ヘタレ魔法学生の俺に、四人も美少女が寄ってくるなんてあり得ない!

神楽旭

舞い降りた淑女

ピンポーンとインターホンが誰かの来訪を告げた。
「暁、ちょっと見てきてくれる?」
「分かった」
リビングを出て、玄関まで行き、ドアを開けると、
「こんばんは。雨宮君」
金髪の美少女______黒いチェスターコートをまとったエマが立っていた。
「ああ。こんばんは。パーティー始まってるよ」
俺はエマを招き入れ、リビングに案内した。
「わあ……料理がいっぱい……!」
「何でも好きなの食べてよ」
エマはそう言われるや否や、マドレーヌに手をつけた。
「……ケイトちゃん。頬が凄いことになってるけど……」
リスかよ。そのうち頬が破裂するんじゃないか?
「おい暁やべえよめっちゃ食ってんじゃん」
「……本人が満足なら良いんじゃないかな」
「ちょ、おま、思考放棄すんなって!」
「(……エマとケイトが英語で会話したらどうなんだろ。イギリスとアメリカだから、ちょっと違うのかな?)」
文法とかアクセントとか。
「エマ。エマ。ちょっとケイトと英語で話してみ?」
「ええ?……うん。良いよ」
え、これ無茶振りのつもりだったんだけど。
エマは小さく咳払いをし、声の調子を整えると、
『こんばんは。調子はどう?……あんまり食べ過ぎると、後が辛いよ?』
「え!?あ、えっとー……」
ケイトは少しの間狼狽えたが、
『えっと、大丈夫だよ。これでも胃袋は強い方なんだ!』
『そっか。じゃあ、パーティー楽しんでね!』
『うん!』
「……こんな感じ?」
「あんまり会話に困ってる感じは無かったね」
むしろ楽しんでたな。
「多分、微妙に文法が違うくらいなら大丈夫だと思う。アクセントも気にならないし。……ただ、イギリスとアメリカでスペルの違いがあるから……」
じゃあ俺が思ってるよりスムーズに会話出来るんだな。
「手紙のやり取りしたら、細かいところが気になったりするかも」
「イギリス英語って、おんなじ英語のハズなのにちょっと違うから分かりづらいんだよね……」
ケイト。同情するよ。……学校で習うのはアメリカ英語だから、ケイトが苦労する事は無いだろうけど。
……とかなんとか、色々あって英会話の話終了。
「ママ!ケーキおかわり!」
「はいはーい!ちょっと待ってなさい!」
物凄く嬉しそうな顔で母さんがキッチンに入っていった。めっちゃケーキあるんだな。
「……気合い入りすぎだろ……。まあ、ハロウィンだし、仕方無いのかね」
苦笑いしつつも、俺は近くにあったフライドチキンに手を伸ばした。……先輩。狙ってたんなら早めに取っとけば良かったのに……。

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