ルーズリアの王太子と、傾いた家を何とかしたいあたし
44……プレゼントよりも何よりも……
その日のうちに、セリは兄弟やローズ様のツテを頼り、必死に集めていく。
何をすれば良いのかわからない。
ついでに兄弟は皆男で、従姉妹もいることはいるが、破壊的要素が強かったり、男嫌い、無口などなどどう話して良いのか解らない……。
そして、先に喧嘩を売られたティフィの方も悩んでいた。
もっと言い返しておくとか……すれば良かっただろうか。
だが、リティはただの従姉妹で、独占できる訳ではない。
それ以上に、リティは14で、自分は30……外見は一応10代だが、現実年齢は倍以上離れている。
確か、あの童顔のセリは自分よりも若かったはずである。
それに、自分も童顔だが、セリはもっと子供っぽい顔をしている。
「で、どうするの?リティお嫁さんにしないの?」
父親の問いに、ティフィは首をかしげる。
「選ぶのはリティです。それに、先に宣戦布告したのは彼で、私は見守ろうかと」
「で、負けたセリにそれ見たことかって鼻で笑うのかな?」
「そんなことしませんよ。私を何だと思っているんですか。と言うか……セリが何か……辛そうだったので」
「辛そう?」
母親のティアラーティアはお茶を口にして問いかける。
「……確か、セリはかなりコンプレックスに苛まれていたはずです。私は年が離れているので良く解りませんが、年の近い兄弟が多かったのと……体が小さくて……」
「そーだっけ?あぁ、カイそっくりだけど頭の軽いお子様の中で、ちこまいセリが……」
「カイ卿に失礼ですよ!」
上司だったカイに失礼な一言に、めっと父を睨み、そして呟く。
「それに私が、あんな風にリティを見ているのかなと思って……」
「どういうことかしら?」
「セリは兄弟にコンプレックスがあるのと同時に、俊敏な動きの戦闘だけではなく、冷静沈着で知識に自分の動きで何ができるかを幾つも考えられる参謀タイプでもあるんです。でも、今回のセリは見た目は落ち着いていましたけど、物凄く焦っていましたし、私にフーフーと喧嘩を売ってる感じでした。必死の目で……本当にセリらしくないセリでした。普通なら言いに来ないです」
「ふーん……」
「それに、セリは一応5番目とはいえ、カズール伯爵の掌中の珠。お気に入りの甥っ子です。シェールドから出すことも反対するはずです。それを本来のセリは分かっているはずです。でも、物凄く必死だなと思って……」
目を伏せる。
「私はあれ程想っているのでしょうか?セリのように……リティを思っているのでしょうかね?」
「と言うか、他人のことを考えずに、自分の結婚を考えて頂戴」
ティアラーティアは嘆く。
「と言うか、母上?妹以上に今現在思えないリティと恋愛をしろと言うのですか?恋愛というのは簡単なものじゃないと思うのですが……」
「私は悲しいわ。冷静すぎるわ……」
「と言うか、父さんや母さんのように、大切な人ができればと思いますが、それよりも、まずはもう一度デビュタントを成功させて……国内のイベントが落ち着いたら、叔父上たちがシェールドに向かわれるでしょうが……その時に私も何か変わるのではないでしょうか?」
ティフィはリティの作ってくれたクッキーを見つめ、ゆっくり運ぶ。
「……リティは私たちを変えてくれました。リティが幸せなら、一番いいと思いませんか?私の恋人でなくても、従姉妹には変わりありません」
セリはリティのダンスやマナーレッスンの手伝いだけではなく、ヒナ姫やデュアンの言っていたグランディアの言葉を教えてくれるようになった。
ノートに文字を書き、その読み方と意味を教えてくれるのである。
「えと、これは『芹』。グランディアのハーブでね?私のグランディアの名前でもあるんだ」
「セリ……大きなお花ですか?」
「ううん。本当に素朴な花だよ。確か、ここの温室にあると思う……あ、なかったかな?じいちゃんの温室にはあるよ」
「お兄ちゃんのおじいちゃんですか?」
「うん。じいちゃんが忙しい時にはおお爺ちゃん……あ、僕のじいちゃんは、騎士の館の館長でね?おお爺ちゃんは、マルムスティーン侯爵家の人で、術師だよ。セリは独特の苦味と言うかハーブだから」
