BLOOD HERO'S

ノベルバユーザー177222

episode5 #11「あの地へ再び」

 ---翌日、早朝7時を迎えた頃、多原はホテルの駐車場に車を止めていた。

 「おはようございます!」

 車を止めて暫くすると駐車場に炎美がやってきた。

 「おはようございます。随分と早いですね。もうちょっとゆっくり来ると思ってましたよ」

 多原は開いている窓に右腕を置き頭を少し外に出しながら挨拶を返した。

 「わざわざ早朝に車出して貰ってますからそんなこと出来ませんよ」

 そう言いながら炎美は後部座席に座った。炎美が車のドアを閉め席に座ったのを確認すると多原は窓を閉め車内のエアコンをつけ車を走らせた。

 「朝ごはんの方は大丈夫ですか?」

 車を走らせながら炎美に問いかける多原。

 「あ、はい。神楽さんのおかげでなんとか」

 今日の朝5時、神楽が朝食と昼メシ用の弁当を作って持ってきてくれたのだ。炎美は深々とお礼をして受け取ったのだった。

 「はは、神楽さんらしいですね。まあここいらにコンビニとかがないですからね」

 「ホント助かりましたよ」

 そんな話を昨日の場所に着くまで話し込んでいた炎美と多原だった。

 ---約2時間後、目的地の近くまで来た時だった。

 「ここで降ろして貰っていいですか?」

 「えっ?ここでですか?」

 突然降ろして欲しいと言い出す炎美。多原も突然のことで驚きを隠せなかった。驚きを隠せなかった多原の問いに頷いて返す炎美。

 「もし噂の鬼が居たらこれ以上行くのは危険です!俺はもう大丈夫なんで行ってください!」

 「…分かりました」

 炎美の忠告を聞き多原は渋った顔をしながらも車をUターンさせて帰って行った。

 「よし。行ったか」

 炎美は既に気づいていた。とてつもない殺気を。

 「………!?」

 まだ距離的には500メートルぐらいは離れている。だがひしひしと肌に伝わる殺気のせいで炎美の身体から冷や汗が出始めた。

 「…行くか」

 炎美は意を決して一歩を踏み出した。一歩一歩進むたびに感じる殺気で集中力と体力をジワジワと削られる炎美。

 (駄目だ!気圧されるな俺!!)

 しかし炎美は自分自身に喝を入れ徐々に歩くスピードを早めた。

 ---歩いて10分程経ってようやく辿り着く炎美。

 「ハア、ハア…」

 既に息切れしかけている炎美だったがすぐに呼吸を整え更に歩みを進める炎美。その時だった。

 「ようやく来たか」

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