしらね。人という生物は、どんな絶望に置かれた状態でも希望を求めるものだから」
「希望ね……リネラスの深層心理世界を具現化しているのなら、意味がないと思うんだが……」
エリンフィートの説明には些か疑問を抱く内容ではあったが、現状では、この世界の解決方法がハッキリと分かったわけではない。
下手に動くとループする可能性もあるし、その際にリンスタットの精神がどうなるのか分からない。
「厄介だな……」
「そうかしら? この世界に来て分かったのだけども……」
「ん?」
「この世界は、リネラスさんの深層心理の世界であるはずなのに、とても不完全な性質を有していると思うの」
「どういうことだ?」
「まだ、気がつかないの?」
エリンフィートは、隣に立っている俺を見上げながら。「この世界の構成、木々の位置はリネラスさんが幼少期の頃に存在していた光景ではないわ」と俺に語りかけてきたが、何を言っているのか理解が出来ない。
「でも、この世界を全て観察したわけではないから、不確定な情報をユウマさんに与えると問題になりそうだし、もうしばらく様子見かしら?」
「……」
どうやら、彼女の口ぶりから、この世界のことについて何かしら掴んだように思えるが、俺に言ったらまずい? 何を言っているのか……。
「始めまして、エリンフィートと言います。こちらの方、ユウマさんと一緒に居た時に、貴女の娘さんに出会って連れてきて頂いたのです」
俺が考え事をしてる最中にエリンフィートは、リンスタットに声を掛けてきた。
「まぁ! そうだったんですか? 娘が洋服を借りたいと言った……と……き……には……!?」
この深層心理世界のリネラスの母親としての立場を与えられた彼女は、エリンフィートと話ながら視線を俺に向けると声を小さくしていく。
「あ、あの……男性に私の服は……ちょっと……。そういう趣味があったりするんですか? とても、困りますけど……いえ、趣味は人それぞれと言いますが……それでも私の服を……」
「勘違いしないでくれえええええ」
俺の絶叫が森の中に響き割った。
――夕刻。
リネラスの祖父の服を借りていた俺は、溜息をつきながらベッドの上で寝転んでいた。
しかし、夕食をご馳走になったが、その食事は至ってエルフぽかった。
それに……。
「何か奇妙なんだよな」
俺はベッドから抜け出ると、部屋の扉を開けて外を見る。
エルフガーデンの木々は数十メートルの高さまで成長していて枝葉を広げていることから空を見ることが出来ないが、今、俺がいる場所は、近くには湖があるし何故か木々も少なく空を見ることも出来る。
俺は暗くなっていく空を見上げたまま、顔を出し始めた星の明かりを見ながら考える。
エリンフィートは、リネラスの祖父と普通に話していたし、リンスタットも、エリンフィートと普通に会話していた。
その光景は至って普通な光景。
ただ、どこかに違和感というか、そういうものを感じ取っていた。
「はぁ、わからないな……いったい、エリンフィートは、俺に何を隠している? どうして俺に知られたら不味いと言った? その真意はどこにある? それに、俺が何を知らないと言っている?」
彼女が、何かしらの情報を得たのは間違いないと思うんだが、俺には今一、その情報が分からない。
早く答えを見つけないといけないのは分かっているんだが、その糸口がまったく見あたらない。
それに幼少期の姿をしているリネラスと二人きりになろうとしても、リンスタットに強い視線で見られて近づくことすらままならない。
俺が女物の服を着ていたことでいらぬ警戒心を持たれているのが一番の原因だと思うが……。
そう考えると、エリンフィートが俺に無理やり女物の服を着せたのはマイナスにしかなってない気がする。
「エリンフィートのやつ、こっそり俺のことを嫌ってるだろ……」
まぁ、俺もエリンフィートの事は嫌いだから問題ないが……。
それよりも、明日のエルフの成人の儀――それを何とかしないと、不味い気がする。
ただ、エリンフィートに、相談したとき「余計なことはしないほうがいいです」と言われた。
ますます意味が分からない。
とりあえずは、夜の内にエルフガーデンの集落に向かってみるとするか。
「それでも、尚のこってことかしらね。人という生物は、どんな絶望に置かれた状態でも希望を求めるものだから」