首をかしげるが、リティは、
「セリお兄ちゃんのお爺ちゃんは、金色の髪ですか?」
「じいちゃんは、黒髪だよ」
「あ、じゃぁ、リティ、お会いしたのです。確か、清影さまですよね?お名前を頂いたのです」
「えぇぇ!じいちゃんに?」
「えっと、アルトゥールお兄ちゃんのおじいちゃん……」
娘と遊んでいるアルトゥールは答える。
「俺の母さんとセリの母さん、姉妹なんだ」
「姉妹ですか……わぁぁ……」
「仲はいいんだが、俺の母さんは破壊魔神で……セリの母さんはマイペースで、俺の母さんがやることを面白がってワクワクしてるんだ」
「僕の母さんは体が不自由で、あまり出歩けないから、話を聞いたりすると楽しそうで……」
微笑む。
「で、じいちゃんは、何てつけてくれたの?」
「『柘榴姫』って……」
「……えぇぇ!柘榴姫……あぁ、そうか……一回じいちゃん言ってた。あの時、僕はいなかったから……」
「どこかに行っていたのですか?」
「研修。騎士の館を長兄と次兄はそこそこで卒業して、一般の騎士として配属されたの。三兄と四兄は成績が悪いのとお調子者、素行が悪いって留年してじいちゃん……騎士の館では館長に『恥!』『たるんでいる!』って徹底的に叩き直し受けていたんだけれど、僕は2人を抜かして飛び級で卒業して、特務の研修に行っていたんだ。場所は内緒。特別だから怒られちゃうからね」
セリは唇に指を当ててウインクする。
本人は平凡と思っているようだが、童顔だがキリッとした眉のセリはかっこいいと可愛いの中間である。
リティはドキッとする。
「お、お兄ちゃんは、特別任務に行っていたのですか?」
「俺もだけど、俺よりもキッツイ方に行かされてたはずだぞ。ランクがあるから。それに俺は一応というか、特務にいても王族として表に出ることも多かったから、最前線に立てなかった。でも、セリはカイ兄ちゃんの息子なのに2年前まで一回も実家に帰らなかったから。ついでに上司のカズール伯爵以外には連絡絶ってたから」
「えぇぇ!何年位……」
「18から4年間……だったかな?大体それ位……4、5年が限界なんだよ。第一線に立つのは。向こうの組織に情報が漏れて僕だけじゃなく、家族にも色々あるからね。それに弟の結婚式には出たかったから」
ニッコリと笑う。
が、首をすくめる。
「でもショックだったなぁ……弟に背を抜かれてたんだよ……『兄さん……背が縮みました?』って言われて、ムカついたから、兄貴たちを一発ずつ殴りつけてやったの……うん。弟は殴れない。可愛い弟だし、花婿だし……」
「あぁ、4人青あざつくってたのお前がやったのかぁ……よくやった!月姉が満足そうだった!」
「でしょ?兄さん」
ニヤリと従兄弟同士で笑う。
「でも、王宮騎士団長……全然面白くないですね。兄貴たちと同じ部署は嫌だからと最終的になりましたが、団長よりも一般の団員がいいです。兄さん。総帥にお願いしてくれませんか?一緒に。それか又特務に……」
「オイオイ。お前を地方に出すなって総帥が言ったんだぞ。それに、綾姉が『セリが又いなくなるなら、もう泣く……』って、俺の兄ちゃんに泣きついて、決まったんだ。カイ兄ちゃんがそこで泣きそうだから、文句言うな」
「頼むから、やめて……父さん……ここ最近、リオンの胃が痛いって言ってた意味がよく分かるよ……」
「リオンおじさん、胃潰瘍で長期入院だっけ?ダメだよ?父さん。ボケ倒してリオンおじさんの病気悪化させない」
「父さんは普通です!リオンの胃が悪化したのは、エリオットとシエラとフィアです!ついでにルー先輩です!私は多分一割!」
カイの一言に、ローズさまは、
「一割でも自覚したのね……成長したわ。カイ」
とのたまう。
最近というか、ここにきてからほぼ女装の日々を送るローズさまは、とても肌がツヤツヤ、すべすべで、ニコニコと機嫌がいい。
シェールドでは主人は美貌で見ていて飽きないが、同僚であり幼馴染どもの暑苦しさにウザいと思っているらしい。
しかし、ここでは思う存分女装をし、可愛いリティを愛で、愛らしいその母アリアにその姪で王妃のティアラーティアと日々美について語り合うことができ、ストレス発散しているらしい。
