BLOOD HERO'S
episode5 #45「静寂な結末」
 ---「それから俺は下敷きになった家族を探し出したんだ。見るに耐えない姿だった」
 仰向けの体勢で涙ぐみながら自らの過去を語る鬼吾郎。炎美も倒れながらもふと鬼吾郎に視線を向けた。
 溜まった涙を拭いた彼の目は最初に会った時より優しい目になっていた。表情は辛そうでもありながらどこか安堵しているかのようだった。
 「それでも俺は拾い上げて近くの山に埋葬してそっからは山にこもって鍛錬の日々だった。悔しいがあいつの言う事はまともだったよ」
 続けて語る彼の話を黙って聞く炎美。頭の中で話を整理し要点をまとめた結果、2つの事が判明した。
 1つは多原が能力者である事、そして2つは裏で暗躍している事。
 しかし2つ共細かい所までは分からなかった。どんな能力を持っているのか?何故鬼吾郎に接触してきたのか?
 幾つか考えを巡らせてみたがやはり多原の思考を読む事は出来なかった。
 「そんでここ最近ここに戻って来たらいつの間にかヤンキーのたまり場になってた。ボコって追い返したら今度は倍以上の人数で来やがった。そいつらも同じように追い返してやったけどな。それからってものの面白半分で俺に挑んでくる輩が後をたたなかった」
 その後の話は志村から聞いていた通りだった。ただ志村から聞いた時とは感じ方が変わっていた。
 本人から話を聞くまでは単純に鬼吾郎をただの悪者だと思っていた。しかし彼も被害者の1人にすぎなかった。
 住処と家族を失い自暴自棄になっていた。今の炎美にはそう感じていた。
 「だがそんな日々も今日で終わりか」
 鬼吾郎は最後の一言を気だるそうに語った。何もかもに諦めがついているかのようだった。
 「俺はアンタとの勝負に負けた。捕まえるなり殺すなり好きにすればいいさ」
 「そんな事を今この状況で言われてもなー…」
 鬼吾郎が降伏宣言すると拍子抜けしたのか炎美は鬼吾郎に対して皮肉を言った。
 「はは、そりゃあそうか」
 しかし鬼吾郎は気にする様子も見せず微笑を浮かべた。
 「なあ」
 「ん?」
 微笑したかと思ったら今度は真剣な表情に戻る鬼吾郎。空を眺めながら炎美に再び声をかけた。
 「俺からの頼みって言っちゃあなんだがあの野郎、多原をぶっ飛ばしてくれ。あの野郎、きっと何か悪い事でも企んでやがる。それがアンタ達に関係するかどうかは分かんねーけど」
 最後の一言は若干投げやりだったが鬼吾郎は本気で懇願していた。自分では達成出来ないからこそ誰かに頼む他無い。炎美はそう悟った。
 「ああ、あの人が何考えてるのか知らねーけど、絶対に阻止してやるさ!」
 鬼吾郎の過去を知ってしまったという事もあるが彼の話が全て真実だとしたら多原の行動を放ってはおけなかった。
 ---その後2人は力尽きてしまい気絶するように眠っていた。暫くその場は静寂に包まれていた。
 仰向けの体勢で涙ぐみながら自らの過去を語る鬼吾郎。炎美も倒れながらもふと鬼吾郎に視線を向けた。
 溜まった涙を拭いた彼の目は最初に会った時より優しい目になっていた。表情は辛そうでもありながらどこか安堵しているかのようだった。
 「それでも俺は拾い上げて近くの山に埋葬してそっからは山にこもって鍛錬の日々だった。悔しいがあいつの言う事はまともだったよ」
 続けて語る彼の話を黙って聞く炎美。頭の中で話を整理し要点をまとめた結果、2つの事が判明した。
 1つは多原が能力者である事、そして2つは裏で暗躍している事。
 しかし2つ共細かい所までは分からなかった。どんな能力を持っているのか?何故鬼吾郎に接触してきたのか?
 幾つか考えを巡らせてみたがやはり多原の思考を読む事は出来なかった。
 「そんでここ最近ここに戻って来たらいつの間にかヤンキーのたまり場になってた。ボコって追い返したら今度は倍以上の人数で来やがった。そいつらも同じように追い返してやったけどな。それからってものの面白半分で俺に挑んでくる輩が後をたたなかった」
 その後の話は志村から聞いていた通りだった。ただ志村から聞いた時とは感じ方が変わっていた。
 本人から話を聞くまでは単純に鬼吾郎をただの悪者だと思っていた。しかし彼も被害者の1人にすぎなかった。
 住処と家族を失い自暴自棄になっていた。今の炎美にはそう感じていた。
 「だがそんな日々も今日で終わりか」
 鬼吾郎は最後の一言を気だるそうに語った。何もかもに諦めがついているかのようだった。
 「俺はアンタとの勝負に負けた。捕まえるなり殺すなり好きにすればいいさ」
 「そんな事を今この状況で言われてもなー…」
 鬼吾郎が降伏宣言すると拍子抜けしたのか炎美は鬼吾郎に対して皮肉を言った。
 「はは、そりゃあそうか」
 しかし鬼吾郎は気にする様子も見せず微笑を浮かべた。
 「なあ」
 「ん?」
 微笑したかと思ったら今度は真剣な表情に戻る鬼吾郎。空を眺めながら炎美に再び声をかけた。
 「俺からの頼みって言っちゃあなんだがあの野郎、多原をぶっ飛ばしてくれ。あの野郎、きっと何か悪い事でも企んでやがる。それがアンタ達に関係するかどうかは分かんねーけど」
 最後の一言は若干投げやりだったが鬼吾郎は本気で懇願していた。自分では達成出来ないからこそ誰かに頼む他無い。炎美はそう悟った。
 「ああ、あの人が何考えてるのか知らねーけど、絶対に阻止してやるさ!」
 鬼吾郎の過去を知ってしまったという事もあるが彼の話が全て真実だとしたら多原の行動を放ってはおけなかった。
 ---その後2人は力尽きてしまい気絶するように眠っていた。暫くその場は静寂に包まれていた。
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