「希望ね……リネラスの深層心理世界を具現化しているのなら、意味がないと思うんだが……」
エリンフィートの説明には些か疑問を抱く内容ではあったが、現状では、この世界の解決方法がハッキリと分かったわけではない。
下手に動くとループする可能性もあるし、その際にリンスタットの精神がどうなるのか分からない。
「厄介だな……」
「そうかしら? この世界に来て分かったのだけども……」
「ん?」
「この世界は、リネラスさんの深層心理の世界であるはずなのに、とても不完全な性質を有していると思うの」
「どういうことだ?」
「まだ、気がつかないの?」
エリンフィートは、隣に立っている俺を見上げながら。「この世界の構成、木々の位置はリネラスさんが幼少期の頃に存在していた光景ではないわ」と俺に語りかけてきたが、何を言っているのか理解が出来ない。
「でも、この世界を全て観察したわけではないから、不確定な情報をユウマさんに与えると問題になりそうだし、もうしばらく様子見かしら?」
「……」
どうやら、彼女の口ぶりから、この世界のことについて何かしら掴んだように思えるが、俺に言ったらまずい? 何を言っているのか……。
「始めまして、エリンフィートと言います。こちらの方、ユウマさんと一緒に居た時に、貴女の娘さんに出会って連れてきて頂いたのです」
俺が考え事をしてる最中にエリンフィートは、リンスタットに声を掛けてきた。
「まぁ! そうだったんですか? 娘が洋服を借りたいと言った……と……き……には……!?」
この深層心理世界のリネラスの母親としての立場を与えられた彼女は、エリンフィートと話ながら視線を俺に向けると声を小さくしていく。
「あ、あの……男性に私の服は……ちょっと……。そういう趣味があったりするんですか? とても、困りますけど……いえ、趣味は人それぞれと言いますが……それでも私の服を……」
「勘違いしないでくれえええええ」
俺の絶叫が森の中に響き割った。
――夕刻。
リネラスの祖父の服を借りていた俺は、溜息をつきながらベッドの上で寝転んでいた。
しかし、夕食をご馳走になったが、その食事は至ってエルフぽかった。
それに……。
「何か奇妙なんだよな」
俺はベッドから抜け出ると、部屋の扉を開けて外を見る。
エルフガーデンの木々は数十メートルの高さまで成長していて枝葉を広げていることから空を見ることが出来ないが、今、俺がいる場所は、近くには湖があるし何故か木々も少なく空を見ることも出来る。
俺は暗くなっていく空を見上げたまま、顔を出し始めた星の明かりを見ながら考える。
エリンフィートは、リネラスの祖父と普通に話していたし、リンスタットも、エリンフィートと普通に会話していた。
その光景は至って普通な光景。
ただ、どこかに違和感というか、そういうものを感じ取っていた。
「はぁ、わからないな……いったい、エリンフィートは、俺に何を隠している? どうして俺に知られたら不味いと言った? その真意はどこにある? それに、俺が何を知らないと言っている?」
彼女が、何かしらの情報を得たのは間違いないと思うんだが、俺には今一、その情報が分からない。
早く答えを見つけないといけないのは分かっているんだが、その糸口がまったく見あたらない。
それに幼少期の姿をしているリネラスと二人きりになろうとしても、リンスタットに強い視線で見られて近づくことすらままならない。
俺が女物の服を着ていたことでいらぬ警戒心を持たれているのが一番の原因だと思うが……。
そう考えると、エリンフィートが俺に無理やり女物の服を着せたのはマイナスにしかなってない気がする。
「エリンフィートのやつ、こっそり俺のことを嫌ってるだろ……」
まぁ、俺もエリンフィートの事は嫌いだから問題ないが……。
それよりも、明日のエルフの成人の儀――それを何とかしないと、不味い気がする。
ただ、エリンフィートに、相談したとき「余計なことはしないほうがいいです」と言われた。
ますます意味が分からない。
とりあえずは、夜の内にエルフガーデンの集落に向かってみるとするか。
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