公爵令嬢は結婚したくない!

なつめ猫

妖精さんがきました!

 ――翌日。

 私は椅子に座ったまま、寝ていた。
 どうやら私は手紙を書いたまま寝てしまっていたみたい。

 私は昨日の夜のうちに書いた手紙を封筒に入れて溶かした蝋で封をする。
 コレで一応は、アルドーラ公国のスペンサーに渡す手紙は出来た。
 問題は、誰に運んでもらうかだけど……。

 冒険者ギルドの方に頼んで運んでもらうとしても、ミトンの町には冒険者ギルドは存在していない。
 冒険者ギルドがあるのは収支が取れる人口が多めの町だけであり、海洋国家ルグニカにおいては総督府が置かれている場所にしか冒険者ギルドはない。
 それに、この世界の冒険者ギルドは基本的に国が運営している事もあり、総督府スメラギと問題を起こしている私からの要請は受けることはないはず。

「さて、どうしましょうか」

 レイルさんにお願いというか命令をしてもいいんですけど、私が出した手紙をスペンサーが信じてくれるとは限りませんし、それにレイルさんが居なくなると私と町の人との間の渡りをつけてくれる方が居なくなってしまう。
 そう考えると……どうしたらいいか迷ってしまう。

「御主人さま! 飲み物をどうぞ!」
「あ、ありがとう」

 私は、妖精ブラウニーさんが差し出してきた木のコップに入ったお水を飲んで一息つく。
 さて、どうしましょうか。
 町の有力者もいない事ですし、手紙を誰かに運んでもらう事も決めないといけません。

「御主人さま! お水どうぞ!」

 私はブラウニーさんが差し出してきた木製のコップを受け取ろうとした所で、木製のコップを取る手を途中で止めた。

「――ま、待って! あなた達、待って! どうして、こんな所にあなた達がいるの?」

 私の言葉にブラウニーさん達が動きを止めて私を見てくる。
 そして首を傾げると。

「何を言っているのかわからないの」

 ブラウニーさん達は、私の質問に答えずに部屋の中を清掃しだした。

「ま、まさか!?」

 私は慌てて部屋を出る。
 すると100匹近いブラウニーさん達が宿中の補修と掃除を始めていた。
 私は思わず通路で浮かんでいたブラウニーさんを右手で捕まえる。 

「痛いでち!」
「ご、ごめんなさい……」

 私はいきなりの事で驚いてしまい少し強めに浮かんでいるブラウニーさんを掴んでしまっていた。
 私はブラウニーさんを離して両手の上に乗せると小さな声で語りかける。

「あ、あなたたち、ブラウニーよね? 一体どこから来たの?」
「僕たちは良質な魔力に惹かれてくるでち!」

 私の手のひらの上で敬礼しながら話してくるブラウニーさんに私は首を傾げる。
 うーん、どうも話しにならないんだけど……。

「えっと……そうじゃなくてね。貴方達はリースノット王国から来たの?」
「リースノット王国? 知らないでち!」

 嘘をついているようには見えない。
 私は溜息をつく。
 でも、妖精さんが私の魔力を求めて来るなら――。

「えっとね。貴方達にお願いがあるんだけど?」
「お仕事でちか?」

 妖精さんは目をキラキラさせて仕事が貰えるものだと期待している。
 その妖精さんの期待を壊さないようにきちんと仕事を上げないといけないですね。

「そうそう、仕事があるの」
「どんな仕事でちか?」

 私の両手の掌の上で期待に目を輝かせる妖精――ブラウニーさんに私は微笑みかける。

「隣の国のアルドーラ公国スペンサー王子までお手紙を届けてほしいの。出来るわよね?」
「ええー……」

 私は両手で妖精さんを手のひらの中に包むと「暗いでち! 止めてほしいでち!」と必死に懇願してくる。私は少しだけ微笑みながら「私のお願いを聞いてくれたら出して上げてもいいけど、お願いを聞いてほしいかな? 聞いてくれるよね?」と、誠心誠意お願いをするとブラウニーさんが、泣きだして「分かったでち! 届けるでち!」と、承諾してくれる。
 良かった。
 やっぱり誠心誠意頼めば妖精さんも分かってくれるみたい。
 これで、隣国のアルドーラ公国と話しが取れるかも。
 あとは――。

「うああああ、なんだ! こいつらはあ!?」
「ひいい! レイル隊長! こいつらは一体何ですか?」
「わからん! 無闇に攻撃をするな!」

 1階が混乱しているみたいだから、早く対応しないと大変な事になりそうです。




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