【書籍化作品】無名の最強魔法師

なつめ猫

記憶の竪琴(14)




「これを受けなかったらどうなる?」
「受けなかったら仕事はやらん!」

 ――それは困るな。

 ライルの怪我を直してもいいが、そうすると逆恨みされて以前のルートになって暗殺しにくるかも知れないからな。
 まあ、俺なら余裕で返り討ちに出来るから問題ないが――。
 問題は、リネラスに行くと困る点だな。
 
 そういえばリネラスは、ギルドマスターならある程度は冒険者を鎮圧できると言っていたな。
 
 いや――、ここは精神世界だからな。
 冒険者ギルドマスターの権限が使えるのか分からない。
 そうなると余計な事はしない方がいいか。

「分かった」

 まったく面倒なことだ。
 現実世界なら魔法を吹き飛ばしておくところなんだが――。

「分かればよい」
「それで、どの仕事からすればいいんだ?」

 受付机のテーブルの上にドン! と置かれている依頼書。
 少なく見積もっても2000枚近くはある。

「上から順にやっておいてくれればよい。おいケイン! こいつが何か問題を起こさないように見張っておけよ。お前達より素行が悪いようだからな」

 おいおい、俺が新人潰しのライルより素行が悪いとか何の冗談だ?
 俺は、子供に大人気のユウマだぞ?
 まったく濡れ衣もいいところだ。

「こ、こいつと!? こいつ、問答無用で鎧が無い生身の部分を手加減なしに蹴ってくるような非常識な奴だぞ!」
「おいおい、俺が悪いような話し方をしているようだが――、それはとんだ風評被害だ!戦いというのは常にやられる前にやれ! だろ? それにお前達は、少なくとも冒険者だ! 相手が何時! 何時、襲ってくるか分からない。もしかしたら敵が国だという可能性だってあるだろう? それなのに何を甘い事を言っているんだ? まったくヤレヤレだ。それと言っておくが、俺が全力で蹴ったらライルの体が爆散していたからな。十分に手加減はしている」
「ぎ、ギルドマスター。こいつ、おかしい! こんな奴を俺と組ませるとか――」
「仕方ないだろう? 骨は拾ってやるから行ってこい。給金もコイツが働けば出してやる。あと冒険者ギルドマスター命令だ。拒否は許さん! 普段からお前らも町の人間に迷惑を掛けておるのだ! 行ってこい!」

 コーク爺の言葉に絶望的な表情を見せるケインという、俺よりも3歳から5歳ほど年上に見えるライルと一緒にいた男。
 体格は俺よりも二回りほど大きい。
 だが、歩くたびに腰に差しているブロードソードで重心がブレることから、剣士としての技量はかなり低いのが分かる。

「よろしく頼むぞ。ケイン!」
「……」

 まったく、こっちが気を利かせてコミュニケーションをとったというのに、無言で返してくるあたり困ったものだ。

「そうじゃった! ユウマとやら、お主は冒険者ギルドカードはもっておるのか?」
「――ん? ああ、一応は持って――、いやないな」

 冒険者ギルドカードも、この精神世界には持ってこれてない。
 そうなると作ってもらうしかないだろ。

「ふむ、わかった。すぐに作るとしよう」


 

コメント

  • ノベルバユーザー375143

    あれ?
    ギルドカード持ってたような?

    0
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品