BLOOD HERO'S
episode5 #50「利用する者、される者」
 ---白凪との再会を果たしてから1時間後、用件だけを伝え帰っている最中だった。
 「なあ」
 「はい?」
 多原と鬼余彦は放水路を出入りする為のエレベーターを使い地上まで登っていた。その最中鬼余彦から多原に声をかけてきた。
 「あんた随分とあいつの事気に入ってるみたいだが本当に使えんのか?」
 「それは君も彼の実力を直に見ているから大丈夫なんじゃないですか?」
 「………」
 鬼余彦の問いに微笑を浮かべながら答える多原。その答えが的を得ていたのか鬼余彦は言葉を飲み込むように黙り込んだ。
 「ふふ、まあ気に入っているというのも理由の一つですよ。彼の能力は実に素晴らしい」
 多原は嬉しそうに白凪を好評するが鬼余彦は違和感を感じていた。
 多原は『白凪仙』という人物でなく『白凪仙の能力』を評価しているように思えたからだ。言葉の綾かもしれないが鬼余彦にはそう聞こえていた。
 『使えるものは使う』
 それが多原のやり方である。利用出来るものは利用し使えなくなれば捨てる。
 今回の鬼吾郎の件はまさにそれを思わせた。彼が捕まっても何とも思っていなかった。それどころか他人事のように興味が失せていた。
 「鬼余彦君、そろそろ着きますよ」
 ふと多原に声をかけられ我に帰る鬼余彦。
 (アンタにとっては俺もただの『もの』。利用価値が無くなればすぐに捨てるんだろう?)
 鬼余彦は心の中で多原に問いかけた。無論、多原に聞こえる訳がない。鬼余彦は多原の顔色を伺ってみるが変化はない。やはり聞こえていないようだ。
 (いいぜ。俺をとことん使ってみろよ!そして目的が達成された時は…)
 鬼余彦はジッと多原を見つめ手の指の関節を鳴らしている。目つきは獲物を狙う獣のように鋭くなっている。殺気は出していないものの鬼余彦が多原を見ている姿は『いつでも殺れるぞ!』という意図を表しているかのようだった。
 そんな中、エレベーターが止まり入り口がゆっくりと開いた。鬼余彦は何事もなかったかのように正気に戻った。多原が先にエレベーターから出ると後を追うように鬼余彦もエレベーターを出た。
 「おっ、多原さん、お疲れ様です」
 エレベーターを出るとそこはデパートの地下駐車場らしき場所に出た。昼間でも薄暗いが夜になるとより一層暗くなっている。
 そんな薄暗い場所で1人多原達を待っていた男が歩み寄って来る。
 「やあ磁場君、待たせてすまないね」
 男の名は磁場 立人。歳は22。髪が逆立っているところ以外はごく普通の外見をした大学生。
 彼の能力、『電磁体』は自らの身体を媒体とし電磁波だけでなく電波や赤外線、紫外線等の光を蓄積しそれを自由自在に放つことが可能である。また、電波を受信して地下のような電波が届きにくい場所に電波を送る事が出来る。多原が放水路で通話が出来たのはそれが理由である。
 「いえ。そこで適当に時間潰してたんでそんなに遅く感じなかったっすよ」
 磁場は物腰の低い態度で多原と接していた。磁場の多原を見る目は尊敬の眼差しに見えた。
 「そうですか。それじゃあすいませんが帰りもお願いしていいですかね?」
 多原はそう言ってズボンのポケットから車の鍵を取り出しそれを磁場の目の前に突きつけた。
 「うっす」
 磁場はすぐに承諾し鍵を貰い多原の車へと小走りで向かって行った。
 「………」
 鬼余彦は磁場の健気に走っていく背中をジッと見つめていた。
 彼も多原からすれば利用価値のあるもの。いらなくなればすぐに切り捨てるつもりだろう。
 (ふっ、哀れな野郎だぜ。自分がものとしてしか見られていないなんて思ってもいないだろ)
 そう思った鬼余彦は磁場を哀れむような目で見るようになった。だが磁場は一切気づくことなく車を出して多原達の前で停車した。
 「それじゃあ帰りましょうか鬼余彦君」
 そう言うと後部座席に乗り込む多原。鬼余彦はその後に続いて多原の横に座った。そして多原達の乗った車は駐車場を後にした。
 (さて、あの野郎はどこまで使えるかな?)
