公爵令嬢は結婚したくない!
お家騒動(5)
アルドーラ公国の公都ルクセンブルグ。
大国であるアルドーラ公国は、諸外国からの侵略を国境で防いできた長い歴史がある。
そのため、公都ルクセンブルクの市街地に入るために町を囲むような大掛かりな塀のような物は、必要ない。
私が乗っている馬車は、白亜邸から真っすぐに公都ルクセンブルグの市街地へと入る。
現在は、大通りを馬車は走っており両脇には様々な商店や店舗が軒を連ねているのが目に入る。
「リースノット王国とは、装いがまったく違うのね」
「そうなのですか?」
「ええ」
私は、エリンさんの言葉に頷きながら私は店舗へと視線を向けた。
店先には、マネキンが置かれていて若草色のドレスなどが飾られており、袖口やスカートや襟裳のには、さりげなくレースやフリルが縫い付けられており職人の技術の高さが見て取れる。
「あそこに、飾られておりますのは、市民が結婚の際に着るドレスとなっております」
「そうなの?」
「はい。ただ――、あのような細部まで手の込んだ物になりますとレンタルと言うのが一般的です」
「レンタルなんてあるの?」
「はい。先々代の王妃様のティア・ド・アルドーラ様は、ドレスを購入するのは経済的に大変な方もいるのでは? とお考えになられたようでして……、それで既製品を貸し出すようにしたそうです」
「そうなのね」
彼女の言葉を聞きながら、エリンさんが指さした場所へと視線を向けると店の看板には『結婚披露宴承ります。ティア・ウェディング・セレモニー』と書かれている。
「……えーっと……、あれは?」
「はい。先々代の王妃様のお名前を利用しています。一応、ティア・ド・アルドーラ様のお名前は、高い宣伝効果を持ちますので――。それに、小麦の文様が看板の横に書かれておりますので、アルドーラ公国の王家が運営している店舗の一つです」
「――え? 王家がお店を経営しているの?」
「はい。先々代王妃のティア・ド・アルドーラ様が嫁がれたリインガルド・ド・アルドーラ国王陛下は、先代の国王陛下が浪費した王家の資産を立て直すために多くの事業を行ったそうです」
「そうなのね……」
相槌を打ちながら、私は疑問に思ってしまう。
そもそもレンタルという概念。
それが生まれたのは地球でも、江戸時代くらいだったはず。
なのに中世時代の文明力しかなかった世界にレンタルという概念がいきなり生まれたとは考え難い。
「エリンさん。レンタル制度って、ティア王妃が提案したの?」
「提案なされたのはリインガルド国王陛下と伝わっております。どうかなされたのですか?」
「――いえ、少しだけ気になって……」
曖昧に答えながらも、私には――、どうしてもティア・ド・アルドーラという女性が、アガルタ世界の人間とは思えなかった。
まるで、私と同じ異世界から来た人間のような……。
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