1つ不満なのは、愛妻のアルファーナがいないことである。
「それに先輩。リオンのところのセナは本当に良い子に育ったのに、我が家の息子たちが……」
嘆く。
ちなみにセナは、リオンの長男で、アルトゥールの双子の姉アーデルハイドの夫である。
賢いのと、ローズさまの長男のラファエルと幼馴染で親友である。
「まぁ、馬鹿は締めないとな」
「そうだよ、父さん。こう、アルトゥール殿下がおっしゃってるから」
「け、喧嘩……?」
リティはおずおず問いかける。
リティは、手はあげられることは少なかったが、暴力を振るおうとした親から、ばあやや元いたメイドたちを庇い殴られたことが何度かある。
「違うよ〜?姫様。僕の兄達が、父さんと職場が一緒だったり、ローズ様の息子であるラファエル団長の部下だったりするんだけど、失敗に、ふざけたり、仕事中に女性に声をかけたり……でね。余りにも繰り返すから、筋力トレーニング増やして貰おうかって、殿下と提案したんだよ?ね?兄さん」
「そうそう。本当に、一回は俺の兄ちゃん……暗殺されかかって、下の兄ちゃんが庇って怪我したんだ。その暗殺者を見逃したのが……」
アルトゥールとローズ様とセリは、ちらっと見るのは苦悩するカイ。
「……僕の四番目の兄で……暗殺者が女性だったから見逃したって……その時僕が戻ってたら……って後悔したよ」
「お前が戻ってたら、兄ちゃんも……」
アルトゥールも思い出したのかため息をつく。
「今回も、デュアン兄ちゃんが命が無事で安心した。もうちょっと落ち着いたら向こうに戻らないと。兄ちゃんが心配する」
「そうねぇ。私は、安全が確認できるまで残るけれど、カイと一緒に戻りなさいな。セリがここに残りなさい」
「はい。そうさせて頂きます。ローズ様」
「でも、お兄ちゃん、お仕事は?」
リティの心配そうな声に、ニコッと嬉しそうに答える。
「有給休暇溜まってたから使ってるの。それに、僕がいなくても騎士団ボロボロにはならないよ」
リティは素直にすごいなぁと思ったのだが、カイは青ざめる。
実は、セリが来た後に叔父に連絡を取ると、セリは有給休暇を取る時に、
「総帥閣下。僕の有給休暇〜全部下さい。代わりに役立たずの四兄を置いていきますから」
と、ボコボコに殴りつけたすぐ上の兄を引きずって、騎士団総帥の元に連れていき、
「ね?兄貴。仕事から逃げたら……兄貴がもみ消した幾つもの悪行を晒しますよ?1日逃げたら1つずつ……騎士団はおろか、家にも、この国にもいられないようにしてあげます」
とニコニコと脅したらしい。
そして、
「兄貴?逃げても良いですよ?命が惜しくなければ」
と言い、四男は蒼白になり、
「大叔父上!」
「兄貴?騎士団総帥に失礼でしょう?」
「そ、総帥閣下!弟の代理として、誠心誠意努めさせて頂きます!」
「大丈夫だよ。僕は兄さんに期待してないから。仕事はもうすでにほぼこなしてるし、出勤して団長室にいればいいから。それ以上は要求しないよ?……と言うことで、総帥閣下。行って参ります」
と出て行ってくれたらしい……一応、叔父も可哀想だからと内容は聞かなかったらしいが、代わりに、
「仕事手抜きしたら、セリに聞くから」
と半分脅して仕事をさせているらしい。
今まで手抜きして来たツケを息子は払っているようである。
「……先輩……本当にすみません。帰ったら、しばらく静養……」
「多分無理だと思うわ。貴方の四番目、色々ポカやらかして、うちのラファエルが切れてるから。それに長男と次男もやらかしてシエラが激怒してるそうよ」
「……」
真っ青になる。
「叔父……キレてる……」
「三番目はお利口になってるみたいだけど、上の2人のポカに、フィアが動く羽目になって、散々ですって」
「……もう、もう、嫌だぁぁ。私は、綾と穏やかにのんびりと生活したいのに!帰ったらボコボコにされる」
「大丈夫だよ。父さん。父さんにはしないよ。総帥も。総帥、父さんのことお気に入りだから」
「どう言う意味のお気に入りだよ」
とアルトゥールは突っ込んだのだが、セリは機嫌よく、
