公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

女子寮に一人仲間が加わった?

 2つのトランクケースを持って歩いているユーメさんを連れて女子寮に向かってる私は、彼女の服装を見ながら考え事をしていた。
 白いブラウスにスカートに白いソックスと学院指定の服装ではあるけど、私の服と違って服袖の縁に金の刺繍が入っていない。

「えっと、ユーメさん?」
 私の言葉にユーメさんは苦しそうに顔を上げた。
 もしかして……?

「1個持ってあげます」
 私の言葉に、金髪の毛を額に汗で張り付けて彼女は。

「ありがとうございます。でも重いですよ?」
 彼女は気遣ったのか知らないけどトランクケースを渡そうとしない。

「大丈夫ですよ、こう見えても力はあるんですよ?」
 そう、属性系や生活魔法という外部に働きかける魔法は、私の魔力量が常人のそれを遥かに凌駕しているからなのか問題が起きるが、肉体強化は自分の体を強化する魔法と言う事もあり制御を必要としない。
 だから魔力に任せてそのまま力を振るう事が出来るのだ。
 私はユーメさんが持っていたトランクケースを半ば強引に手に取ると持ち上げた。

 すると、結構重いことに気がついた。
 一体、何を入れているんだろう?
 材質は皮だと思うけど、縦60センチ、横80センチ、幅20センチと……かなり容量の容量が入るトランクケースだと思う。
 そして私の場合は、肉体強化の魔法を使っている際の筋力は同年代の10倍まで跳ね上がる。
その状態で重いと感じるってことは……これ片方で20キロ以上あるんじゃないのかな?

「……え? あの、ええ」
 ユーメさんは私がトランクケースを片手で持った事に驚いていた。

「肉体強化魔法ですか? それにしては。だって……普通は持てる重さじゃないのに……」
 私は頭を傾げる。
 ユーメさんだって持っているのに、どうして普通は持てる重さじゃないと言っているのかとても謎。

「どうかしたの?」
 私は彼女の青い瞳を見ながら問いかける。
 別に問い詰める意味があるわけじゃない。
 でも彼女は、12歳から習う魔法の基礎を知っている。
 そんな気がする。
 私や貴族の場合は、両親の意向により習う時期がかなり速くなるけど一般市民の場合魔法関連は12歳以下には教えたらいけない事になっている。
 それは、精神的に未熟な子供が魔法の乱用をしたらいけないという事を題目として掲げている。
 だから、私と同学年の10歳の少女が魔法知識を持っている事に不思議に思ったのだ。
 そして、この事は半ば常識であり、ユーメさんのように魔法が使えますか? と確かめてくる人はいない。
 そんな事をすれば自分も魔法の知識もしくは魔法が使える事を口外しているようなものなのだから。

「いえ……」

「ユーメさんは、ハデス公爵家の領地から来られたのよね?」
 私の言葉に、ユーメさんは頷く。
 ユーメさんの目を見ながら、ハデス公爵領の村々の情報を思い出す。
 記憶の糸を手繰りよせ、イーネという村は存在しない事に気が付く。

「……イーネ村でしたっけ? どのへんにある村ですか?」
 私の言葉に彼女は――。


「ハデス公爵様の御屋敷から西方にあります」
――と話してきた。

「そうなのね……」
 やはり私の知識にはない村。
 リースノット王国の土壌改良と設備投資でこの国の村と町の名前はほぼ全て頭の中に入っているはずだけど、そんな村なんて聞いたこともない。
 でもユーメさんが嘘をついているようには見えない。
 そもそも、この貴族学院は貴族が通っているから身分がハッキリしてない人は一般市民の方であっても入学はできないはず。
 つまり入学が出来る時点で、イーネ村は存在している事になる。
 そうすると、私の記憶違いの可能性があるのかな……。

 そんな事を考えていると私が生活している女子寮が見えてきた。

「ユーメさん、あそこが今日から貴女が暮らす女子寮ですよ!」
 私は振り返りながら彼女に告げると彼女はニコリと微笑みなら

「すごいです。ここに今日から住んでいいんですか?」
 私が彼女の言葉に頷くと同時に勢いよく女子寮の扉を開かれた。
 扉の近くにいた私は扉に当たって地面の上を転げながら地面に頭をぶつけた。

 そして女子寮の中から1匹の馬が出てきて走り去ってしまった。

「……だ、大丈夫ですか?」
 ユーメさんが私を心配してきてくれてる。

「い、一体なにが……?」
 突然の事に理解が追いつかない。
 どうして女子寮から馬が出てくるんでしょうか?

「大変です。大変です! あ、ご主人さま!」
 座敷童子さんが私を見てとても困ってますダンスを踊り始めた。
 余計なことしなくていいからさっさと話を切り出してほしい。

「何か大変な事が起きたのですか?」
 私は座敷童子さんのパフォーマンスをスルーしてさっさと話せと言うと。

「実は、浴槽に水を張ったところケルピーが来たんです!」
 たしかケルピーって水の妖精だったけ?
 凶暴性があるとは聞いたけど、いきなり攻撃を仕掛けてくるとは。

「あ、あの! さっきの馬が戻ってきてます!」
 ユーメさんの緊迫した声が聞こえてきた。
 たしかに見れば馬が近づいてきてる。
 私は馬を見ながら手を向ける。
 そして制御を一切しない本来の生活水魔法を発動させる。

「アクアクリエイト!」
 私が作り出した魔法がケルピーの頭上から降り注ぐ。
 毎秒100リットルの水がケルピーを足止めする。
 私はその間にケルピーに近づき、ボディを殴りつけ宙に浮いたところで顔をぶん殴って倒した。

「ふう、さて女子寮を案内しますね」
 私はケルピーをそのまま放置すると、おびえるユーメさんに女子寮を案内をするために建物の中に入る。
 そして――。

「ようこそ! メルヘンな女子寮へ!」
 ――と説明すると、ユーメさんは先ほど討伐したケルピーを見た後、とても曖昧な引き攣ったような笑顔を見せて来た。


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