公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

新居完成間近です!

「本当に大丈夫なのか? 本当に?」と何度も聞いてきたアレクに、私は何度も「大丈夫です! なんとかなりますよ!」と、説得してから数日後。
 正確に言うと5日後――。


「すごいものですね」
「フレーリ村長も必死なんだろうな。さすがに時期、村長が婚約者を蔑にしていたら、それはそれで問題が起きるからな」

 アレクの言葉に私は確かにと思いながらも目の前の建築物を見る。
 それにしても家を作るのにわずか5日なんて、またすごいですね。
 私は外壁をチェックしていく。
 まだ真新しい木材を使っているだけあって、若干湿っている気がする。

「少しお家の中をチェックしてきます」
「俺もついていこう」

 私の後をアレクがついてくる。
 戸口から家の中に入るとガランと何もない地面だけが視界に入ってくる。
 広さ的には6畳一間くらい?
 アレクの実家では、台所という扱いだったから台所として使うのがセオリーなのかな?
 それにしても、竈とか無い所を見ると近くの町まで行って購入するか作らないといけないかな?
 あとは、台所から上がると板が敷かれている部屋が3つと……。
 敷居がないのが問題なのかな?
 問題は家具も必要だよね?

「うーん。いろいろとやる事が多いですね」
「そうだな。やはり新居だと、必要な物が多いからな」

 アレクの言葉に私は頷きながら、部屋の中を見渡していく。
 特に、問題はなさそうだけど……家具が必要かな……。
 あとは、家事をする上でのフライパンとかの鉄用品とか、洗濯物をするときのタライとかもほしいかも……。
 あとは布も多めにほしいかな。

「一度、村を出て町に買い物にいくか?」
「町? そういえば私は、ここにきてから町に行った事がないです!」

 人口が300人の村で流れ着いてからずっと暮らしている私にとって町という言葉には少し感心がある。
 これはぜひ、行ってみる必要があるかもしれないですね。
 そういえば人口はどのくらいなんでしょうか?

「アレク! 村の近くにある町は何て名前の町なんですか?」
「ああ、ミトンって町だな」

 私はアレクの言葉を聞きながら首を傾げる。
 どこかで聞いたことあるような単語な気がする。
 でも思い出せない。

「ミトンですか? 人口は1400万人くらいですか?」
「1400万? ティアは時々、変な事を言うよな。人口は7000人くらいの町だな」

 はて? 私はどうして1400万人なんて途方もない数字を口に出してしまったのか? 良く分からないです。
 それにしても人口7000人ですか……300人でもたくさんなのに7000人もいたらもっとたくさんですね。

「そうなんですか。それは楽しみですね!」
「ああ、それで……問題があってな……」
「問題?」

 私は村から出て町に行くのにどうして問題があるのかと首を傾げる。
 だって町にいくだけなら特に何かあるような気は起きないから。

「母さんがな、新婚で家を出ていくんだからお金が必要だと金貨を100枚ほどくれたんだ」
「すごいですね」

 私は素直に驚く。
 たしか、お義母さんに聞いた限りだと金貨1枚で4人家族が1週間食べていけると教えてくれた。
 その金貨を100枚とくれたと言う事は、すごい金額。
 私が内職して木の枝と蔓で作った籠や帽子何個分くらいあるのか想像もつかない。

「ああ、だから町まで行って新居の生活に必要な物を購入するとしよう。ティアも何か必要な物があったら控えておくといいぞ?」
「はい! でもあまり人のお金を使うのは気が引けますので……なるべく内緒して売れる物を作りますね!」

 あまり人の親切を受けていたら問題があると思うし、やっぱり自分の生活は自分で何とかしないといけない。

「ティア、村長が新居の用意が出来たら結婚式を取り仕切ると言っていたぞ?」
「結婚式……私としては仮面夫婦のつもりだから結婚式はしない方がいい気が……」

 アレクの言葉を聞きながら私は肩を落とす。
 やっぱり、なんか良く分からないけど男性の元に嫁ぐのは、気分的に好まないというかなんというか……。
 やっぱり、きちんと嘘だと……言えないですよね。
 もう新居まで作ってもらっているんですから……。





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