「じゃぁ、姫様。グランディア文字を練習しましょうか?」
とリティに微笑んだのだった。
何をすれば良いのかわからない。
ついでに兄弟は皆男で、従姉妹もいることはいるが、破壊的要素が強かったり、男嫌い、無口などなどどう話して良いのか解らない……。
そして、先に喧嘩を売られたティフィの方も悩んでいた。
もっと言い返しておくとか……すれば良かっただろうか。
だが、リティはただの従姉妹で、独占できる訳ではない。
それ以上に、リティは14で、自分は30……外見は一応10代だが、現実年齢は倍以上離れている。
確か、あの童顔のセリは自分よりも若かったはずである。
それに、自分も童顔だが、セリはもっと子供っぽい顔をしている。
「で、どうするの?リティお嫁さんにしないの?」
父親の問いに、ティフィは首をかしげる。
「選ぶのはリティです。それに、先に宣戦布告したのは彼で、私は見守ろうかと」
「で、負けたセリにそれ見たことかって鼻で笑うのかな?」
「そんなことしませんよ。私を何だと思っているんですか。と言うか……セリが何か……辛そうだったので」
「辛そう?」
母親のティアラーティアはお茶を口にして問いかける。
「……確か、セリはかなりコンプレックスに苛まれていたはずです。私は年が離れているので良く解りませんが、年の近い兄弟が多かったのと……体が小さくて……」
「そーだっけ?あぁ、カイそっくりだけど頭の軽いお子様の中で、ちこまいセリが……」
「カイ卿に失礼ですよ!」
上司だったカイに失礼な一言に、めっと父を睨み、そして呟く。
「それに私が、あんな風にリティを見ているのかなと思って……」
「どういうことかしら?」
「セリは兄弟にコンプレックスがあるのと同時に、俊敏な動きの戦闘だけではなく、冷静沈着で知識に自分の動きで何ができるかを幾つも考えられる参謀タイプでもあるんです。でも、今回のセリは見た目は落ち着いていましたけど、物凄く焦っていましたし、私にフーフーと喧嘩を売ってる感じでした。必死の目で……本当にセリらしくないセリでした。普通なら言いに来ないです」
「ふーん……」
「それに、セリは一応5番目とはいえ、カズール伯爵の掌中の珠。お気に入りの甥っ子です。シェールドから出すことも反対するはずです。それを本来のセリは分かっているはずです。でも、物凄く必死だなと思って……」
目を伏せる。
「私はあれ程想っているのでしょうか?セリのように……リティを思っているのでしょうかね?」
「と言うか、他人のことを考えずに、自分の結婚を考えて頂戴」
ティアラーティアは嘆く。
「と言うか、母上?妹以上に今現在思えないリティと恋愛をしろと言うのですか?恋愛というのは簡単なものじゃないと思うのですが……」
「私は悲しいわ。冷静すぎるわ……」
「と言うか、父さんや母さんのように、大切な人ができればと思いますが、それよりも、まずはもう一度デビュタントを成功させて……国内のイベントが落ち着いたら、叔父上たちがシェールドに向かわれるでしょうが……その時に私も何か変わるのではないでしょうか?」
ティフィはリティの作ってくれたクッキーを見つめ、ゆっくり運ぶ。
「……リティは私たちを変えてくれました。リティが幸せなら、一番いいと思いませんか?私の恋人でなくても、従姉妹には変わりありません」
セリはリティのダンスやマナーレッスンの手伝いだけではなく、ヒナ姫やデュアンの言っていたグランディアの言葉を教えてくれるようになった。
ノートに文字を書き、その読み方と意味を教えてくれるのである。
「えと、これは『芹』。グランディアのハーブでね?私のグランディアの名前でもあるんだ」
「セリ……大きなお花ですか?」
「ううん。本当に素朴な花だよ。確か、ここの温室にあると思う……あ、なかったかな?じいちゃんの温室にはあるよ」
「お兄ちゃんのおじいちゃんですか?」
「うん。じいちゃんが忙しい時にはおお爺ちゃん……あ、僕のじいちゃんは、騎士の館の館長でね?おお爺ちゃんは、マルムスティーン侯爵家の人で、術師だよ。セリは独特の苦味と言うかハーブだから」
首をかしげるが、リティは、