 鬼余彦は車内で外の景色を見ながら白凪の事を考えているのだった。
 「なあ」
 「はい?」
 多原と鬼余彦は放水路を出入りする為のエレベーターを使い地上まで登っていた。その最中鬼余彦から多原に声をかけてきた。
 「あんた随分とあいつの事気に入ってるみたいだが本当に使えんのか?」
 「それは君も彼の実力を直に見ているから大丈夫なんじゃないですか?」
 「………」
 鬼余彦の問いに微笑を浮かべながら答える多原。その答えが的を得ていたのか鬼余彦は言葉を飲み込むように黙り込んだ。
 「ふふ、まあ気に入っているというのも理由の一つですよ。彼の能力は実に素晴らしい」
 多原は嬉しそうに白凪を好評するが鬼余彦は違和感を感じていた。
 多原は『白凪仙』という人物でなく『白凪仙の能力』を評価しているように思えたからだ。言葉の綾かもしれないが鬼余彦にはそう聞こえていた。
 『使えるものは使う』
 それが多原のやり方である。利用出来るものは利用し使えなくなれば捨てる。
 今回の鬼吾郎の件はまさにそれを思わせた。彼が捕まっても何とも思っていなかった。それどころか他人事のように興味が失せていた。
 「鬼余彦君、そろそろ着きますよ」
 ふと多原に声をかけられ我に帰る鬼余彦。
 (アンタにとっては俺もただの『もの』。利用価値が無くなればすぐに捨てるんだろう?)
 鬼余彦は心の中で多原に問いかけた。無論、多原に聞こえる訳がない。鬼余彦は多原の顔色を伺ってみるが変化はない。やはり聞こえていないようだ。
 (いいぜ。俺をとことん使ってみろよ!そして目的が達成された時は…)
 鬼余彦はジッと多原を見つめ手の指の関節を鳴らしている。目つきは獲物を狙う獣のように鋭くなっている。殺気は出していないものの鬼余彦が多原を見ている姿は『いつでも殺れるぞ!』という意図を表しているかのようだった。
 そんな中、エレベーターが止まり入り口がゆっくりと開いた。鬼余彦は何事もなかったかのように正気に戻った。多原が先にエレベーターから出ると後を追うように鬼余彦もエレベーターを出た。
 「おっ、多原さん、お疲れ様です」
 エレベーターを出るとそこはデパートの地下駐車場らしき場所に出た。昼間でも薄暗いが夜になるとより一層暗くなっている。
 そんな薄暗い場所で1人多原達を待っていた男が歩み寄って来る。
 「やあ磁場君、待たせてすまないね」
 男の名は磁場 立人。歳は22。髪が逆立っているところ以外はごく普通の外見をした大学生。
 彼の能力、『電磁体』は自らの身体を媒体とし電磁波だけでなく電波や赤外線、紫外線等の光を蓄積しそれを自由自在に放つことが可能である。また、電波を受信して地下のような電波が届きにくい場所に電波を送る事が出来る。多原が放水路で通話が出来たのはそれが理由である。
 「いえ。そこで適当に時間潰してたんでそんなに遅く感じなかったっすよ」
 磁場は物腰の低い態度で多原と接していた。磁場の多原を見る目は尊敬の眼差しに見えた。
 「そうですか。それじゃあすいませんが帰りもお願いしていいですかね?」
 多原はそう言ってズボンのポケットから車の鍵を取り出しそれを磁場の目の前に突きつけた。
 「うっす」
 磁場はすぐに承諾し鍵を貰い多原の車へと小走りで向かって行った。
 「………」
 鬼余彦は磁場の健気に走っていく背中をジッと見つめていた。
 彼も多原からすれば利用価値のあるもの。いらなくなればすぐに切り捨てるつもりだろう。
 (ふっ、哀れな野郎だぜ。自分がものとしてしか見られていないなんて思ってもいないだろ)
 そう思った鬼余彦は磁場を哀れむような目で見るようになった。だが磁場は一切気づくことなく車を出して多原達の前で停車した。
 「それじゃあ帰りましょうか鬼余彦君」
 そう言うと後部座席に乗り込む多原。鬼余彦はその後に続いて多原の横に座った。そして多原達の乗った車は駐車場を後にした。
 (さて、あの野郎はどこまで使えるかな?)
 鬼余彦は車内で外の景色を見ながら白凪の事を考えているのだった。
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