公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

どうしよう、国から逃亡できない。

「それでは、学園長さん。アルドーラ公国の皆様とアルドーラ公国に向かう前に何点かお願いしたい点があります……「「「「ええ!?」」」」……」
 はて? 私は何かおかしな事を言ったでしょうか?
 せっかく隣国、アルドーラ公国第2王子スペンサーが私に接してきて仲良くできたのにそれを利用しない手はないじゃありませんか?

 大国アルドーラ公国第2王子なら、何不自由なく暮らせそうですし……。
 私はニコリと微笑みながらスパンサーの方へ視線を向ける。

「ひ、ひい……」
 スペンサーが私の事を何か恐れているようだけど、丁度いいですね。
 私は、震えているスペンサーの手をとり真っ直ぐにスペンサーの目を見る。

「いいですよね? スペンサーさん」

「ハ.ハイ」
 良かったです。
 これでアルドーラ公国の方は、許可が下りましたね。

「ま、待ってください! どうしてアルドーラ公国に行かれるのですかな?」
 どうしてって言われても……。
 だって、このままリースノット王国に居たら婚約が決められてしまうし……。
 それに……何より……。

「貴方には関係ありません。それで学園長さんにはやってもらいたい事は、一般入試の方々の対応をきちんとして頂きたいのです。まず、1つ目、市民の方の勉学の場を整えてください。2つ目、私が使っていた女子寮は一般の方に解放してください。3つ目、私の事は伏せておいてください」
 私の言葉に、学園長さんが目を見開いて――。

「そんなの無理にきまっている! 問い詰められれば……どうなるか!」
 学園長さんが何やら必死に言いわけをしてくる。
 私は、否定の意味を込めて頭を振った後に、学園長さんを見る。

「貴方の言い訳を聞く気はありません。これはお願いではなく命令です。ですが、報償が出ないと人間はやる気が出ない事は理解しています。そこで、貴方と、貴方の家族にスペンサー君と同じ、お話はしないというのはどうでしょうか? 十分に、お互いにメリットがありますよね? 私は態々、出向かなくていい。貴方と貴方の家族は、貴重な時間をとられない。お互いにとって素晴らしい案です」
 私の言葉に、学園長さんが両膝を地面について頭を抱えて、「私は手を出したら行けない化け物に手を出してしまった……アンネローゼ君のメイヤー家の話しにさえ乗らなければ……」と独り言を呟いている。

 本当に、酷いですね。
 私が化け物だなんて……。

「学園長さん。それではお願いしましたよ? もし出来ないようならすぐに戻って、お話しさせて頂きますので大丈夫ですよね?」
 学園長さんが、まったく反応してくれません。

「あの学園長さん。スペンサー流のお話し講座をしましょうか? きっと仲良くできるようになると思……「やらせていただきます! もう復活しました!」……そうですか。よかったです。体調が悪いようでしたら、言ってくださいね。私の回復魔法は、体の臓器を修復しますので、少しだけ痛みを伴いますが効果は抜群ですからね?」
 私の言葉に学園長さんだけではなく、スペンサーも必死に頭を振って否定してます。
 とても悲しいです。
 私の回復魔法とか細胞増殖だから万能に近いのに……。

 私は、自分の回復魔法が理解されない事に少し落ち込みながらもアルドーラ公国の方々に視線を向けて――。

「それでは、アルドーラ公国へいきましょう。案内してもらえますわよね?」
 にこやかにほほ笑む。
 アルドーラ公国の方々とスペンサー君は、何故かこんなはずではという顔をしてくるけど私にとってはとても良かったです。

 明日から平和な生活が送れそうですね!
 私は学園長さんを、その場に放置しながら歩き始める。

「皆さん! 早く! アルドーラ公国にいきますよ!」
 騎士の方々とスペンサーはすごく乗り気じゃないみたい。

 それから、私とスペンサーとアルドーラ公国の騎士達は北に向けて移動を始めた。

 そして翌日……。

 私は、彼らが近くに止めていた馬車に乗って移動をしていた。
 おそらく予定では、今日中に国境を抜けるという話しだったけど……。
 突然、馬車が止まった。
 そしてアルドーラ公国の騎士が突然――。

「ユウティーシア様! 大変です! 目の前にリースノット王国の大軍が!」
 え? どうして……。
 私は馬車から下りて前を見る。

 すると目の前には、リースノット王国の国境騎士団2000人が目の前に布陣していた。
 ちょっと……私を取り戻すためにこの軍勢は……やりすぎな気が……。


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