「セリお兄ちゃんのお爺ちゃんは、金色の髪ですか?」
「じいちゃんは、黒髪だよ」
「あ、じゃぁ、リティ、お会いしたのです。確か、清影さまですよね?お名前を頂いたのです」
「えぇぇ!じいちゃんに?」
「えっと、アルトゥールお兄ちゃんのおじいちゃん……」
娘と遊んでいるアルトゥールは答える。
「俺の母さんとセリの母さん、姉妹なんだ」
「姉妹ですか……わぁぁ……」
「仲はいいんだが、俺の母さんは破壊魔神で……セリの母さんはマイペースで、俺の母さんがやることを面白がってワクワクしてるんだ」
「僕の母さんは体が不自由で、あまり出歩けないから、話を聞いたりすると楽しそうで……」
微笑む。
「で、じいちゃんは、何てつけてくれたの?」
「『柘榴姫』って……」
「……えぇぇ!柘榴姫……あぁ、そうか……一回じいちゃん言ってた。あの時、僕はいなかったから……」
「どこかに行っていたのですか?」
「研修。騎士の館を長兄と次兄はそこそこで卒業して、一般の騎士として配属されたの。三兄と四兄は成績が悪いのとお調子者、素行が悪いって留年してじいちゃん……騎士の館では館長に『恥!』『たるんでいる!』って徹底的に叩き直し受けていたんだけれど、僕は2人を抜かして飛び級で卒業して、特務の研修に行っていたんだ。場所は内緒。特別だから怒られちゃうからね」
セリは唇に指を当ててウインクする。
本人は平凡と思っているようだが、童顔だがキリッとした眉のセリはかっこいいと可愛いの中間である。
リティはドキッとする。
「お、お兄ちゃんは、特別任務に行っていたのですか?」
「俺もだけど、俺よりもキッツイ方に行かされてたはずだぞ。ランクがあるから。それに俺は一応というか、特務にいても王族として表に出ることも多かったから、最前線に立てなかった。でも、セリはカイ兄ちゃんの息子なのに2年前まで一回も実家に帰らなかったから。ついでに上司のカズール伯爵以外には連絡絶ってたから」
「えぇぇ!何年位……」
「18から4年間……だったかな?大体それ位……4、5年が限界なんだよ。第一線に立つのは。向こうの組織に情報が漏れて僕だけじゃなく、家族にも色々あるからね。それに弟の結婚式には出たかったから」
ニッコリと笑う。
が、首をすくめる。
「でもショックだったなぁ……弟に背を抜かれてたんだよ……『兄さん……背が縮みました?』って言われて、ムカついたから、兄貴たちを一発ずつ殴りつけてやったの……うん。弟は殴れない。可愛い弟だし、花婿だし……」
「あぁ、4人青あざつくってたのお前がやったのかぁ……よくやった!月姉が満足そうだった!」
「でしょ?兄さん」
ニヤリと従兄弟同士で笑う。
「でも、王宮騎士団長……全然面白くないですね。兄貴たちと同じ部署は嫌だからと最終的になりましたが、団長よりも一般の団員がいいです。兄さん。総帥にお願いしてくれませんか?一緒に。それか又特務に……」
「オイオイ。お前を地方に出すなって総帥が言ったんだぞ。それに、綾姉が『セリが又いなくなるなら、もう泣く……』って、俺の兄ちゃんに泣きついて、決まったんだ。カイ兄ちゃんがそこで泣きそうだから、文句言うな」
「頼むから、やめて……父さん……ここ最近、リオンの胃が痛いって言ってた意味がよく分かるよ……」
「リオンおじさん、胃潰瘍で長期入院だっけ?ダメだよ?父さん。ボケ倒してリオンおじさんの病気悪化させない」
「父さんは普通です!リオンの胃が悪化したのは、エリオットとシエラとフィアです!ついでにルー先輩です!私は多分一割!」
カイの一言に、ローズさまは、
「一割でも自覚したのね……成長したわ。カイ」
とのたまう。
最近というか、ここにきてからほぼ女装の日々を送るローズさまは、とても肌がツヤツヤ、すべすべで、ニコニコと機嫌がいい。
シェールドでは主人は美貌で見ていて飽きないが、同僚であり幼馴染どもの暑苦しさにウザいと思っているらしい。
しかし、ここでは思う存分女装をし、可愛いリティを愛で、愛らしいその母アリアにその姪で王妃のティアラーティアと日々美について語り合うことができ、ストレス発散しているらしい。
1つ不満なのは、愛妻のアルファーナがいないことである。
