【書籍化作品】無名の最強魔法師
記憶の竪琴(12)
「ねえ? ユウマ」
「――なんだ?」
フィンデイカ村に入り歩くこと数分。
俺と、リネラスは町の中央広場である噴水の場に到着し腰を下ろしていた。
「それにしても、こうして見ると本当の世界みたいに臨場感があるのね」
「まぁな……、そもそも本人は本当の世界だと思っているからな」
「どういうことなの?」
「前にも説明したが、ここは人の精神世界――、つまり夢の世界と言う事になるんだが……、エリンフィートの話だと、夢の世界よりも深い深層世界に位置するらしく、本人にとっては現実世界だと思って暮らしているらしい」
「へー」
「感心するところじゃないぞ? リネラスを助ける時だって相当苦労したんだからな」
「分かっているわよ!」
頬を膨らませて抗議をしてくるリネラスを横目で見ながら周囲の観察を続けるが、ゼノンらしき人影が俺達に接触してくる様子は見受けられない。
【探索(サーチ)】の魔法を使うが、やはり確認できるのは、何もかが存在しているというだけで、詳細情報まで確認することが出来ない。
「これは時間が掛かりそうだな」
一応は、精神世界である程度は魔法が使えるようになったが、かなり制限が掛かっている。
しかも、人の精神世界で強大な攻撃魔法を使うわけにもいかないから力押しで解決することもできない。
「リネラス、冒険者ギルドに行くしかないようだな」
「ええー、私も働かないと駄目なの?」
「仕方ないだろ、精神世界と言っても世界を形作っている法則は現実世界と大差ないんだから。
――というか、少しは働け。
「待って! ユウマ!」
ガシッ! と俺の腕を掴んでくるリネラス。
「どうかしたのか?」
「ここは分業にしましょう!」
「分業ねー」
「前回と同じで私が町で情報を集める! そしてユウマが冒険者ギルドでお金を稼ぐというのはどう?」
「はぁ……、まぁ――、お前の場合はフィンデイカ村の冒険者ギルドに言ったら何か問題が起きそうだからな。そしたら、またループになるのだけは困るし、それでいくか」
「うん! それじゃ、前と同じ部屋を同じ価格で借りられるように私は交渉してくるから! 日が沈むころに、ここの噴水場で集合でいい?」
「わかった」
リネラスと別れ――、フィンデイカ村の冒険者ギルドへと向かう。
そして、フィンデイカ村の冒険者ギルドの建物前に到着。
看板にも『冒険者集う場所フェンデイカ支部』と書かれている。
「さて中に入るとするか」
冒険者ギルドの扉を開けると、コークスと受付嬢が同時に視線を俺に向けてきた。
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