「それに先輩。リオンのところのセナは本当に良い子に育ったのに、我が家の息子たちが……」
嘆く。
ちなみにセナは、リオンの長男で、アルトゥールの双子の姉アーデルハイドの夫である。
賢いのと、ローズさまの長男のラファエルと幼馴染で親友である。
「まぁ、馬鹿は締めないとな」
「そうだよ、父さん。こう、アルトゥール殿下がおっしゃってるから」
「け、喧嘩……?」
リティはおずおず問いかける。
リティは、手はあげられることは少なかったが、暴力を振るおうとした親から、ばあやや元いたメイドたちを庇い殴られたことが何度かある。
「違うよ〜?姫様。僕の兄達が、父さんと職場が一緒だったり、ローズ様の息子であるラファエル団長の部下だったりするんだけど、失敗に、ふざけたり、仕事中に女性に声をかけたり……でね。余りにも繰り返すから、筋力トレーニング増やして貰おうかって、殿下と提案したんだよ?ね?兄さん」
「そうそう。本当に、一回は俺の兄ちゃん……暗殺されかかって、下の兄ちゃんが庇って怪我したんだ。その暗殺者を見逃したのが……」
アルトゥールとローズ様とセリは、ちらっと見るのは苦悩するカイ。
「……僕の四番目の兄で……暗殺者が女性だったから見逃したって……その時僕が戻ってたら……って後悔したよ」
「お前が戻ってたら、兄ちゃんも……」
アルトゥールも思い出したのかため息をつく。
「今回も、デュアン兄ちゃんが命が無事で安心した。もうちょっと落ち着いたら向こうに戻らないと。兄ちゃんが心配する」
「そうねぇ。私は、安全が確認できるまで残るけれど、カイと一緒に戻りなさいな。セリがここに残りなさい」
「はい。そうさせて頂きます。ローズ様」
「でも、お兄ちゃん、お仕事は?」
リティの心配そうな声に、ニコッと嬉しそうに答える。
「有給休暇溜まってたから使ってるの。それに、僕がいなくても騎士団ボロボロにはならないよ」
リティは素直にすごいなぁと思ったのだが、カイは青ざめる。
実は、セリが来た後に叔父に連絡を取ると、セリは有給休暇を取る時に、
「総帥閣下。僕の有給休暇〜全部下さい。代わりに役立たずの四兄を置いていきますから」
と、ボコボコに殴りつけたすぐ上の兄を引きずって、騎士団総帥の元に連れていき、
「ね?兄貴。仕事から逃げたら……兄貴がもみ消した幾つもの悪行を晒しますよ?1日逃げたら1つずつ……騎士団はおろか、家にも、この国にもいられないようにしてあげます」
とニコニコと脅したらしい。
そして、
「兄貴?逃げても良いですよ?命が惜しくなければ」
と言い、四男は蒼白になり、
「大叔父上!」
「兄貴?騎士団総帥に失礼でしょう?」
「そ、総帥閣下!弟の代理として、誠心誠意努めさせて頂きます!」
「大丈夫だよ。僕は兄さんに期待してないから。仕事はもうすでにほぼこなしてるし、出勤して団長室にいればいいから。それ以上は要求しないよ?……と言うことで、総帥閣下。行って参ります」
と出て行ってくれたらしい……一応、叔父も可哀想だからと内容は聞かなかったらしいが、代わりに、
「仕事手抜きしたら、セリに聞くから」
と半分脅して仕事をさせているらしい。
今まで手抜きして来たツケを息子は払っているようである。
「……先輩……本当にすみません。帰ったら、しばらく静養……」
「多分無理だと思うわ。貴方の四番目、色々ポカやらかして、うちのラファエルが切れてるから。それに長男と次男もやらかしてシエラが激怒してるそうよ」
「……」
真っ青になる。
「叔父……キレてる……」
「三番目はお利口になってるみたいだけど、上の2人のポカに、フィアが動く羽目になって、散々ですって」
「……もう、もう、嫌だぁぁ。私は、綾と穏やかにのんびりと生活したいのに!帰ったらボコボコにされる」
「大丈夫だよ。父さん。父さんにはしないよ。総帥も。総帥、父さんのことお気に入りだから」
「どう言う意味のお気に入りだよ」
とアルトゥールは突っ込んだのだが、セリは機嫌よく、
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